脱炭素達成に向けて、建設業界では大規模な投資が避けられません。ZEB対応や再エネ設備導入など投資テーマは多岐にわたり、資金をどう担保するかが経営上の論点です。そこで注目されているのが、環境改善効果のあるプロジェクトへ資金使途を限定した債券「グリーンボンド」です。
本記事では、グリーンボンドの基礎知識、建設業が活用するメリット、起債・運用時の留意点を解説します。フレームワーク策定や現場データのレポーティング体制構築、最新ガイドラインへのキャッチアップなど、実務で着手すべきポイントを整理していますので、グリーンボンドの導入を検討している建設・不動産業界の方は参照してみてください
目次
グリーンボンドの基礎知識と建設業界での注目背景

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、グリーンボンドが建設業界でも注目度を高めています。環境改善効果のあるプロジェクトへ資金使途を限定する債券として、ESG投資の文脈で発行額も拡大中です。
グリーンボンドの仕組みや4つの基本原則、建設・不動産分野で重要性が高まる背景について解説します。
グリーンボンドとは
グリーンボンドとは、環境改善効果を伴う事業(グリーンプロジェクト)に資金使途を限定して発行される債券のことです。一般的な社債は使い道に制約がないのに対し、グリーンボンドは次の3つの制約があります。
- 資金使途の限定
- 調達資金の追跡管理
- レポーティングによる透明性担保
建設業界で言えば、ZEB対応オフィスの建設費や現場太陽光発電の導入、低炭素コンクリートへの切り替え費用などがグリーンプロジェクトに該当し、資金を別枠で集めて投資家へ開示する仕組みです。グリーンボンドは、自治体や企業が社会への環境貢献を可視化しながら資金調達できる金融商品です。
出典:環境省/「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2024年版」、「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2024年版」の公表について
建設・不動産分野の重要性
建設・不動産分野でグリーンボンドの重要性が急速に高まっています。背景にあるのは、ESG(環境・社会・企業統治)を経営の軸に据える企業が増え、社会課題解決型の事業へ資金を向ける動きが民間発行の増加につながっていることです。
発行体は環境対応をアピールしながら有利な条件で資金調達でき、機関投資家側もポートフォリオの分散先として注目するため、両者の利害が合致した市場が形成されています。太陽光発電や蓄電池の導入、ZEB対応、グリーンビルディング認証取得など脱炭素関連の投資テーマが豊富で、グリーンボンドとの相性が極めて良い分野です。業界として無視できない市場動向といえます。
4つの基本原則
グリーンボンドには、国際資本市場協会(ICMA)が定めるグリーンボンド原則(GBP)と呼ばれる国際的な基準が存在します。GBPの中核となるのは次の4つの要素です。
- 調達資金の使途
- プロジェクトの評価と選定プロセス
- 調達資金の管理
- レポーティング
建設業界では、ZEB建設や再エネ設備導入などプロジェクト選定の透明性、資金が他用途に流用されない厳格な管理、CO2削減量などの環境改善効果の継続的な開示が問われます。発行時には、原則への適合性を第三者機関がレビューし、セカンドオピニオンや認証を取得するのが一般的な流れです。
投資家側も外部評価をもとに、グリーンボンドの信頼性を判断しています。
建設業がグリーンボンドを活用するメリットと実務への影響
建設業界では、グリーンボンドの活用が経営戦略の選択肢として広がりを見せています。なぜなら、資金使途を環境事業に限定する一方で、発行体には複数の経営メリットが存在するためです。
ZEB投資の加速、企業価値の向上、低利な資金調達の3つの観点から、グリーンボンドが建設業の実務にもたらす影響について解説します。
ZEB投資の加速
建設業界でZEB投資を後押ししているのが、グリーンボンドの資金調達手段です。環境省によると、2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画では、業務部門のエネルギー起源CO2排出量を2013年度比51%削減する目標が掲げられ、新築建築物については2030年までにZEB基準の省エネ性能を担保することが目指されています。
目標達成には大規模な設備投資が不可欠で、グリーンボンドは再エネ設備や省エネ機器導入など環境配慮事業に資金使途が限定されるため、ZEB関連投資との親和性が高い仕組みです。
実務面では、適格プロジェクトへの充当状況管理とCO2削減量を指標としたインパクトレポーティングが求められ、ZEB化の成果が定量的に可視化されます。
企業価値の向上
グリーンボンドの発行は、企業価値を高める戦略的な一手です。理由は、環境対策に積極的に取り組む姿勢を投資家や社会へ強くアピールできる点にあります。従来の社債市場では接点のなかったESG投資家や年金基金などの機関投資家層と新たなつながりが生まれ、資金調達チャネルの多様化にもつながることがメリットです。
建設業界でも、再エネ事業やZEB関連プロジェクトを通じた取り組みを定量的に発信できれば、施主や元請けからの選定優位性、採用市場での企業ブランド強化にも波及します。ESG投資の規模拡大が続く中で、グリーンボンドの発行は単なる資金調達手段にとどまらず、サステナビリティ戦略を具現化する重要な経営判断と位置づけられています。
低利な資金調達
グリーンボンドの発行体側の大きなメリットが、低利での資金調達が可能になる点です。背景にあるのがグリーニアムと呼ばれる現象で、ESG投資への需要の高さから、一般的な社債と比べて低い利率で発行できる可能性があります。
企業側は調達コストを抑えられ、投資家側は環境問題の解決に取り組む企業や自治体へ直接投資できるWin-Winの仕組みです。さらに環境省はグリーンボンドの発行促進策として、外部レビュー費用などを補助する制度を整備しており、発行に伴う初期負担を軽減できます。
建設業界では脱炭素関連の設備投資が大型化する傾向にあり、低利調達と補助金の二重メリットは、ZEB化や再エネ投資の財務ハードルを下げる効果を持ちます。
グリーンボンドの起債・運用における建設プロジェクトの留意点

グリーンボンドは発行・運用の各段階で守るべきルールが多く、建設プロジェクトを進める上での留意点も少なくありません。フレームワークの策定、インパクトレポートの義務、グリーンウォッシュの防止など、実務担当者が押さえるべき論点は多岐にわたります。
グリーンボンドの起債と運用フェーズで建設業界が注意すべきポイントについて解説します。
フレームワークの策定
グリーンボンドを発行するには、事前に「グリーンボンド・フレームワーク」を策定し、第三者機関によるセカンドオピニオンを取得することが実務上の必須プロセスです。調達した資金が本当に環境改善効果のある事業へ充当されるのかを、客観的視点から事前に保証する必要があります。
例えば、長野県のような自治体では、フレームワークと適合性評価を公表し、投資表明を行った投資家の一覧まで開示することで、市場への信頼性を高めています。建設分野でも、ZEB建築物や再エネ設備が適格プロジェクトに該当するかをフレームワーク段階で明確に定義することが重要です。
グリーンボンドの信頼性は、起債前の設計精度で大きく左右されます。
インパクトレポートの義務
グリーンボンドの発行後に課せられる重要な義務が、インパクトレポートの作成・開示です。発行体は資金の充当先だけでなく、プロジェクトがもたらした環境改善効果を継続的に報告する責任を負います。
調達資金の管理・追跡状況、プロジェクトの進捗が当初計画と整合しているか、CO2削減量や省エネ実績など定量指標を定期的に開示しなければなりません。建設業界の実務では、現場の電力使用量、燃料消費量、再エネ発電量、ZEB対応建築物のエネルギー削減実績などを正確に計測・集計できる体制づくりがポイントです。
グリーンボンドの信頼性は、現場データを外部へ公開できる仕組みの整備状況で判断されます。
グリーンウォッシュの防止
グリーンボンドの市場拡大に伴い、注意すべきリスクはグリーンウォッシュと呼ばれる実態を伴わない名ばかりのグリーン銘柄の存在です。グリーンウォッシュを防ぐには、厳格な銘柄選定と第三者機関による外部検証が欠かせません。
環境省によれば、2024年11月にグリーンボンドガイドライン2024年版が策定され、さらに2025年7月にはグリーンリスト2025年版が公表されるなど、規制動向は継続的に更新されています。
発行体は最新ガイドラインへのキャッチアップが必須です。グリーンボンドには発行後のレポーティング業務の煩雑さや資金使途の制限などデメリットもあり、建設業界でも導入前にメリットと負荷を比較検討する姿勢が求められます。
出典:環境省/グリーンボンドガイドライン及びグリーンローンガイドライン 付属書1別表(グリーンリスト)改訂について
建設業界におけるグリーンボンドに関する事例
グリーンボンドが建設業界でどのように活用されているかを把握するには、実際の発行事例を確認するのが近道です。建設業界における代表的なグリーンボンドの活用事例について紹介します。
株式会社大林組
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出典:大林組はサステナビリティ・リンク・ボンドを発行します|2022.3.14|株式会社大林組
清水建設株式会社
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出典:グリーンボンド(第35回無担保普通社債)|清水建設株式会社
大成建設株式会社
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出典:グリーンボンド(第42回無担保社債)発行並びに発行条件決定に関するお知らせ|2025.2.21|大成建設株式会社
まとめ

本記事では、グリーンボンドの基本的な仕組みと建設業界における活用メリット、起債・運用時の留意点、実際の事例について解説しました。建設業の実務でまず着手できるのは、ZEB対応やCO2削減に向けた具体的なプロジェクト候補を洗い出し、グリーンボンド・フレームワークに落とし込む準備を始めることです。
次に、第三者評価やインパクトレポートに耐えうる現場のエネルギーデータ収集体制を整備することで、低利資金調達と企業価値向上を同時に実現できます。さらに、グリーンウォッシュ防止のため最新ガイドラインへのキャッチアップも欠かせません。脱炭素時代の資金調達手段としてグリーンボンドの活用を検討している建設・不動産業界の方は、ぜひ参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。









