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建設業のカーボンニュートラル取り組みガイド|現場で実践すべき事例と脱炭素の3ステップ

建設業のカーボンニュートラル取り組みガイド|現場で実践すべき事例と脱炭素の3ステップ

2050年カーボンニュートラル実現に向け、建設業はScope3まで含めると国内排出量の1割強を占める主要セクターとして、抜本的な対応を迫られています。大手ゼネコンや発注者のサプライヤー基準には脱炭素実績が組み込まれ始め、対応の遅れが受注機会の喪失や契約解消につながるリスクも現実化しつつあるのが現状です。

本記事では、日本の脱炭素目標と建設業の責務、施工現場での電動重機・低炭素資材の導入、自社排出量の算定から再エネ電力切り替えまでの3ステップを解説します。また、自治体補助金や建設DXを活用した最新動向、業界事例も解説していますので、自社のカーボンニュートラル取り組みを具体的に進めたい建設業の方は参照してみてください。

カーボンニュートラル取り組みの重要性と建設業界の現状

カーボンニュートラル 取り組み

2050年カーボンニュートラル実現に向け、建設業界はCO2の主要排出セクターとして重要な責務を担っています。日本の脱炭素目標における建設業の位置づけや、サプライチェーン排出量の考え方、取り組みを放置するリスクと得られる経営メリットについて解説します。

日本の脱炭素目標と建設業の責務

建設業界は2050年カーボンニュートラル達成において中核を担う存在です。日本政府が国家目標として温室効果ガス実質ゼロを宣言した以上、CO2排出量の大きい建設分野でも具体的な取り組みが避けられません。

例えば、住宅・建築物のZEB化や省エネ基準適合、施工現場での重機燃料の脱炭素転換、建設廃棄物のリサイクル徹底などが該当します。さらに改正地球温暖化対策推進法など関連法の整備も加速しており、コンプライアンス対応の観点からも、企業として早急な行動が求められる状況です。

出典:環境省/地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画

サプライチェーン排出量(Scope 3)の考え方

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みでは、自社の直接排出量だけでなくサプライチェーン全体での排出量管理が不可欠です。それぞれ次のように分類されます。

Scope 該当
Scope1 自社の燃料燃焼などによる直接排出量
Scope2 購入電力・熱の使用に伴う間接排出量
Scope3 上記以外の間接排出量

Scope1は建設業では重機や社有車の軽油消費が該当し、Scope2は現場仮設電力や事務所照明が該当します。Scope3は、GHGプロトコルで15カテゴリに分類されます。建設業ではセメントや鉄骨など建材調達、資材輸送、建設廃棄物処理が主要カテゴリです。

全体像を可視化すれば排出量のホットスポットを特定でき、優先度の高い削減施策に経営資源を集中できます。

出典:環境省/サプライチェーン排出量全般

取り組みを放置するリスクと経営メリット

カーボンニュートラルへの取り組みは、もはや経営リスク管理と競争力強化の両面で避けられない選択肢です。GX-ETSなどカーボンプライシングの本格運用が進めば、化石燃料に依存した事業はエネルギーコストの上昇を直撃します。

建設業ではCO2削減実績がないと大手ゼネコンや発注者のサプライヤー基準を満たせず、契約解消につながるケースも出てきました。一方で早期に動けば、省エネによるコスト削減、グリーン融資など資金調達の優遇、環境意識の高い人材獲得、取引先との信頼構築といった成果が得られ、自社の知名度や競争力向上に直結します。

建設業のカーボンニュートラル取り組み事例と具体策

建設業のカーボンニュートラル達成には、現場で実装可能なハード・ソフト両面の具体策が欠かせません。施工現場での電動重機・低燃費車両の導入、低炭素資材の採用とカーボンリサイクルの推進、事務所やプレハブのZEB化・省エネ対策まで、すぐに取り組める実践事例について解説します。

施工現場での電動重機・低燃費車両の導入

施工現場のカーボンニュートラル取り組みでは、電動重機や低燃費車両への切り替えが中核となる施策です。なぜなら、建設現場の排出量(Scope1+2)は全体の約0.7%、サプライチェーンを含めると1割強に達し、2050年の現場直接排出量実質ゼロが国家目標として掲げられているためです。

電動ショベルやハイブリッド建機の導入、軽油代替のバイオディーゼル燃料への切り替え、水素エンジン建機の試験運用、エコドライブ研修などが例として挙げられます。自社設備の更新に加え、リース会社や下請けを含むサプライチェーン全体で取り組みを進めることが、削減効果を高めるポイントです。

出典:国土交通省/国土交通省のインフラ分野におけるカーボンニュートラルに向けた取組

低炭素資材の採用とカーボンリサイクルの推進

建設業のカーボンニュートラル取り組みでは、低炭素資材の採用とカーボンリサイクル技術の活用が資材調達の柱です。建材製造由来のCO2はScope3の最大排出源であり、セメント・鉄骨など素材自体の脱炭素が不可欠です。

高炉セメントを使った低炭素コンクリートや回収CO2をコンクリートに固定する技術、リサイクル鋼材や解体木材の再利用、バイオマス由来の建設資材などがあります。建設廃棄物の分別リサイクルを徹底し、調達から廃棄までのライフサイクル全体で環境負荷を抑えることが、競争力強化につながります。

事務所やプレハブのZEB化・省エネ対策

自社事務所や現場プレハブ詰所のZEB化・省エネ対策は、建設業のカーボンニュートラル取り組みの足元施策です。業務部門のエネルギー消費は全体の約2割を占め、第6次エネルギー基本計画では2030年度以降の新築建築物にZEB基準水準が求められており、建設業自身が率先してモデルを示す必要があるためです。

具体策として、次の施策が挙げられます。

  • 本社ビルの高断熱化や高効率空調・LED照明への更新
  • 屋上太陽光発電の設置
  • 現場プレハブの遮熱塗装
  • EMSによる電力管理

自社施設の脱炭素で得たノウハウは、発注者へのZEB提案力強化にも直結します。

出典:資源エネルギー庁/ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に関する情報公開について

カーボンニュートラル取り組みを自社で始める3ステップ

カーボンニュートラル 取り組み

カーボンニュートラルへの取り組みを自社で本格化させるには、明確な手順を踏んで進めることが効率的です。まず現状の排出量を算定・可視化する方法、次に削減計画の策定と専門家への相談の進め方、そして再エネ電力への切り替えとクレジット活用まで、実務担当者が迷わない3ステップについて解説します。

現状の排出量を算定・可視化する

カーボンニュートラル取り組みの最初のステップは、自社排出量の算定・可視化です。現状を数値で把握しなければ、削減施策の優先順位がつけられません。建設業の場合、建機や社有車の軽油・ガソリン消費量、現場仮設電力や事務所電気使用量、サプライヤー提供のセメント・鉄骨の排出原単位などを集計し、Scope1・2・3別にCO2排出量を算出します。

手作業では負担が大きいため、クラウド型算定ツールや管理サービスを活用すれば、データ収集から可視化まで自動化でき、継続的な進捗管理も容易です。

削減計画の策定と専門家への相談

排出量を可視化したら、次は削減計画の策定と専門家への相談です。建設業は重機更新サイクルや発注者要請対応など固有論点が多く、自社だけで実情に即した計画を立てるのは難しいためです。

まず2030年・2050年に向けた中長期削減目標を設定し、経営層が方針を社内外に明確に打ち出します。脱炭素コンサルや自治体の専門家派遣制度の活用、SBT認定取得、PDCAサイクルでの定期見直しも有効です。

トップダウン方針と現場参加型の実行体制を組み合わせれば、カーボンニュートラルに対する取り組みが社内に浸透します。

再エネ電力への切り替えとクレジット活用

3ステップの最後は、再エネ電力への切り替えとクレジット活用です。設備刷新には時間がかかる一方、電力プラン変更は短期間でScope2排出量を大幅に下げられるためです。

再エネ100%電力プランや非化石証書付き電力への契約変更、本社・現場事務所への太陽光パネル設置による自家消費、J-クレジットやグリーン電力証書の購入、植林事業への参画などが対象です。建設業のように建機由来など削減困難な排出が残る業種では、カーボン・オフセットを組み合わせる取り組みが、カーボンニュートラル達成の現実解です。

カーボンニュートラルに関する建設業の官民連携・最新動向

自社単独の取り組みには限界があり、業界全体の流れや外部リソースの活用がカーボンニュートラル達成の鍵を握ります。建設業の官民連携・最新動向について解説します。

他社との共同開発・協創事例の活用

他社との共同開発や協創事例の活用は、建設業のカーボンニュートラルに対する取り組みを加速させる有力な手段です。革新的建機や低炭素コンクリートなど新技術の開発はコストとリスクが大きく、一社単独では現場実装まで持ち込みづらいためです。

例えば、ゼネコンと建機メーカーによる電動・水素建機の共同開発、セメントメーカーとの低炭素コンクリート実装、エネルギー・IT企業を巻き込んだCO2見える化基盤の構築などが代表的な協創パターンです。業界共通の算定・報告ルールを共同整備すれば、サプライチェーン全体の排出データの透明性と信頼性も高まります。

自治体の補助金制度や認定制度の活用

自治体の補助金制度や認定制度の活用は、コスト負担を抑えながらカーボンニュートラル取り組みを進める実利的な手段です。ゼロカーボンシティを宣言する自治体が全国で広がり、地域脱炭素ロードマップに沿った支援メニューが整備されています。

ZEB改修・再エネ設備導入への補助金、公共工事入札時の脱炭素企業加点制度、グリーン購入対象認定、自治体独自の優良企業表彰などもあります。環境省の脱炭素ポータルで補助・委託事業や地域の取り組み事例を定期的にチェックし、地元優遇枠を取りに行く動きが効果的です。

建設DXによる現場効率化と脱炭素の融合

建設DXとカーボンニュートラル取り組みは表裏一体の関係にあり、現場効率化が排出量削減に直結します。AIやIoTで重機稼働や工程を最適化すれば、燃料消費や手戻り工事が減り、結果としてCO2排出量も下がります。

次のような取り組みが具体例として挙げられます。

  • AIによる重機稼働分析と無駄稼働の削減
  • BIM/CIM活用による設計・施工段階での手戻り防止
  • IoTセンサーでのCO2排出量リアルタイム計測
  • 排出データ一元管理プラットフォームによるステークホルダー報告

DX投資は生産性向上とコスト削減、脱炭素を同時に実現する一石三鳥の取り組みです。

建設業界におけるカーボンニュートラルに関する事例

他社の具体的な取り組みを知ることは、自社のカーボンニュートラル施策を立案する上で大きなヒントです。大手ゼネコンによる先進的な先行事例について紹介します。

株式会社大林組

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、低炭素資材の活用推進の一環として、カーボンオフセットにより製造時CO2を100%削減した鉄筋を、大林組技術研究所(東京都清瀬市)において建設中の実験棟「オープンラボ3(OL3)」で、第2期部分の基礎配筋に採用します。本鉄筋の建物への適用は国内で初めてとなります。

背景

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、リサイクル素材や、天然素材、環境負荷に配慮された技術を活用した建材開発が進められています。一方、建物の主要部材として多く使用される構造用鉄筋は、鉄筋製造時に多くのCO2を排出しており、建設段階における環境負荷低減に向けた課題の一つとなっています。

取り組み内容

今回、リユース材の活用などにより建設時のCO2排出量の削減を目指すOL3新築計画の第2期部分の基礎・地中梁主筋部において、東京鉄鋼株式会社(本社:栃木県小山市)製のCO2削減鉄筋「タンカロン」を採用しました。

本鉄筋は、同社の環境リサイクル事業における廃棄物処分技術により創出したCO2削減量を、鉄筋製造時に生じるCO2にオフセットして割り当てることで、鉄筋製造時のCO2排出量を100%削減した鉄筋です。

今後の展望

大林組は、建設現場での資源の有効活用に積極的に取り組み、環境に配慮した資材を採用することで、サステナブルな社会の実現を目指し、大林グループの長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050」で掲げる脱炭素社会の実現に貢献します。

出典:カーボンオフセットで脱炭素化した鉄筋を国内で初めて建物に採用|2025.9.2|株式会社大林組

清水建設株式会社

清水建設(株)<社長 新村達也>はこのほど、CO2の固定効果があるバイオ炭を混合する環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を国土交通省北陸地方整備局発注の「利賀ダム本体建設(第1期)工事」(富山県南砺市)サイト内の仮設構造物である骨材洗浄プラントの躯体に100m3打設しました。

SUSMICS-Cは、木質バイオマスを炭化させたバイオ炭を混ぜ合わせた環境配慮型コンクリートで、木質バイオマスが成長過程で吸収した大気中のCO2を難分解性の炭素としてコンクリート内に固定します。使用するバイオ炭は、炭素含有率が約90%と非常に高く、1kgあたり実質2.6kgのCO2固定効果があります。一方、SUSMICS-Cの製造には、特殊な製造プラントが不要であり、生コンプラントのミキサにバイオ炭を手投入するだけで製造できることも大きな特長です。

骨材洗浄プラントの躯体に打設したSUSMICS-Cには、1m3あたり細骨材置換でバイオ炭20kgを混合しました。製造時のCO2排出量が少ない高炉セメントと組み合わせた結果、強度レベル(24N/mm2)が同等で普通ポルトランドセメントを使用するコンクリートと比較すると63%のCO2排出削減効果を有し、今回の打設量100m3に対する定量的なCO2削減量は13.5トンと試算されます。また、品質・施工面では、普通コンクリートと同等のスランプ経時変化特性やポンプ圧送性、所定のワーカビリティーや圧縮強度、土木の有筋構造物に対する十分な施工性を備えていることを確認できました。

なお、SUSMICS-Cは、わが国が国連に報告する温室効果ガスインベントリ(温室効果ガス排出・吸収目録)の対象技術です。また、CDR(Carbon Dioxide Removal:CO2除去)技術に該当する環境配慮型コンクリートであり、国土交通省発注工事で現場打設されたのは今回が初めてです。

当社は、SUSMICS-Cをさまざまな工種・構造物へ幅広く展開すべく引き続き研究開発・実証を重ね、脱炭素社会の実現に寄与する考えです。

出典:環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を国土交通省発注工事で初打設|2026.5.14|清水建設株式会社

大成建設株式会社

大成建設株式会社(代表取締役社長:相川善郎)は、2024年4月1日付で土木本部土木技術部に「CCS事業推進室」を新設し、CCS事業に向けた活動を本格化します。

2016年に発効したCOP21パリ協定により、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」との目標が設定され、日本を始めとする数多くの国が2050年でのカーボンニュートラルの目標を掲げました。その目標達成に向け、昨今世界各地で頻発する気象変動をもたらす地球温暖化の要因であるCO2の削減策として、CCSの重要性が国内外でますます認識されてきています。

日本では2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、2022年にCCS長期ロードマップ検討会が開催され、2023年3月に公表された最終とりまとめの中で、2030年までの事業開始を目標とし事業者主導による「先進的CCS事業」を選定し、国により集中的に支援する方針が示されました。また、2050年には年間1.2億トン~2.4億トンのCO2の貯留が必要となるという普及見通しが掲げられ、2024年にはCO2の貯留事業に関する法律も成立する予定であり、日本国内でのCCS事業実施の準備が着々と進んでいます。

CO2の地中貯留技術は、1970年代より石油増進回収法(EOR)の一つとして開発され、1990年代からは天然ガスに含まれるCO2を分離し、地中の深部塩水層に圧入する方法が開発・適用されてきました。CCSに必要とされる技術は、石油・天然ガスを開発・生産する技術と共通部分が多く、これまで石油開発会社が中心となって技術開発が行われてきました。

一方、当社は2000年初頭より、CO2の地中貯留シミュレーションの技術開発を開始し、海外プロジェクトへの参画に加え、国内の主要CCS実証プロジェクトで貯留シミュレーションを担当し、数々の実績を積み上げて来ました。昨今では環境省実証事業や二酸化炭素地中貯留技術研究組合等に参画しています。その実績が認められこれまでゼネコンとして唯一Global CCS Instituteや石油技術協会への加入が認められてきました。

さらに、2022年4月には土木本部土木技術部内にCCSプロジェクト推進チームを設置し、「先進的CCS事業」に参画すべく活動を開始しました。また、2023年7月には独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による「先進的CCS事業の実施に係る調査」の公募に応募し、「日本海側東北地方CCS」の事業が選定されました。

出典:カーボンニュートラル実現に向けCCS事業推進室を新設|2024.4.3|大成建設株式会社

まとめ

カーボンニュートラル 取り組み

本記事では、建設業のカーボンニュートラル取り組みについて、業界の現状、現場の具体策、自社で始める3ステップ、官民連携の最新動向、業界事例まで解説しました。まず着手すべきは、建機・社有車・現場電力など自社のScope1・2排出量を算定し、削減ホットスポットを特定することです。

次に、電動重機や低炭素コンクリート、ZEB化など現場施策を計画化し、再エネ電力契約やJ-クレジットで短期効果を出します。並行して、自治体補助金やZEB加点制度、建設DXによる工程最適化を組み合わせれば、コスト・受注力・脱炭素を同時に高められます。自社のカーボンニュートラルを進めたい建設業の方は参照してみてください。

株式会社リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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