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建設業で注目されるグリーンインフラとは?メリットや課題、導入事例も紹介!

建設業で注目されるグリーンインフラとは?メリットや課題、導入事例も紹介!

近年、建設業界において自然環境の力を活用したグリーンインフラへの注目が高まっています 。従来のコンクリート中心のインフラとは異なり、生態系の機能を社会基盤整備に取り入れることで、環境保全と防災の両立が可能です。

本記事では、グリーンインフラの基本概念や建設業が導入するメリット、グレーインフラとの違いについて解説します。また、技術面や費用面での課題も解説していますので、持続可能な社会づくりに貢献したい建設業の方は参照してみてください。

建設業で注目されるグリーンインフラとは

グリーンインフラ 建設

建設業で注目されるグリーンインフラは、従来のコンクリートや鋼材を主体とするグレーインフラとは異なり、生態系の機能を社会基盤整備に取り入れる手法です。

気候変動による自然災害の増加や、持続可能な社会づくりへの要請が強まる中で、自然の力を活用した社会インフラの構築が重要視されるようになりました。グリーンインフラの概要と構成要素、グレーインフラとの違い、そしてグリーンインフラが注目される背景について解説します。

グリーンインフラの概要と構成要素

自然環境が持つ多面的な機能を社会基盤整備に活かすグリーンインフラは、国土交通省では「自然環境が有する多様な機能を積極的に活用して、地域の魅力・居住環境の向上や防災・減災等の多様な効果を得ようとする(第4次社会資本整備重点計画)もの」として定義されています。

水・緑・生き物がポイントとなり、相互に作用することで様々な恩恵を生み出します。グリーンインフラを構成しているのは次の3つの要素です。

  • 防災・減災・国土強靭化
  • 地域振興・地方創生
  • 生態系・環境保全

具体的には、事業所敷地内に雨水を一時的に貯留する施設を設置したり、透水性の高い舗装を採用したりすることで雨水を溜め、地下に浸透させて洪水を防ぎます。また、在来種の植物を植えて汚濁物質を除去することも自然の力を活かしたグリーンインフラ技術です。

日本国内でも、グリーンインフラの名称が使われる以前から、多自然型の河川整備や雨水の貯留・浸透機能を持つ公園、建物の屋上緑化、緑化された防潮堤など、自然の力を活用した社会資本整備は数多く実施されてきました。

これらの実績を背景に、近年では持続可能な社会と経済の発展を両立させる手法として、グリーンインフラの考え方が改めて脚光を浴びています。従来は個別に行われていた取り組みを、統一的な概念として体系化することで、より効果的な社会基盤づくりが期待されているのが現状です。

出典:国土交通省/第4次社会資本整備重点計画

グリーンインフラとグレーインフラとの違い

グリーンインフラとグレーインフラは、それぞれ異なる特性を持つ社会基盤整備の手法です。コンクリートや鋼材を用いたグレーインフラは、強固で規格化しやすく、災害復旧時に迅速な効果を発揮できるメリットがあります。

一方、グリーンインフラは自然環境に配慮し、柔軟性が高く長期的な維持が可能な特徴をそなえています。重要なのは、どちらか一方を選択するのではなく、両者の長所を組み合わせたハイブリッド型の整備を進めることです。

堤防の基礎部分にグレーインフラの技術を用い、表層部分を緑化するなどの手法が考えられます。また、グリーンインフラの特徴として、物理的な施設整備だけに留まらず、活用方法や周辺の土地利用計画まで含めた総合的なアプローチが重視される点も見逃せません。双方の特性を理解し適切に組み合わせることで、より持続可能で効果的な社会基盤が実現できるのです。

グリーンインフラが注目される背景

グリーンインフラが注目を集める重要な契機となったのは、2011年の東日本大震災です。海岸沿いの松林が津波の勢力を弱め、内陸部の被害を軽減したことが広く報じられ、自然環境が持つ防災機能の重要性が再認識されました。

社会的関心の高まりを受けて、国土交通省は2019年7月に「グリーンインフラ推進戦略」を策定し、概念の普及と実践を本格的に推進し始めました。さらに2023年9月には改訂版となる「グリーンインフラ推進戦略2023」を公表し、取り組みを加速させています。

改訂では、ネイチャーポジティブやカーボンニュートラルといった国際的な環境課題への対応が盛り込まれており、日本のグリーンインフラ推進が世界的な潮流と連動していることを示しています。

出典:国土交通省/グリーンインフラ推進戦略 2023

建設業がグリーンインフラを取り入れるメリット

建設業界においてグリーンインフラを導入することは、単なる環境配慮を超えた多面的な価値を生み出します。建設業がグリーンインフラを取り入れるメリットについて解説します。

生物多様性の保全

グリーンインフラの導入は、生物多様性の保全に貢献します。建設プロジェクトに緑化や水循環システムを組み込むことで、動植物が生息できる環境が創出され、多様な生態系が維持されます。

屋上や壁面の緑化によって鳥類や昆虫の生息場所が生まれ、雨水を地下へ浸透させる仕組みは土壌を通じて水質を浄化し、河川に住む生物にとって良好な環境の提供が可能です。自然環境が豊かになることで、都市部においても多様な生物が共存できる空間が実現します。

生物多様性が保たれた環境は、人々の生活にも好影響です。緑や水辺、様々な生き物と触れ合う機会が増えることで、ストレス軽減や心理的な癒し効果が期待でき、住民の生活の質向上にもつながることが見込まれます。

地球温暖化や気候変動への対策

グリーンインフラの推進は、地球温暖化や気候変動への有効な対策の一つです。環境問題が深刻化した背景には、近代化の過程で自然環境を排除し、コンクリート中心のグレーインフラを拡大してきたことが一因として指摘されています。

グリーンインフラを取り入れたまちづくりを進めることで、植物・水・土壌が本来持つ機能が回復し、都市部特有のヒートアイランド現象を緩和する効果が期待できます。緑地や水辺の整備により気温上昇が抑えられ、快適な都市環境が形成されることもメリットの一つです。

また、豊かな自然空間は多様な生物の生息地となり、健全な生態系の再生を促進します。こうした生態系が機能することで、植物によるCO2の吸収が進み、温室効果ガスの排出抑制にも貢献するのです。

災害対策

グリーンインフラの導入は、激甚化する自然災害への有効な対策です。近年、気候変動の影響により水害や土砂災害が頻発・激甚化しており、従来型のダムや堤防といったグレーインフラだけでは対応しきれない状況が生まれています。

国土交通省は「流域治水」という新たな考え方への転換を推進しています。流域治水は、行政だけでなく流域で暮らす住民や企業、各種団体など、あらゆる関係者が協力して治水対策を行うアプローチです。

建設業にとって、流域治水の重要な担い手となることは、社会的責任を果たす絶好の機会といえます。事業所敷地内に雨水を一時的に貯留する施設を設置したり、透水性の高い舗装を採用したりすることで、地域全体の治水機能向上に貢献できます。

グリーンインフラの導入で建設業が抱える課題

グリーンインフラ 建設

グリーンインフラの導入で建設業が抱える課題として、次の3つの課題があります。

  • 技術面の課題
  • 長期保全の課題
  • 初期費用の課題

それぞれ、どのような課題かを詳しく解説します。

技術面の課題

建設業におけるグリーンインフラの導入には、技術面での課題があります。グリーンインフラは比較的新しい概念であるため、計画から維持管理までの各段階において、安全性・機能性・費用対効果を適切に評価する方法が十分に整備されていません。

特に困難なのは、自然環境が持つ機能の定量的な評価です。従来のグレーインフラであれば強度や耐久性など明確な基準で判断できますが、グリーンインフラでは生態系の働きや環境負荷軽減効果など複雑な要素を評価しなければなりません。

評価には高度な専門知識が必要とされ、一般的な建設事業者が容易に取り組めない状況があります。さらに、評価手法そのものが確立されていない機能も残されており、標準化が遅れています。

長期保全の課題

グリーンインフラには、長期的な保全に関する課題があります。まず、自然環境を活用する特性上、定期的なメンテナンスが不可欠であり、継続的な維持費用が発生してしまうことが課題です。

公園の芝生は刈り込みや施肥などの管理作業を定期的に行う必要があり、植栽の健全性を保つには専門的な知識も欠かせません。維持管理の負担から、グリーンインフラが登場した当初はグレーインフラと比較してコストが高いとする懸念の声も上がっていました。

一方で、適切な目的設定と効果的な運用・管理方法を確立できれば、グリーンインフラは自然の再生力を活かせるため、コンクリート構造物のような急激な老朽化の心配が少なく、長期的には持続可能な選択肢となり得ます。

初期費用の課題

グリーンインフラの導入において、初期費用の高さは大きな課題です。なぜなら、地域全体を俯瞰した設計と整備が求められるためです。従来のインフラのように部分的な施工では効果が限定的であり、流域や生態系のつながりを考慮した広範囲な計画が必要となるため、どうしても初期投資が膨らみがちです。

また、費用負担を誰がどのように担うのか、社会的な合意形成や制度設計も必要とされています。さらに日本特有の問題として、温暖湿潤な気候条件があります。海外の成功事例をそのまま適用すると、予想以上に植物の成長が早く進み、想定よりも早期にメンテナンスが必要になるケースも少なくありません。

一方で、長期的な視点で捉えれば状況は異なります。グリーンインフラが適切に機能すれば、下水道の維持管理費用や老朽化による修繕コストを削減できる可能性があり、トータルでは費用対効果に優れた選択肢となり得るのです。

建設業界のグリーンインフラに関する事例

建設業界のグリーンインフラに関する事例として、3つの企業の事例を紹介します。グリーンインフラ導入を検討している方は参考にしてみてください。

鹿島建設株式会社

駅前にある区政の中心施設の建設にあたり、地域のつながりづくり、屋上・壁面を含めた緑化の推進、区民への農業体験の提供、戸塚の原風景の再現が求められました。

8階屋上に芝生広場、畑、ビオトープの他に、屋上水田を設け、計画地周辺に残る戸塚の原風景である谷戸(やと)と、そこで展開される農の営みを同時に再現。竣工後、近隣の小学生を対象に田植え、稲刈り、餅つき、注連縄作りなどを行う稲作体験講座も当社でコーディネートして実施しました。

屋上農園や屋上水田のポテンシャルを引き出すには、その空間に適した多様なプログラムが必要です。

屋上の未利用空間を地域交流、教育、健康、収益改善など付加価値創出に活用した事例です。

出典:戸塚区総合庁舎|鹿島建設株式会社

株式会社竹中工務店

近年都市部で頻発する、ゲリラ豪雨や台風による水害や下水道の汚濁。道路のアスファルト舗装などで雨水が浸透しづらくなったことに加え、気候変動の影響も相まって水害リスクが増大しており、国や自治体などでは雨水の地下浸透や下水道などへの流出抑制(負荷軽減)などの対策を加速しています。

「レインスケープ」は、雨水を溜めて地下に浸透させるだけでなく、在来種の植物を植えて汚濁物質を除去したり、溜めた雨水を敷地内で利用したりできる、自然の力を活かしたグリーンインフラ技術です。豪雨時に下水道や河川に流れる雨水の量を抑制するほか、平時も魅力ある景観創出や生物多様性保全などの多面的機能を発揮します。すなわち、雨水の貯留や地下浸透の促進が健全な水循環に寄与したり、植栽空間が生物多様性保全に貢献したりすることで、建物や周辺エリアのサステナビリティや価値を高めます。

これまでもグリーンインフラへの期待は大きいものの、その効果が十分に検証されてきたとは言えませんでした。そこで、「レインスケープ」の効果を定量的に検証するとともに、さらなる機能の向上に取り組んでいます。

2016年より、竹中技術研究所(千葉県印西市)で実証を行っています。2019年10月の台風21号に伴う千葉県豪雨では、平年10月の1か月分に相当する雨(降水量219 mm)がわずか半日で降りました。約2,500 m²の集水域には12時間で548 m³もの雨が降りましたが、レインスケープにより下水道への流出を約43%抑制することに成功しました。なお断面図に示す集水域全体の貯留浸透能力は、日本建築学会発行の『雨水活用技術規準』が推奨する蓄雨高100 mm/m²を達成しています。

出典:自然の機能を活かして水害リスク低減と生物多様性向上を両立-レインスケープ®-|株式会社竹中工務店

株式会社大林組

大林組JVが施工した山梨県市町村総合事務組合立一般廃棄物最終処分場(かいのくにエコパーク)建設工事では、2018年に生物・自然環境の保全を目的としてビオトープ(※1)を2ヵ所整備しました。大林組を含むJVでは竣工後20年間の維持管理を請け負っており、事業地周辺での生息が確認されたホタル類、トンボ類、カエル類などを保全対象とし、継続的に維持管理と生物相調査を行っております。計画地の地形と周囲の植生などの特徴を活かして、池やせせらぎ、湿地、草地などをビオトープに配置することにより、生物の生息環境の多様性確保に努めました。調査の結果、保全対象とした生物は毎年確認ができており、環境条件の異なる2ヵ所のビオトープ整備と定期的な管理によって、事業地周辺の生物多様性の維持向上につながっていることが確認できました。

※1 ギリシャ語のbios(生命)とtopos(場所)を組み合わせた造語で、「生きもの(動植物)が生息する空間」のこと

出典:生物多様性の保全|株式会社大林組

まとめ

グリーンインフラ 建設

本記事では、建設業界で注目されるグリーンインフラについて解説しました 。グリーンインフラは、自然環境が持つ多様な機能を活用して地域の魅力向上や防災・減災を実現する手法であり、従来のグレーインフラとは異なる特性を持っています。

建設業がグリーンインフラを取り入れることで、生物多様性の保全、気候変動対策、災害対策という3つの重要なメリットが得られます。一方で、技術面での評価手法の確立、長期的な維持管理体制の整備、初期費用の負担などが課題です。

課題を克服することで、建設業は持続可能な社会づくりに貢献しながら、新たなビジネス機会を創出できる可能性があります。グリーンインフラの導入を検討している建設業の方は参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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