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BIMとは?建設業界の脱炭素を加速させる活用メリットとCO2算定の仕組みを解説

BIMとは?建設業界の脱炭素を加速させる活用メリットとCO2算定の仕組みを解説

建設業界では、2050年カーボンニュートラル目標への対応と人手不足の同時進行の課題に直面しています。日本のCO2排出量の約4割を建築物分野が占めるなか、設計段階からCO2を可視化し、施工・維持管理まで一貫してデータ管理できるBIMの活用が、建設業の脱炭素経営を実現する鍵として注目を集めているのが現状です。

本記事では、BIMの基本概念から、BIM×LCAで実現する脱炭素経営のメリット、建材CO2算定や設計変更時の環境負荷予測、既存建物の改修における課題解決までを解説します。また、建設業界における実際のBIM活用事例も紹介していますので、BIM導入や脱炭素経営の進め方を検討中の建設業の方は参照してみてください。

BIMとは?建設業界における基本的な概念と役割

BIM

BIMは建設業界のデジタル変革を支える中核技術として、設計から施工、維持管理まであらゆる工程で活用が広がっています。2026年4月からは建築確認におけるBIM図面審査も始まり、対応の必要性が一段と高まりました。

ここでは、BIMの定義と基礎知識を整理したうえで、建設業界で導入が進む背景や、従来のCADとの決定的な違いについて解説します。

BIMの定義と基礎知識

BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略で、3次元の建物モデルに材料・コスト・仕上げ・維持管理情報などの属性データを統合した、建物情報モデルを構築する仕組みです。

3Dモデルと区別される理由は、設計から施工、維持管理までの全工程をデータでつなぐ情報連携を実現できる点にあります。柱や梁、サッシ、空調機器など一つひとつの部材に製品仕様や納入価格、施工日程などの情報をひもづけ、建物全体をデジタル上のデータベースとして扱えることが特徴です。BIMは、図面の寄せ集めではなく建築物をデータ化する基盤といえます。

建設業界で導入が進む背景

建設業界でBIM導入が加速している背景には、国の制度化と深刻な人手不足の2つの圧力が同時に押し寄せていることが挙げられます。国土交通省は2023年度から公共工事でBIM/CIMの原則適用を開始し、2026年4月には建築確認のBIM図面審査も始まったため、法令対応が現実の課題となりました。

また、建設業就業者の高齢化や若手入職者の減少で供給力が縮小するなか、設計段階でのミスの可視化や情報の一元化による生産性向上が欠かせません。現場では平面図と設備図の不整合による手戻りが長年の悩みでしたが、BIMモデルから各図面を切り出せば矛盾が発生しなくなります。BIM導入はもはや選択肢ではなく、必須要件になりつつあります。

出典:国土交通省/4月から建築BIMの図面審査が始まります

従来のCADとの決定的な違い

CADとBIMの違いは次の通りです。

ツール 特徴
CAD 図面を描くためのツール
BIM 建築物のデータベースをつくるためのツール

CADは2次元の図面を起点に3Dを起こすため、平面図・立面図・断面図の間で食い違いが生じやすい構造でした。一方BIMは、最初に3Dモデルを構築し、3Dモデルから各種図面を切り出すため、図面間の整合性が原理的に担保されます。

さらに、BIMの各部材には「名称」「素材」「性能」「価格」などの属性情報を内蔵でき、鉄骨梁なら鋼種・断面寸法・製造時CO2、コンクリート柱なら強度・調合・原単位を持たせられます。属性データの蓄積こそが、後工程でのLCAやカーボンフットプリント算定の土台となるのです。

建設業がBIM×LCAで実現する脱炭素経営のメリット

BIMは設計効率化だけのツールにとどまらず、建設業の脱炭素経営を支える基盤として注目されています。建物の属性データを活かせば、建材から運用までのCO2排出量を一貫して可視化が可能です。

ここでは、高精度なLCA(ライフサイクルアセスメント)の実現、建物運用時のエネルギーシミュレーション、サプライチェーン全体のCO2可視化について解説します。

高精度なLCA(ライフサイクルアセスメント)の実現

BIMとLCAの組み合わせが高精度な環境負荷算定を実現できる理由は、建物全体を属性データ付きのデータベースとして扱える点にあります。LCAでは資材の種類と数量を正確に把握する必要がありますが、BIMモデルの各部材には建材・コスト・仕上げ・性能などの情報があらかじめ内蔵されています。

鉄骨梁の鋼材重量やコンクリートの体積、内外装仕上げ材の面積などを設計データから自動集計できるため、人手による拾い出しでは避けられない誤差を大幅に減らせることが特徴です。国土交通省の資料では、世界のCO2排出量のうち建築物関係が37%、日本国内でも約4割を建築物分野が占めており、業界全体での精度の高いLCA実施は脱炭素経営に欠かせない要素です。

出典:国土交通省/建築物におけるLCAの推進について

建物運用時のエネルギーシミュレーション

BIMが建物運用時のエネルギーシミュレーションに強いのは、設計の初期段階から建物全体を3Dモデルとして検討できるためです。図面が固まってからエネルギー解析を行うと、修正コストや工期への影響が大きくなり、根本的な設計見直しが難しくなりがちです。

一方でBIMは、形状情報と材料・断熱性能などの属性情報を併せ持つため、自然光の入り方、空調の気流、夏冬の日影変化など環境要素をモデル上で視覚的に評価できます。窓の配置や断熱仕様を基本設計のうちに調整すれば、年間の冷暖房負荷を抑える選択を取れます。

早い段階で環境性能を確かめるほど、設計品質の向上と、運用時の光熱費・CO2削減の両方に直結することがメリットです。

サプライチェーン全体のCO2可視化

BIMはサプライチェーン全体のCO2可視化を支える基盤としても機能します。なぜなら、建物のライフサイクル全体で情報を統合的に扱える性質を備えており、設計から建材製造、施工、運用までの部門の壁を取り払えるからです。

建設業のサプライチェーンは、鉄鋼・セメント・ガラスなどの素材メーカーから、ゼネコン・サブコン・設備会社まで多層的に連なります。BIMモデルの属性情報にCO2原単位や輸送距離を紐づければ、調達ルート全体を俯瞰した排出量を見える化できます。

複数の建物を抱える不動産ポートフォリオやインフラ施設の維持管理データを束ねれば、企業単位での脱炭素意思決定にもつながり、関係者間の利益創出と脱炭素の両立に貢献することもメリットの一つです。

BIM導入で解決する建設脱炭素の具体的課題

BIM

建設業で脱炭素を進めるには、CO2算定の煩雑さや設計変更時の再計算、既存ストックの維持管理など特有の課題があります。BIMを導入することによって解決できる具体的な課題について解説します。

建材選定におけるCO2算定の自動化

BIMを活用すれば、建材選定に伴うCO2算定を設計段階から自動化できます。各部材に建材の種類・数量・性能などの属性データが組み込まれており、形状情報と連動して環境負荷を集計できることが特徴です。

鉄筋の総重量、コンクリートの体積、断熱材の使用面積などを拾い出し、それぞれにCO2原単位を掛け合わせれば、人手の入力作業を介さずカーボンフットプリントを算出できます。

経済産業省は環境省と共同でカーボンフットプリントのガイドラインを策定・公表しており、業界ごとの製品別算定ルール整備も支援しています。BIMモデルの属性情報は、国のガイドラインに沿った建材単位のCO2算定を、体系的に進める実務基盤となるのです。

出典:経済産業省/ライフサイクルアセスメント/カーボンフットプリント

設計変更に伴う環境負荷予測

BIMの強みは、設計変更が発生したときの環境負荷の増減を即時に把握できる点にあります。なぜなら、一箇所の修正がモデル全体に連動し、各図面や数量集計表、CO2算定結果まで自動で更新される仕組みになっているためです。

外壁仕様を変更すれば、断熱性能の試算と建材CO2排出量が同時に再計算され、変更前後の比較を数分で済ませられます。複数の設計案を環境負荷の観点から横並びで検討でき、最も脱炭素効果の高いプランを選びやすくなる流れです。

図面間の不整合や手戻りが減ることで、過剰な資材発注や工期延長による無駄なエネルギー消費も抑えられます。BIMは設計変更を「コスト」から「最適化の機会」に変える存在です。

既存建物の改修・維持管理の最適化

既存建物の改修・維持管理においても、BIMは脱炭素を進める実践的なツールです。完成段階で構築されたBIMモデルは、リニューアル検討や修繕計画、設備の更新時期管理など、引き渡し後の長期にわたり活用できます。

オフィスビルの空調や照明、外壁断熱を改修する際、BIMの維持管理データを参照すれば、現状のエネルギー消費と更新後の削減効果を比較したうえで投資判断が可能です。図面が残っていない築古ビルでも、レーザースキャナで取得した点群データをBIMに取り込めば、精緻な現況モデルを再構築できます。

新築のみならず既存ストックまで脱炭素リノベーションを広げられる点が、建設業の長期的な環境負荷低減を支える強みです。

建設業界におけるBIMに関する事例

ここまでBIMの仕組みや脱炭素経営での可能性を整理してきましたが、実際に建設業界ではどのような現場でBIM活用が進んでいるのでしょうか。先進的な取り組みは幅広く広がっており、活用できる事例も増えています。

株式会社大林組

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、国土交通省が進める建築確認におけるBIM図面審査に対応するため、指定確認検査機関および構造適合性判定機関などと連携し、BIMモデルを活用した確認申請を複数の案件で提出するとともに、同一の案件において、申請・審査用のプラットフォーム(確認申請用CDE)を活用し、省エネ適合性判定および構造適合性判定も提出しました。

背景

建設業では人手不足や建築士の高齢化を背景に、建築確認申請・審査の生産性向上が急務となっています。国土交通省はこの解決策として2026年4月よりBIM図面審査制度を導入しました。

本制度は、BIMで作成した3次元の建物モデル(3Dモデル)をもとに確認申請の図面などを作成し申請を行います。審査者は従来のPDF図面に加えてIFCなどの3Dモデルを参考にすることで、図面ごとの整合性確認を省略することが可能です。

大林組では、2020年からPDFを用いた確認申請の電子申請に取り組むなど、建築確認手続きのデジタル化を段階的に進めてきました。今回、これらの取り組みを踏まえ、BIM図面審査に対応可能な運用方法を整備しました。

大林組のBIM図面審査対応の流れ

3Dモデルを起点に、確認申請に必要な図面およびIFCデータを作成し、これらが定められた入出力基準に沿って作成された図書であることを誓約書により明確化します。併せて、確認申請用CDEに申請に関わる図書を提出し、指摘事項の確認も同環境下で行います。

申請図書の整合性を高め、誓約書および確認申請用CDEを運用することにより、申請・審査における実務負担の軽減に貢献しています。

出典:大林組、BIM図面審査に対応した確認申請などを複数案件で提出|2026.4.17|株式会社大林組

鹿島建設株式会社

鹿島(社長:押味至一)は、当社の施工部門においてさらなるBIM(Building Information Modeling)の普及展開と高度化を図るため、2017年4月5日、BIM業務を専業とする新会社「株式会社 グローバルBIM」を設立しました。

鹿島は、日本における「BIM元年」といわれる2009年以降、施工現場へのBIMの積極的な導入・推進を図り、2013年にはクラウドサービスを利用したBIMプラットフォーム「Global BIM」を世界で初めて構築しました。これにより、複数のプロジェクト関係者間でのデータ共有が可能となり、全国のBIM導入現場が飛躍的に増加、生産性と品質の向上に実績を積み重ねてきました。

新会社のグローバル BIMでは、これら施工段階でのBIM活用のノウハウと豊富な実績をベースとして、建設会社のみならず施主や設計事務所も対象に、BIMモデリング、BIMコンサルティングなどのサービスを提供します。また、鹿島が開発し社内運用しているBIM施工計画アドオンソフト、BIMプロジェクト管理アドオンソフトなどの社外販売も行う予定です。

さらに、日本版IPD(Integrated Project Delivery)の先進企業として、鹿島が持つBIMノウハウを国内のみならず海外へも提供する、日本初のBIMサービスプロバイダーを目指します。

※施主、設計者、元請、協力会社などプロジェクトにかかわるメンバーが協力しながら、よりよい建物を建設するという目的に向け、プロジェクトの初期段階から共同で最適な決定を行うことを可能にする協業体制。

出典:BIM専業の新会社 「グローバルBIM」 を設立|2017.4.13|鹿島建設株式会社

清水建設株式会社

清水建設(株)<社長 新村達也>はこのほど、BIMデータを4次元(3次元+時間)のVRに自動変換のうえ施工手順をモックアップVRで再現する現場支援システム「VR Snapi(スナッピ)」を(株)Andecoと共同開発しました。高性能PCや専用アプリケーションを必要とせず、BIMの専門知識がなくても視覚的に施工手順を再現でき、かつWebサイトで複数名が同時閲覧できるので、関係者間で遅滞なく情報共有でき、合意形成や意思決定が確実に迅速化します。

BIMデータやVR技術の活用により、建築の複雑な部位形状や空間イメージ、部材の取り合いなどの事前確認はもとより、現在では時刻歴を反映した3次元モデルによる施工手順の再現、つまり4次元での施工の“見える化”が可能になっています。ただ、現状の見える化作業は多くの課題を抱えています。例えば、専門知識と専用ソフト・機材を要し、かつ業務が属人化しやすい、設計・施工計画の変更や現場の進捗に追従できない、高額なVR制作費などです。

そこで当社と(株)Andecoは、オートデスク社のBIM統合シミュレーションソフト(Navisworks)を用いて、物件の3次元モデルのデータを4次元のVRに変換できるプラグイン(機能拡張プログラム)を開発し、見える化の諸課題を解決しました。従来の見える化の最大のネックは、BIMという3次元モデルがありながらVR用の3次元モデルの制作を余儀なくされていたことで、それが諸課題の根源になっていました。開発したプラグインは、施工手順の確認が必要な工種と工程、再現間隔を入力すれば、Navisworksの3次元データを読み込み当該工種の当該工程における3次元モデルを切り出し、自動的に4次元VRとして可視化する機能を備えています。

出典:BIMデータを4次元VRに自動変換する「VR Snapi」を共同開発|2026.4.10|清水建設株式会社

まとめ

BIM

本記事では、BIMの基本概念から、脱炭素経営におけるBIM×LCAのメリット、建材CO2算定や既存建物改修の具体的な課題解決方法を解説しました。BIMは単なる3Dモデリングツールではなく、建材から運用、維持管理まで貫くデータ基盤として、建設業の脱炭素を支える存在です。

実務で着手するなら、設計段階からBIMモデルに建材属性とCO2原単位を紐づけること、シミュレーションで複数案の環境負荷を比較すること、既存ストックは点群データの取得から段階的にBIM化することが必要です。2026年4月のBIM図面審査開始を控えるなか、脱炭素経営にBIMを取り入れたい建設業の方は参照してみてください。

株式会社リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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