1975年より業界に先駆け、土木・建築領域を基盤とする環境技術に着手し、土壌・水質浄化や再生可能エネルギー分野で一貫したソリューションを提供する鴻池組。同社は「環境の鴻池」として、環境技術領域のリーディングカンパニーを目指しています。現在、次の10年に向けた環境領域への新たな取り組みビジョンの策定を進めている同社 執行役員 管理本部副本部長 兼 環境推進部長の青柳吉広氏に、脱炭素に取り組む意義、再生可能エネルギー・軽油代替燃料使用の促進などについてお話をお聞きしました。
次の10年を見据えたビジョン策定へ
鴻池組は2020年、国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の枠組みに則り、環境・社会に高い次元で配慮した経営を行う姿勢を明確にし、企業価値の向上を図ることを目的に、「KONOIKE Next Vision [ for SDGs ]」を策定しています。
このなかで、脱炭素社会実現への取り組みとして、2030年度までに施工段階のCO2排出量を1990年度比で半減、2050年には実質ゼロにするという目標を示しています。
目標達成に向けた具体的な方策などを取りまとめ、環境領域の重要な指針として「KONOIKE Eco Challenge1.0」を策定。2022年度には「KONOIKE Eco Challenge 2.0」へとアップデートしました。
青柳氏は「『KONOIKE Next Vision [ for SDGs ]』を策定して、SDGsへの取り組みを始めて五年経ちますので、2030年に向けた中間地点ということで、『Next Vision』の見直しを行いました。ちょうど26年から3カ年の中期経営計画を策定するタイミングにもあたるので、併せて『KONOIKE Eco Challenge』のバージョンも「3.0」へ更新します」と話します。
「Next Vision」「Eco Challenge」ともに、25年から10年後の35年を見据えたアップデートが行われます。
▼KONOIKE Next Vision[for SDGs]

出典:鴻池組WEBサイト https://www.konoike.co.jp/sustainability/sdgs.html
積水ハウスグループとのシナジー
鴻池組は2019年、同社の持株会社である鳳ホールディングスが積水ハウスの連結子会社になったことから、積水ハウスグループの傘下に入りました。青柳氏は積水ハウスグループ企業になったことは、社内の脱炭素に向けた意識にも大きな影響を与えたと言います。「SBTイニシアチブなどの考え方が当社の中にも入ってきて急速に浸透してきたと実感しています」
積水ハウスグループは環境省「エコ・ファースト企業」認定を取得し、「エコ・ファーストの約束」を社会に公表しています。また、「RE100」や「SBTイニシアチブ」など国内外の各種環境活動に参画していることもあり、「KONOIKE Eco Challenge2.0」は環境領域における積水ハウスグループ企業としてのコミットメントの性格も有しているのです。青柳氏は「当社だけではなかなかできないような取り組みも、大きなグループだからできる。傘下に入ることで大きなシナジーが生まれていると思います」と語ります。
シナジーのひとつが、再生可能エネルギー使用の促進です。24年度には、積水ハウスのオーナーから太陽光発電の余剰電力を買い取り、積水ハウスグループの事業用電力として利用する「積水ハウスオーナーでんき」を導入。鴻池組の技術研究所つくばテクノセンターや西日本メカトロニクスセンターなどで使用する電力を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えました。「2026年度までに全施工現場の電力を再生可能エネルギーに移行します。27年度中には会社全体の使用電力を再エネに切り替えるという目標も立てています」(青柳氏)
▼積水ハウスオーナーでんき導入現場

BDFなど軽油代替燃料使用100%を目指す
鴻池組はバイオディーゼル燃料(BDF)やGTLなどの軽油代替燃料の使用を進めています。さらに、廃食油を集め、B100燃料の確保を目指す「廃食油回収プロジェクト」を推進しています。「特にここ3年間は、軽油代替燃料の使用促進に力を入れてきました。建設業では、やはり重機に使う燃料由来のCO2排出量が圧倒的割合を占めています」(青柳氏)
もっとも重機自体は、協力会社が使用するもので、軽油代替燃料の使用にも協力会社との連携が欠かせません。青柳氏も「サプライチェーンにいかに使ってもらうかというところに苦心しています」と話します。たとえば、大阪・関西万博の施工現場では、約10か月間、発電機やクローラクレーンに計58,000ℓ以上のB100燃料を使用し、約154t-CO2を削減しました。「使用に当たっては、大阪・岸和田にある当社の機材センターに重機を持ちこんで、B100燃料を使用しても損傷が生じないかという検証を行いました。さらに万が一壊れたときの補償を見据えて、保険会社の協力を得て、専用の保険を整備しました」(青柳氏)検証と万が一に備えた補償を組み合わせることで、サプライチェーンの協力を得られたという背景があります。
青柳氏は「サプライチェーンへの意識づけがやはり重要」と話します。そのため、22年から現場予備費の中に環境予備費という項目を作り、環境関連施策に取り組みやすい土台づくりを進めています。鴻池組は30年度には軽油代替燃料の使用率100%を目指しています。
▼実証実験の現場でBDFで動く油圧ショベル

▼軽油代替燃料使用量(2024年1月〜12月実績)

社会貢献と会社の発展を両立
こうした「環境の鴻池」を支えるのは、社員一人ひとりの環境経営への寄与です。鴻池組では2023年から社内SNS「My ESGサイト」を開設。ESG関連で社員が考えたことや気づいたことを投稿し、社内で広く共有しています。若手からベテラン社員まで垣根なく交流することで、社内コミュニケーションが活性化し、ESG経営を自分ごととして捉える一助にもなっているといいます。
青柳氏は、脱炭素と建設業との関係について「我々の仕事は、良いものを作って使っていただくというのが基本です。そのなかで、CO2排出量削減への取り組みは、営業力の強化にもつながりますし、社会的なニーズへの対応としてとして当然進めなくてはならない」と話します。「もちろんコスト面の課題もありますが、発注者側の意識もずいぶん変わってきた印象です。当社としても社会貢献と会社の維持・発展という両輪を上手く回しつつ、脱炭素社会の実現という重要な問題に取り組むという体制を構築していきたいと考えています」
本社 執行役員 管理本部副本部長 兼 環境推進部長 |
※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年7月)のものです。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。







