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【2027年義務化】サステナビリティ情報開示の新基準(SSBJ)とは?建設業が直面する実務的課題

【2027年義務化】サステナビリティ情報開示の新基準(SSBJ)とは?建設業が直面する実務的課題

サステナビリティ情報開示の2027年からの義務化が検討されているなか、具体的に何をいつまでに準備すべきか把握できていない企業も少なくありません。本記事では、SSBJ基準の概要や段階的適用のロードマップ、Scope3算定やガバナンス再構築など実務上の課題を解説します。また、建設業界における先進的な開示事例も紹介していますので、自社の対応方針を検討中の方はぜひ参照してみてください。

サステナビリティ情報開示「2027年義務化」の全体像

サステナビリティ情報開示 2027年義務化

サステナビリティ情報開示の2027年義務化に向け、企業の対応が急務となっています。日本ではSSBJ基準の確定により法定開示のルールが明確化されつつあり、有価証券報告書への具体的な記載方法や免責・保証をめぐる議論も活発化しているのが現状です。

特に建設業界では「サステナビリティ2026問題」として早期対応が求められる状況です。サステナビリティ情報開示における2027年義務化の全体像について解説します。

日本独自の法定開示ルール「SSBJ基準」の確定

サステナビリティ情報開示の2027年義務化を語るうえで、最も重要な転換点となるのがSSBJ基準の確定です。SSBJ基準は2025年3月に公表され、グローバルスタンダードであるISSB基準との整合性を担保しながら、日本固有の法定開示要件を規定しています。

従来サステナビリティ情報は、各企業が独自に発行するCSRレポートなどの任意開示が中心でした。一方で、SSBJ基準の導入により、金融商品取引法のもとで有価証券報告書に記載する法定開示へと位置づけが大きく変わります。つまり、財務情報と同等の正確性や信頼性が求められることになり、企業には開示体制の抜本的な見直しが不可欠となることが見込まれます。

有価証券報告書への記載と「免責・保証」の議論

サステナビリティ情報開示の2027年義務化を実現するには、法制度の整備が必要です。現在、金融庁は2026年の通常国会に金融商品取引法の改正案を提出する方針で、有価証券報告書への記載を法的に義務づける枠組みの構築を進めています。

さらに注目すべきは、開示内容の信頼性を担保する保証制度の導入です。第三者による確認を2028年3月期から段階的に義務化する見通しであり、サステナビリティ情報開示が財務報告と同水準の厳格さで運用されます。

一方で、企業側にとって懸念となるのが訴訟リスクです。サステナビリティ情報には将来予測を含む記載が求められるため、結果との乖離が生じた際の法的責任をどのように扱うかが課題です。記載内容に誤りがあった場合の免責ルールについても議論が始まっており、企業が萎縮せず適切な情報開示を行える環境づくりが模索されています。

出典:金融庁/「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)等に対するパブリックコメントの実施について

建設業における「サステナビリティ2026問題」

サステナビリティ情報開示の2027年義務化は、建設業界にとって特に深刻な課題を突きつけています。開示対象となるデータは前年度の実績であるため、実質的には2026年度の段階で収集・管理体制を完成させなければなりません。

現状の差し迫ったタイムリミットこそがサステナビリティ2026問題と呼ばれる所以です。建設業は他業種と比較しても、データ整備の難易度が格段に高い特徴があります。複数の現場で同時に工事が進行し、それぞれの現場でCO2排出量や使用資材の種類・数量が異なるため、膨大なデータを正確に集計する仕組みが不可欠です。

現状では、サステナビリティ情報開示の2027年義務化に対する企業側の認知や準備が十分とはいえず、業界全体として危機感が高まっています。

サステナビリティ情報開示はいつから対象か?段階的適用のロードマップ

サステナビリティ情報開示の2027年義務化は、すべての企業が一斉に対応するわけではなく、段階的に適用範囲が拡大される仕組みです。まず時価総額3兆円以上の企業が先行して対象となり、その後全プライム上場企業へと順次拡大されます。

さらに連結グループ全体や海外拠点も波及範囲に含まれる点が重要です。サステナビリティ情報開示の段階的適用ロードマップについて解説します。

出典:金融庁/金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ

【2027年3月期〜】時価総額3兆円以上の先行グループ

サステナビリティ情報開示の2027年義務化において、最初に対応を迫られるのが時価総額3兆円以上のプライム上場企業です。時価総額3兆円以上のプライム上場企業は2027年3月期から先行して適用対象となる見通しであり、すでに準備期間は限られています。

とりわけ大きな課題となるのが、GHGプロトコルに基づくScope3の開示です。自社の直接排出量だけでなく、サプライチェーン全体の排出量を把握・算定する必要があり、取引先との連携やデータ収集の仕組みづくりが急務です。

一方で、サステナビリティ情報開示の2027年義務化への早期対応は、企業にとってリスクだけでなく好機ともなり得ます。先行して質の高い開示を実現すれば、国内外の投資家に対して企業の持続的な成長力を示す有力な判断材料を提供でき、資本市場での評価向上につながる可能性があるためです。

【2028年3月期以降】全東証プライム上場企業への順次拡大

サステナビリティ情報開示の2027年義務化は、先行グループに続き、対象範囲が段階的に広がっていきます。

2028年3月期以降、対象はプライム市場全体へと広がっていく見込みです。建設業界においては、大手ゼネコンの多くが段階的適用の中核を担う規模に該当します。つまり、サステナビリティ情報開示の2027年義務化における先行グループではなくとも、翌年度には本格対応が求められるケースが大半です。

準備期間に余裕があるように見えても、Scope3を含むサプライチェーン全体のデータ整備には相応の時間を要するため、早い段階から体制構築に着手することが重要です。

連結グループ全体・海外拠点への波及範囲

サステナビリティ情報開示の2027年義務化で見落とされがちなのが、開示対象の範囲です。原則として財務諸表と同じ連結ベースでの報告が求められるため、親会社単体ではなくグループ全体のデータを統合して開示する必要があります。非上場の子会社や海外拠点であっても、親会社が義務化の対象であれば同水準の精度でデータを報告しなければなりません。

建設業界では、プロジェクトごとに組成されるJV(共同企業体)の排出量データをどの範囲まで計上するかの線引きや、国内外のグループ各社が展開する多種多様な事業からデータを漏れなく収集・集計する仕組みの整備が求められます。

サステナビリティ情報開示の2027年義務化に向けては、グループ全体で統一された報告ルールやデータ管理基盤を早期に確立することが不可欠です。

サステナビリティ情報開示における3つの壁

サステナビリティ情報開示 2027年義務化

サステナビリティ情報開示の2027年義務化に対応するうえで、多くの企業が直面する課題は次の3つに集約されます。

  1. 膨大なScope3(カテゴリ1・11)の算定と信頼性
  2. 「4つの柱」に基づくガバナンスと戦略の再構築
  3. ITの活用

サステナビリティ情報開示を進める際に立ちはだかるこれら3つの壁について解説します。

膨大なScope3(カテゴリ1・11)の算定と信頼性

サステナビリティ情報開示の2027年義務化において、最大の壁ともいえるのがScope3の算定です。なかでも「購入した製品・サービス」にあたるカテゴリ1や「販売した製品の使用」にあたるカテゴリ11は、自社の事業活動を超えたサプライチェーン全体の排出量を網羅的に把握しなければならず、作業量と複雑さは膨大です。

建設業界では、セメントや鉄鋼をはじめとする多種多様な資材調達がカテゴリ1に直結し、竣工後の建築物の運用段階がカテゴリ11に該当するため、業界特有の難しさが伴います。一方で、算定精度の向上は単なるコンプライアンス対応にとどまりません。

投資家はバリューチェーン全体の排出量状況を将来リスクの判断材料として注視しており、サプライヤーからの一次データ収集や物流工程のCO2算定の正確性を高めることが、サステナビリティ情報開示の2027年義務化時代における競争優位の確立につながります。

「4つの柱」に基づくガバナンスと戦略の再構築

サステナビリティ情報開示の2027年義務化で求められるのは、排出量の数値報告だけではありません。SSBJ基準は次の4つの柱で構成されており、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題に対し、組織としてどのような体制で向き合っているかが問われます。

  • ガバナンス
  • 戦略
  • リスク管理
  • 指標および目標

特に重要なのが、気候関連のリスクと機会を経営戦略にどう組み込んでいるかを具体的に記述する点です。将来の事業環境の変化を見据えた戦略の妥当性を、投資家が判断できる水準で開示しなければなりません。

適切な対応を実現するには、環境部門だけでなく財務部門との緊密な連携が不可欠です。サステナビリティ情報開示の2027年義務化のもとでは、財務データと同等の正確性が求められるため、サステナビリティ情報の集計プロセスにも内部統制の仕組みを整備し、組織横断的なガバナンス体制を構築する必要があります。

ITの活用

サステナビリティ情報開示の2027年義務化に対応するうえで、ITツールの活用はもはや選択肢ではなく必須条件といえます。従来のように手作業や表計算ソフトで膨大なデータを集計する方法では、正確性とスピードの両面で限界があるためです。

求められるのは、財務データと非財務データを一元的に管理・分析できる基盤の構築です。ITツールを活用することで、企業価値を左右するブランドイメージや事業活動、保有資産といった多角的な要素を可視化し、経営判断に必要な情報を抽出できます。

建設業界では、現場ごとに分散するデータの統合が大きな課題であり、デジタル基盤の整備が対応の成否を分けます。さらに重要なのは、サステナビリティ情報開示の2027年義務化への対応を単なる制度対応に終わらせず、デジタル化と連動させてSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)として経営変革につなげていく視点です。

サステナビリティ情報開示の制度対応による信頼資本の構築

サステナビリティ情報開示の2027年義務化を、単なる法的義務として捉えるのではなく、企業価値向上のための戦略的ツールとして活用する視点が重要です。義務化に先んじて質の高い開示を実現する企業は、ステークホルダーからの信頼資本を着実に蓄積でき、国内外の資本市場でのプレゼンス向上や安定的な資金調達といった実利につながります。

投資家はSSBJ基準に基づく情報を海外企業との比較材料として活用しており、自発的な開示姿勢は経営の透明性の証として高く評価されます。建設業界においては、気候変動リスクや脱炭素の取り組みを定量的に示すことが特に有効です。

バリューチェーンが複雑な業種だからこそ、リスクの可視化と管理体制を論理的に開示することで中長期的なレジリエンスを証明でき、競合との決定的な差別化要因を確立できます。

サステナビリティ情報開示に関する建設業界事例

サステナビリティ情報開示の2027年義務化に向けて、建設業界ではすでに先進的な取り組みを進める企業が現れています。サステナビリティ情報開示に関する建設業界の事例について紹介します。

清水建設株式会社

当社は、2021 年の環境経営推進室の設立と同時にグループ環境ビジョンとして「SHIMZBeyond Zero 2050」を策定し、脱炭素、資源循環、自然共生による持続可能な社会の実現に向けて、グループ全体で「攻め」と「守り」の取組みを進めています。本開示では、建設事業、不動産開発事業、太陽光発電事業を開示対象とし、各事業のバリューチェーンにおける自然への依存と影響を分析し、重要課題を特定しました。また、シナリオ分析により自然関連のリスクと機会を特定し、ネイチャーポジティブに向けた戦略を立て、独自の取組みを開始しています。さらに、2023 年度内に稼働中の建設現場から優先地域を特定したほか、指標と目標に関する整理及び開示を行っています。

当社は、TNFD 提言が当社の環境経営に対する戦略をより明確に導く羅針盤であると考えています。本開示で立案した戦略を基に、今後もネイチャーポジティブに向けた取組みを実施し、自然資本に関する適切な情報開示を進め、多様なステークホルダーとの信頼関係の醸成と持続的な企業価値向上に努めてまいります。

出典:「TNFD 提言に基づく自然関連財務情報開示」を公開|2024.6.24|清水建設株式会社

五洋建設株式会社

五洋建設株式会社(社長 清水琢三)は、金融安定理事会 (FSB) により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース (以下 TCFD※1)」提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアム※2に加盟したことをお知らせいたします。

五洋建設グループは、「良質な社会インフラの建設こそが最大の社会貢献」というCSR基本方針のもと、ESG(環境、社会、企業統治)重視のCSR経営を実践しています。

建設業においては、建設工事に起因するCO2排出量は他産業に比べて比較的少ないものの、当社が強みを持つ海洋土木工事では作業船を使用するため他の建設工事に比べてCO2の排出量が多いという特徴があります。また建設工事では、サプライチェーン全体をみると、鋼材やセメント等製造段階で多くのCO2排出を伴う材料を使用すること、また完成後も建物やインフラ構造物の耐用年数が長く、運用段階でCO2排出量が多いという特性があります。

当社は、地球規模の気候変動問題への対応を最も重要な経営課題の一つと捉え、建設事業活動におけるCO2排出削減の取組みを推進するとともに、洋上風力発電の建設や建物のZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進等、本業を通じて2050年カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。

また当社はTCFD提言に基づく情報開示を積極的に進めてまいります。その概要は以下の通りです。今後も、世界の社会経済情勢や技術の進展状況を踏まえ、気候変動問題が事業に与えるリスクや機会について継続的に分析するとともに、事業活動におけるCO2削減対策の効果を検証し、適宜見直しを実施してまいります。

※1         TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、G20の要請を受け、金融安定理事会により設立されたタスクフォースであり、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標についての情報開示を推奨しています。

※2         TCFD提言へ賛同する企業や金融機関などが設立したコンソーシアムであり、効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断につなげる取組について議論しています。

出典:TCFD提言への賛同及び情報開示について|2022.5.13|五洋建設株式会社

前田建設工業株式会社

前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:前田操治、以下「前田建設」)は、BIM(Building Information Modeling)とLCA(Life Cycle Assessment)ツールの連携を自動化することで、建築物のライフサイクルを通じた環境負荷を短時間に評価ができるLCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発しました。

2050年カーボンニュートラルの実現と2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)に向け、建築分野では2050年ストック平均ZEB化と2030年度に新築ZEB化が目標とされています。建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)の改正・強化によって、建物運用時のCO2(オペレーショナルカーボン、以下「OC」)削減の取組は進みつつあります。一方で、建物の新築・解体時などに発生するCO2(エンボディドカーボン、以下「EC」)は、OCとECを合わせたホールライフカーボンに占める割合が増加しているにもかかわらず取組が遅れているため、EC削減の取組が必要不可欠です。

多くの企業がカーボンニュートラルに関わる様々な国際的枠組み(TCFD、SBTなど)に参画する中、ECの削減はESG投資の観点からの評価も高く、今後ますます必要性が高まるものと考えられます。

出典:LCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発~BIMデータ活用により迅速な建築物LCA評価および比較検討を可能に~|2024.7.5|前田建設工業株式会社

まとめ

サステナビリティ情報開示 2027年義務化

本記事では、サステナビリティ情報開示の2027年義務化に向けた全体像として、SSBJ基準の概要や段階的適用のロードマップ、Scope3算定やガバナンス再構築など実務上の課題、さらに信頼資本の構築につながる戦略的な開示の考え方について解説しました。

サステナビリティ情報開示は、単なる制度対応にとどまらず、投資家からの評価向上や資金調達の安定化など、企業価値を高める重要な経営戦略となります。特に建設業界では、現場ごとに分散する排出量データの統合やサプライチェーン全体の把握など業界固有の課題が多く、早期の体制整備が競合との差別化を左右します。2027年義務化に向けた具体的な対応方針を検討中の方は、ぜひ参照してみてください。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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