清水建設東京木工場は、1884年の開設以来、木工・造作・加工の技術を受け継ぎ、磨き続けてきた自社工場です。職人の技とデジタル加工技術を組み合わせ、木工事に関する材料保管・製材・製作・施工管理までを一貫して担っています。
本記事では、工場長の清田氏を中心に、設計部および環境経営推進室の担当者にも話を伺い、東京木工場の技術が現在の建築や木質化の実務でどのように活かされているのか、森林資源の循環や脱炭素にどのようにつながっているのかを紹介します。
出典:https://www.shimz.co.jp/mokkou/
技術を受け継ぎ、磨き続ける東京木工場のものづくり
1884年(明治17年)に開設された東京木工場は、140年以上の歴史を有し、宮大工を祖業とする清水建設のものづくりの精神を背景に、東京木工場は主に洋風建築の内装木工事を担い、木材の保管・製材・製作・施工管理に関する技術と知見を蓄積してきました。ゼネコンが自社で木工場を保有する例は珍しく、一貫した体制で高い品質を追求できる点が大きな強みです。
▼東京木工場(来客棟) 内観

宮大工の伝統を受け継ぐ確かな品質
東京木工場と、社寺建築を担当する部門との役割の違いについて、工場長の清田氏は次のように説明します。
「清水建設には、創業者が宮大工だったこともあり、純木造の社寺建築などを担当する部署もあります。木工場は、そことは違い、木造の建物を作るのではなく、コンクリートの建物など洋風建物の内装木工事を中心に手掛けている部署です。材料保管・製材・製作・施工管理までを一貫して手掛ける清水建設のサプライチェーンとして、最高品質にこだわったものづくりの魂を継承しています」と説明します。
木工場のこだわりは、現代のニーズに対応できる技術と、確かな質の融合です。清田氏は「清水建設の自社工場として、技術開発などにも積極的に取り組み、当社が施工する建物での様々なニーズに対応した技術提案が可能です。また、木製品はお客様の期待を上回る独自の東京木工場クオリティーを追求して製作しています」と力を込めます。使用する木材の種類を選ぶ樹種選定においては、樹種毎の美しさ、仕上がり具合、経年変化などの特性を、サンプルなどを使って丁寧に説明することで、顧客が選定しやすい提案を心掛けているといいます。
受け継がれた技術で支える木質化の実務
受け継がれてきた木工技術は、職人の経験だけにとどまらず、最新設備や設計・技術部門との連携を通じて、現在の建築や木質化の実務へと広がっています。
職人技と最新技術の融合
東京木工場は2026年、約4年にわたる全面建て替えプロジェクトを完了し、「木の文化・技術・魅力の発信拠点」として新たに生まれ変わりました。資料館や見学スペース、木育活動で利用可能なマルチルームなども整備されており、歌舞伎座や国立西洋美術館、大阪・関西万博の大屋根リングなど、これまで手掛けてきた建築物に関する展示を通じて、木工技術や木の魅力を広く発信しています。
伝統的な職人技に加え、多軸ロボットやNC加工機などの最新設備を導入し、高精度な木材加工や木質建築の技術開発にも取り組んでいます。
▼木工場の様子


最新設備や新しい技術の導入によって、木工場の仕事にはどのような広がりが生まれたのでしょうか。清田氏は「伝統工法と先進技術の融合は様々な可能性を秘めているため、伝統建築分野での取り組みにも果敢に挑戦していきます。また、正確性・作業効率・加工スピードなどの向上を図るのにも大きな効果を得ているため、今後も有効に活用していきます」と話します。一方で、先進技術を併用して製作した製品も最終的には「手仕上げ」にこだわっています。「最終工程では、見て触って確認することで最高品質の製品に仕上げて現場に納めるよう努めています」(清田氏)

木質化を支える技術と、脱炭素への貢献
清水建設では、建築物の木質化を進める技術として、木質建築技術「シミズ ハイウッドⓇ」を展開しています。東京木工場は、木材加工や試作、製作に関する知見を活かし、設計部門や技術開発部門と連携しながら、木質化の実装を支えています。
出典:https://www.shimz.co.jp/mokushitsu/assets/pdf/tech/01_Shimz_Hy-wood.pdf
2010年には、公共建築物における木材利用を促進する法律が制定されました。2021年の改正では対象が建築物一般へ拡大され、現在は「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」として、建築物の木造化・木質化を後押ししています。こうした制度整備も追い風となり、木材利用への関心は一層高まっています。
設計部の山田氏は、東京木工場との連携について次のように話します。
東京木工場には、140年以上の歴史の中で、木にかかわる知見や知識を脈々と受け継ぐ匠集団が存在します。昨今の建築の木質化を後押しする環境の中で匠集団の知見と知識を木内装や構造の新たな技術開発に不可欠と考えております。新たな東京木工場には技術開発センターの用途も付加されています。技術開発の分野で東京木工場との連携を行うことで、社会課題を解決する様々な技術開発が可能になると考えます。
また、東京木工場で開発した木造仮設建築「サイクルユニット」についても、現場事務所に限らず、さまざまな用途への展開を進めており、離島での文化財保護を目的とした研究拠点にも応用しています。
出典:
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023014.html
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2026/2026006.html
森林資源の循環を建築へつなぐ重要拠点
環境経営推進室の照井氏は「東京木工場は、単なる木材加工の拠点ではありません。木を、育てる・守る・つなぐ・使う の4ステップで、森林資源の循環を図る『シミズ ウッドサイクル』の一翼を担う重要拠点として捉えています」と話します。
シミズ ウッドサイクルは、木を「育てる・守る・つなぐ・使う」という4つのステップで森林資源を循環させる清水建設の取り組みです。森林整備から建築への木材利用までを一貫して考えることで、国産木材の利用促進やCO2の固定、脱炭素社会への貢献を目指しています。建物を作るだけでなく、森林と建築をつなぐ循環を生み出すことが、大きな特徴です。
▼シミズ ウッドサイクル

出典:https://www.shimz.co.jp/mokushitsu/index.html#environment
「新工場の建材には、『シミズめぐりの森』の拠点の一つである群馬県川場村の木材を使用しています。 また、東京木工場には、単に木材を調達、加工、製作するだけでなく、環境価値を可視化し、お客様と共に持続可能な未来を創り上げていく使命があると考えます。そのような未来を生きる次世代の子どもたちのために、木育体験を通じて森林の価値を伝え、持続可能な木材利用の重要性を社会に広める『発信の場』でもあります」(照井氏)
木工場の技術を、次の建築へつなぐ未来への展望
技術の継承と若手の育成は、現場での実践を通じてこそ確かなものとなります。清田氏は「原点である内装工事の仕事を通じて、技術を磨き、次世代へ繋ぐサイクルを回していきます。東京木工場の持つバリューを社内外へ広くアピールし、数多くの素晴らしいプロジェクトを形にできるよう、積極的な発信を続けてまいります」と、さらなる躍進を誓います。
技術継承と発信を支える東京木工場クオリティー
木造建築の保存修理や改修工事も重要な役割であり、将来的には木造建築の構造体製作にも挑戦していく方針、と話します。
「最高品質へのこだわりである東京木工場クオリティーは、シミズバリューに直結する役割を担っています。木工場を拠点に、社内研修において木の伝統技術を承継する場とするだけでなく、見学を通じて木で得ることのできるウェルビーイングや木を使った様々な可能性を発信する場としていきたいと思っています。木を直接見て、触れて、木の素晴らしさを感じてもらうのと同時に、伝統技術や先進技術での可能性を感じていただきたいと思っています」(清田氏)
受け継いできた木工技術を、現在の木質化実務へつなぎ、さらに森林資源の循環や脱炭素、次世代への技術継承へと広げていく。東京木工場は、木の価値を次の建築と社会へつなぐ、ものづくりと発信の拠点として新たな役割を担い始めています。

清水建設株式会社
建築総本部 東京木工場
工場長 清田 幸也(きよた ゆきや)氏
※組織名・役職などの情報は取材当時(2026年7月)のものです。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。









