建設業において、脱炭素や資源循環は、解体・施工・再利用を一体で捉える必要があります。その起点となるのが、解体という工程です。
解体が決まっている建物で、壊される前に地域の人とともに集い、次の再生に向けた新たなスタートを切るー。解体業を軸に都市の再生に関わる事業を展開する都市テクノが手がける「解体祭」。単なるイベントにとどまらず、そこには解体から始まる循環型社会への思いが込められています。解体祭を始めたきっかけ、解体祭から生まれた産学連携の取り組み、循環型社会構築への新たな挑戦について、事業本部の山原 善光氏、坂 桃子氏にお聞きしました。
解体を次のまちづくりの始まりに
初めての解体祭は2023年3月。東京大学生産技術研究所「建築物の総合的保存保全に関する研究グループ」並びに武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所とタッグを組み、同年4月からの解体が決まっていた「Daiwa御成門ビル」で開かれました。
山原氏は「解体工事は一般に事業の終わりだと思われているものです。建物を建てる前には地鎮祭というお祭りがあります。であれば、解体するときにもお祭りがあってもいいのではないか、と考えたのがきっかけです」と語ります。
「解体工事は、振動や騒音などにより周囲に歓迎されにくく、工事が始まると仮囲いで中の様子が見えないことも近隣住民に不安を与える要素の一つです。そこで解体工事が始まる前にどんな建物を壊すのかを地域の皆さんにイベントを通して知っていただき、次のまちづくりへと繋げていこうというのが、解体祭の始まりです」(山原氏)
▼解体現場は次のまちづくりへ向かう“循環の起点”

セルテ解体祭は子どもたちが主役
2026年3月28日には、横浜・関内駅前の商業施設「セルテ」で5回目の解体祭が開かれました。今回の解体祭のテーマは「子どもたちと描く、横浜のミライ」セルテを運営する日本開発代表・古屋公士氏の「未来ある子どもたちにセルテを遊び場にしてほしい」という一言から決まりました。
当日は、セルテの館内を一般に開放し、絵の具やペンなど様々な画材を使った“らくがき体験”ができる空間として子どもたちに提供しました。
▼“壊す前”の建物が地域とつながる場へ

「普段なら落書きって絶対親に怒られる。でも解体祭なら親と子がニコニコ笑い合いながら落書きができる。どうせ壊すから費用もかからない。そういう笑顔が作れる会社は他にはないと自負しています。解体がきっかけになって人が集まり、次の再生へとつながっていく。解体祭はそういう奇想天外なことをやっているわけです」(山原氏)
セルテの解体祭には1,000名を超える来場者となりました。過去最大規模での開催で、屋外では全国15の自治体によるマルシェが開かれたり、キッチンカーが集まったりと、会場はまさに“おまつり”の雰囲気。参加者はそれぞれの思い出を胸に、セルテとのお別れの時を過ごしました。
▼セルテ解体祭 子どもたちのらくがき

解体を始まりに、まちもひとも循環
この「循環」の思想は、環境面での取り組みにもつながっています。
山原氏は「解体工事は終わりではなく、はじまり。人も街も循環していかなければならないし、我々が出すゴミも循環していかなくてはいけない」と話します。
都市テクノは大学や民間企業と連携し、コンクリート塊(ガラ)や木材をアップサイクルする取り組みを様々始めています。
坂氏は「コンクリート塊から製造される再生砕石は首都圏での利用用途が減少しているのに加え、建設混合廃棄物は分別が困難かつリサイクルされず埋め立て処分されているという課題があります。そこで処分場や建材メーカー、商社と「サーキュラーシティー・コモンズ」というコンソーシアムを組み、CO2固定能力を有する再生砕石やリサイクル砂をインターロッキングブロックやコンクリートの舗装構成材料や路盤材、敷砂として活用する取り組みを始めました。実際に都内のコインパーキングや広域環境開発(株)敷地内で実証実験中です。また、LCCO2の試算も行っています。」
▼建設再生資源を舗装構成材料として利用したインターロッキングブロック舗装

取り組みのきっかけの一つもやはり解体祭にあったといいます。「第1回の解体祭のときに出会った方からの紹介が、大学教授やメーカーの方へと波及して、今回のコンソーシアムの立ち上げへとつながった形です。将来的には解体現場から出た廃棄物が再生されて次の新しいビルに使われるなど、商品化することを目指しています」(坂氏)
▼建設再生資源を舗装構成材料として利用したコンクリート舗装

脱炭素の「見える化」:Scope1,2,3の算定とLCA制度化への対応
こうした取り組みを進める中で、都市テクノは次のフェーズとして「温室効果ガス(GHG)排出量の見える化」にも取り組んでいます。
建築物LCA(ライフサイクルアセスメント)の制度化を見据え、自社の直接排出(Scope1)、間接排出(Scope2)、サプライチェーン全体(Scope3)の算定を実施し、ホームページにも掲載しています。
「これからは、想いだけでなく環境負荷を客観的に示す責任がある。現在、過去年度分の算定が終わったため、今後は削減に向けた具体的取り組みを実施予定です。」(坂氏)
高度な技術と都市再生への思い
解体業は長年の経験の中で蓄積・承継されてきた高度な技術によって現場は成り立っていいます。
「私たちの役割は、単に目の前の解体作業に全力を尽くすことだけではありません。解体を『次の未来へとつなぐプロセス』と捉え、壊した後に何が生まれるか、その再生にどう貢献できるかを常に考えています。そのために、周囲への安全配慮や作業効率といった高度な技術の研鑽は不可欠。確かな技術力という土台があってこそ、都市再生への思いが形になると信じています」(山原氏)
▼都市テクノ 解体からはじまる新たな循環型共生社会モデル

出典:都市テクノホームページ
確かな技術と、都市再生への思いが都市テクノの両輪です。
「我々が目指しているのは、ひもとく(解体)→ねづく(街づくり)→つなぐ(価値づくり)の循環です」と山原氏。「解体だけなら一方通行。でも解体祭を開くことで、関係人口がどんどん増えている。自治体とのご縁でマルシェが開けましたし、産学連携も続いています。解体を始まりの一つとして、地域の活性化や、地域同士のつながり、人と人とのつながりを生み、我々もいろいろな人とのつながりをもつことができていると思います。こうしたご縁を機に、循環型共生社会モデルの実現にさらなる貢献を続けていきます」
(了)

株式会社都市テクノ
取締役 事業本部 本部長 山原 善光 氏
事業本部 営業部 企画課 坂 桃子 氏
※組織名・役職などの情報は取材当時(2026年3月)のものです。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。









