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GX推進機構とは?設立の背景や役割、今後の動向について解説

GX推進機構は、排出量取引制度や炭素賦課金制度など脱炭素を推進する制度を一体的に管理・運営する機関です。脱炭素を目指す企業にとって、このGX推進機構の役割や金融支援策は把握しておくべき重要な要素のひとつです。

本記事では、建設業界の方向けにGX推進機構について解説をします。また、GX推進機構が行う金融支援策や今後の動向も解説しているので、脱炭素に取り組む企業担当の方はぜひ参照してください。

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GX推進機構とは

GX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)は、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」に基づき設立された、「グリーントランスフォーメーション(GX)」の実現を目指す組織です。GXとは化石燃料の使用を最小限に抑え、クリーンエネルギーへの転換を推進する改革や取り組みを指します。

GX推進機構の主な役割は、排出量取引制度と炭素賦課金制度を一体的に管理・運営することです。化石燃料に対する負担金の徴収や、特定事業者への排出枠割り当て、関連する入札業務の実施などを担当します。

GX推進機構は日本経済の脱炭素成長型への円滑な移行をサポートし、持続可能な社会の実現に貢献しています。企業や産業界が環境負荷を減らしながら成長できる経済構造への転換を促進する中核的な存在です。

GX推進機構が設立された背景

GX推進機構の設立背景には、世界的な脱炭素の流れが大きく影響しています。近年、脱炭素を目指す国や地域が急激に増加し、各国の経済規模は世界全体のGDPの約94%と圧倒的な割合を占めるまでになりました。

また、金融市場も大きく変化し、あらゆる産業が脱炭素社会への移行を競う時代です。これにより、環境問題への対応力が、企業の競争力だけでなく国家の経済力にも直結する新たな局面を迎えています。

この脱炭素の世界的なトレンドを背景に、経済産業省は今後10年間で150兆円を超えるGX投資の実現を目指し、GX推進法を制定しました。GX推進法に基づいて設立されたGX推進機構は、日本の脱炭素と経済成長の両立を推進する中核的な役割を担う組織として活動を開始しています。

参照:経済産業省/我が国のグリーントランスフォーメーション政策

参照:経済産業省/GX推進機構の金融支援業務に関する支援基準を定めました

関連する法令

GX推進機構の活動基盤となる法令は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」として正式に定められています。世界的な脱炭素の潮流を背景に、日本における脱炭素型経済への円滑な移行を推進することを目的とした法律です。

法令の中核的内容として「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」の策定や「脱炭素成長型経済構造移行債」の発行に関する規定があります。さらに、化石燃料採取者等からの賦課金徴収システムや、特定事業者に対する排出枠割り当てに係る負担金の徴収方法も明確に定めています。

「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」の最終的な目標は、国民生活の質的向上と国民経済の健全な発展に寄与することです。そのために、国と事業者それぞれの責務が明確に規定されており、社会全体で脱炭素に取り組む法的枠組みが構築されています。

そもそも「GX」とはなにか

GXとは、カーボンニュートラルへ向けて社会経済システムを根本から変革する取り組みです。従来の化石燃料中心のエネルギー構造から、クリーンエネルギーを主軸とした産業構造へと移行させることが本質にあります。

GXの特徴は、脱炭素への対応を単なる環境対策としてではなく、新たな経済成長の機会として積極的に捉えている点です。温室効果ガスの排出量削減の環境目標と、持続的な経済成長およびエネルギーの安定供給の経済目標を同時に達成することを目指しています。

DXとの関連性

GXの実現には、DX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠な要素として深く関連しています。なぜならば、社会をDX化することにより、GXがより効率的に行われるからです。

また、DXによって企業活動全体にデジタル技術の導入が進むことで、実質的な環境負荷の軽減につながります。デジタル化によって実現される節電対策や紙資源の使用削減、エネルギー効率の高い新設備の導入などは、いずれも温室効果ガスの排出量抑制に直接的な効果をもたらします。

GXが注目される理由・背景

GXが国際的に大きな注目を集めるようになった背景には、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定があります。パリ協定が国際社会に脱炭素への明確な方向性を示したことで、世界的なGXの動きが本格化しました。

2021年のCOP26終了時点では、世界の154カ国と1の地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。これは、国際社会が脱炭素に向けて、積極的な姿勢を示していることの表れです。

この世界的な流れを受け、日本でも政府の重点投資分野としてGXへの投資が明確に位置づけられました。特に、経済成長戦略の中核要素としてGXが注目されています。

気候変動対策に対するさまざまなステークホルダーの関心は年々高まっており、世界的なESG投資市場の急速な拡大がGXへの取り組みを後押ししています。

GX推進のメリット

GXの推進には、企業や社会にとってさまざまなメリットがあります。直接的な効果として挙げられるのが「エネルギーコストの削減」です。温室効果ガスの排出量削減を達成するために不可欠な省エネルギー対策や再生可能エネルギーの積極的な活用は、長期的なエネルギー関連のコスト削減につながります。

また企業にとってのメリットとして挙げられるのが、ブランドイメージの向上です。環境問題に真摯に向き合う企業姿勢を社会に示すことで、企業イメージの向上につながります。

さらに、補助金など公的予算の獲得も見逃せないメリットです。各国政府や自治体が脱炭素に向けたさまざまな支援策を展開しており、GXに積極的に取り組む企業は、公的支援の対象になりやすくなります

GX推進機構の役割

GX推進機構の役割として、以下3つの要素が挙げられます。

  • 民間企業への投資支援
  • 化石燃料賦課金と特定事業者負担金の徴収
  • 排出量取引制度の運営

ここでは、GX推進機構の役割について詳しく解説します。

民間企業への投資支援

GX推進機構の役割のひとつが、民間企業への投資支援です。投資支援では政府からの予算措置を効果的に活用し、GX投資に積極的に取り組む民間企業に対してさまざまな金融支援を展開しています。債務保証や直接出資などの手法を通じて、企業の脱炭素プロジェクトや技術革新を財政面からバックアップすることがGX推進機構の役割です。

またGX推進機構は、民間金融機関等が取り切れないリスクを補完する役割を果たしています。脱炭素技術や新たなビジネスモデルの開発には従来の金融機関では評価が難しい革新的要素が含まれることが多く、資金調達が課題になりがちです。

GX推進機構はリスクの一部を引き受けることで、民間だけでは十分な投資が行われにくい分野でも、必要な資金が流れる環境を創出しています。

化石燃料賦課金と特定事業者負担金の徴収

GX推進機構は、日本の脱炭素社会への移行を実現するための資金調達と排出規制の両面の役割を担っています。なかでも主要とされる機能が「化石燃料賦課金」と「特定事業者負担金」の徴収業務です。

化石燃料賦課とは、化石燃料の消費によって排出されるCO2などの温室効果ガスの量に応じて課される費用です。2028年以降、化石燃料の輸入業者などに対して、輸入する化石燃料から排出されるCO2量に基づいて賦課金が徴収されます。

一方、特定事業者負担金は、CO2排出量の多い発電事業者に対して課される負担金です。2033年度から、特定事業者にはCO2排出量枠が割り当てられ、有償または無償で配分されます。負担金は排出量に比例して発生するため、多く排出する事業者ほど大きな財政負担を負う仕組みです。

排出量取引制度の運営

GX推進機構は、排出量取引制度の運営も担っています。排出量取引制度はGXに向けた実効性ある枠組みとして位置づけられ、段階的に導入が進められています。2026年度から、排出量取引制度が本格的に導入される予定です。

排出量取引制度は、CO2などの温室効果ガスの排出に上限を設け、排出枠を市場で取引可能にすることで効率的な排出削減を促します。また、GX推進法に基づいて、GX推進機構は2033年度から開始される発電事業者を対象とした排出枠のオークション制度の実施に関する事務を担当します。

オークション制度は、排出枠を市場原理に基づいて配分する効率的かつ透明性の高い排出削減の仕組みです。

参照:内閣官房GX実行推進室/GX実現に資する排出量取引制度の検討の方向性

GX推進機構が行う金融支援について

GX推進機構の金融支援は、GX推進法に基づく明確な金融支援基準に則って行われ、主に債務保証や出資などの形態をとります。GX推進機構の金融支援の基本姿勢として特徴的なのは「取るべきリスクはしっかり取る」という積極的な姿勢です。

リスク回避が日本全体のGX推進に停滞をもたらす可能性があることを認識し、必要なリスク補完を積極的に行う方針を示しています。

金融支援の実施判断では、以下のような多面的な視点での評価が行われます。

  • 支援対象事業の持続可能性
  • 産業競争力や経済成長への貢献
  • 環境改善効果
  • 人的資本の蓄積や良質な雇用創出などの社会的インパクト
  • GX政策への貢献度
  • 民間金融の呼び水効果

さらには、新たな金融手法の発展への寄与なども総合的に勘案されることが特徴です。

GX推進機構における今後の動向

GX推進機構今後の動向として、GX経済移行債を通じて今後10年で20兆円規模の支援が計画されており、GX推進機構が資金配分の重要な役割を担います。大規模投資の財政的持続可能性を担保するために、2028年以降に導入される化石燃料賦課金や2026年から本格化する排出量取引制度などのカーボンプライシング制度が設計されています。

各種制度によって得られる資金は、2050年までにGX経済移行債の返済に充てられる計画で、将来的な安定財源としても期待されている財源です。

GX推進機構の金融支援戦略として特に重要視されているのが、公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法である「ブレンデッド・ファイナンス」です。さまざまなリスクレベルに応じて、公的資金と民間資金を最適に組み合わせる手法で、限られた公的資金の効果を最大化する狙いがあります。

GXに取り組む建設業界の事例

ここでは、GXに取り組む建設業界の事例として以下3つの企業を紹介します。それぞれの事例、自社におけるGXの参照にしてみてください。

株式会社大林組

大林組は、2050年までに自社のCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指し、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー技術の開発、ICTの活用を中心に取り組んでいます。

まず、再生可能エネルギーの導入では、太陽光発電や風力発電を自社施設や建設現場に取り入れ、施工時のエネルギー使用に伴うCO2排出を削減しています。また、再生可能エネルギー由来の電力を積極的に調達し、事業全体の脱炭素化を進めています。

次に、省エネルギー技術の開発では、建築物の設計段階から環境負荷を低減する高効率建築設計を採用し、断熱性能向上による冷暖房エネルギーの削減を実現しています。さらに、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を推進し、省エネ技術と再生可能エネルギーを組み合わせた建築を提案することで、建物のライフサイクル全体のCO2排出量削減を目指しています。

また、建設現場でのICT活用では、BIM(Building Information Modeling)を活用し、設計から施工・管理までのデータ一元化により、資材ロスを削減しCO2排出を抑制しています。さらに、建設機械の電動化や遠隔監視システムの導入により、エネルギーの効率的な運用を実現しています。

これらの取り組みにより、大林組は建設業界全体の脱炭素化にも貢献し、持続可能な社会の実現を目指しています。

引用:建設業で活かせるカーボンニュートラル事例集|2025.02.06|EcoNiPass

株式会社竹中工務店

竹中工務店は、1月17日に建設業界向けGHG(温室効果ガス)排出量算定・可視化ツール「zeroboard construction」を建設現場に順次導入すると発表しました。建設工事現場で実証実験を行い、2月から新築建設工事現場での導入を開始します。

建設業界は、設計・建設・運用・解体・廃棄といった建築物のライフサイクルそれぞれに多くの事業者が関わっています。ゼロボード社によると特に建設段階においては、「工種・施工ごとや委託業者ごとのデータ収集に課題を抱えていた」とされています。

「zeroboard construcrion」では事業者の管理システムやIoTデバイスとのデータ連携、作業日報などからのデータ収集などを行い、建設現場全体のGHG排出量を日時単位で算定・可視化します。将来的には、建築物の設計段階におけるGHG予測排出量算定機能の実装も目指しています。

引用:建設業界の脱炭素とデジタル活用事例②|2023.02.09|新電力ネット

戸田建設株式会社

戸田建設は、1月末から1か月間、熊本県内で「B30燃料」を建設機械に利用する実証実験を行いました。B30燃料とは、菜種油、ひまわり油、大豆油、コーン油などを原材料とした液体燃料(植物性廃食用油)であるバイオディーゼル燃料を軽油に30%混合したものです。このB30燃料を建設機械や鉄骨・スタッド溶接用の発電機に利用してエンジンに与える影響を検証しました。

工事現場で動かす建設機械・重機は化石燃料である軽油の使用が避けられず、CO2の排出源となっています。戸田建設では、燃料添加剤を入れて燃費を向上させるほか、軽油よりも排出量が少ない天然ガス由来の軽油を使って排出係数を下げる取り組みを行っています。

他にも、低炭素の資材調達、鉄スクラップを溶かして作る電炉材の利用や、内装に再生材を使うことなどを社外にも積極的に呼びかけています。2021年6月に完成した筑波技術研究所、環境技術実証棟(グリーンオフィス棟)ではZEBの認証も取得しています。

引用:建設業界の脱炭素とデジタル活用事例②|2023.02.09|新電力ネット

まとめ

GX推進機構は日本経済の脱炭素成長型への円滑な移行をサポートし、持続可能な社会の実現に貢献しています。企業や産業界が環境負荷を減らしながら成長できる経済構造への転換を促進する中核的な存在です。

GX推進機構の設立背景には、世界的な脱炭素の流れが大きく影響しています。近年、脱炭素を目指す国や地域が急激に増加し、各国の経済規模は世界全体のGDPの約94%と圧倒的な割合を占めるまでになりました。

本記事では、建設業界の方向けにGX推進機構の解説をしました。GX推進機構の具体的な役割や、金融支援の内容を詳しく紹介しているため、今後GXに取り組むことを考えている企業担当者の方は参照してみてください。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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