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材料起源CO2をどう減らすか―西松建設に聞く、カーボンネガティブコンクリートと回収骨材100%使用コンクリートの実装

材料起源CO2をどう減らすか―西松建設に聞く、カーボンネガティブコンクリートと回収骨材100%使用コンクリートの実装

西松建設は、製造時の材料に由来するCO2排出量を計算上ゼロ以下にするカーボンネガティブコンクリートや回収骨材を再生・活用するコンクリートなどの開発に力を入れています。「材料起源CO2排出」に取り組む意義や、カーボンネガティブコンクリート開発の背景などについて、環境戦略課長の長谷川氏と、技術研究所で技術開発に取り組む髙木氏、中村氏の御三方にお話を伺いました。

なお、本記事でいう材料起源CO2とは、セメント、骨材、鋼材、仕上材など、建設資材の製造・調達に伴って発生するCO2排出を指します。建設会社にとっては、主にスコープ3カテゴリー1に関わる領域であり、今後の脱炭素経営や発注者への説明において、重要性が高まるテーマです。

スコープ3カテゴリー1の重み

建設業における材料起源CO2排出の中心となるのは、スコープ3カテゴリー1(購入した製品・サービス)です。加えて、資材の輸送に関わるカテゴリー4(輸送・配送〈上流〉)や、解体・廃棄段階に関わるカテゴリー12(販売した製品の廃棄)も、材料調達や資源循環の文脈で重要な排出領域となります。

長谷川氏は「2050年度までに、地球上の人為的なCO2排出を実質ゼロに抑えるためには、バリューチェーンの上流から下流まで、原則、CO2排出ゼロを目指す必要があると考えます」と話します。そのうえで長谷川氏は「CO2排出削減のうち、現時点で注力しているのはスコープ1、2ですが、最も排出規模が大きくなるスコープ3の削減が、中長期的にカーボンニュートラルの達成のうえで必要不可欠です」と指摘。「例えば当社において、スコープ3カテゴリー1を仮にゼロにできたとしたら、当社のスコープ3は2025年度実績で約4割減となります。そのくらい材料起源のCO2排出削減にはインパクトがあり、脱炭素化に向けては、非常に重要な位置付けにあると思います」

さらに、「資材の選定や開発」は、CO2削減に向けて努力の余地がある分野だといいます。「我々の日常業務、すなわち手の届く範囲でCO2削減をある程度コントロールできる分野だと思います。スコープ3カテゴリー1の削減に向けては、より正確な現状を把握するとともに、社内の建設部門やDX部門と協力して、そのための仕組み構築を進めているところです」

材料起源CO2をゼロ以下に抑えるコンクリート

カーボンネガティブコンクリートの開発強化の起点となったのは、TCFDの推奨に基づく、気候関連のリスクと機会のマテリアリティとして抽出したことにあるといいます。「中期的な移行リスクとして、脱炭素社会に向かうシナリオを想定した中で、近い将来、低炭素型コンクリートやカーボンネガティブコンクリートに関する技術の保有が、建設受注の必要条件になる可能性を見いだし、位置づけを一段上げて、開発強化を図った形です」(長谷川氏)

西松建設が戸田建設と共同で開発を進めるカーボンネガティブコンクリートは、「CO2由来炭酸塩原料使用型コンクリート」と「セメント低減型コンクリート」の二つの面を併せ持った環境配慮型コンクリートです。CO2を吸収させた炭酸カルシウムを主成分とした材料(CCU材)を骨材の代替として利用し、CO2をコンクリート内部に長期的に固定(炭酸塩として固定)します。さらに、セメントの代替として高炉スラグ微粉末によってセメントの9割を置換しています。

開発を担当した髙木氏は「炭酸カルシウムにCO2を吸収させ、かつ製造時のCO2排出量が比較的大きいセメントの使用量を削減することにより、CO2排出量が計算上マイナスとなるコンクリートを実現しています」と説明します。

CCU材料を多量に含んだコンクリートは、急激に凝結のようなこわばりが発生し、現場での施工に必要なフレッシュコンクリートの性状を保つことができない場合があります。西松建設では、2023年にプレキャスト製品の製造可能性を確認し、2025年には現場打ち施工が可能な段階まで進みました。

「我々のような現場でコンクリートを施工する側にとっては、コンクリート工場から現場までコンクリートを運ぶ時間が必要です。そのため、2時間程度の経時保持性能が必要となり、さらにはポンプによってコンクリートを圧送し、打込みを行うことが多くあります。2025年にはこれらをクリアするために、CCU材料だけでなく、混和剤の検討も行い、実際の現場でも通常のコンクリートと同様に施工できる段階に進化させました」(髙木氏)

▼カーボンネガティブコンクリートのCO2削減効果と打込み状況

参照:https://www.nishimatsu.co.jp/news/2025/post_146.html

解体ガラを再生材として有効活用

また、コンクリート構造物の解体などで発生した廃コンクリート塊(ガラ)から得られた再生粗骨材やコンクリート微粉末にCO2を吸収・固定化させて付加価値を高めた再生材料を利用した環境配慮型コンクリートの開発も行っています。

これらの再生材料には元のコンクリート部が付着しており、コンクリートに練り混ぜた際に、フレッシュコンクリートの性状のコントロールが難しくなるため、恒常的に活用されていない現状があります。「元宮城大学教授の北辻政文氏が研究されていた解体ガラや再生粗骨材をコンクリート材料として再生させるという内容に、弊社のカーボンネガティブコンクリートの技術を合わせ、さらなる環境配慮型コンクリートとしたのが今回の開発の経緯です」(髙木氏)

さらに、髙木氏は「コンクリートは古くから天然の骨材を使用してまいりました。今後、高度経済成長期に施工されたコンクリート構造物の更新が進み、新たな構造物となる際、多量の解体ガラが発生し、そして新たなコンクリートが必要となります。限りある資源を有効に活用していくために、このような資源循環性能が高い技術が必要なのではないかと考えます」と話します。

▼CO2を吸収・固定化した再生材料を活用する環境配慮型コンクリートの概念図

参照:https://www.nishimatsu.co.jp/news/2025/co2_1.html

回収骨材利用は「もったいない」の意識から

さらに、粗骨材に生コン工場で発生する回収骨材を100%使用したコンクリートを、建設現場に適用する取り組みも進めています。

回収骨材は、残コン・戻りコンを洗浄して回収した骨材です。通常の骨材と見た目は変わらず、強度などの物性においても違いがないにもかかわらず、回収骨材をあえて使用するメリット・需要がないことから、回収骨材を標準化している生コン工場は日本全国に少なく、あまり普及していません。最終的に使用されない回収骨材は、産業廃棄物として処理されている現状があります。また、JIS(日本産業規格)では工場の設備に応じて原骨材との置換率が「上限20%」と規定されていますが、これは基礎や柱などの主要構造部に限った制限です。今回は、仮設的に使用する「捨てコンクリート」に適用することで、JISの制限を超えた置換率100%の適用を実現しました。

▼洗い出した回収骨材・試験練りの様子

参照:https://www.nishimatsu.co.jp/news/2025/100.html

担当の中村氏は「建築現場において、残コン・戻りコンの発生を完全にゼロにすることは構造上極めて困難です。私自身、施工管理として現場に立つ中で、どれだけ管理を徹底してもコンクリートを余らせてしまう現実に、当時から『もったいない、何とか解決できないか』という強い問題意識を抱いていました。これが、回収骨材100%コンクリートへの取り組みを始めた原点です」と活動の経緯を話します。

全国の生コン出荷量のうち一定量の残コン・戻りコンが発生しているとされており、その有効活用は建設業界における資源循環上の重要な課題となっており、全国で製造された生コンの約3%~5%、年間約200万〜400万m³ものコンクリートが廃棄されているといわれております。https://rrcs-association.or.jp/cn4/domain3.htmlより)

「コンクリートの主原料である骨材やセメントは、山や河川、海底から、貴重な天然資源を採掘して作られています。残コン・戻りコンをそのまま捨てるということは、地球の限られた資源をそのままドブに捨てていることと同義です。これは、現代社会が向き合う循環型社会の形成のために、いかに余らせることなく、あるいは形を変えて使い切る仕組みを作るかが、建設業界の大きな使命であると考えています」(中村氏)

回収骨材の利用を進める上でのボトルネックはどこにあるのか。中村氏は、JISや建築基準法といった制度の問題ではなく、「使ったときのメリットが見えにくい」という市場の仕組みにあると指摘します。「理論上、回収骨材を使えば、新しい骨材の購入費も廃棄代も浮くため、コストを抑えられるポテンシャルを持っています。しかし、まだ流通量が少なすぎるために明確な相場(値段設定)がなく、通常の生コンと同じ価格で調達せざるを得ません。これでは、わざわざ新しい材料に挑戦しようというインセンティブが供給側にも生まれません」

加えて、施主側にとっても「環境に良い」という社会貢献以上の具体的なメリットが見えにくいという現状もあります。「だからこそ、私たちが今回のような実績を積み上げて話題性を生み出すことで、需要を喚起できれば、リサイクル材の利用促進とコスト削減を両立でき、施主側・生産者側とWin-Winの関係を構築できると思います」(中村氏)

「地産地消」で、無理なく使い切る仕組みへ

こうしたカーボンネガティブコンクリートなどの普及にはどのような展開が必要なのでしょうか。

髙木氏は「地産地消」を一つのキーワードとして挙げます。「CO2排出量マイナスを一つの目標としたコンクリートを使用するために材料を遠方から運搬するというのは本来の目的から逸脱してしまいます。このような材料は地産地消が原則であり、無理のない範囲で活用することが望ましいと考えており、将来的にCCU材料が全国に普及した際に真価を発揮するものです。また、従来のコンクリートそのものが安価な材料で構成されているため、どうしてもコストが増加してしまうのが現状です。それまでの取り組みとして、長期的なコンクリートの品質や製造のノウハウを蓄積し、無理のない範囲で積極的に活用・展開することが肝要だと考えます」

中村氏は構造体以外の用途に絞り、100%使い切る仕組みを横展開することが現実的だといいます。「回収骨材は、日々の出荷量によってストック量が変わるため、毎日大量に安定供給できる性質のものではありません。しかし、現場で仮設的に使われる捨てコンなどは、どのような規模の現場でも日々コンスタントに発注されるものです。無理に主要構造部へと用途を広げて供給不足に陥るよりも、まずは捨てコンや土間コンといった構造体以外の用途にターゲットを絞り、そこに日々の回収骨材を100%充当していく。この『発生した分を確実に消費していく仕組み』をつくり、各地の工場や現場へ広げていくことが重要であると考えています」

▼回収骨材100%使用コンクリートの現場適用状況|従来のコンクリートと何ら変わりのない様子

「脱炭素資材」のすそ野をどう広げるか

長谷川氏は発注者の意識や理解の重要性を指摘します。「材料選定について我々ゼネコンが任される部分は多くはなく、採用・不採用は原則、設計者や発注者が判断し、最も権限があるのが発注者になります。発注者が費用負担も前提とした脱炭素資材の採用を進めることが、普及のカギになることは間違いありません。特に先行して、公共工事における導入を、一定のインセンティブとともに進めることが必要と考えます」

一方で、発注者の側にも意識変化が見えるといいます。「ありがたいのは、デベロッパーや一部の発注者のなかには、野心的なCO2排出削減計画を策定し自社不動産におけるライフサイクルのカーボンニュートラルも位置付けて、材料起源のCO2削減にも積極的に取り組もうとされる動きがあります。こういった発注者様と一致協力して、スコープ3カテゴリー1の削減に努めていこうと考えています」

長谷川氏は、コンクリートにとどまらず、あらゆる建設資材において、材料起源CO2排出はあると指摘します。「長期的には鋼材や仕上材などについても、技術開発や材料選定において考慮すべき段階になると想定しています。つまり『脱炭素資材』といった考え方のすそ野を広げ、各資材においてLCCO2を踏まえた配慮と情報開示が必要になると思います。現在のCO2削減計画『ZERO30ロードマップ2023』の年限は2030年度で、材料起源のCO2排出削減施策は入っていませんが、次の中長期計画を策定する段においては、必ず入ってくるカテゴリーだと考えています。まずは現状把握をしっかりと進めたうえで、着実な計画策定とともに実績を積み上げていくことが肝要だと考えています」

(了)

西松建設 安全環境本部地球環境部 環境戦略課長
長谷川 真也(はせがわ まさなり)氏

技術研究所 土木技術グループ 係長
髙木 雄介(たかぎ ゆうすけ)氏【写真左】

技術研究所 建築技術グループ 主任研究員
中村 雄太(なかむら ゆうた)氏【写真右】

※組織名・役職などの情報は取材当時(2026年6月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

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