カーボンニュートラル宣言やZEB施工をアピールする建設会社が増える一方で、訴求が実態を伴わない場合にグリーンウォッシュとして批判されるリスクが急速に高まっています。Scope3排出量の算定根拠やEPD取得状況、再生材使用率の表示方法など、建設業ならではの論点は多岐にわたります。意図せず陥るケースが一般的だからこそ、定義や事例を正しく押さえ、社内チェック体制を整えることが急務です。
本記事では、グリーンウォッシュの意味や7つの罪、企業に与えるリスク、客観的なエビデンス担保や第三者認証活用といった回避策について解説します。また、消費者庁や環境省ガイドラインの最新動向も解説していますので、脱炭素経営の信頼性を高めたい方は参照してみてください。
グリーンウォッシュとは?言葉の意味と基礎知識

近年、ESG投資や脱炭素経営への関心が高まるなか、企業の環境配慮アピールに潜む「見せかけ」が問題視されるようになりました。グリーンウォッシュとは何を指す言葉なのか、なぜ今注目されているのか、混同されやすいSDGsウォッシュとの違いも含めて整理することが重要です。
グリーンウォッシュの定義と語源、注目される背景、SDGsウォッシュとの違いについて解説します。
定義と語源
グリーンウォッシュとは、環境に配慮した取り組みを行っているように装いながら、実態が伴っていない企業行動や広告表現を指す言葉です。なぜグリーンウォッシュの概念が生まれたかというと、消費者や投資家が環境に優しいイメージだけで製品やサービスを選ぶ風潮が広がる一方、根拠の乏しい主張が横行してきたためです。
語源は「グリーン(環境)」と、欠点を上辺だけ塗り替えて隠す意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語で、1980年代にアメリカの環境活動家が提唱したのが始まりとされています。
建設業界でも、再生材を一部使った建材をサステナブル建材と大きく謳いながらライフサイクル全体のCO2排出量を示さないケースなどが、同様の構図にあたります。実態とラベルが一致しているかを問う視点こそが、グリーンウォッシュのポイントです。
注目される背景
グリーンウォッシュの概念が世界的に問われ始めた背景には、企業の環境主張を厳しく見極めようとする社会全体の流れがあります。要因の一つは、財務情報だけでなく環境・社会・ガバナンスを評価軸に据えるESG投資の急拡大です。
投資家が脱炭素や持続可能性を企業価値の判断材料とするようになり、本当に環境に配慮している企業と、表面的なアピールだけの企業を区別する基準の必要性が一気に高まりました。加えて、気候危機の深刻化を背景に、世界各国でCO2排出量削減への対策強化が求められていることも見逃せません。
流れは建設業界も直撃しており、Scope3にあたるセメントや鉄骨、輸送、建設廃棄物処理までを含めた排出量開示が、ゼネコンや建材メーカーの評価指標として定着しつつあります。見せかけの取り組みが見抜かれやすい時代になったからこそ、注目度が増しているのが現状です。
SDGsウォッシュとの違い
グリーンウォッシュとは環境分野に焦点を絞った見せかけ行為を指す一方で、SDGsウォッシュはより広い概念として区別されます。SDGsウォッシュは、貧困解消や教育、ジェンダー平等、働きがいなど17の持続可能な開発目標に取り組んでいるかのように装いながら、実態が伴わない状態を指す言葉です。
両者を分ける軸は対象範囲です。
概念対象範囲グリーンウォッシュ気候変動・資源循環・生物多様性といった環境側面に特化SDGsウォッシュ社会・経済・ガバナンスを含む広い領域をカバー
ただし、消費者や投資家を誤認させる広報戦術である点では両者は共通しており、信頼を損なうリスクの構造は同じです。建設業界に置き換えれば、CO2削減を強調しながら実態が伴わない宣伝はグリーンウォッシュ、女性活躍推進や下請構造の改善まで含めて見せかけているならSDGsウォッシュに該当します。
グリーンウォッシュの具体例と「7つの罪」
グリーンウォッシュは抽象的な概念にとどまらず、実際に世界中の企業が指摘を受けてきた具体的な問題です。マーケティング業界では陥りがちなパターンが「7つの罪」として整理されており、悪意なく曖昧な表現を使ってしまうケースも少なくありません。
国内外の指摘事例やグリーンウォッシュ「7つの罪」、なぜ企業は意図せず「ウォッシュ」に陥るのか、最新の法規制と動向について解説します。
国内外の指摘事例
グリーンウォッシュとは何かを理解するには、実際に世界の大手企業がどう指摘を受けてきたかを知ることが重要です。コカ・コーラの「グリーン」をイメージさせるラベル表記や、H&Mが展開した「コンシャスコレクション」は、根拠が不十分との批判から議論の対象となりました。
飲料業界ではスターバックスがストロー不要の新型蓋を導入したものの、結果的にプラスチック使用量が増えたと指摘され、マクドナルドの紙ストローもリサイクル困難な仕様だったことが発覚しています。
日本企業も例外ではなく、トヨタやユニクロなど代表的なブランドが海外の広告基準機構から環境主張の妥当性を問われる場面が増えてきました。建設業界に目を向けても、CLTやFSC認証木材の使用を前面に押し出した広告で、調達ルートや加工工程までトレースできていないケースは同様の批判リスクを抱えます。
グリーンウォッシュ「7つの罪」
グリーンウォッシュは、企業が無意識のうちに陥りやすい7つの典型パターンに分類できると言われています。マーケティング会社TerraChoice社が提唱した枠組みで、代表的なものを押さえておけば自社の発信を客観視できます。具体的には以下の7つです。
| 7つの罪 | 内容 |
| 隠れたトレードオフの罪 | ある環境課題を解決した一方で、別の環境破壊を引き起こしている状態 |
| 証拠を示さない罪 | 定量データや第三者認証を伴わずに環境配慮を主張するケース |
| 曖昧さの罪 | 「エコ」「ナチュラル」「地球にやさしい」など定義の不明確な言葉を多用するケース |
| 無関係の罪 | 事実ではあるが、消費者の選択にとって意味のない情報を強調するケース |
| より小さな悪の罪 | カテゴリ自体が環境負荷の大きい製品で「相対的にマシ」を主張するケース |
| 偽りの罪 | 単純に事実と異なる虚偽の環境主張を行うケース |
| 誤ったラベルの罪 | 第三者認証を装った自作ラベルや、誤認を招く認証マークを使用するケース |
いずれも消費者や投資家の誤認を招く構造を持っている点が共通しています。罪を社内のチェックリストとして活用することが、無自覚なグリーンウォッシュを未然に防ぐためには欠かせません。
出典:TerraChoice/The Sins of Greenwashing Home and Family Edition
なぜ企業は意図せず「ウォッシュ」に陥るのか?
グリーンウォッシュとは、悪意を持って消費者を欺こうとする行為だけを指すわけではなく、企業が善意で取り組みながら陥ってしまうケースが大半を占めます。多くの要因は、伝え方の設計ミスです。
環境負荷削減の効果を実際以上に印象付ける表現を、担当者が無意識のうちに使ってしまう構造があります。「業界トップクラス」「環境にやさしい」「次世代型」など曖昧な形容詞が典型例で、定量データを示さずに優位性を訴求する広報資料は意外なほど多く存在します。
さらに見落とされがちなのが、社内の情報連携不足です。広報・マーケティング部門と、現場で実際の排出量削減を担う技術部門との間で情報共有が滞り、宣伝内容と実態に乖離が生じるパターンが頻発します。
最新の法規制と動向
グリーンウォッシュとは、もはや企業のマーケティングモラルの問題にとどまらず、各国の法制度で監視・規制される対象へと変わってきています。世界の流れを牽引しているのが欧州連合のグリーンクレーム指令で、環境主張に科学的根拠と第三者検証を義務付ける方向で議論が進んでいます。
日本国内でも動きは加速しており、消費者庁が景品表示法に基づく優良誤認表示として、根拠のない生分解性表示などを措置命令の対象として処分する事例が出てきました。さらに環境省は約13年ぶりに「環境表示ガイドライン」を改定し、ネットゼロ対応やグリーンウォッシュなどの国際動向を反映した内容に刷新しています。
建設業界でも、ZEBやLEED認証を取得していない物件で「カーボンニュートラル建築」と訴求する広告は規制リスクを抱えるため、自治体や省庁の最新動向を常時確認する姿勢が欠かせません。
出典:消費者庁/景品表示法
グリーンウォッシュが企業に与えるリスクと問題点

グリーンウォッシュへの対策を怠ると、企業は深刻なダメージを被ります。消費者から、嘘をつく企業とレッテルを貼られればブランド価値は一気に毀損し、ESG投資家や取引先からの評価低下によって資金調達や契約継続に影響を与えかねません。
さらに視野を広げれば、誤った情報が市場に流通することは社会全体の環境政策の歩みを止めることにもつながります。ブランド価値の毀損、投資家や取引先からの評価低下、環境政策への逆行について解説します。
ブランド価値の毀損
グリーンウォッシュと指摘されること自体が、企業ブランドに長期的なダメージを与える深刻なリスクです。最も直接的な打撃は、消費者からの信頼損失による不買運動の発生で、SNS時代には一つの告発投稿が数日で全国規模に拡散します。
さらに厄介なのは、一度嘘をつく企業とレッテルを貼られると、どれだけ真摯に環境改善に取り組んでも消費者の認識を払拭することが極めて困難である点です。失った信頼の回復には、構築にかけた時間の何倍ものコストと年月が必要です。
また見落とされがちですが、社内へのダメージも軽視できません。自社の発信が誇張だったと知った従業員のモチベーションは低下し、サステナビリティを重視する若年層の採用活動にも悪影響を与えます。
ブランド価値の毀損は、売上だけでなく組織の人材基盤までを揺るがす経営課題です。
投資家や取引先からの評価低下
グリーンウォッシュは、消費者市場だけでなく金融市場・取引関係においても深刻な評価低下を引き起こすリスク要因です。最も直接的に効くのが投資家からの評価ダウンで、ESG格付の引き下げや株価下落、新規資金調達の難航などの形で企業価値に跳ね返ります。
本気で環境配慮企業に資金を投じたかった投資家にとって、表面的な訴求に騙された結果、意図と異なる投資が行われることは金融市場の透明性を損なう問題にもなりかねません。
特に、建設業界は影響を強く受ける業種です。ゼネコンや建材メーカーは、施主や元請けからScope3全カテゴリの排出量データ提出を求められる場面が増えており、過去に環境主張で批判を受けた企業は調達候補から外されるリスクを抱えます。投資家と取引先、二つのステークホルダーから同時に評価を落とすインパクトは、決して短期では取り戻せません。
環境政策への逆行
グリーンウォッシュとは、企業単体のリスクにとどまらず、社会全体の環境政策を後退させる構造的な問題です。最大の弊害は、誤った情報に基づいて消費者が購買行動を決定してしまう点にあります。
環境配慮型と訴求された製品を選んだつもりが実態を伴わない場合、本来優先されるべき真にサステナブルな製品や企業に資金が流れず、必要な環境対策が遅延します。さらに深刻なのは、事例が繰り返されることで「どうせどの企業も同じ」と消費者心理が広がり、環境意識そのものが低下する悪循環に陥ることです。
結果として、2030年・2050年に向けたSDGsゴールやカーボンニュートラル目標の達成が遠のき、持続可能な社会への歩みを止めてしまいます。建設業界でも同様の構図が見られ、低炭素コンクリートや再生骨材といった真に脱炭素に寄与する技術が普及するためには、市場が「本物の環境配慮」と「見せかけの訴求」を正しく見分けられる土壌が不可欠です。
グリーンウォッシュを回避するための対策
グリーンウォッシュを回避するためには、企業側が能動的に対策を講じる必要があります。広報資料の言い回しを変えるだけでは不十分で、定量データの整備から外部認証の取得、ガイドライン準拠、都合の悪い情報も含めた透明性ある開示まで、組織全体で取り組むべき施策は多岐にわたります。
客観的なエビデンスの担保
グリーンウォッシュとは、客観的なエビデンスを伴わない主張から生まれる問題です。回避の第一歩は、データを軸に据えた発信体制を整えることに尽きます。具体的には、CO2排出量や削減効果を定量的に把握し、社内で常に最新の数値を参照できる状態を保つ必要があります。
例えば、次のような言い換えが必要です。
曖昧な表現検証可能なメッセージ(例)環境にやさしい従来比CO2排出量を30%削減エコ仕様再生材使用率65%
ライフサイクル全体を見渡すトレーサビリティの担保も重要で、原材料調達から製造、使用、廃棄までの各段階で環境負荷を追跡できる仕組みが信頼性の土台です。
第三者認証の活用
グリーンウォッシュとは、自社発信のみで完結する環境における主張に潜むリスクを指す概念であり、問題回避には外部の客観的な視点を取り入れることが極めて有効です。実効性の高い手段が第三者認証の取得で、ISO14024に基づくエコマーク(タイプⅠ)、ISO14025に基づくSuMPO EPD(タイプⅢ)といった環境ラベルが代表例として挙げられます。消費者や取引先にとっても、信頼性のある認証ラベルの有無は本物のサステナブル製品を見分ける重要な判断材料です。
建設業界では、SuMPO EPDを取得した低炭素セメントや再生骨材、FSC認証木材、CASBEE評価、CFP(カーボンフットプリント)宣言などが実例にあたります。該当の建材を採用することで、自社が施工する物件のScope3排出量算定にも科学的根拠が伴い、発注者への説明責任を果たせる構造が整います。
環境表示ガイドラインに基づく正しい情報発信
グリーンウォッシュは、ルールを知らずに発信することで陥ってしまうケースが少なくありません。回避の実務的な指針となるのが、環境省が公表している「環境表示ガイドライン」です。
同ガイドラインはISO14021に準拠した自己宣言型の環境主張について、検証可能なデータの保持や情報アクセスの容易性、比較主張における適切な評価方法などを基本項目として定めています。まず徹底すべきは、具体的な根拠を持たない表現や、解釈の幅が広すぎる曖昧な言葉を排除する姿勢です。
抽象的な訴求は避け、定量データと出典に基づいた記載へと書き換える必要があります。さらに比較表現を用いる場合は、何を基準にした比較なのかを明示しなければ、消費者の誤認を招くリスクが高まります。
建設業界の例で言えば、「業界最高水準の省エネ性能」と訴求するなら、参照した業界平均値や算定方法、対象期間まで併記しなければなりません。
誠実な情報開示
グリーンウォッシュは見せかけの環境訴求に陥る現象ですが、対極にあるのが誠実な情報開示の姿勢です。重要なことは、規制や批判を過度に恐れて発信を萎縮させないことです。沈黙は信頼を生まず、むしろ何も取り組んでいない企業と受け取られるリスクがあります。
成果と課題の両方を含めた透明性の高いコミュニケーションを目指す姿勢こそが、ステークホルダーから本物の評価を引き出します。達成済みのCO2排出量削減実績だけでなく、未達成の目標や残された課題、改善に向けたロードマップまでセットで開示する姿勢が必要です。
重要なことは、開示内容と実際の企業活動が一致しているかを継続的に検証するプロセスです。完璧を装うより、課題を共有する姿勢こそが長期的なブランド価値を築く土台となり得ます。
まとめ

本記事では、グリーンウォッシュの意味や具体例、7つの罪、企業に与えるリスク、回避するための対策について解説しました。建設業の実務に落とし込むと、すぐに着手できる打ち手は明確です。
つまり、客観的なエビデンス担保として、ZEB認定建築や低炭素コンクリートの導入効果を竣工後の実測データで定量化することから始めることが考えられます。第三者認証の活用では、SuMPO EPDやFSC認証材を採用し、Scope3算定の根拠を整える動きが有効です。脱炭素経営を本物にしていきたい方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。









