建設業では、解体現場や内装工事から排出される多種多様な廃プラスチックの処理コストと、サーマルリサイクル依存によるCO2排出量の増加が大きな論点となっており、分別困難な混合廃材をどう資源化するかが課題です。
本記事では、ケミカルリサイクルの基礎知識や建設業が導入するメリット・課題、具体的な処理手法について解説します。また大手ゼネコン3社の先進事例も紹介していますので、Scope3削減や水平リサイクルによる循環型調達を進めたい建設業の方は参照してみてください。
ケミカルリサイクルとは?基礎知識と他手法との違い

ケミカルリサイクルは、使用済みプラスチックを化学的に分解し、再び原料として循環利用する再生手法として注目されています。マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルとは異なるアプローチで、脱炭素社会の実現にも貢献する技術です。
ケミカルリサイクルの仕組みと定義、3つのリサイクル手法の比較、注目される社会的背景について解説します。
仕組みと定義
ケミカルリサイクルとは、使用済みプラスチックを化学反応によって分解し、再び原料として循環利用する再生技術を指します。従来の焼却処分や単純な再利用では対応が難しかった廃プラスチックも、分子単位まで細かく分解することで、モノマーや油・ガスといった新たな資源へと変換できる点が特徴です。
建設業においても、養生シートや塩ビ管の端材、梱包フィルム、内装工事で発生する樹脂系廃材など、現場では多様な廃プラスチックが排出されており、化学的手法による資源循環の活用が進みつつあります。環境負荷の低減とCO2排出量の削減を両立する次世代の処理技術として、欧州を中心に世界的な注目を集めています。
3つのリサイクル手法の比較
プラスチックの再資源化手法には主に3種類があり、それぞれ処理の仕組みや再生後の用途が異なります。
再資源化手法特徴マテリアルリサイクル
| ● 廃プラスチックを溶融して同じ製品に戻す方法
● 処理コストが比較的低い ● 再生を繰り返すと品質が劣化しやすい |
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| サーマルリサイクル | ● 廃棄物を燃焼させて得られる熱エネルギーを発電や熱利用に活用する手法
● 焼却処分に近い位置づけ |
| ケミカルリサイクル | ● 化学的な分解工程を経ることでバージン材と同等の品質を維持できる
● 食品包装や建材用途など高い品質基準が求められる分野での活用が期待 |
3つの手法の違いを理解することが、適切な資源循環戦略には欠かせません。
注目される社会的背景
ケミカルリサイクルが世界的に注目を集める背景には、サーキュラーエコノミーの実現に向けた国際的な潮流があります。中国をはじめとする諸外国が廃プラスチック輸入規制を強化したことで、日本国内で資源を循環させる仕組みの構築が急務となっており、従来の処理方法だけでは対応が難しくなっているのが現状です。
特にマテリアルリサイクルは再生を繰り返すほど品質が劣化する技術的課題があり、課題を補う次世代手法としてケミカルリサイクルへの期待が高まっています。日本化学工業協会は、2030年および2050年に向けたケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルの処理量目標を設定し、産業界全体で脱炭素社会の実現を後押しする方針を打ち出しています。
出典:経済産業省/資源循環経済政策を巡る動向とそのあり方について
ケミカルリサイクルを建設業が導入するメリット
建設業がケミカルリサイクルを導入することで、従来の処理方法では対応が難しかった課題を解決し、環境経営を大きく前進させられます。
ケミカルリサイクルの混合廃棄物への高い対応力、Scope 3のカテゴリ5削減、資源の完全循環(水平リサイクル)について解説します。
混合廃棄物への高い対応力
ケミカルリサイクルの強みは、複数素材が混在する廃プラスチックや汚れが付着した資材であっても再資源化できる点にあります。化学的な分解プロセスを経るため、不純物や異素材の組み合わせに左右されず、原料レベルまで戻して循環利用できることが理由です。
建設現場では、塗料が付着した養生シート、コンクリート片が混入した梱包材、断熱材と結合した複合素材など、分別が極めて困難な廃プラスチックが日常的に発生しています。マテリアルリサイクルでは処理が難しく、最終処分場行きとなるケースが少なくありません。
ケミカルリサイクルであれば現場での細かな選別作業を大幅に削減でき、廃棄物処理コストの圧縮と資源循環の両立が可能です。建設業における廃棄物管理の効率化を後押しする技術として、実務面での価値が高いことも特徴の一つです。
Scope 3のカテゴリ5削減
ケミカルリサイクルの導入は、企業のサプライチェーン排出量(Scope 3)カテゴリ5「事業から出る廃棄物」の削減に直結する有効な手段です。廃プラスチックを焼却処分する従来手法と比較して、化学的に分解・再生するプロセスはCO2排出量を大幅に抑制できるためです。
建設業におけるScope 3カテゴリ5の主な排出源は次の通りです。
- 解体工事で発生する廃プラスチック
- 現場から排出される梱包材や養生資材
- 内装工事の樹脂系廃材の処理
Scope 3カテゴリ5の排出量は、サーマルリサイクルや単純焼却による処理量が多いほど算定値が膨らむ構造にあります。ケミカルリサイクルを活用してカテゴリ5の排出削減を行うことで、廃棄物を資源へと転換し、排出量を抑えながら脱炭素社会の実現に貢献できます。
脱炭素経営が取引条件として重視される現在、ゼネコンやサブコンにとって競争力強化の基盤となる施策です。
関連記事:Scope3のカテゴリ5とは?必要な情報や算定における注意点を解説!
資源の完全循環(水平リサイクル)
ケミカルリサイクルは、使用済みプラスチックを原料レベルまで完全に分解し、バージン材と同等品質の素材として再生できる水平リサイクルを実現する技術です。従来のマテリアルリサイクルでは再生を繰り返すごとに品質が低下するダウンサイクルが避けられず、用途が限定される傾向にありました。
一方で、化学的分解工程を経るケミカルリサイクルであれば、モノマーまで戻して重合し直すため、繰り返し再生しても品質が保たれ、同一製品への再利用が可能です。建設資材に用いられる塩ビ管やポリエステル系断熱材、防水シートなどを、性能を落とすことなく同等の建材として再生できる点は大きな価値を持ちます。
天然資源の消費削減と廃棄物ゼロを同時に達成する持続可能な循環型調達を支える基盤技術として、建設業のサステナビリティ戦略における重要な選択肢です。
ケミカルリサイクルを建設業が導入する際の課題

建設業がケミカルリサイクルを導入する際には、環境面でのメリットがある一方で、コストやサプライチェーン上の制約といった実務的な課題にも向き合う必要があります。処理コストと運搬効率の壁、廃プラスチックの安定担保について解説します。
処理コストと運搬効率の壁
ケミカルリサイクルの普及における障壁は、処理コストと運搬効率の問題です。化学的分解には大規模なプラントや高度な処理技術が不可欠であり、設備投資や稼働エネルギーの負担が大きいため、安価な埋立処分やサーマルリサイクルと比べて経済的な競争力を担保しにくいのが実情です。
また、国内の処理施設数は限定的で、排出現場から遠方への輸送が必要となるケースも多く、運搬時の燃料消費やCO2排出量が環境負荷として跳ね返る構造もあります。建設業においても、全国各地に点在する工事現場から廃プラスチックを集約する物流網の整備が欠かせません。
経済合理性と環境負荷低減を両立させるには、処理施設の地域分散や排出事業者間の共同輸送といったサプライチェーン全体の最適化が求められます。
廃プラスチックの安定確保
ケミカルリサイクルを社会実装するうえで見過ごせないのが、原料となる廃プラスチックを安定的に担保する仕組みづくりです。大規模プラントを継続稼働させるには一定量以上の廃プラスチックを途切れなく供給する必要があり、単独の排出事業者だけでは供給量や品質のばらつきから安定運用が難しい構造があります。
このため、異業種や複数プレイヤーが連携した回収ネットワークの構築が不可欠となり、排出側と処理側が長期的なパートナーシップを築くことが重要です。ゼネコンや建材メーカー、産廃処理業者、化学メーカーが業界の垣根を越えて連携し、発生量の予測や回収ルートの共有を進める体制整備が求められます。
資源循環を一過性の取り組みで終わらせず、社会全体で維持可能な仕組みへと育てていく長期的な共創の視点が、技術普及を支えます。
ケミカルリサイクルの具体的な手法と建設資材への応用
ケミカルリサイクルには複数の処理手法が存在し、それぞれ建設資材への応用可能性が異なります。技術特性を理解することで、自社の廃プラスチック排出量の状況に適した再資源化ルートを選択できます。
油化・ガス化のプロセス
油化とガス化は、建設現場で発生する混合プラスチックに対応できる代表的なケミカルリサイクル手法です。油化は廃プラスチックを高温で熱分解し、ナフサや燃料油に相当する生成油へと戻す技術で、得られた油は化学製品の原料や燃料として幅広く活用できます。
一方ガス化は、酸素や水蒸気を用いてプラスチックを分解し、一酸化炭素や水素を含む合成ガスを生成する手法で、化学品の製造原料として利用されることが特徴です。いずれも分別が難しい混合廃プラに対応できる点が共通の強みであり、塗料付き養生シートや複合素材の梱包材、解体現場で出る多種多様な樹脂廃材など、従来は処分に頼らざるを得なかった建設系廃プラスチックも化学原料や燃料として再資源化できます。
選別工程の負担を軽減しながら資源循環を実現する実用的な技術といえます。
原料・モノマー化の仕組み
原料・モノマー化は、廃プラスチックを構成単位である分子レベルのモノマーまで完全に分解し、再び重合することで新たな樹脂を生み出す手法です。一度最小単位まで戻すため、バージン材と同等品質の素材として再生できる点が特徴であり、代表例としてPETボトルを再びPETボトルへと戻す「ボトルtoボトル」や、使用済み衣類を原料としたポリエステル繊維の再生事例が知られています。
原料・モノマー化の技術を建設業に応用すれば、ポリエステル系断熱材や塩ビ系建材、防水シートに含まれる合成樹脂を高品質な再生資材として循環利用する道が開かれます。品質劣化のない水平リサイクルを実現できるため、構造性能や耐久性が厳しく求められる建設資材であっても、安心して再生材を採用できる基盤が整います。
建設業界におけるケミカルリサイクルに関する事例
建設業界では脱炭素経営の加速とともに、ケミカルリサイクルを活用した資源循環の取り組みが大手ゼネコンを中心に広がっています。鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、大成建設株式会社の具体的な事例について紹介します。
鹿島建設株式会社
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出典:「建設現場から排出される廃プラのケミカルリサイクル実証事業」に着手|2025.11.13|鹿島建設株式会社
清水建設株式会社
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出典:建設現場で発生した廃プラスチックを新築建材として再生利用|2025.10.8|清水建設株式会社
大成建設株式会社
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出典:建設現場における使用済み三角コーンのリサイクルループを拡大|2025.11.5|大成建設株式会社
まとめ

本記事では、ケミカルリサイクルの基礎知識や建設業が導入するメリット・課題、具体的な処理手法について解説しました。建設業が実務で着手すべき第一歩は、現場から発生する養生シートや梱包材、樹脂系廃材の排出量を可視化し、分別ルールを見直すことです。
次に、産廃処理業者や化学メーカーとの連携ルートを構築し、Scope 3カテゴリ5の算定と削減目標に組み込むことが有効です。再生建材の調達基準を整備すれば、水平リサイクルによる循環型調達が現実的な選択肢となり得ます。
脱炭素経営と資源循環の両立を目指す建設業の方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。









