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ISSBとは?サステナビリティ開示基準の全体像と企業への影響をわかりやすく解説

ISSBとは?サステナビリティ開示基準の全体像と企業への影響をわかりやすく解説

SDGsの普及によりESG投資の動きが活発化する中で、ISSBが定めた非財務情報の開示基準が注目されています。ISSBが定めた情報開示の基準を満たすためには、経営層を含めた抜本的な見直しが必要です。

本記事では、建設業界向けにサステナビリティ開示基準の全体像を解説しています。また、企業への影響も解説しているため、ISSBの今後の動向が気になっている方は参照してみてください。

ISSBとはどんな組織か

ISSBとはどんな組織か

建設業への影響を理解するためにも、まずはISSBとはどんな組織かを把握する必要があります。設立の目的や統合された機関、設立の背景を詳しく解説します。

国際的な非財務情報開示基準を策定する機関

ISSB(International Sustainability Standards Board)は、2021年にIFRS財団によって設立された国際的な基準策定機関です。企業による環境・社会・ガバナンス関連の非財務情報開示において、世界共通の基準を確立することを主要な目的としています

従来、企業の持続可能性に関する情報開示は各国や地域で異なる基準が用いられており、投資家や利害関係者にとって企業間の比較が困難でした。ISSBは、比較基準が異なる課題を解決するため、統一された開示基準の策定に取り組んでいる機関です。

統一された開示基準によって投資家は企業の長期的な持続可能性やリスクをより正確に把握でき、企業側も透明性の高い情報提供を通じて信頼性を向上させることができます

CDSBやVRFなど複数機関を統合して設立された

企業の持続可能性に関する情報開示は、さまざまな機関がそれぞれ異なる基準を設けていたため、企業や投資家にとって混乱を招く状況が続いていました。ISSBは、非財務情報開示基準の分散・乱立を解消するために、CDSB(気候変動開示基準委員会)とVRF(価値報告財団)を統合して設立されました。

また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が提唱した提言内容も取り込んでいることにより、気候変動リスクに関する開示要求も含めた、より包括的な基準体系が構築されています。

ESG投資の拡大が設立の背景にある

近年、SDGsの普及により、企業活動における持続可能性への社会的関心が高まっています。同時に、国連が提唱するPRI(責任投資原則)の影響により、投資家の間でも従来の財務指標だけでなく、環境・社会・ガバナンス要素を重視したESG投資を行う動きが世界規模で広がっています。

ESG投資市場の成長に伴い、投資家は企業の環境負荷、社会的責任、経営体制など非財務情報を判断材料として活用するようになりました。一方で、非財務情報の開示方法が企業によって異なることで、投資家が適切な比較検討を行うことが困難な状況が生じていました。

ISSBは市場ニーズに応えるため、国際的に統一された信頼性の高い非財務情報開示基準を策定することで、投資家がより精度の高い投資判断を行える環境の整備を目指しています。

IFRS S1・S2で何が求められるのか

IFRS S1・S2で何が求められるのか

ISSBに関する戦略決定や統治を行うIFRS財団は、開示基準を次の2つの事項に分けています。

  • サステナビリティに関する情報(S1)
  • 変化の大きい気候関連のリスク(S2)

S1・S2で何が求められているのかを解説します。

S1はサステナビリティ情報を財務情報と統合して報告する

S1では、気候変動に限定されない幅広いサステナビリティ要素、すなわち環境・社会・ガバナンス全般にわたるリスクと機会を、企業の財務報告と統合的に開示することを要求しています。

開示と表示に関する要件は次の通りです。

  • 監視、管理、監督するために使用するガバナンスのプロセスや手順
  • 持続可能性に関連するリスクと機会を管理するための戦略
  • サステナビリティ関連のリスクと機会を特定、評価、優先順位付け、監視するために企業が使用するプロセス
  • リスクと機会に関する企業の目標の進捗状況を含むパフォーマンス

重要な点として、S1基準は単に開示内容を規定するだけでなく、企業がサステナビリティ関連の財務情報をどのような手法で作成し、どのような形式で報告するかについても詳細な指針を提供しています。

出典:IFRS/IFRS S1 持続可能性関連財務情報の開示に関する一般要求事項

S2では気候関連リスクと温室効果ガス排出量の開示が中心になる

S2は、気候変動に特化した開示基準として、企業に対して気候関連リスクとCO2排出量の詳細な報告を求めています。

情報開示の要件として次の内容が求められています。

  • 気候関連のリスクと機会を監視、管理、監督するために使用するガバナンスプロセス、管理、手順
  • 気候関連のリスクと機会を管理するための戦略
  • 気候関連のリスクと機会を特定、評価、優先順位付け、監視するために使用するプロセス
  • 気候関連目標および法律や規制により達成が義務付けられている目標に向けた進捗状況を含む、気候関連のリスクと機会に関する実績

重要なポイントは、将来の気候変動シナリオを想定した分析の実施も求められていることです。企業は複数の気候シナリオを設定し、それぞれの状況下で事業にどのような影響が生じるかを分析・開示することで、投資家が気候変動リスクを適切に評価できる情報を提供しなければなりません。

出典:IFRS/IFRS S2 気候関連開示

TCFDの4本柱を引き継ぎつつより詳細な情報開示を要求

IFRS S1・S2基準は、TCFDが確立した4つの柱構造を基盤としながら、より詳細で包括的な情報開示を企業に求めています。

TCFDの4本柱を引き継ぎつつより詳細な情報として、以下の情報開示を要求しています。

4つの柱 内容
ガバナンス リスクと機会を管理するために用いるプロセス、統制、手続きに関して理解できるよう各種情報を開示
戦略 サステナビリティや気候関連のリスク、機会に対する企業の戦略を理解できるように開示
リスク管理 企業の見通しに影響を与える気候関連のリスク、機会を理解できるようにする情報を開示
指標と目標 サステナビリティ関連のリスク、機会に関連する企業指標および目標に関する情報を理解できるように開示

4つの柱を基準とした情報開示によって、投資家にとっては、企業のサステナビリティ取り組みを定量的かつ比較可能な形で評価できる環境が整備されることになります。

ISSBが企業にもたらす影響

ISSBが企業にもたらす影響

ISSBによって企業に次の影響をもたらします。

  • 財務報告と同時の開示が求められ業務フローの見直しが必要になる
  • Scope3まで含めたデータ整備と可視化体制が必須になる
  • 取締役会での監督や内部統制との連動が求められる

自社にどのような影響があるのかも含めて、解説する内容を参照してみてください。

財務報告と同時の開示が求められ業務フローの見直しが必要になる

ISSBが定める基準の導入により、企業は財務報告と同時にサステナビリティ情報を開示することが求められ、従来の業務フローの抜本的な見直しが必要になることが予想されます。

現在、基準の適用範囲や開始時期については詳細な検討が継続されており、最終的な制度設計は未確定の状況です。現在の提案内容がそのまま実施された場合、対象企業は財務諸表の作成範囲と同一の範囲において、サステナビリティ関連情報の開示義務を負うことになります。

企業は情報収集から分析、承認、公表に至る一連の報告プロセスを再構築する必要があり、関連部署間の連携強化や新たな社内体制の構築が不可欠です。

Scope3まで含めたデータ整備と可視化体制が必須になる

ISSBが定める基準の導入により、企業は自社の直接的な排出量だけでなく、サプライチェーン全体を包含するScope3までの温室効果ガス排出量を正確に把握し、可視化する体制の構築が必須です。

Scope1・2の排出量管理に加えてScope3の算定が求められることで、取引先企業からの詳細な排出量データの収集、複数の算定手法の適用、データの統合・分析を可能とする情報基盤の整備が必要です。

さらに、収集・算定された気候関連データについて、その追跡可能性、透明性、信頼性を保証するトレーサビリティの確立が求められています。このため、企業はデータの出所から最終的な報告値に至るまでの全工程を明確に記録・管理する仕組みの構築が必須になります

取締役会での監督や内部統制との連動が求められる

ISSBが定める基準の導入による影響として、取締役会での監督や内部統制との連動も必要です。各部署に散在するサステナビリティ関連データの一元管理、リスクの体系的な評価手法の確立、開示要件を満たすための社内体制整備が求められます。

特に、気候変動への対応が単なる環境問題ではなく、企業の中核的な経営戦略として位置づけられることもポイントです。取締役会は気候リスクへの監督責任を負うことになり、経営陣の業績評価や報酬制度にもサステナビリティ要素を組み込むことが開示要件として明記されています。

そのため、企業のコーポレートガバナンス体制そのものがサステナビリティ要素と密接に連動することになり、経営の意思決定プロセスにおいて環境・社会・ガバナンス要素が考慮される仕組みを確立しなければなりません。

日本企業が今すべき対応

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)による国内基準が2025年に策定されました。この基準では、日本の建設業に社内体制やデータ基盤の基準に従う準備が求められています。今後の流れとして、大企業から段階的に開示義務化が始まることに注意しなければなりません。

日本企業が今すべき対応をそれぞれ解説します。

SSBJによる国内基準が2025年に策定予定

2022年に設立されたSSBJは、国際基準に準拠した日本独自の開示基準を策定し、2025年3月に最終基準を公開しました。基準は任意の指針ではなく、将来的には金融商品取引法における法定開示基準として位置づけられることが見込まれており、対象企業にとって法的な義務となる可能性が高まっています。

現在、金融審議会では専門のワーキング・グループが設置され、新基準の具体的な適用範囲や義務化の開始時期について詳細な検討が進められています。制度化の動きを受けて、日本企業は基準の最終確定を待つのではなく、現時点から社内体制の整備、データ収集システムの構築、関連部署間の連携強化などの準備を進めることが重要です。

2027年以降に段階的な開示義務化が始まる見通し

日本企業は、2027年以降に段階的に開始される開示義務化に向けて、企業規模に応じた計画的な準備を進めなければなりません。現在検討されている適用スケジュールは、時価総額に基づく段階的な導入が予定されており、時価総額3兆円以上の大規模な企業が2027年3月期から義務化の対象となる見通しです。

続いて時価総額1兆円以上の企業が2028年3月期、時価総額5,000億円以上の企業が2029年3月期からそれぞれ適用開始となる案が示されています。

さらに長期的な展望として、2030年代にはプライム市場に上場するすべての企業への適用拡大が想定されており、大部分の上場企業が最終的に開示義務の対象となることが見込まれています。

出典:金融庁/サステナビリティ開示及び保証に係る動向

建設・製造業では社内体制やデータ基盤の準備が急務

建設・製造業では、開示基準への対応に向けて、社内体制とデータ基盤の整備が必要です。

脱炭素に関する信頼性の高い情報開示を実現するため、製造現場や建設現場など実際の事業活動が行われる現場レベルまでを含む包括的なデータ収集・分析・統制体制の構築が求められます。

製造プロセスや建設作業における詳細なエネルギー使用量の把握、原材料調達から製品完成までのサプライチェーン全体での排出量測定、複数の事業所にまたがるデータの統合管理など多くの課題が挙げられます。

同時に、国内基準の策定動向を継続的に監視し、自社が属する業界や企業規模に応じた適用スケジュールを正確に把握することも重要です。基準の詳細や適用時期の変更に迅速に対応できるよう、社内の情報収集体制を整備し、経営層も含めた柔軟な対応が求められています。

まとめ

まとめ

本記事では、建設業界向けにサステナビリティ開示基準の全体像を解説しました。ISSBは、2021年にIFRS財団によって設立された国際的な基準策定機関です。基準が広く採用されることで、企業の環境負荷、社会的責任、経営体制といった非財務要素を、国境を越えて一貫性のある方法で評価できることが期待されています。

ISSBが定める基準によって、財務報告と同時の開示が求められ業務フローの見直しが必要です。企業は自社の直接的な排出量だけでなく、サプライチェーン全体を包含するScope3までの温室効果ガス排出量を正確に把握し、可視化する体制の構築が必要になります

日本企業が今すべきこととして、今後の具体的な開示情報の義務化スケジュールも解説しているため、ESG投資やSDGsに対応していくことを検討している方は参照してみてください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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