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バイオディーゼル燃料とは?概要とメリット・デメリットについて解説

環境問題に配慮したバイオディーゼル燃料が、近年注目を集めています。従来の燃料に代わる存在として、今後もバイオディーゼル燃料の普及は進んでいくことが予想されます。このため、さまざまな業界から注目されており、実用化された際には導入が進んでいくことが想定される燃料です。本記事では、バイオディーゼル燃料の基本とメリット・デメリットについて解説します。

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バイオディーゼル燃料とは何か?

バイオディーゼル燃料とは何か

バイオディーゼル燃料は生物由来の油から作られる燃料です。生物由来の燃料のため、燃焼させてもCO2排出はカウントされない特徴があります。以下では、バイオディーゼル燃料の概要を解説します。

廃棄予定の使用済み食用油を使った燃料

バイオディーゼル燃料は廃棄される使用済みの食用油を用いて作られた燃料を指します。精製には菜種油や廃食用油などが使用され、ディーゼルエンジン用のバイオ燃料として活用されています。飲食店や各家庭で使用された食用油は、多くても数回使用すると廃食用油として処理されることが一般的です。

これまで廃食用油は事業者や行政などにより回収され、回収された廃食用油は飼料用の製品などにリサイクルされて再利用されていました。しかし、昨今では廃食用油をバイオディーゼル燃料に精製し、燃料として再利用するケースが増えています。

バイオ燃料とは?

バイオディーゼル燃料は、ディーゼルエンジン用の「バイオ燃料」に分類されます。バイオ燃料とは食品廃棄物のほか、植物や農作物などを用いて製造される燃料のことです。バイオディーゼル燃料は軽油の代わりに使用できるため、幅広い用途に使用できます。製造過程も含めて環境に優しい特徴があるため、地球全体の課題である環境対策のために、今後広く活用される可能性があります。

また、バイオ燃料にはバイオディーゼル燃料のほかにも、さまざまな種類があります。例えばガソリンと混ぜて自動車などの燃料として使用される「バイオエタノール」は、サトウキビなどの作物を発酵・蒸留して作成される燃料です。そのほか微細藻類・木材チップ・製材廃材などで作られる航空燃料である「バイオジェット燃料」も、バイオ燃料の一種です。

バイオ燃料には多くの種類があるため、バイオディーゼル燃料も含めて多くの用途での使用が期待されています。

バイオ燃料の利用率は拡大している

バイオ燃料は植物油の新たな用途として開発されて以来、世界での利用率が増加しています。生産量は右肩上がりとなり、2021年には4,905万t、2022年には5,218万t、2023年には5,567万tが生産される見込みでした。EUでは2022年に623万tの菜種油がバイオディーゼルの製造に使われています。

そのほか、アメリカ・アルゼンチン・ブラジルでは大豆油が、インドネシアではパーム油がバイオディーゼルの材料として使用される傾向にあります。

参照:植物油の消費|日本植物油協会

次世代バイオ燃料について

現在のバイオ燃料だけでなく、昨今では「次世代バイオ燃料」にも注目が集まっています。次世代バイオ燃料とは、石油由来のディーゼル燃料やジェット燃料に代わる燃料です。

次世代バイオ燃料は、軽油など石油を使った燃料と同じ分子構造を持つ炭化水素から精製されます。従来のバイオディーゼル燃料は、分子構造中に酸素を含んでおり、FAME(脂肪酸メチルエステル)などと同じものです。そのため従来のバイオディーゼル燃料だけでは石油燃料の完全な代わりは担えず、軽油に混ぜる工程が必要でした。

しかし、分子構造が軽油と同じ次世代バイオ燃料であれば、軽油と変わらず100%の配合でエンジンなどに利用できます。さらに、食料と競合しない、とうもろこしの芯などの食品廃棄物のバイオマス原料を使用している点も特徴です。今後は次世代バイオ燃料の普及にも注目が集まることが予想されます。

バイオディーゼル燃料の製造方法

バイオディーゼル燃料の製造方法

バイオディーゼル燃料は、複数の製造プロセスを経て精製されます。以下では、バイオディーゼル燃料の基本的な製造方法を解説します。

廃食用油を収集して前処理を行う

バイオディーゼル燃料を製造するには、まず廃食用油を収集して前処理を実施します。廃食用油となる植物油を収集し、油に含まれている水分やカスを取り除きます。

反応工程と精製プロセスを進める

前処理を終えたら、反応工程と精製のプロセスを進めます。反応工程では、植物油をメタノールと混ぜ合わせます。具体的にはメタノールと反応をサポートする触媒を入れてかき混ぜる工程が必要です。脂肪酸とメタノールが結合すると、脂肪酸メチルエステルが作られます。脂肪酸メチルエステルが、バイオディーゼル燃料です。

反応工程で粘度の高いグリセリンが分離されるため、エンジンに使用しても不具合が起こりづらくなります。その後、反応工程で発生したグリセリンと余ったメタノール、水分などを取り除きます。精製工程で取り除かれたグリセリンの廃液は、製造工程で使用される熱源の助燃剤として再利用可能です。

バイオディーゼル燃料の製造工程の随所で無駄なものを極力出さない工夫がなされています。

必要に応じて添加剤を加える

反応工程と精製によって、バイオディーゼル燃料が作られます。精製の際には、必要に応じて添加剤や薬剤を加えることが必要です。添加剤や薬剤が使用されることで、より高い性能を持つバイオディーゼル燃料が作られます。

バイオディーゼル燃料を使うメリット

バイオディーゼル燃料を使うメリット

バイオディーゼル燃料を使うことには、さまざまな点でメリットがあります。バイオディーゼル燃料を使うメリットを把握できれば、より使用する意欲が高まるでしょう。

以下では、バイオディーゼル燃料を使用する主なメリットを解説します。

カーボンニュートラルの実現を近づける

バイオディーゼル燃料の普及は、カーボンニュートラルの実現に近づけることが期待されています。日本は2050年までに、CO2排出量を差し引きでゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指しています。バイオディーゼル燃料が普及することで、CO2の排出量が抑えられ、環境によい影響を与えることが期待されています。

バイオディーゼル燃料を利用する環境が整い、一般化が進むことに伴い燃料の選択肢の1つとなるでしょう。現在、カーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな施策・制度が実施されていますが、バイオディーゼル燃料の利用促進もその一環として今後進んでいく可能性があります。

化石燃料の代替エネルギーの1つとして期待できる

バイオディーゼル燃料は、化石燃料の代替エネルギーの1つと期待されています。化石燃料である石油は枯渇することが予想されているため、世界中で従来の石油由来のエネルギーから脱却する動きが見られます。

代替エネルギーの1つは「再生可能エネルギー」とも呼ばれ、具体的には太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱などです。バイオ燃料であるバイオマスも再生可能エネルギーの1つであるため、そのほかのエネルギーと併用して代替エネルギーの役割を果たす可能性があります。

循環型社会を形成するきっかけになり得る

バイオディーゼル燃料は、循環型社会の要素の1つとして機能することも考えられます。循環型社会とは、大量生産・大量消費・大量廃棄型といった従来の社会構造から脱却した社会を指します。生産・流通・消費・廃棄までを通してリサイクルなどを進めることで、天然資源の消費を抑制し、資源を循環させることが特徴です。

その結果、環境負荷の低減につながり、自然保護に結びつくことが期待されています。循環型社会を実現するためには、何よりもエネルギーの効率的な利用方法を確立する必要があります。バイオディーゼル燃料のように環境負荷の低いエネルギーの存在は、今後もメリットが大きいことから重要視されるでしょう。

CO2排出量を抑えられる

バイオディーゼル燃料は、CO2排出量を抑えられる点もメリットです。生活に欠かせないエネルギーである電気を作り出すために、バイオディーゼル燃料が使用された場合、軽油の使用により排出されるCO2の量と比較して1〜3割程度の排出に抑えられます。(廃食用油由来を使った場合)

つまり、バイオディーゼル燃料を積極的に活用することで、従来と同じエネルギーを使用してもCO2の排出量が削減できます。また、バイオ燃料を使って燃焼時に発生したCO2は排出量としてカウントされません。そのためバイオディーゼル燃料をメインに利用することで、CO2の排出量問題を軽減できます。

選択肢を増やすことでエネルギーセキュリティが向上する

バイオディーゼル燃料によって、国内のエネルギーセキュリティが向上するメリットもあります。エネルギーセキュリティとは、経済や社会情勢などの変化によって大きく左右されることのないエネルギーを、適正な価格かつ安定的に供給できる量を確保することです。

バイオディーゼル燃料を活用することで、エネルギーセキュリティが向上し、より安定した社会を構築できる可能性が高まります。

バイオディーゼル燃料を利用する場合のデメリット

バイオディーゼル燃料を利用する際には、デメリットあるので注意が必要です。具体的にどのようなデメリットがあるのかを確認することで、導入時の失敗を避けられます。以下では、バイオディーゼル燃料の利用時におけるデメリットを解説します。

製造コストがかかる

バイオディーゼル燃料およびバイオ燃料は、従来の化石燃料よりも製造プロセスが多いことが特徴です。また、バイオ燃料を利用する際にかかるコストは、素材収集のコスト・運搬に必要なコスト・精製時のコストなど多種類にわたります。このためバイオディーゼル燃料に偏ると利用時にかかるコストが増大し、企業の負担となる可能性があります。

食料との競合問題

バイオ燃料は、現在サトウキビやとうもろこしといった農作物から生産されるのが一般的です。食料と競合するため、穀物の高騰や食料不足などの社会問題につながる可能性もデメリットの1つす。食料不足に結びついてしまうと、バイオディーゼル燃料の生産がしづらくなる懸念があります。食料と競合しないように、今後はバイオディーゼル燃料の生産量の調整が必要になることが課題です

森林伐採などによる環境問題につながるリスクがある

バイオ燃料の原料は、森林伐採によって収集するものも多い傾向です。原料確保を目的として森林伐採が加速すると、自然環境を破壊してしまう可能性も考えられます。1度破壊された自然が回復するまでには、長い年月がかかるため、環境問題につながります。

また、動植物の生態系に影響を与えてしまったり、土砂災害などの自然のリスクを高めたりすることも考えられます。

バイオディーゼル燃料の国内外における導入動向

バイオディーゼル燃料の導入の動向に関して、政府の方針や諸外国の状況、導入実証における課題をそれぞれ解説します。

政府方針と制度整備の動き

2025年に閣議決定されたエネルギー基本計画で、運輸部門における脱炭素の重要施策としてバイオディーゼル燃料の導入推進が明確に位置づけられました。特に公共交通機関や建設機械、鉄道・船舶など多様な輸送手段への段階的な導入が明記され、温室効果ガス削減目標達成の鍵として注目されています。

また、GX2040ビジョンでは建築物の脱炭素について、使用時のみならず建設から解体までのライフサイクル全体でのCO2排出量の算定・評価を促進する制度構築が盛り込まれています。

技術面では、水素化植物油(HVO)や脂肪酸メチルエステル(FAME)など次世代バイオディーゼル燃料に関するJIS規格の整備検討も進行中です。政府の方針として、品質基準の標準化による安全性確保と市場拡大を目指しています。

諸外国におけるバイオディーゼルの導入状況

世界各国でバイオディーゼル燃料の導入が進んでおり、特にインドネシア、マレーシア、ブラジル、米国などが先進的な取り組みを展開しています。バイオディーゼル燃料の導入が進められている国々は、混合義務制度や税制優遇措置を積極的に導入することで、農業振興と脱炭素の両立を図っています。

高混合率の義務付けもされており、B20(軽油に20%のバイオディーゼルを混合)からB35(35%混合)など高い混合率を前提とした政策が広く普及していることも特徴の1つです。

例えばインドネシアではパーム油を活用したB35プログラムを実施し、マレーシアでもB20政策を推進しています。ブラジルでは大豆由来のバイオ燃料が広く普及し、米国では農業政策と連動した税額控除制度によりバイオディーゼル産業が発展しています。

日本における導入実証と普及の課題

日本ではFAMEの実証試験が空港や建設現場、船舶、鉄道など多様な分野で展開されています。新千歳空港内車両でのB100実証実験をはじめ、オフロード用途を中心にB30~B100の高濃度混合燃料の検証が進められているのが現状です。

一方で、HVOを高濃度で混合した燃料が地方税法上「軽油」と見なされない制度的問題や、公道走行車両に給油できるバイオディーゼル混合率の上限が低く脱炭素効果が限定的である点が課題として挙げられます。さらに供給インフラの整備不足やコスト競争力の課題も普及を妨げています。

バイオディーゼル燃料を活用した事例

バイオディーゼル燃料の活用は、すでにさまざまな場所で実施されています。以下では、バイオディーゼル燃料に関する事例について解説します。

京都市のバイオディーゼル燃料化事業

京都市は家庭から使用済みのてんぷら油などの廃食用油を収集し、バイオディーゼル燃料を精製する事業を実施しています。令和4年度にはごみ収集車や一部の市バスの燃料として、年間約42万リットルを利用した実績があります。

これは年間で約1,000tのCO2を削減したことになるため、バイオディーゼル燃料を活用してCO2排出量を削減した事例として参考になるでしょう。

参照:バイオディーゼル燃料化事業|京都市情報館

ユーグレナ由来原料を100%使用した次世代バイオディーゼル燃料

株式会社ユーグレナは、微細藻類ユーグレナから抽出した油脂のみを原料とした、次世代バイオディーゼル燃料の製造を行っています。製造されたユーグレナ由来原料100%の燃料は、いすゞ自動車株式会社が実施した性能実証試験で、石油由来の軽油と同等の性能があることを証明しています。

ユーグレナは耕作不適地での培養が可能であったり、食用油の材料となる植物よりも油脂生産の効率が高かったりすることが特徴です。そのためユーグレナ由来原料100%の燃料を製造することで、エネルギーの安定供給を実現できる可能性もあります。

参照:ユーグレナ社、ユーグレナ由来原料を100%使用した次世代バイオディーゼル燃料を試製 -いすゞ、性能実証試験を実施-

まとめ

バイオディーゼル燃料は、化石燃料に代わる燃料として注目を集めています。実際にバイオディーゼル燃料を利用した事例も増えているため、今後はさらに導入する企業が増えることが予想されます。この機会にバイオディーゼル燃料の特徴やメリット・デメリットを確認し、具体的な活用方法を考えてみるのもおすすめです。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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