建設業界は2024年の時間外労働上限規制と2025年における団塊世代の大量離職と二重の課題に直面しています。人材不足の深刻化や長時間労働の常態化を引き起こし、業界全体に大きな影響を及ぼしかねません。
本記事では、建設業における2024年問題・2025年問題の具体的な内容と、生じる課題について解説します。また、適切な工期設定や労働環境の改善、IoT・ICT技術の活用など効果的な解決策も解説していますので、建設業の2024年問題・2025年問題への対応を検討している方は参照してみてください。
目次
建設業の2024年問題

建設業では2024年4月から働き方改革関連法が適用され、転換期を迎えています。時間外労働の上限規制により、適用が猶予されていた長時間労働への制約が本格化し、割増賃金の引き上げも相まって、企業経営や現場運営に多大な影響を及ぼすことが課題です。
建設業の2024年問題がもたらす具体的な課題について解説します。
時間外労働の上限規制
建設業における長時間労働の是正は喫緊の課題です。労働基準法が定める原則的な法定労働時間は1日8時間、週40時間以内ですが、建設業では働き方改革関連法の施行後も猶予措置が設けられ、36協定を締結すれば時間外労働に上限規制がなく、法定労働時間を超過しても罰則が適用されませんでした。
一方で、2024年4月からは猶予期間が終了し、建設業においても時間外労働時間に罰則付きの上限が設けられます。原則として時間外労働は年間720時間以内、単月100時間未満、複数月平均80時間以内と定められています。これにより、工期管理や人員配置の見直しが不可欠となり、企業は労務管理体制の抜本的な改革を迫られています。
割増賃金の引き上げ
建設業における人件費の増加は経営上の重要な課題です。2023年4月から、中小企業においても月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%へと大幅に引き上げられました。
制度改正により、企業規模にかかわらず月60時間超の時間外労働には50%の割増賃金を支払うことが義務付けられ、2024年以降の建設業における労務コストは従来以上に増大する見込みです。
特に人手不足が深刻化している建設業界では、工期遵守のために長時間労働が常態化しているケースも多く、割増賃金の増加が収益を圧迫する要因となりかねません。正確な給与計算を実現するためには勤怠管理の厳格化が求められ、新たな管理システムの導入を検討する企業も増えています。
適切な労働時間管理と賃金計算体制の整備が、建設業の持続可能な経営に不可欠です。
建設業の2025年問題
建設業界は深刻な高齢化の課題にも直面しています。2025年問題とは、約800万人の団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者、3人に1人が65歳以上になる超高齢化社会を指す日本特有の社会問題です。
特に建設業では2025年問題の影響が顕著で、全産業と比較して55歳以上の従事者の割合が約15%も高い状況にあります。2024年の時間外労働規制に続き、2025年には大量の離職が発生すると危惧されており、技術継承や人材確保の遅れが深刻化すれば、建設プロジェクトの遂行そのものが困難になる可能性があります。
若年層の採用強化やICT技術の活用による生産性向上など、建設業における抜本的な対策が急務です。
2024年問題・2025年問題による建設業が抱える課題

建設業は2024年問題と2025年問題の二重の課題に直面しています。時間外労働の上限規制と高齢化による大量離職により、人材不足の深刻化が加速し、長時間労働の常態化と悪循環を生み出しているのが現状です。
建設業が抱える2024年問題・2025年問題による具体的な課題と、求められる対応について解説します。
人材不足の深刻化
建設業における人材不足は危機的な状況に達しています。2022年時点で建設業就業者のうち55歳以上が35.9%を占める一方、29歳以下はわずか11.7%にとどまり、極端な年齢構成の偏りが顕在化しています。
2024年の時間外労働規制と2025年における団塊世代の大量離職により、問題はさらに深刻化する見込みです。日本全体の総人口や生産年齢人口の減少も相まって、建設業では人材確保と次世代への技術継承が喫緊の課題です。
若年層が約1割しか存在しない状況の背景には、高い離職率も影響しています。休日が取りづらい労働環境や、労働に見合わない賃金水準が若手人材の定着を妨げており、多くの建設業企業もこうした課題を認識しつつあります。
長時間労働の常態化
建設業では長時間労働が構造的な問題として定着しています。他業種と比較しても一人あたりの労働時間が顕著に長く、長時間労働が常態化していることが建設業の特徴です。背景には深刻な人手不足と厳格な工期設定があり、限られた人員で工期を遵守するために従業員の長時間労働に依存する構造が長年続いてきました。
一方で、2024年4月からの時間外労働上限規制の適用により、従来は見過ごされてきた労働力不足が明確に顕在化します。規制により単純に労働時間を削減すれば、工期遅延や受注量の減少となる事態が避けられません。
建設業各社は不足する労働力を補うため、ICT技術の導入や業務プロセスの見直しなど多角的な対応を迫られており、対応が遅れれば事業規模の維持そのものが困難になる可能性も指摘されています。
業務効率化と生産性向上
建設業が2024年問題を乗り越えるには、業務効率化と生産性向上が最重要課題です。時間外労働の上限規制により、限られた労働時間内で従来と同等以上の生産性を維持することが求められるためです。
業務効率化と生産性向上の実現には、ICT技術の導入や業務プロセスの抜本的な見直し、機械化・自動化の推進など多面的なアプローチが欠かせません。特に効果的なのがICT技術の積極活用で、例えば建設現場におけるタブレット端末の導入により図面や工程表をリアルタイムで確認でき、クラウドベースのプロジェクト管理ツールを活用すれば関係者間の情報共有が迅速化されます。
従来は紙ベースで行われていた業務のデジタル化が進み、移動時間や待機時間の削減、意思決定の迅速化が実現します。
2024年問題・2025年問題に対する解決策
建設業が2024年問題と2025年問題を克服するには、適切な解決策の実施が不可欠です。適切な工期の設定により無理のない施工計画を立て、労働環境の改善で人材の定着を図り、IoTやICTの活用によって生産性を向上させる取り組みが求められています。
建設業の持続的な発展を実現するための具体的な解決策について解説します。
適切な工期の設定
建設業における長時間労働を根本から解決するには、適切な工期設定が不可欠です。2024年の時間外労働上限規制に対応するため、国土交通省は「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定し、実現可能な工期の設定と施工時期の平準化を求めています。
ガイドラインでは、従業員の休日確保や資機材調達に必要な期間だけでなく、現場の後片付け期間や天候による作業不能日数なども考慮した上で工期を算定することが明記されています。
従来の建設業では、発注者の要望を優先して無理な工期が設定されるケースが少なくありませんでしたが、今後は発注者や元請け企業の理解と協力を得ながら、従業員が無理なく働ける現実的な工期を設定することが必要です。
出典:国土交通省/建設工事における適正な工期設定等のためのガイドラインについて
労働環境の改善
建設業の持続的な発展には、労働環境の改善が極めて重要です。2024年の時間外労働規制だけでなく、技能労働者が働きやすい環境を整備することで、人材の定着率向上と生産性の向上が同時に実現できます。
働きやすい環境作りには、次の取り組みが効果的です。
- 適切な休憩時間の確保
- 安全衛生管理の徹底
- 福利厚生の充実
- 柔軟な勤務形態の導入など
施策は従業員の満足度を高め、若年層を中心とした離職率の低下につながります。特に建設業では「休日が取りづらい」「賃金が労働に見合わない」などの課題が若手人材の定着を阻んできましたが、労働環境の改善により魅力ある職場へと変革できます。
さらに、人工知能やAI技術の導入により危険作業や単純作業の自動化は、技能労働者の身体的・精神的負担が軽減され、より安全で快適な労働環境の実現が期待できる施策です。
IoTやICTの活用
建設業におけるIoTやICTの活用は、2024年問題への対応として最も重要な施策です。労働環境の整備だけでなく、生産性を高めなければ長時間労働の是正は困難だからです。
IoTは、様々な機器をインターネットに接続することで遠隔操作や状況確認を可能にする技術で、建設現場ではヘルメット装着型のウェアラブルカメラによる現場の可視化や、タブレット端末を用いたペーパーレス化などにより効率的な管理体制が構築できます。
さらに、ICT建機はマシンコントロールやマシンガイダンス機能を搭載し、自動制御や操作補助を通じて作業効率と安全性を飛躍的に向上させます。国土交通省も「i-Construction」プロジェクトを通じてICT建機の導入を推進しており、建設業全体のデジタル化が加速しています。
2024年問題・2025年問題への対応でGXが必要な理由
建設業が2024年問題と2025年問題を乗り越えるには、GX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みが不可欠です。脱炭素建築やGXインフラ、再生可能エネルギー設備の市場は今後大きく成長する見込みであり、環境分野への対応が新たな事業機会を生み出します。
また、環境配慮型資材の活用は資材調達コストの抑制にもつながり、経営面でもメリットです。GXとDXを組み合わせた取り組みにより、業務効率が向上し、少ない人員でも作業を円滑に進められる体制が構築できます。
デジタル技術の導入によって作業の自動化や遠隔監視が実現すれば、同じ作業量をより少ない人数でこなせるため、深刻な人手不足の解消につながる点も特徴です。ドローンによる現場調査やロボットによる危険作業の自動化は、作業員の身体的負担を軽減し、事故リスクも大幅に低減します。
2024年問題・2025年問題対応に関する建設業界事例
建設業における2024年問題・2025年問題への対応は、各企業が積極的な取り組みによって解決を目指しています。建設企業の具体的な取り組み内容について解説します。
鹿島建設株式会社
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出典:自動化施工システム「A4CSEL」 造成工事への本格適用を開始|2024.12.24|鹿島建設株式会社
大成建設株式会社
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出典:現場測位情報をリアルタイムに3次元表示するシステムを開発|2025.10.3|大成建設株式会社
まとめ

本記事では、建設業における2024年問題と2025年問題について解説しました。2024年4月からの時間外労働上限規制と割増賃金の引き上げ、2025年の団塊世代大量離職により、建設業界は人材不足の深刻化と長時間労働の構造的課題に直面しています。
問題を克服するには、適切な工期設定による無理のない施工計画、労働環境の改善による人材定着、IoTやICT技術を活用した業務効率化と生産性向上が不可欠です。さらに、GXへの取り組みは新たな市場機会の創出とコスト削減を実現し、建設業の持続的な発展を支える重要な戦略です。
2024年問題・2025年問題への対応を検討している建設業の方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
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