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時計 2025/7/17 アップデート 2025/8/4

東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の工事成績評定における脱炭素の加点について解説!

工事成績評定で良い評価を得るには、基礎的な項目の不備をなくすことも重要ですが、加点ポイントを押さえて適切な対処を取ることも大切です。環境対策への取り組みは、工事成績評定でよい評価を得ることにもつながる要素のため、建設業界として取り組むべき内容です。

本記事では、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の脱炭素に向けた具体的な施策を解説しています。また、それぞれの地域が独自に展開している脱炭素を支援する取り組みも紹介しているため、工事成績評定で上位を取るために取り組んでいる方は参考にしてみてください。

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工事成績評定の環境対策に対する加点について

工事成績評定では環境対策に対して加点の措置が講じられています。ここでは、工事成績評定の概要と、一般的な加点の対象となる要素、環境対策がなぜ注目されているのかを解説します。

工事成績評定とは

工事成績評定は、公共工事の品質確保と施工業者の技術力向上を目的とした評価制度です。請負金額が500万円以上の工事を対象とし、発注者が竣工時に100点満点で評価を行います。

評価の中心となるのは、施工体制と技術的な内容です。現場での総合的な施工体制の確立状況や、必要な資格を持つ技術者が適切に配置されているかどうかなどを確認します。

また、完成した工事の出来形および出来栄えも重要な評価項目の1つです。各種測定値が設計図書に示された基準値を満たしているか、また品質に関する試験結果が要求された基準を満たしているかなど、工事の完成度を総合的に判断します。

一般的な要素は4つ

工事成績評定でポイントとなるのは次の4つの要素です。

  1. チェックリストの活用
  2. 書類の正確性
  3. 基礎的な項目の不備をなくす
  4. 新技術への対応

評価の透明性を確保するため、事前にクライアントである自治体からチェックリストを入手することが不可欠です。チェックリストには「考査項目別運用表」と「施工プロセスのチェックリスト」の2種類があり、チェックリストに基づいて評価が行われます。

各種書類の正確な作成と提出も必要な要素で、工事着手前には設計図書や契約関係書類、施工計画、施工体制に関する書類など、多岐にわたる文書を適切に整備しなければなりません。さらに、基礎的な評価項目での減点を防ぐことが重要で、基本的な施工管理や安全管理を確実に実施することが求められます。

より高い評価を得るため、新技術の積極的な導入による加点獲得を目指すことも重要なポイントです。

環境対策が注目されている理由

建設業界で環境対策の重要性が高まっている背景として挙げられるのが、自治体の環境保全に対する積極的な取り組みです。例えば、相模原市では環境基本計画の目標の1つとして「地球温暖化対策」を掲げており、環境配慮の必要性が示されています。

環境対策への取り組みは、工事成績評定にも直接反映される仕組みが整備されています。土木工事では「環境保全に関する工夫」として、また営繕工事では「地球環境への工夫」などの評価項目で、環境保全に配慮した施工を行った場合には加点評価の対象です。

環境対策は単なる社会的責任としてだけでなく、工事評価のポイントとしても注目されており、建設業者にとって重要な取り組み課題となっています。

関東地方における工事評定の特徴

関東地方それぞれの工事評定の特徴は次の通りです。

特徴
東京都 SBT認定の取得
エコ・ファースト制度
神奈川県 認定資材の利用
かながわ脱炭素チャレンジ中小企業の認証
千葉県 低炭素型建設機械の活用
再生可能エネルギーの利用
新技術の活用
埼玉県 埼玉県エコアップ認証制度
脱炭素・再エネ関連の事業計画
環境SDGs取組宣言企業制度

それぞれの特徴を詳しく解説します。

【東京都】工事成績評定の特徴

東京都の工事成績評定の特徴として次の内容が挙げられます。

  • ISO14001(環境マネジメントシステム)等の取得
  • SBT認定の取得
  • エコ・ファースト制度
  • 東京都の工事評定成績ランキング

以下にそれぞれの詳細を解説します。

ISO14001(環境マネジメントシステム)等の取得

東京都では、建設業界の環境配慮の取り組みを促進するため、ISO14001の取得を重視した評価制度を導入しています。入札資格審査では、ISO14001などの環境マネジメントシステムを取得している企業に対して、売上高の割り増し算定の優遇措置が設けられました。

総合評価方式による入札でも、ISO14001取得企業には加点措置が適用されます。東京都は環境マネジメントシステムの導入を財務面と評価面の両面からサポートすることで、建設業界全体の環境保全への取り組みを積極的に推進しています。

SBT認定の取得

東京都では、科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定するSBT(Science Based Targets)認定を、環境配慮の指標として位置づけています。総合評価方式による入札で、SBT認定を取得している企業に対して加点措置を講じていることが特徴です。

SBT認証制度は、規模や特性に応じて2つの種類が用意されており、大企業向けの通常のSBTに加えて、従業員250人未満で非子会社かつ独立系の条件を満たす中小企業向けのSBTも設けられています。企業規模にかかわらず、科学的な温室効果ガス削減への取り組みを促進し、建設業界全体での脱炭素を推進しています。

出典:環境省/【参考①】中小企業向けSBT

エコ・ファースト制度

東京都では脱炭素推進の施策として、エコ・ファースト制度の活用があります。エコ・ファースト制度は、環境分野で先進的かつ独自性のある取り組みを行い、業界全体に波及効果をもたらす可能性のある企業を、環境大臣が直接認定する仕組みです。

東京都は総合評価方式による入札で、エコ・ファースト認定企業に対して加点措置を実施しています。国の環境認定制度と都の入札制度を連携させることで、先進的な取り組みを積極的に評価し、より広範な環境配慮の実践を促進していく効果が見込まれます。

東京都の工事評定成績ランキング

東京都の工事成績評定で、令和4年度・5年度の平均点ランキングで同率1位を獲得した3社は次の通りです。

  1. 大豊建設株式会社
  2. ピーエス・コンストラクション株式会社
  3. 古河産機システムズ株式会社

大豊建設は、国内の土木建築工事に加えて設計やコンサルティングも手掛け、アジアやマダガスカルにも事業を展開する総合建設会社です。ピーエス・コンストラクションは、プレキャストコンクリートとプレストレストコンクリートを組み合わせたPCaPC工法を活用し、高品質化と環境負荷軽減を両立させています。

古河機械金属グループは、140年の歴史を持ち、防災や環境問題などの社会課題に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指している企業です。

参照:令和4年度・令和5年度 請負⼯事成績評定の平均点ランキング

【神奈川県】工事成績評定の特徴

神奈川県の工事成績評定の特徴として次の内容が挙げられます。

  • 認定資材の利用
  • かながわ脱炭素チャレンジ中小企業の認証
  • 神奈川の工事評定成績ランキング

以下にそれぞれの詳細を解説します。

認定資材の利用

グリーン購入法は、国や地方自治体による環境配慮型製品の調達を推進し、環境負荷の少ない持続可能な社会の実現を目指す法的枠組みです。神奈川県では「認定対象品目」を設定し、期間を限定して環境配慮型の建設資材を募集・認定する制度を実施しています。

建設工事の環境負荷の低減を制度的に支援するとともに、環境配慮型製品の開発と普及を促進し、業界全体の環境対応力向上を図ることが目的です。認定資材を利用することにより神奈川県で環境に配慮した施工を行う企業として、評価向上にもつながっています。

かながわ脱炭素チャレンジ中小企業の認証

神奈川県は、中小企業の脱炭素への取り組みを支援するため、「かながわ脱炭素チャレンジ」認証制度を実施しています。当制度は、自主的かつ計画的に脱炭素に取り組む中小企業を「かながわ脱炭素チャレンジャー」として認証し、支援を提供する制度です。

認証企業には、省エネルギー設備導入に関する補助金の上限額が上乗せされる経済的なメリットがあります。また、自家消費型の再生可能エネルギー設備を導入する事業者に対しては、導入費用の一部を補助する制度も設けられており、企業の環境負荷低減への投資を積極的に後押ししています。

神奈川の工事評定成績ランキング

神奈川の工事評定成績ランキングの上位3社は次の通りです。

  1. 宮内建設株式会社
  2. 木本建興株式会社
  3. 小雀建設株式会社

宮内建設は、鳶土工と重機械工事を中心に、多様な工事を手掛けており、特にSDGsへの取り組みとして災害時の地域貢献を見据えた太陽光発電システムの活用を実践していることが特徴です。

木本建興は、国土交通省や財務省の公共工事を主力とし、水道工事や耐震補強工事などの重要インフラ整備で実績を上げています。小雀建設は、地域社会への貢献と環境配慮を経営理念の核に据え、持続可能な社会の発展に寄与することを目指しています。

参照:令和4年度・令和5年度 請負⼯事成績評定の平均点ランキング

【千葉県】工事成績評定の特徴

千葉県の工事成績評定の特徴として次の内容が挙げられます。

  • 低炭素型建設機械の活用
  • 再生可能エネルギーの利用
  • 新技術の活用
  • 神奈川県の工事評定成績ランキング

それぞれの詳細を解説します。

低炭素型建設機械の活用

千葉県、特に千葉市では建設工事の脱炭素を推進するため、建設機械の環境対応に焦点を当てた取り組みを展開しています。国土交通省が認定する低炭素型建設機械の活用を積極的に推進し、建設段階での温室効果ガス排出量削減を目指している取り組みです。

さらに令和5年度からは、より踏み込んだ取り組みとしてGX建設機械認定制度を創設し、動力源そのものを環境負荷の少ないものへと転換した建設機械の普及を促進しています。

※低炭素型建設機械の活用は、令和6年度より新規受付停止

再生可能エネルギーの利用

千葉県は現場事務所のエネルギー供給に着目し、2つの主要な施策を展開しています。1つ目は、既存の電力契約を再生可能エネルギー電力メニューへ切り替えることで、環境負荷の低減を図る施策です。

2つ目は、現場事務所に太陽光発電設備などを直接設置することで、再生可能エネルギーの自給自足を促進しています。再生可能エネルギーの利用により、建設現場のエネルギー消費の脱炭素を実現し、建設業界全体の環境負荷低減に貢献しています。

新技術の活用

千葉県は、NETIS(New Technology Information System)に登録された新技術の中でも、特にCO2削減効果が期待できる技術の活用を重点的に推進しています。NETISは国土交通省が整備した新技術情報データベースで、建設分野の革新的な技術の共有と普及が目的です。

システムでは、従来技術との比較で5件以上の活用効果調査が実施された技術に対して、大学・産業界・研究機関などの専門家で構成される評価会議による厳密な評価が行われます。

千葉県の工事評定成績ランキング

千葉県の工事評定成績ランキングの上位3社は次の通りです。

  1. 阿部建設株式会社
  2. 石井工業株式会社
  3. 岡田土建株式会社

阿部建設は、教育施設や官公庁庁舎などの公共施設から、病院・老人ホームなどの福祉施設、さらには民間の事業所や工場まで、幅広い建築工事とリフォーム工事を手掛けています。

石井工業は、自然環境と生物多様性の保護を重視し、独自の工法開発や工程管理の効率化を通じて、環境に配慮した持続可能な建設事業を展開している企業です。岡田土建は、東総地域を拠点に、教育施設や官公庁施設などの公共工事に加え、医療福祉施設や産業施設まで、地域の多様なニーズに応える建設サービスを提供しています。

参照:令和4年度・令和5年度 請負⼯事成績評定の平均点ランキング

【埼玉県】工事成績評定の特徴

埼玉県の工事成績評定の特徴として次の内容が挙げられます。

  • 埼玉県エコアップ認証制度
  • 脱炭素・再エネ関連の事業計画
  • 環境SDGs取組宣言企業制度
  • 埼玉県の工事評定成績ランキング

それぞれの詳細を解説します。

埼玉県エコアップ認証制度

エコアップ認証制度は、環境問題への積極的な取り組みとCO2削減、廃棄物排出量抑制などの環境負荷低減に優れた実績を持つ事業所を、県が公式に認証するシステムです。制度の主な目的は、環境配慮への取り組みを評価・認証することで、特に中小事業者の社会的信用力を向上させることにあります。

建設業界全体での環境負荷低減の取り組みを促進し、より一層のCO2削減や廃棄物排出量抑制を実現することを目指しています。

脱炭素・再エネ関連の事業計画

埼玉県は、脱炭素・再エネ関連の事業計画の目標として、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減することを掲げています。事業計画の目標達成に向けて、建設業界を含むすべての部門・分野で、包括的な取り組みを推進しています。

徹底的な省エネルギー対策の実施や再生可能エネルギーの積極的な導入、エネルギーの効率的な利用が主な取り組みです。環境配慮の実践を促進することで、埼玉県として脱炭素の実現を目指しています。

参照:埼玉県/地域脱炭素移行・再エネ推進事業計画(重点対策加速化事業)

環境SDGs取組宣言企業制度

環境SDGs取組宣言企業制度を通じて、環境配慮の取り組みを積極的に支援・促進しています。環境SDGs取組宣言企業制度の特徴は、環境分野のSDGsゴール達成に向けた具体的な取り組みを企業が宣言し、一定の要件を満たした場合に様々な優遇措置が受けられる点です。

特典の1つが、県建設工事の入札参加資格において5点の加点が得られることです。さらに、県のホームページを通じて企業の環境SDGsへの取り組みが広く発信されることで、企業の環境配慮への姿勢を社会にアピールする機会も提供されています。

埼玉県の工事評定成績ランキング

埼玉県の工事評定成績ランキングの上位3社は次の通りです。

  1. 株式会社島村工業
  2. 古郡建設株式会社
  3. 伊田テクノス株式会社

120年以上の歴史を誇る島村工業は、埼玉を拠点とする総合建設会社として、長年にわたり地域の発展に貢献してきました。古郡建設は、中央官庁や県の公共事業から民間土木工事まで幅広い施工実績を持ち、多様なニーズに対応できる技術力を有しています。

また、伊田テクノスは、土木・建築工事の施工に加え、建設資材の生産販売など、建設関連分野で総合的な事業展開を行っており、多角的な視点から工事品質の向上に取り組んでいる企業です。3社は、高い技術力と品質管理能力により、工事成績評定で優れた評価を獲得しています。

参照:令和4年度・令和5年度 請負⼯事成績評定の平均点ランキング

まとめ

本記事では、建設業界の方に向けて、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の工事成績評定における脱炭素の加点について解説しました。建設業界で環境対策の重要性が高まっている背景として挙げられるのが、自治体の環境保全に対する積極的な取り組みです。

環境対策は単なる社会的責任としてだけでなく、工事評価の具体的なメリットとしても注目されており、建設業者にとって重要な取り組み課題となっています。

東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県それぞれの脱炭素推進の具体的な施策を紹介しているため、工事成績評定で上位を取りたい企業の方は参考にしてみてください。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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