基礎情報

建設業のSXとは?ゼネコンの事例と建設企業が成功するための3ステップを解説

建設業のSXとは?ゼネコンの事例と建設企業が成功するための3ステップを解説

建設業界では、環境負荷の低減や人手不足への対応が経営上の重要課題となるなか、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)への注目が高まっています。SXとは、社会課題への対応をコストではなく成長機会と捉え、企業価値の向上と持続可能な社会の実現を同時に目指す経営変革を指します。

本記事では、SXの定義や建設業で求められる背景、大手ゼネコンの最新事例、成功に導くための具体的なステップを解説します。また、サプライチェーン全体でのCO2削減手法や建設テックを活用した省力化についても解説していますので、建設業でSXの導入を検討されている方は参照してみてください。

建設業界におけるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは

建設業 SX

SXとは持続可能性を軸に企業活動を変革する考え方ですが、建設業では環境負荷の大きさや人手不足といった業界特有の課題から、必要性が一層強まっているのが現状です。

ここでは、SXの定義や建設業で求められる背景、DX・GX・SDGsとの違いや相互関係について解説します。

SXの定義

SXとは、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの2つを両立させ、同期させるための経営・事業変革のことです。

将来の社会の姿から逆算して、自社のありたい姿や目指すべき方向性を定め、企業の稼ぐ力と社会への貢献を共に向上させていく手法を指します。建設業では、脱炭素、人手不足、災害対応といった課題への対応を、受注競争力や新規事業の強化につなげる取り組みとして位置付けられます。

単なる社会貢献活動ではなく、長期的な視点で企業の強みを社会課題の解決に結びつけ、持続的な成長原資を生み出す力を高める経営のあり方です。

なぜ今、建設業でSXが求められるのか

建設業にSXが求められる最大の理由は、次に挙げる複合的な課題を経営レベルで根本から見直す必要があるためです。

建設業が抱える課題 詳細
環境 資材の製造から施工、建物の運用に至るまでCO2排出量の多い産業であり、脱炭素の実現に向けた抜本的な対策が急がれている
人材 就労者の高齢化や慢性的な人材不足、現場での安全担保などの問題も年々深刻さを増している
リスク 自然災害や国際情勢の変化など予測困難なリスクが増加

建設業は環境負荷の大きさに加え、担い手不足や災害対応、など複数の経営課題が同時進行しています。このため、資材調達、施工、建物運用、解体まで裾野が広く、サプライチェーン全体での対応が企業価値に直結しやすい業種です。

自然災害や国際情勢の変化など予測困難なリスクが増加する時代においては、不測の事態にも対応できる経営体制を整えることが不可欠です。環境・人材・リスクの観点から、建設業ではSXを通じて事業構造そのものを持続可能な形へと転換していくことが、今まさに求められています。

SXとDX・GX・SDGsとの違いと相互関係

SXは、環境・社会・経済・ガバナンスなど幅広い領域を包括的にカバーする経営変革の枠組みであり、類似する概念とは範囲や目的が異なります。それぞれの違いは次の通りです。

要素 違い
DX SXを推進するうえでの有力な手段であり、デジタル技術の導入によって変革のスピードと精度を飛躍的に高める
GX 脱炭素や環境分野に焦点を絞った変革であるのに対し、SXはGXを含みつつも企業経営全体の持続可能性を追求する点が特徴
SDGs 2030年を期限とする国際的な達成目標、SXは社会課題の解決をビジネス機会として取り込み、企業価値を中長期的に高め続ける経営そのものの仕組み

建設業では、SXを経営の目的、GXを脱炭素の実行領域、DXを実装手段として整理すると理解しやすくなります。SDGsは社会全体の目標であり、SXはそれを自社の競争力向上に接続する経営アプローチといえます。

建設業においては、概念を個別に捉えるのではなく、SXの大きな枠組みのもとでDXやGXを有機的に連携させることが、持続的な競争力の担保につながります。

ゼネコン各社が進めるSXの最新取り組み事例

建設業界では、大手ゼネコンを中心にSXへの取り組みが加速しています。各社は脱炭素戦略を経営の柱に据えるとともに、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減にも着手しています。

さらに建設テックの導入による省力化と持続可能な施工の実現も進んでおり、建設業のSXは具体的な実行段階に入っています。

大手ゼネコン(大林組・鹿島建設・大成建設)の脱炭素戦略

建設業の脱炭素を牽引しているのが、大手ゼネコン各社による先進的なSXの取り組みです。大林組は建物のライフサイクル全体における環境負荷を可視化する独自の算定システムを構築し、設計段階からCO2削減を織り込む仕組みを整えています。

鹿島建設はCO2を吸収する特殊なコンクリートの研究開発や、建物の消費エネルギーを実質ゼロにするZEBの展開に力を注ぎ、技術面から脱炭素を推し進めています。一方、大成建設は人と環境の共生を掲げ、ESG経営の深化と非財務情報の積極的な公開を通じて、ステークホルダーからの信頼獲得と企業価値の向上を両立させていることが特徴です。

各社がそれぞれ異なるアプローチでSXを実践していることは、建設業界全体の脱炭素を多角的に前進させる原動力となっています。

サプライチェーン全体でのCO2排出量削減(スコープ3の管理)

建設業におけるSXを実効性のあるものにするには、自社の直接排出だけでなく、原材料の調達から廃棄までを含むスコープ3の管理が欠かせません。建設業はサプライチェーンが広範にわたるため、協力会社やサプライヤーと連携しながら排出量削減の連鎖を生み出していくことが、業界全体の脱炭素を進めるうえで大きな意味を持ちます。

実際に、施工現場ごとの排出量をデジタル技術によってリアルタイムに把握し、改善につなげる取り組みがすでに始まっています。加えて、TCFDの枠組みに沿って気候変動が自社の事業にもたらすリスクと機会を分析し、対応方針を外部に公表する企業も増えつつあります。サプライチェーン全体を視野に入れた管理体制の構築は、建設業がSXを推進するうえでの重要な基盤です。

出典:環境省/気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

建設テックを活用した省力化と持続可能な施工

建設業がSXを推進するうえで、建設テックの活用は現場の変革を支える中核的な役割を果たしています。次世代の圧入機のように、人と機械、現場の情報をデジタルで連携させ、作業の自動化と省力化を同時に達成する技術がすでに実用段階に入っています。

また、3Dプリンターを用いた住宅建築は、工期の大幅な短縮や建設廃棄物の抑制に寄与するだけでなく、コスト面や耐震性能、法規制への適合など建設業特有の課題を乗り越える新たな選択肢として注目を集めていることがポイントです。

さらにIoTやAIの現場導入が進んだことで、かつて「きつい・汚い・危険」と評された労働環境は改善されつつあり、安全で快適な職場づくりが現実のものとなっているのが現状です。テクノロジーの活用は、建設業におけるSXの推進力を高めると同時に、業界の担い手確保にも好影響を与えています。

建設業がSXを成功させるための3ステップ

建設業 SX

建設業がSXを成功に導くためには、段階的かつ戦略的なアプローチが重要です。まず長期ビジョンの策定とKPIの設定により目指す方向を明確にし、デジタルツールの導入で変革を加速させます。

さらに地域課題の解決を新たなビジネス機会へとつなげることで、持続的な成長が実現します。

長期ビジョンの策定とKPIの設定

建設業がSXを推進する第一歩は、経営トップ自らが変革の目的と方向性を明示することです。社会の持続可能性を見据えたうえで、自社が将来どのような姿を目指すのかを定義し、自社の方向性をステークホルダーに対して明確に発信することが出発点です。

掲げたビジョンを実行に移すための具体的なKPIを策定し、進捗を管理できるガバナンス体制を整えることで、投資家をはじめとする外部との建設的な対話が可能です。また、経済産業省が選定するSX銘柄の審査基準などを活用すれば、自社の取り組みが現在どの水準にあるのかを客観的に評価でき、次に注力すべき領域を特定できます。

段階的なアプローチを踏むことが、建設業におけるSXを形だけの宣言に終わらせず、実質的な経営変革へと昇華させるポイントです。

出典:経済産業省/SX銘柄 ~持続的な企業価値向上のための経営・事業変革を目指して~

デジタルツール導入

SXを着実に前進させるには、デジタルツールの活用による業務変革が不可欠です。例えば、Web受発注システムを取り入れることで、紙ベースのやり取りが解消され、環境負荷の低減と事務工程の効率化を一度に達成できます。

また、CO2排出量などのデータ収集や算定を自動化するサービスを利用すれば、限られた人員と時間のなかでも、客観的な根拠に基づいたサステナビリティ報告が可能です。さらに、現場の労務状況や原価をリアルタイムに把握できるITツールを導入することで、働き方の改善と収益管理の精度向上を同時に実現できます。

建設業では現場と事務所の情報連携に課題を抱えるケースが一般的なため、デジタルツールの段階的な導入がSX推進の実行力を大きく左右します。

地域課題の解決を新ビジネスにつなげる

建設業におけるSXの価値は、地域が抱える課題をビジネス機会へと転換できる点にあります。地方の中小建設企業にとって、増加する空き家への対応や老朽化したインフラの維持管理など地域特有の問題に関与することは、社会貢献と新たな収益基盤の担保を両立させる有効な手段です。

取り組みを始める際は、自社が持つ技術や知見を活かせる小さな領域から着手し、実績を積みながら段階的に事業範囲を広げていくことが成功への近道です。加えて、地方創生や東京一極集中の是正に資する事業を展開し、地域に根差した企業文化を育てることは、若い世代の採用や定着にも好影響をもたらします。

建設業がSXを通じて地域社会との共生を深めることは、業界全体の持続可能な発展を支える重要な柱となり得ます。

建設業界におけるSXに関する事例

建設業界では、SXの考え方を経営に取り入れ、具体的な成果を上げている企業が増えています。ここでは、建設業におけるSXの実践事例について紹介します。

清水建設株式会社

清水建設(株)<社長 新村達也>は、国立研究開発法人土木研究所<理事長 藤田光一>、日立建機(株)<執行役社長 先崎正文>と共同でこのほど、土木研究所が整備を進めている建設機械の自動施工技術基盤(OPERA:Open Platform for Earthwork with Robotics and Autonomy)を活用した油圧ショベルの自動施工実験を行い、土砂の掘削からダンプカーへの積載に至る一連の作業をシームレスに自動化することに成功しました。当社は今後、複数の建設機械を制御する自動施工システムのプラットフォームとしてOPERAを活用し、土工事の無人化施工の社会実装を進めていく考えです。

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により建設業の生産能力の低下が危惧される中、土工事においては、建設機械が周辺環境を把握し、与えられた指示に従い自ら判断して作業を遂行する自動施工の社会実装が求められています。こうした背景の下、土木研究所では、自動施工の研究開発用プラットフォームとしてOPERAの整備を進めています。OPERAは、ロボットシステムの構築に利用されているROS(Robot Operating System)に対応した建設機械の自動制御プラットフォームで、各種の自動運転対応型建設機械を共通の信号で制御できる通信インターフェースを備えています。

建設機械の自動施工に関する研究開発はこれまで、建設会社と建設機械メーカーが個別に秘密保持契約を結び、当該メーカーの建設機械に特化した制御プログラムを開発するのが一般的でした。このため、建設会社と建機メーカーの組み合わせが変わるたびにカスタマイズが必要となるなど研究開発の効率性に課題がありました。OPERAを活用することで、異なるメーカーの建設機械を統合制御する自動施工システムの構築が容易になり、建設現場への実装が加速することが期待できます。

出典:油圧ショベルによる土砂掘削・ダンプ積載作業を自動化|2025.6.6|清水建設株式会社

株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、当社が20年以上蓄積してきた 構造設計結果データを学習したAI建物リサーチ・AI断面推定・AI部材設計の3つから構成される「構造設計AIシステム」を開発し、全面導入しました。

当社は、構造設計業務に2001年に自社開発した構造設計システム「BRAINNX®(ブレインエヌエックス)」(※1)を利用しています。BRAINNXで設計された建物約500件、30万以上の構造部材の諸情報は、社内の建設デジタルプラットフォーム(※2)に集積されています。集積された構造部材の諸情報を「構造設計AIシステム」に学習させ、「BRAINNX」の機能として実装することで、設計業務期間における計算作業に使う時間を大幅に削減します。お客様への設計提案を迅速に行うことができ、これまで以上に速やかにプラン提案が可能となります。そして新たな付加価値の提案に費やせる時間が増えることで、より高品質な建物設計を実現します。

今後はAIの学習に必要な構造データを常に最新の情報に更新し、AI を進化させ続け、さらなるお客様の満足度向上を目指します。

構造設計AIシステムは、HEROZ株式会社と共同で開発・機能向上を行っています。

※1BRAINNX:建物モデルの入力を容易にする超概略入力機能や強力な断面設計機能、複雑な建物形状への対応機能、地震応答解析機能、く体積算機能、各種BIMやCADソフトとの連携機能等を備えており、基本設計段階から詳細設計段階まで幅広く利用できる構造設計システム。
※2建設デジタルプラットフォーム:当社が構築した、営業から維持保全に至る一連の建設プロセスにおけるプロジェクト業務や人事・経理など、事業に係わるすべてのデータを一元的に蓄積し、AIなどで高度に利活用するための基盤。2021年11月より運用開始。

出典:構造設計をクリエイティブに 「構造設計AIシステム」を開発|2023.9.19|株式会社竹中工務店

株式会社フジタ

大和ハウスグループの株式会社フジタ(本社:東京都渋谷区 社長:奥村洋治)は、岐阜県の「平成 27 年度東海環状広見地区西道路建設工事」において、IoTを活用して土工現場の建設機械・人・測量の情報すべてを集約し、「全工程見える化」を実現しました。施工量では、従来比約 15%の生産性向上を達成しました(施工土量管理グラフ参照)。近年、土工現場における ICT(情報通信技術)の全面活用には、ドローンによる三次元測量や設計データが入力された ICT 建設機械の導入などがあり、作業の効率化や省人化が進みつつあります。実際に測量作業では現場から丁張が無くなり、ICT 建機では仕上げ工程の高精度化や熟練オペレーター不足の解消などの成果が表れ始めています。しかし、ICT 建機は法面整形や盛土転圧など仕上げ作業の一部分にのみ採用されるケースが多く、工程の部分的な効率化が進んでも工事全体の生産性向上に寄与できないといった課題がありました。

そこでフジタは、土工現場の建設機械(ICT 建機、ダンプトラック)・人(工事管理者、職長、オペレーター)・測量(三次元データ、ロードライト)のすべての施工情報をクラウドサービスにつなげ、施工の進捗や出来形の情報が、工事管理者だけでなく職長やオペレーター、運転手などすべての現場の担当者へ、リアルタイムで共有できるシステムを構築しました。

出典:IoT で重機土工の「全工程見える化」を実現|2017.9.5|株式会社フジタ

まとめ

建設業 SX

本記事では、建設業におけるSXの定義やDX・GX・SDGsとの違い、大手ゼネコンの脱炭素戦略やサプライチェーン全体でのCO2削減について解説しました。建設業は環境負荷の大きさや人手不足など業界特有の課題を抱えており、SXによる経営変革は今後ますます重要性を増していきます。

長期ビジョンの策定からデジタルツールの導入、地域課題をビジネスに転換する取り組みまで、自社の状況に合った段階的なアプローチが成功のポイントです。建設業でSXの推進を検討されている方は、参照してみてください。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

建設業界向けの脱炭素対策資料はこちら!

お役立ち資料

注目記事

建設廃棄物を資源へ ――川崎リサイクルセンターが支える高度循環型社会の現場
業界事例

建設廃棄物を資源へ ――川崎リサイクルセンターが支える高度循環型社会の現場

木工場の技術を、今の建築へつなぐ ――東京木工場が支える木質化の現場
業界事例

木工場の技術を、今の建築へつなぐ ――東京木工場が支える木質化の現場

建設業のCO₂可視化に効く“電力データ”活用|電力データ管理協会 森川教授が語る、電気事業法改正後の全体像
業界事例

建設業のCO₂可視化に効く“電力データ”活用|電力データ管理協会 森川教授が語る、電気事業法改正後の全体像

材料起源CO2をどう減らすか―西松建設に聞く、カーボンネガティブコンクリートと回収骨材100%使用コンクリートの実装
業界事例

材料起源CO2をどう減らすか―西松建設に聞く、カーボンネガティブコンクリートと回収骨材100%使用コンクリートの実装

建設現場の脱炭素は“燃料転換”から始められる ―ユーグレナの次世代バイオ燃料「サステオ」と導入事例
業界事例

建設現場の脱炭素は“燃料転換”から始められる ―ユーグレナの次世代バイオ燃料「サステオ」と導入事例

記事の一覧はこちら

本ウェブサイトを利用される方は、必ず下記に規定する免責事項をご確認ください。
本サイトご利用の場合には、本免責事項に同意されたものとみなさせていただきます。当社は、当サイトに情報を掲載するにあたり、その内容につき細心の注意を払っておりますが、情報の内容が正確であるかどうか、最新のものであるかどうか、安全なものであるか等について保証をするものではなく、何らの責任を負うものではありません。
また、当サイト並びに当サイトからのリンク等で移動したサイトのご利用により、万一、ご利用者様に何らかの不都合や損害が発生したとしても、当社は何らの責任を負うものではありません。

目次

かんたん診断