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LCAとは?建築物LCAの制度動向と建設業界の対応ポイントを解説

LCAとは?建築物LCAの制度動向と建設業界の対応ポイントを解説

建築物のCO2排出量を削減したいものの、運用時の省エネ対策だけで十分か判断しづらい建設事業者は少なくありません。LCAは資材調達から解体までを含めて環境負荷を評価する手法で、CO2排出量の把握に非常に役立ちます。このため、建築業界でも制度対応の動きが進みつつあります。

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは

LCAとは、製品やサービスが原材料の調達から廃棄までの全過程で環境に与える影響を定量的に評価する手法です。建築物に当てはめたものが建築物LCAで、国際規格ISO14040およびISO14044に基づいて手法が整理されています。

 

LCAの基本的な考え方と評価範囲

LCAはライフサイクルアセスメントの略称で、しばしば「ゆりかごから墓場まで」という言葉で説明されます。原材料の採掘や製造から始まり、使用段階を経て、最終的な廃棄やリサイクルに至るまで、すべての段階を評価の対象とする考え方です。

 

この手法はISO14040およびISO14044という国際規格に基づいており、特定の企業や団体が独自に定めたものではありません。評価対象を製品の一生涯全体に広げることで、特定の段階だけを見ていては気づきにくい環境負荷を把握できる点が特徴です。建設業界においては、この考え方を建築物という単位に適用したものが建築物LCAと呼ばれています。

 

建築物LCAとライフサイクルカーボン(ホールライフカーボン)の関係

建築分野のLCAでは、オゾン層破壊や酸性化などさまざまな環境影響を評価対象にできますが、現在はCO2排出量に着目した評価が中心的なテーマとなっています。このCO2排出量を建築物のライフサイクル全体で捉えた指標が、ライフサイクルカーボン、またはホールライフカーボンと呼ばれるものです。

 

国土交通省の試算例では、使用段階の排出が大きな割合を占める一方、資材製造を含む建設段階の排出も無視できない規模とされています。割合は建物用途や構造、評価条件によって異なります。

 

建設会社にとっては、この建設段階の排出量をどう把握し削減するかが、建築物LCAへの対応における中心的な論点です。資材の選定や施工方法が評価結果に直結するため、設計・調達・施工の各部門が連携して取り組む姿勢が実務上のポイントになります。

 

建築業界でLCAが注目される背景

建築業界でLCAが注目される背景には、世界のCO2排出量に占める建築分野の割合の大きさと、従来の省エネ施策だけでは対応しきれない排出領域の存在があります。このため、運用時のエネルギー消費だけでなく、建設段階を含めた評価が求められるようになっています。

 

世界のCO2排出量に占める建築分野の割合

国土交通省の資料やUNEP(国連環境計画)の報告では、建築物・建設分野は世界のエネルギー起源およびプロセス由来CO2排出量の約37パーセントを占めるとされています。2050年の脱炭素社会の実現に向けては、この建築分野での排出削減が避けて通れない課題です。

 

環境省の資料においても、建築物分野を含めた温室効果ガス排出量の削減が、政府全体の削減目標の達成に欠かせない要素として位置づけられています。日本国内においても、住宅・建築物分野の脱炭素は政策上の重要テーマの1つです。

 

建設会社にとっては、発注者や取引先から環境配慮を求められる場面が今後増えていく可能性があることを踏まえておく必要があります。一方で、数値の受け止め方については恐れる必要はなく、まずは自社が関わる範囲を正しく理解することが出発点になります。

 

従来の省エネ施策(建築物省エネ法)とLCAの違い

これまでの省エネ施策は、建築物省エネ法に代表されるように、建物の使用段階におけるエネルギー消費量の削減を主な目的としてきました。これに対してLCAは、使用段階だけでなく、資材の製造や建設、解体までを含めたライフサイクル全体を評価対象とする点で異なります。

建設会社にとっては、施工段階で使用する資材の種類や量、施工方法そのものが評価結果に影響する範囲として新たに加わることになります。このため、設計段階から資材調達までを含めた検討が必要になる場面が増えていくでしょう。

 

建築物LCAをめぐる制度動向

建築物LCAをめぐっては、国土交通省が算定・評価を促進する制度の検討を進めています。

建設会社としては、制度が確定する前の段階から動向を把握しておくことが望まれます。

 

国土交通省が検討する建築物LCA算定制度

国土交通省は、建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会を設置し、検討を進めています。この検討会では、算定手法の確立やデータ基盤の整備、国際的な評価の枠組みへの対応などが論点として扱われています。

 

新たに建てる建築物を対象に、CO2などの環境負荷を算定・評価する仕組みを構築する方向性が示されました。制度はあくまで検討段階にあり、具体的な内容は今後の議論を踏まえて決定される見込みである点には注意が必要です。建設会社としては、確定した情報と検討中の情報を区別しながら情報を追っていく姿勢が求められます。

 

参照:国土交通省「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」

 

対象となる建築物の規模・スケジュールの検討状況

国土交通省の資料では、規模や用途などを絞って制度を開始し、その後対象を拡大していく方向性が示されています。制度の導入時期については2028年度が目安とされていますが、対象範囲や具体的な運用方法は公開時点で要確認です。

 

一定規模以上の非住宅建築物を先行対象とする案も検討資料で議論されていますが、対象範囲や運用方法は今後の検討を踏まえて決定される予定です。延床面積や用途によって対応の優先度が変わってくるため、自社が手がける建築物の種類を踏まえて情報を確認しておくことが実務上のポイントになります。

 

今後、対象範囲が段階的に拡大していく可能性も見据え、早めに情報収集を進めておくことが望まれます。

 

建築物LCAの算定方法と主な指標

建築物LCAを理解するうえでは、エンボディードカーボンとオペレーショナルカーボンという2つの指標、そしてEPDと呼ばれる環境製品宣言の仕組みを押さえておく必要があります。これらは算定の実務に直結する基本的な用語です。

 

エンボディードカーボンとオペレーショナルカーボン

ライフサイクルカーボンは、大きく2つの要素に分けて捉えることができます。1つは、建材の製造から建設、改修、解体までの過程で発生するエンボディードカーボンです。もう1つは、建物の運用段階で空調や照明などのエネルギー消費によって発生するオペレーショナルカーボンです。

 

建設会社が主に関与できる領域はエンボディードカーボンであり、資材の選定や施工方法の工夫によって排出量に影響を与えられる点が実務上の着眼点になります。一方のオペレーショナルカーボンは、設計や設備計画、運用後の管理方法とも関わりが深い領域です。

 

EPD(環境製品宣言)とデータ整備の課題

建築物LCAの算定精度は、使用する建材ごとのCO2排出原単位のデータをどれだけ整備できているかに左右されます。このデータを示す仕組みの1つが、EPDと呼ばれる環境製品宣言です。EPDは建材メーカーが自社製品の環境負荷を定量的に示すもので、ISO21930などの国際規格に対応した形式で公開されています。

 

建設会社が算定を行う際には、サプライヤーからEPDや排出データの提供を受ける必要がありますが、提供体制が整っていないケースもあり、データ収集に時間がかかることも少なくありません。このため、算定の前提となるデータ整備を早い段階から進めておくことが実務上の課題になっています。

 

建設業界におけるLCA導入のメリットと課題

LCAの導入には、資材選定の判断材料が得られるといったメリットがある一方で、算定手法やデータ基盤の整備という課題も残されています。双方を踏まえたうえで、自社に合った進め方を検討することが重要です。

 

LCA導入によって得られるメリット

LCAを活用することで、建物の長寿命化や資材選定によるCO2排出量の変化を可視化できるようになります。例えば、リサイクル材を使用した鋼材やセメントを採用することで、製造段階のエネルギー使用量を抑えられる場合があります。

 

発注者への説明資料や、環境配慮を示す材料としてLCAの算定結果を活用できることも、建設会社にとってのメリットの1つです。コストと環境負荷のバランスを踏まえた判断がしやすくなる点も、導入の意義といえます。

 

算定手法・データ基盤に関する課題

一方で、国内における建築物LCAの算定手法は、現在も整備が進められている段階です。日本建築学会からは、国内の建築分野におけるLCAツールについて、国際的な評価の枠組みへの適合や実用性が今後の課題として示されています。

 

算定に用いるデータベースが統一されていない現状では、算定結果の比較や検証が難しくなる場合があります。建設会社が算定を外部に委託するか、自社で対応する体制を整えるかによって、異なる準備が必要です。こうした課題を踏まえ、段階的にデータ整備と社内体制の構築を進めていく姿勢が現実的な対応につながります。

 

建築物LCAに取り組む企業事例

建築物LCAへの対応を検討する際は、企業の公式情報を確認することで、具体的な取り組み内容を把握しやすくなります。ここでは、公式プレスリリースで公表されている取り組みを紹介します。

 

大成建設株式会社の取り組み事例

“ 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建築物新築時の設計段階において、BIMモデルを活用することで建築物に使用する建材や設備などの製造・調達および施工時のCO2排出量を短時間に高精度で算出できる予測システム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発しました。

 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、建設・不動産分野では建築物新築時の調達・施工・解体等で排出されるCO2排出量「エンボディドカーボン※1」の削減が求められています。このうち、調達・施工時のCO2排出量「アップフロントカーボン※2」を把握するには、建築物に使用する建材ごとのCO2排出量を、建材それぞれの使用数量を基に算出する必要があります。しかし、建材の種類が多岐にわたることから、工事規模が大きい場合などにはCO2排出量の算出に数カ月かかるなど、多大な時間と労力を要していました。

 そこで当社は、BIMデータを活用し設計段階におけるアップフロントカーボンを容易に把握することができるシステム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発しました。本システムを適用してBIMから算出した建材の種類ほか壁・扉の枚数などの詳細な数量データと、アップフロントカーボンを正確に予測する既存の当社独自開発システム「T-CARBON Navios※3」とを連携させることで、建材ごとのCO2排出量を短時間でより高精度に予測することが可能となります。“

 

出典:大成建設株式会社「BIMを用いた建築物新築時CO2排出量予測システム『T-CARBON BIMシミュレーター』を開発」

 

住友林業株式会社の取り組み事例

“ 住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区)はフィンランドのOne Click LCA社と、建物のCO2排出量等を見える化するソフトウェア「One Click LCA」の日本単独代理店契約を締結しました。

 ソフトウェア「One Click LCA」は欧州を中心に130カ国で利用され、ISOや欧州規格を含めた世界の50種類以上の環境認証に対応したソフトウェアです。ライフサイクル全体での環境負荷を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント、以下LCA)を通じて、実際に建築現場で使用する個々の資材データをもとに建設にかかる原材料調達から加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出量(エンボディード・カーボン)等を算定できます。全世界のCO2排出量に占める建設部門の割合は約37%※と言われている中、当社はOne Click LCA社と連携して、日本の建設業界でのCO2排出量の見える化や削減に取り組みます。“

 

出典:住友林業株式会社「ソフトウェア『One Click LCA』日本単独代理店契約を締結」

 

建設会社がLCA対応を進める際の実務ポイント

建築物LCAへの対応を進めるうえでは、社内のデータ整備と、発注者や取引先からの要請への対応という2つの観点を押さえておくことが実務上のポイントになります。

 

社内体制とデータ収集の準備

建築物LCAの算定に着手するにあたっては、まず建材ごとのデータを整理しておくことが土台になります。具体的には、主要な建材のCO2排出原単位の収集や、サプライヤーからのEPDの入手、過去プロジェクトにおける材料使用実績の整理などが挙げられます。

 

設計部門、調達部門、施工部門がそれぞれ持つ情報を横断的に集約できる体制を整えておくことで、算定作業をスムーズに進めやすくなるでしょう。データ整備は一度に完了するものではなく、プロジェクトを重ねながら段階的に蓄積していく取り組みになる点を踏まえておく必要があります。

 

社内での担当部署や進め方を早い段階で決めておくことが、実務上の負担軽減につながります。

 

発注者・取引先からの要請への対応

近年は、発注者であるデベロッパーや金融機関から、建設会社に対してCO2排出量の開示や削減方針の提示が求められる場面が生じつつあります。元請企業だけでなく、協力会社を含めたサプライチェーン全体での情報整理が必要になるケースも想定されるでしょう。

 

こうした要請に対応するためには、自社が関わる工事のCO2排出量を把握し、説明できる状態にしておくことが実務上の備えになります。制度化を待ってから対応を始めるのではなく、可能な範囲から情報整理に着手しておくことで、要請があった際にも落ち着いて対応しやすくなります。

 

建設プロジェクトごとの特性を踏まえながら、自社にとって無理のない進め方を検討することが大切です。

 

まとめ

LCAは、建築物のライフサイクル全体でCO2などの環境負荷を評価する手法であり、資材調達から解体までを含めて検討する必要がある点が、従来の省エネ施策との大きな違いです。

 

国土交通省では建築物LCAの算定・評価を促進する制度の検討が進められており、建設会社にとっては制度の確定を待つだけでなく、データ整備や社内体制の準備を早めに進めておくことが実務上の備えになります。

 

自社が関わる建築物の規模や用途を踏まえながら、無理のない範囲でLCAへの理解と対応を進めていくことが、今後の実務判断に役立ちます。制度対応や情報整理を進める際は、早い段階で現状を把握しておくことが大切です。

 

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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