横浜市戸塚区に位置する大成建設の研究施設「技術センター」。「構造」「風」「風音」「火災」「人と空間」「音響」「音と電磁」「熱と光」「材料と環境」「海と川」「土と岩」「地盤と基礎」「機械化施工」―の13ラボで、さまざまな分野の研究者が働いています。
各ラボのうち、「人と空間のラボ」は、人と空間の関係性に着目した研究が進められています。技術センター情報技術室長の片倉徳男氏と同情報技術室の福田佳音氏の案内で、技術センターを訪問し、「人と空間のラボ」でのさまざまな取り組みについてお話を伺いました。
都市型ZEB®という発想と、中小オフィスを対象にした理由
ZEB実証棟は2014年、「都市型ZEB®」の普及を目指して技術センター内に建設されました。「都市型ZEB®」では、都心の狭小なエリアでも省エネ技術と建物本体に設置した創エネ設備の組み合わせにより、建物単体で年間エネルギー収支をゼロにする建物として、様々な研究開発業を進めています。
従来のZEBは、太陽電池を建物外の駐車場などの広い面積に設置する郊外型が主流でしたが、「都市型ZEB®」は、エネルギーの大部分が都市で消費されていることに着目し、都市の小さなオフィスビルでもZEBが実現できる未来を目指すものです。
センター内のZEB実証棟は、地上3階、地下1階建てで、都市の中小規模オフィスに展開が可能な構成となっています。ZEB実証棟内では、センターの研究者たちが実際に働くことで、カーボンニュートラルと働きやすさの両立をどう図るかという実証が行われています。実際に、ZEB実証棟は運用開始後10年間、建物単体での年間エネルギー収支ゼロを達成しています。
▼技術センター内のZEB実証棟

▼年間エネルギー収支(計画値)

出典:ZEB実証棟が技術センターに完成 | 大成建設株式会社
実証棟で採用されたパッシブ・アクティブの組み合わせ
「ZEB実証棟では、太陽光発電などの創エネのみでZEB化を達成しているわけではなく、バルコニーによる日射制御や太陽の高度が高い時でも低い時でも室内に光を取り込むことが可能な採光装置などのパッシブデザイン&高効率設備などのアクティブデザインの取組み、また運用およびその後の継続的な運用改善などに取り組むことでZEBを達成し続けています。ZEB実証棟で実証した技術は、お客様の建物でも採用されています。具体的には、採光装置は、ブラインドの形にして汎用化(T-Light Blind)することで、実際のオフィスにも適用したり、壁面に設置した高効率壁面太陽光発電パネルは、意匠性や眺望などを加味して改良を重ね、外装一体型太陽電池モジュール T-Green Multi Solorとして、壁用・窓用の2タイプを製品化しています。窓用は、シースルータイプですので、発電しながら眺望も確保できるため、窓だけでなく、バルコニーの手摺などにも適用されています」(片倉氏)
エネルギー効率とウエルネスを両立
さらに2020年には、新技術とAI・IoT を活用したZEBとウエルネスの機能を同時に実証する「人と空間のラボ」としてリニューアルしました。リニューアルのポイントは、ZEB機能の向上と、AI・IoTの導入によるウエルネス機能の充実です。
ZEB機能の向上としては、壁面の太陽光発電パネルを新たに開発した高効率な製品に更新することで、創エネルギー量が増加しました。さらに、高断熱・高性能ガラスの導入で建物熱負荷を低減し、高効率LED照明器具への更新で照明エネルギーの削減にもつなげています。また、空調設備は汎用品を使用することで、特別な設備を使用することなくZEBを達成できることを実証しています。
▼「人と空間のラボ」コンセプト

出典:人と空間のラボ | 技術トピックス | 大成建設 Technology & Solution テクノロジー&ソリューション(テクソル)
AI・IoT技術としては、大成建設が開発した執務者毎に所在位置を高精度に特定できる技術『T-Zone Saver® Connected』や、IoTセンサとクラウドで取得・集約した環境情報・位置情報・執務者個別情報から執務者の利用状況に応じて最適な空間に誘導する『T-Workstyle Concierge』などを導入しました。執務者がどこにいるか、室温・照明など執務者がどのような環境を好むかといった情報を把握することで、照明や空調を自動で制御するシステムです。働く人のウエルネスを実現しつつ、無駄な照明や空調を制御することでエネルギーの効率化も図っています。
「人と空間のラボでは、照明や空調だけでなく、水資源にも着目した取り組みも開始しています。具体的には、水資源の保全や上下水インフラ負荷低減に貢献する『ゼロウォータービル』の実現に取り組み、雨水や手洗いの水を浄化してトイレの洗浄水として再利用することで、建物で使う上水(水道水)の年間の量を減らす取り組みなどを行い、海外の認証を国内で初めて取得しています」(片倉氏)
▼ゼロウォータービルの概念図

出典:令和7年度「水循環ACTIVE企業」に2年連続で認証されました|新着情報|大成建設サステナビリティ
ライフサイクル全体でゼロを目指す次世代研究棟
こうしたZEB実証等での経験を元に、2023年から建設を進めているのが、大成建設グループ次世代技術研究所/幸手(埼玉県幸手市)です。
新設する管理研究棟では、調達(建設資材製造・入手)、 施工、運用( 建物の運用および修繕・解体)まで含めた建物のライフサイクル全体で発生するCO₂収支をゼロにするゼロカーボンを目指しています。
▼大成建設グループ次世代技術研究所/幸手

出典:大成建設グループ次世代技術研究所/幸手│de’-TAISEI DESIGN│大成建設株式会社 設計本部

技術センター情報技術室長 片倉 徳男氏(写真右)、福田 佳音氏(写真左)
※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年8月)のものです。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。







