業界事例

コンクリート製造過程のCO₂をマイナスに 大成建設が手がけるカーボンリサイクル・コンクリート

コンクリート製造過程のCO₂をマイナスに 大成建設が手がけるカーボンリサイクル・コンクリート

土木・建築現場で欠かせない材料のひとつがコンクリートですが、生産段階で大量のCO₂が発生するという側面もあります。この、コンクリート生産から生じるCO₂は、セメントを作る過程で生じるものが大部分を占めています。そのため、セメントの量を減らして別の材料で置き換えることができれば、コンクリート由来のCO₂排出量を削減できるのではないか。この発想から生まれたのが、大成建設の環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」です。

大成建設の研究施設「技術センター」情報技術室長 片倉氏と、同情報技術室の福田氏にご紹介いただきました。

CO₂排出量マイナスを実現

T-eConcrete®」には、以下の4つのタイプがあります。

出典:大成建設WEBサイト(https://chizu.taisei.co.jp/tech/commentary/02.html

とりわけ注目を集めているのが、2021年に開発した、二酸化炭素の排出量がマイナスになるカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」です。
T-eConcrete®/Carbon-Recycle」は、セメントを一切使用せず、工場の排気ガスなどから回収したCO₂とカルシウムを利用して製造した炭酸カルシウム(カーボンリサイクル材料)を用いて、コンクリート内部にCO₂を固定し、コンクリート製造過程のCO₂排出量をマイナスにすることを可能にしました。炭酸カルシウムを介することで、コンクリート1m3当たり98~171kgのCO₂を固定することが可能です。

回収したCO₂を直接コンクリートに吸収・固定させる工法などがありますが、強アルカリ性のコンクリートが酸性のCO₂ガスで中和され、コンクリートが鉄筋の防錆能力を失うという課題がありました。「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」は炭酸カルシウムの形で固定された二酸化炭素を、製鋼副産物である高炉スラグと反応剤を混合して固化します。弱アルカリ性の炭酸カルシウムと強アルカリ性の高炉スラグを組み合わせるため,コンクリートは強アルカリ性を維持し、鉄筋の腐食を防ぐことを可能にしました。

出典:大成建設WEBサイト(https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/240412_9970.html

従来通りの製造方法、施工性を維持

また、製造には特殊な設備は必要なく、生コン工場の通常設備で製造が可能です。施工性の指標となる流動性も普通コンクリートと同等で、従来通りのコンクリートの製造施工が実現できます。

▼T-eConcrete®/Carbon-Recycle

T-eConcrete®/Carbon-Recycle」は強度やその他の物性についても従来と同様に取り扱うことができます。圧縮強度などの力学的な特性のほか、塩害や凍害などに対する耐久性や耐火性も従来と同等です。耐久性のうち、大気からCO₂を吸収してコンクリートが強アルカリ性を失う「中性化」に対しても従来と同等の抵抗性を持ちます。鉄筋の防錆に重要な性能です。一方、消波ブロックなどの無筋コンクリートでは鉄筋の防錆は不要であり、中性化を抑制する必要はありません。逆に中性化を促してCO₂固定量を増やすことができます。「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」は中性化の速度をコントロールすることができ、適用先に応じた最適なコンクリートとして提供できます。

これらの性能を活かし、鉄筋コンクリート構造を採用した構造物への適用も始まっています。

人道橋の構造部材に適用

T-eConcrete®/Carbon-Recycle」は2023年、横浜市戸塚区の大成建設技術センター人道橋の基礎部建設工事で構造部材として国内で初めて適用されました。

建築物を支える基礎や主要構造部などには指定建築材料を用いることが建築基準法で規定されています。セメントを使用しない「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」は、現行法では指定建築材料に合致せず、構造部材に適用する手順を確立する必要がありました。
大成建設では、「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を用いて製造するプレキャスト部材について、材料特性や構造性能に関する技術資料を作成し、日本建築センターの特別工法評定(BCJ評定・SS0053-01)を取得。この評定に基づき国土交通大臣の認定を取得することで構造部材への適用が可能になりました。

大成建設技術センター人道橋

出典:大成建設技術センター(https://www.taisei-techsolu.jp/tech_center/

普及に向けて高まる期待

T-eConcrete®/Carbon-Recycle」の普及・施工数増加には技術開発のほか、社会の受容性の醸成や法体系の更新、サプライチェーンやバリューチェーンの構築などが必要です。

例えば、国土交通省は土木工事における「低炭素型コンクリートの使用原則化」を公表し、建築基準法における取扱いの方針を示しました。JISやISOによるCO₂固定量の試験方法の策定も進んでいます。また、愛知県は地域のカーボンリサイクルを実現するため、大成建設などの提案に基づく「あいちカーボンリサイクル推進協議会」を設立し、精力的な活動を続けています。

これらを追い風に、多くのステークホルダーと連携して一層の社会実装を進められることが期待されます。

技術センター情報技術室長 片倉 徳男氏(写真右)、福田 佳音氏(写真左)

※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年8月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

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