2025/7/31
2025/8/4
茨城県、栃木県、群馬県、山梨県の工事成績評定における脱炭素の加点について解説!

工事成績評定で良い評価を得るには、加点ポイントを押さえることが重要で、中でも環境対策の加点は近年重要となってきています。環境対策、特に脱炭素への取り組みは、工事成績評定にもつながる要素のため建設業界として取り組むべき内容です。
本記事では、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県の脱炭素に向けた具体的な施策を解説しています。また、それぞれの地域が独自に展開している取り組みも紹介しているため、工事成績評定で上位を取るために取り組んでいる方は参考にしてみてください。
工事成績評定の環境対策に対する加点について
工事成績評定では環境対策を実施することで加点対象となることがあります。工事成績評定の環境対策に対する加点について、次の内容で解説します。
- 工事成績評定の概要
- 4つのポイント
- 環境対策の加点とは
それぞれのポイントを詳しく解説します。
工事成績評定の概要
工事成績評定は、社会資本整備の質を高め、優良企業の育成を促進するための評価システムです。これにより、工事の施工状況を適切に評価する仕組みとして機能しています。
工事成績評定は監督・検査とは異なり、会計法や地方自治法による法的義務ではありません。一方で、入札契約適正化法に基づいて閣議決定された適正化指針において、各発注者が実施すべき制度として明確に規定されています。このため、公共事業では工事成績評定に基づいて点数が付けられています。
工事成績評定は、将来の公共工事を担う企業の技術力を適正に評価するために不可欠な要素です。さらに、公共工事における公平な競争環境を担保するための前提条件ともなっており、建設業界の健全な発展に貢献しています。
4つのポイント
工事成績評定で高評価を得るためには、4つの重要なポイントがあります。1つ目が、各自治体のホームページからダウンロード可能な評定のチェックリストを事前に入手することです。評定の内容を事前に把握することにより評価基準を理解し、的確な対応が可能です。
次に、提出書類では正確な作成と適切な提出が求められることが挙げられます。また、基礎的な項目での減点をされないように注意することも重要で、全体評価に大きく影響するため、基本事項の確実な対応が不可欠です。
さらに、新技術の積極的な導入により追加点を獲得する戦略も効果的です。例えば、公共工事では、NETIS(新技術情報提供システム)に登録された技術を活用することで、最大3点の加点が期待できます。
環境対策の加点とは
工事成績評定では、環境対策への取り組みが重要な加点要素です。特に近年は脱炭素の取り組みが積極的に評価されるようになっており、建設業界でも環境配慮が欠かせません。
環境負荷の少ない材料の使用や環境に配慮した施工方法の採用は、社会課題の解決に貢献する取り組みとして加点対象です。具体的な例として、換気効率の良い空調設備の導入は、比較的容易に実施できる省エネ対策として評価されます。
また実務的な対応としては、建設重機に使用する軽油をバイオ燃料と混合したり、完全に代替燃料に切り替えたりすることで、工事現場からの炭素排出量を削減し、脱炭素に貢献できます。
関東地方における工事評定の特徴
関東地方における工事評定の特徴として、それぞれの地域で次の特徴があります。
特徴 | |
茨城県 | 環境保全に関する工夫
環境負荷低減への対策 |
栃木県 | エコキーパー事業所認定制度
環境物品等の使用の推進 |
群馬県 | エコアクション21の登録・認証
群馬県環境GS認定制度の認定 |
山梨県 | 保全への配慮による材料選定・施工方法等の工夫
ISO9001又は14001の認証を取得 新技術活用(NETIS登録技術)の活用 |
各地域の詳細を解説します。
【茨城県】工事成績評定の特徴
茨城県の工事成績評定の特徴として次の内容があります。
- 環境保全に関する工夫
- 環境負荷低減への対策
- 茨城県の工事評定成績ランキング
以下に、それぞれの詳細について解説します。
環境保全に関する工夫
茨城県の工事成績評定では、環境保全に関する取り組みが複数の評価項目に組み込まれています。創意工夫の考査項目内に環境保全に関する独自の評価項目が設けられており、環境に配慮した工夫が加点対象です。
また、品質の評価項目でも環境面への配慮が重視されており、工事中の濁り防止など環境保全に十分注意した施工が行われているかどうかが詳細に評価されます。これにより、水質保全や周辺環境への配慮を促進することが期待されます。
周辺地域の環境保全や生物保護に関する具体的な対策の有無も評価対象です。地域の生態系保全や希少種への配慮など、より広範囲な環境保全活動が評価されます。
環境負荷低減への対策
茨城県の工事成績評定では、環境負荷低減に関する取り組みが重要な評価要素です。出来形および出来栄えの考査項目内に「環境負荷低減への対策」の評価基準が明確に設けられており、環境に配慮した工法や材料選択が優れているかどうかが評価されます。
設備工事でも環境配慮が重視されており、暖冷房衛生設備工事では環境負荷低減への対策が評価ポイントです。省エネルギー設備の導入や効率的なシステム設計など、建物のライフサイクル全体での環境負荷削減を促進します。
茨城県の工事評定成績ランキング
茨城県の工事評定成績ランキングでは、高橋建設工業株式会社が全国的にも1位と優れた評価を獲得しています。高橋建設は昭和44年の創業以来、建設工事を中心に豊富な施工実績を積み重ねてきた実力ある企業です。
また、キムラ工業株式会社は81点の高得点で全国でも11位にランクインしています。建設・土木事業やリサイクル事業を手掛けており、「私たちがつくった道や川がヒトとモノをつなぐ」という社会インフラの重要性を示すコンセプトを掲げた企業です。
常総開発工業株式会社もキムラ工業と同じく11位に位置しています。明治30年創業の長い歴史を持ち、道路や上下水道などの生活インフラ整備から、官公庁施設、ホテル、医療・福祉施設、教育文化施設、商業施設、さらには住宅まで幅広い分野で事業を展開しています。
【栃木県】工事成績評定の特徴
栃木県の工事成績評定の特徴として次の内容があります。
- エコキーパー事業所認定制度
- 環境物品等の使用の推進
- 栃木県の工事評定成績ランキング
以下に、それぞれの詳細を解説します。
エコキーパー事業所認定制度
栃木県は、環境配慮型の建設企業を評価・推進する「エコキーパー事業所認定制度」が特徴的です。エコキーパー事業所認定制度は、自主的な地球温暖化対策を促進するために設けられており、事業活動で地球温暖化対策に関して優れた取り組みを実施している事業所を「エコキーパー事業所」として公式に認定します。
認定は単なる名誉以上の実質的な価値を持っており、栃木県の建設工事総合評価落札方式における「地域活動の実績」の項目で加点対象とされています。さらに、エコキーパー事業所認定を受けた企業は、金融機関での融資を受ける際に優遇制度等を利用できるメリットもあります。
環境物品等の使用の推進
栃木県の工事成績評定では、環境物品等の使用推進に関する取り組みが重要な評価項目です。公共工事の受注者には特定建設資材の分別解体などの再資源化に対して適正な措置を講じることが求められています。
特定建設資材の分別解体や再資源化は、設計図書に積算条件が明示されており、受注者は設計図書に基づいて適切な環境配慮を行うことで評価されます。工事発注後に明らかになった事情により、当初予定した条件での実施が困難な場合は、設計図書に関して監督職員と協議しなければなりません。
特定建設資材の分別解体や再資源化は、建設リサイクルの推進と環境負荷低減を両立させつつ、現場の実態に即した合理的な環境配慮を促進する仕組みです。
栃木県の工事評定成績ランキング
栃木県の工事評定成績ランキングでは、岩澤建設株式会社が同点で全国的に1位の評価を獲得しています。足利市の織物産業で栄えた印刷技術を応用した道路標識の製作からスタートし、時代のニーズに合わせて土木・建築分野へと事業を拡大して高い評価を得ています。
東綱橋梁株式会社は81点で全国11位にランクインしている企業です。交通機能の高度化に対応し、設計・製作から架設工事までをトータルに手掛け、付加価値の高い各種構造物の施工を通して優れた評価を獲得しています。
同じく81点で全国11位に位置する中村土建株式会社は、土木、建築、CS工事部門および設計開発能力を有する総合建設会社です。知識・技術・経験を活用して持続可能な社会への貢献を重視した事業活動を展開しています。
【群馬県】工事成績評定の特徴
群馬県の工事成績評定の特徴として次の内容があります。
- エコアクション21の登録・認証
- 群馬県環境GS認定制度の認定
- 群馬県の工事評定成績ランキング
以下に、それぞれの詳細を解説します。
エコアクション21の登録・認証
群馬県の工事成績評定では、環境配慮型経営を促進する特徴的な制度として、エコアクション21の登録・認証があります。エコアクション21は環境省が定めた環境経営システムに関する第三者認証・登録制度であり、環境に配慮した経営を公的に証明するものです。
群馬県内の建設業者がエコアクション21の登録・認証を受けた場合、工事成績評定で10点の加点対象です。エコアクション21は、建設業者の環境経営への取り組みを積極的に評価することで、環境配慮型の企業活動を奨励する効果が見込まれます。
群馬県環境GS認定制度の認定
群馬県の工事成績評定では、県独自の環境認定制度である「群馬県環境GS認定制度」が特徴的な評価項目です。群馬県環境GS認定制度の認定を2年度継続して受けた建設業者に対して10点加点されます。
環境GS(Gunma Standard)は群馬県が独自に設けた環境認定制度であり、県内事業者が温室効果ガスを持続的に削減するための取り組みを体系的に実施することを支援しています。群馬県環境GS認定を受けるには、環境マネジメントシステムの基本であるPDCAサイクルを、事業者が組織的に運用する体制の整備が必要です。
群馬県の工事評定成績ランキング
群馬県の工事評定成績ランキングでは、複数の優良企業が同点で全国上位にランクインしています。渡辺建設株式会社は81点で11位に位置し、ISO9001を吾妻郡の企業として初めて取得したことで知られる先進的な企業です。
同じく81点で11位の株式会社山藤組は、約100年の長い歴史を持ち、地域の暮らしと安全を守り続けてきた信頼性の高い建設会社です。特に防災面での貢献が顕著で、豪雨時に発生する土石流や流木をせき止め、市街地への流出を防ぐ重要な工事を手掛けており、地域の安全確保に大きく貢献しています。
沼田土建株式会社も81点で11位にランクインしています。令和6年だけでも群馬県下水道総合事務所長など、多くの機関から優良工事として表彰されており、高品質な施工実績が評価されています。
【山梨県】工事成績評定の特徴
山梨県の工事成績評定の特徴として次の内容があります。
- 保全への配慮による材料選定・施工方法等の工夫
- ISO9001又は14001の認証を取得
- 新技術活用(NETIS登録技術)の活用
- 山梨県の工事評定成績ランキング
以下に、それぞれの詳細を解説します。
保全への配慮による材料選定・施工方法等の工夫
山梨県の工事成績評定制度では、環境保全に対する創意工夫事例が加点評価の対象です。評価項目として、「特に評価すべき創意工夫事例」として環境保全への配慮が明確に位置づけられています。
保全への配慮による材料選定・施工方法等の工夫が加点対象です。環境に配慮した資材の選択や、生態系への影響を最小限に抑える施工技術の採用など、建設プロセス全体を通じた環境配慮の取り組みが評価されます。
ISO9001又は14001の認証を取得
山梨県の工事成績評定では、企業の技術力を評価する重要な項目として、ISO9001(品質マネジメントシステム)または ISO14001(環境マネジメントシステム)の認証取得状況があります。
公告日時点で認証を取得していることが評価条件で、申請中や取得予定ではなく、実際に認証を受けていなければなりません。また、認証の登録範囲には対象工事の内容が含まれていることが必要で、形式的な取得ではなく実質的な活用が評価されています。
さらに、認証の信頼性を担保するため、審査機関も明確な基準が設けられており、JAB(日本適合性認定協会)またはJABと相互認証している認定機関に認定されている審査登録機関による認証であることが要件です。
新技術活用(NETIS登録技術)の活用
山梨県の工事成績評定では、新技術の積極的な導入を評価する項目として、NETIS登録技術の活用が重視されています。NETISは、公共事業が直面する様々な課題に対応するため、民間企業などで開発された革新的技術を募集・登録し、それらの情報をインターネット上で公開・検索可能にしたデータベースシステムです。
「有用とされる技術」の活用が評価されており、これは「公共工事等における新技術活用システム」実施要領で定められた「活用促進技術」「推奨技術」「準推奨技術」「評価促進技術」などの区分に該当する技術を指します。
例えば、遮水層となるベントナイト混合土部に対し、屋内で製造したベントナイト混合土ブロックを現場に搬入・定置して構築する技術などが対象です。新技術の採用により、工期短縮、コスト削減、品質向上、環境負荷軽減などの多面的な効果が期待されています。
山梨県の工事評定成績ランキング
山梨県の工事評定成績ランキングでは、複数の優良企業が81点の高得点で全国11位にランクインしています。株式会社飯塚工業はその1社で、富士山や南アルプスなどの雄大な自然環境に囲まれた地域で常に自然と向き合いながら事業を展開してきた企業です。関東地方整備局よりICTアドバイザーとして認定されており、先進的な技術導入でも評価されています。
同じく81点で全国11位に位置する株式会社大森工務所は、山梨県富士北麓地域を拠点とする建設会社です。創業以来培ってきた「信頼と実績」を基盤として、地域の安心と安全を支える活動を展開しており、豊かな地域の未来づくりに貢献することを企業理念としています。
湯澤工業株式会社も81点で全国11位にランクインしています。従来の建設業の枠を超えてデジタル技術を活用した事業改革やENGINEER育成事業へと事業領域を拡大している企業です。さらに環境面での取り組みも積極的で、木質ペレットなどの再生可能エネルギー資源の製造・販売も手掛けており、持続可能な社会の実現に貢献しています。
まとめ
本記事では、建設業界の方に向けて、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県の工事成績評定における環境対策の加点について解説しました。近年は脱炭素の取り組みが積極的に評価されるようになってきており、建設業界でも環境配慮が欠かせません。
環境負荷の少ない材料の使用や環境に配慮した施工方法の採用は、社会課題の解決に貢献する取り組みとして加点されます。
茨城県、栃木県、群馬県、山梨県それぞれの脱炭素推進の具体的な施策を紹介しているため、工事成績評定で上位を取りたい企業の方は参考にしてみてください。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
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