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「建築物LCA制度検討会」第1回の論点整理と建設実務者向けのポイント~実施ルール・表示・原単位データ、制度設計の3本柱が示す道筋~

「建築物LCA制度検討会」第1回の論点整理と建設実務者向けのポイント~実施ルール・表示・原単位データ、制度設計の3本柱が示す道筋~

建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)をめぐる制度づくりが本格化しています。国土交通省は2025年6月、「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会(建築物LCA制度検討会)」を設置し、2028年度頃の制度開始を見据えて全6回にわたって議論を重ねてきました。

※建築物LCAとは、建築物を構成する各部材・設備の製造・施工・使用・解体に至るまでの建築物のライフサイクル全体において発生するカーボン(CO2)を算定・評価するもの。Life Cycle Assessmentの略。

本連載では、各回の議事録・配布資料をもとに、検討会の内容・今後の課題・建設実務者向けのポイントを解説します。連載第1回となる今回は、2025年6月4日開催の「建築物LCA制度検討会」の内容をもとに、制度の3本柱である「実施ルール・表示・原単位(CO2排出係数)データ」の論点を整理しつつ、今後の実務対応に役立つ視点や、実務者として今知っておきたい内容を紹介します。

出典:国土交通省「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」

検討会設置の背景

日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。国内のCO2排出量の約40%を占める建築物分野では、これまで主に使用時の冷暖房・空調や給湯などの省エネ対策に取り組んできましたが、真の脱炭素化には資材製造から施工・使用・解体までのライフサイクル全体のCO2削減が不可欠です。

こうした背景から2024年11月、内閣官房に「建築物のライフサイクルカーボン削減に関する関係省庁連絡会議」が設置され、「2028年度を目途に建築物LCAの実施を促す制度の開始を目指す」基本構想が決定されました。本検討会はその制度化を具体的に進める場として立ち上げられました。

出典:内閣官房「建築物のライフサイクルカーボン削減に関する関係省庁連絡会議」ページ

第1回検討会の議論のポイント

第1回検討会での重要なポイントは、建築物LCA制度を設計するにあたり、「実施ルール」「表示」「原単位データ」の3つを主要な検討項目として位置づける方向性が示されたことです。

これは、LCCO2を算定しやすくする仕組み(実施ルール)、算定結果を社会に見せる仕組み(表示)、算定の根拠となるデータを整備する仕組み(原単位データ)の3点が揃わなければ制度として機能しないという設計思想のもとに示されました。

ここからは、「実施ルール」「表示」「原単位データ」の3本柱に沿って、第1回検討会で議論された内容をまとめます。

【実施ルール】誰が、いつ、どの建築物を対象にするか

制度設計の根幹となる「実施ルール」については、まずは大規模建築物を対象に段階的に拡充していく方向性が示されました。算定の責任主体は建築主とし、数量・仕様が確定する着工前(実施設計完了段階)が算定タイミングとして現実的との見方が共有されています。

また、まずは算定・報告義務から始め、将来的にCO2排出量の上限値を法的に義務付ける規制へ段階的に移行すべきとの意見も複数出ており、EU(2028年から延床1,000㎡超に算定・表示義務化予定)の動向を踏まえたロードマップ策定が課題です。

出典:国土交通省「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」ページ(第1回03_資料2_建築物LCAに係る取組みについて)

【表示】見える化の仕組みをどう設計するか

算定結果をどのように「表示」して社会に発信するか、という点も重要な検討項目です。アップフロントカーボン・オペレーショナルカーボンなどライフサイクル全体のCO2排出内訳を可視化し、削減ポテンシャルの高い部分を特定できる仕組みとする方向性が示されました。

また、表示内容を金融機関や投資家に分かりやすく訴求することも重視されており、LCA特化型の新たな表示制度を設けるか、既存の省エネ性能表示制度(BELS等)に統合するかは引き続き検討課題です。

【原単位データ】整備の優先順位と体制の構築

算定の精度を左右するのが、建材・設備ごとの「原単位データ」の整備です。現状、鉄鋼・セメントなど一部素材では業界平均値の整備が進む一方、設備機器や複合建材では対応が遅れています。そのため、データ整備の優先順位・第三者認証の有無による公平性・リサイクルの算定ルール統一などが課題として示されました。

また、算定ツールについては、日本版ライフサイクルカーボン算定ツールである「Japan Carbon Assessment Tool for Building Lifecycle(J-CAT)」に限定する必要はなく、国で定めた算定ルールに準拠したツールであれば使用可能とする方針が示されています。さらに、算定の対象となる温室効果ガスについては、CO2だけでなく冷媒フロン等を含む温室効果ガス全般を対象とする方向性が確認されました。

今後の課題

第1回で提示された論点をもとに、今後の実務対応を考えるうえでのヒントになりそうな課題をまとめました。いずれも第2回以降の検討会で議論が予定されており、動向を追っておく価値がありそうです。

制度の対象範囲と算定タイミング

どの用途・規模の建築物から適用するかの絞り込みが必要です。算定タイミングは実施設計完了段階(着工前)を軸に、実務上の現実性を踏まえた議論が続く見込みです。

アップフロントカーボンとオペレーショナルカーボンのトレードオフ

省エネ設備の強化がエンボディドカーボンの増加につながるケースなど、両者の相反関係をどう評価し制度設計に反映するかが引き続き検討課題です。

原単位データの整備体制

整備の優先順位の設定と、業界ごとの体制構築が急務となっています。

建設実務に効くポイント

第1回検討会で挙がった論点や今後の課題となる論点を踏まえ、建設実務者が今知っておきたいポイントをまとめました。

制度の適用時期と対象を見据えた準備を

2028年度の制度開始を目標に議論が進んでおり、対象となる可能性のある事業者は今後数年以内に対応を求められる可能性があります。大規模建築物を皮切りに段階的な拡充が想定されており、対象となり得るプロジェクトを早めに把握しておくことが重要です。

設計段階でのCO2算定体制の検討

着工前算定が制度の軸となる可能性が高いため、設計段階でCO2排出量を把握できる体制の構築が重要になります。LCA算定ツールの導入や、設計データの整理方法の見直しを検討しておく必要があります。

算定タイミングは「実施設計完了段階」が有力

設計初期段階での正確な算定は難しいとされており、着工前の実施設計完了段階での算定が現実的な選択肢として浮上しています。社内の設計プロセスへの組み込みを今から検討しておくと安心です。

人材育成と算定体制の整備を早めに

算定ができる人材の育成や、中小企業における算定体制の確保は喫緊の課題です。専門資格制度の創設や研修・講習の整備が求められており、業界団体の動向にも注目が必要です。

自社関連の原単位データ整備状況を確認

自社が扱う建材・設備の原単位データが整備されているか、業界団体の動きも含めて把握しておくことが重要です。

まとめ

第1回検討会では、建築物LCA制度化に向けた「実施ルール・表示・原単位データ」3つの柱について、幅広い意見と課題が出されました。建築物LCA制度は、今後の建設業における新たな基準となる可能性があります。特に設計段階でのCO2算定が求められる点は、従来の業務フローに大きな影響を与えると考えられます。なかでも、まずは算定して開示することからスタートし、段階的に基準化・規制化していく流れが示されたことは、実務の上でも重要なポイントとなりそうです。制度開始までまだ時間はありますが、対応が遅れると将来的に受注や評価に影響する可能性もあるため、早い段階から情報収集と準備を進めておくことが重要です。

第2回検討会(2025年6月19日開催)では、「実施ルール」と「表示」について本格的な議論が行われ、着工前算定を軸とした制度の方向性が徐々に見えてきました。これらの内容については次回の記事で改めて整理しますので、ぜひ続編もご参照ください。

出典:国土交通省「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」ページ(中間とりまとめ 2026/1/28 公表、最終確認:2026/4/6)

この記事の監修

リバスタ編集部

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