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【未来の燃料革命】 自動車業界が挑む バイオ燃料の可能性 燃料を生み出す最先端技術とは?

カーボンニュートラル社会の実現に向け、さまざまな業界で革新的な取り組みが進められています。特に、次世代グリーンCO₂燃料技術研究組合(raBit)の活動は、建設機械が欠かせない建設業界にも影響を及ぼす可能性があります。本コラムでは、同組合の取り組みの紹介とこの活動により建設業界にも及ぼす影響、そして今後の課題と展望について考察します。

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次世代グリーンCO₂燃料技術研究組合とは?

次世代グリーンCO₂燃料技術研究組合(raBit)は、2022年7月に設立され、ENEOS株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、豊田通商株式会社、マツダ株式会社の7社が組合員として参加しています。

※組合発足後、組合員としてマツダ株式会社、特別賛助員として株式会社アイシンと株式会社デンソー、賛助会員として中部電力株式会社とマルヤス工業株式会社が加入している(2023年12月現在)

この研究組合は、バイオマス資源を活用し、CO₂排出を抑えたバイオエタノール燃料の製造技術の研究・開発を進めています。「既存のバイオマスは、トウモロコシやサトウキビなど、食用としても利用できる植物を原料としている。世界的な人口増加に伴う食糧問題などを考えると、食糧とのバッティングは避けるべき」という考えのもと、非可食性の植物を原料とすることで、食糧供給と競合しない持続可能な燃料供給の実現を目指しています。

これまでのバイオエタノール燃料と第2世代バイオエタノールの違い

原料の違い

 第1世代バイオエタノール 第2世代バイオエタノール
主な原料 トウモロコシ、サトウキビ、小麦、ジャガイモなど(可食性作物) 木材、農業廃棄物、非可食性植物(セルロース・リグノセルロース系バイオマス)
食料との競合 あり(食糧価格上昇の要因) なし(食糧と競合しない)
土地利用の影響 農地拡大による森林伐採のリスク 荒地や低品質な土地でも栽培可能

製造プロセスの違い

 第1世代バイオエタノール 第2世代バイオエタノール
糖化・発酵の容易さ デンプンや糖質が豊富なため、発酵しやすい セルロース系分解する工程が必要で、技術的なハードルが高い
製造コスト 比較的低コストで生産可能 高度な分解技術が必要でコストが高い
技術的課題 すでに実用化され、安定供給が可能 分解酵素や触媒技術の開発が課題

次世代グリーンCO2燃料技術研究組合が設立された背景

カーボンニュートラルの実現には、多様なエネルギーの選択肢を提供することが重要です。再生可能エネルギー由来の電力を基にした水素や合成燃料、植物の光合成によりCO₂を削減できるバイオエタノール燃料も有力な選択肢とされています。しかし、いずれの燃料においても、原料調達や製造工程におけるCO₂排出量の低減、社会実装に向けた課題の解決が不可欠です。賛同する企業を募り、現状の課題への研究と持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目的として設立されました。

次世代グリーンCO2燃料技術研究組合の研究内容とは

カーボンニュートラル社会実現のため、バイオマスの利用、生産時の水素・酸素・CO2を最適に循環させ、効率的に自動車用バイオエタノール燃料を製造する技術研究を進めています(研究施設は福島県双葉郡大熊町。生産設備は日鉄エンジニアリングによる)。

1.エタノールの効率的な生産システムの研究

非可食性の植物を原料とした第2世代バイオエタノール燃料の製造技術の向上を目指し、生産設備の設計・設置・運転を通じて、生産面での課題を明らかにし、解決方法の研究を行います。

2.副生酸素とCO2の回収・活用の研究

水素製造時に副生成物として発生する高濃度酸素や、バイオエタノール燃料製造時に発生するCO₂の活用方法についての研究をします。

3.燃料活用を含めたシステム全体の効率的な運用方法の研究

製造したバイオエタノール燃料を自動車等に使用した際の課題を明らかにし、その解決方法を研究しています。また、原料作物の栽培から燃料製造までの一連のプロセスを最適化するためのモデルを構築します。

4.効率的な原料作物栽培方法の研究

バイオエタノール燃料の原料確保のため、収穫量の最大化と作物成分の最適化を目指し、最適な栽培方法を提案するシステムを開発します。

これらの研究を通じて、raBitは持続可能なバイオエタノール燃料の製造技術の確立と、カーボンニュートラル社会の実現を目指しています。同組合の理事である工藤真哉氏(株式会社SUBARU)は、「企業間で自動車やエンジンなどを共同研究するケースはこれまでもあった。しかし今回は、自動車産業におけるエコシステムの将来を担う研究活動。これまでとは違った意味を持っている」と研究への期待を寄せています。

今後の技術革新により、第2世代バイオエタノールのコスト削減と効率向上が進めば、化石燃料に代わるクリーンエネルギーとしての普及が期待されます。

建設業界、特に建設現場への普及と、これからの可能性や期待されること

 建設業界においても、例外なくカーボンニュートラルへの取り組みが求められています。特に、建設機械や車両からのCO₂排出削減は重要な課題です。raBitの研究は、主に自動車業界向けの取り組みですが、第2世代バイオエタノール燃料の生成技術と低価格での安定供給が確立すれば、建設現場で使用される重機や車両のエンジン燃料をクリーンなものに置き換えることが可能となるため、CO₂排出量の削減が期待できます。

バイオマスを利用した燃料の生産・普及が進むことでの建設業界への影響について、NPO法人建設技術監査センター理事の門倉伸行氏はこう語ります。「建設機械や車両の燃料供給がより持続可能なものとなり、CO2排出量の永続的な削減に寄与する可能性があります。また、建設業界が使用するエネルギー源の多様化が進むことで、環境負荷の低減が期待されます。さらに、研究組合の活動を通じて新たな技術や材料が開発されることで、建設プロセスの効率化やコスト削減にもつながることも想像されます」

まとめ

第2世代バイオエタノール燃料は、建設現場でのCO₂排出削減が期待できる一方、燃料供給の安定性やコスト、既存設備との適合性など、解決すべき課題も多く存在します。これまでの建設業界は、木材の利用促進や自然エネルギーの活用、建材製造や施工技術などでカーボンニュートラルに貢献していましたが、今後は建設機械を新しい燃料技術に置き換えていくことへの推進に協力していくことが求められるかもしれません。持続可能な社会の実現に向け、建設業界全体での連携とさらなる取り組みを今から考えておく必要があるでしょう。

※NPO法人 建設技術監査センター理事 門倉伸行(かどくら・のぶゆき)氏
熊谷組にて約40年にわたり、技術研究部門、環境事業プロジェクトに従事。
主に環境汚染の除外技術の開発などを行う。
現在はNPO法人建設技術監査センターの理事を務める。

詳しく知りたい方は以下のサイトをご参照ください。

次世代グリーンCO₂燃料技術研究組合
https://rabit.or.jp/

日鉄エンジニアリング(第2世代バイオエタノール生産設備)
https://www.eng.nipponsteel.com/news/detail/20241126/

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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