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BEMSとは?中央監視との違いや導入事例を解説!

建設業界では環境負荷軽減と運用コスト削減への取り組みが重要な課題となっており、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)が注目を集めています。BEMSは建物のエネルギー使用状況を統合的に管理し、効率的な運用を実現する先進技術です。

本記事では、BEMSの基本的な仕組みや導入メリット、課題について詳しく解説します。また実際の導入事例や費用対効果も解説していますので、建物のエネルギー管理改善を検討されている建設業界の方は参照してみてください。

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BEMSとは

BEMSとは、建物全体のエネルギー使用状況を統合的に管理し、最適化を図る技術です。環境負荷軽減や運用コスト削減の観点から、多くの施設で導入が進められています。

ここでは、BEMSの基本的な概念と動作原理、さらに現代社会でBEMSが必要とされる理由について解説します。

BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)

BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)は、建物における総合的なエネルギー管理を担う先進技術です。BEMSは、各種センサーと計測機器を活用して電力・ガス・水道の使用量を常時監視し、収集した情報を統一的に管理します。

蓄積されたデータの分析により、エネルギー消費パターンを詳細に把握し、各設備の運転を効率的に制御可能です。さらに、履歴データとの比較機能により設備異常の早期発見や保守計画の改善にも貢献し、運営コストの削減と地球環境への配慮を両立させる重要な役割を果たしています。

BEMSの仕組み

BEMSの仕組みは、データ収集から制御まで一貫した流れで構成されています。システムの基盤となるのは建物各所に配置されたセンサー群で、室内環境や電力使用量などの情報を連続的に取得します。

センサーから得られたデータは専用ソフトウェアによって詳細に解析され、エネルギー消費の傾向や特徴を明確化する仕組みです。解析結果に基づいて最適化アルゴリズムが作動し、効率的なエネルギー運用を自動実行します。

管理者向けには直感的なダッシュボードが用意されており、複雑なデータを分かりやすいグラフや図表で表現し、適切な判断を下すための情報提供を行います。

BEMSが求められる背景

BEMSが求められる背景には、地球規模での環境問題への対応が大きく影響しています。気候変動への危機感が世界的に広がる中、企業における省エネルギー対策が求められているのが現状です。

国際的な環境目標設定の枠組みが普及し、CO2削減への取り組みが企業評価に直結するようになったことで、BEMSの価値が一層高まっています。環境省の統計によると、BEMSの普及率は、2013年に8%であったものが、2019年には17.6%となり、2025年には37%、2030年には48%と、今後さらなる拡大が予想されています。

企業にとって環境配慮が競争力の源泉となる現代において、BEMSは持続可能な経営を実現するためには欠かせないツールです。

出典:環境省/2021年度における地球温暖化対策計画の進捗状況

BEMSと中央監視の違い

BEMSと中央監視システムの違いは、機能の範囲と導入コストに大きく表れています。従来のBAS(中央監視・自動制御システム)は、空調や照明、セキュリティなど建物内のあらゆる設備を統合的に管理する包括的なシステムです。

BASは高度な機能を持つ一方で、設備投資には多額の費用が必要です。一方でBEMSは、エネルギー使用状況の可視化と最適化に機能を絞り込んでいます。必要最小限の機能に特化することで、BASシステムと比較して格段に低い導入コストを実現し、より多くの施設での採用を可能にしています。

このアプローチにより、エネルギー管理の効率化を手軽に始められるのがBEMSの大きな特徴です。

BEMSのメリット

BEMSを導入することで、次のメリットが得られます。

  • コスト削減
  • エネルギー使用状況の見える化
  • 環境負荷の低減

それぞれのメリットを解説しますので、導入の際に参照してみてください。

コスト削減

BEMSの導入は、多角的なコスト削減効果をもたらします。リアルタイムでのエネルギー監視により、不要な電力消費を特定して削減することで、月々の電気料金を大幅に軽減できます。

また、電力使用量のピーク制御により基本料金の引き下げも実現可能です。予防保全の観点では、設備の動作状況を常時監視することで故障の前兆を捉え、計画的なメンテナンスが行えるため、緊急修理による高額な費用発生を回避できます。

さらに、システム導入時には行政からの補助金制度を活用できるケースが多く、初期投資を抑制しながら長期的な運用コスト削減を実現する、経済的に有効な投資です。

エネルギー使用状況の見える化

エネルギー使用状況の見える化は、BEMSが提供するメリットの一つです。従来は把握困難だった建物内のエネルギー消費実態を、リアルタイムかつ詳細に把握できます。

建物全体の電力使用量から各階層、個別の部屋単位まで、段階的に細分化されたデータを取得できるため、エネルギー消費の多い箇所を正確に特定できます。詳細な分析情報により、管理者は無駄な電力使用が発生している具体的な場所や設備を明確に認識し、効果的な省エネルギー対策を計画的に実施できることがメリットです。

データに基づいた科学的なアプローチにより、確実性の高い改善策の導入が実現します。

環境負荷の低減

環境負荷の低減は、BEMSが社会に提供する重要な価値の一つです。システムは多様な省エネルギー機能を統合し、リアルタイム監視データに基づいて建物設備を最適制御することで、無駄なエネルギー消費を排除します。

空調システムや照明設備の自動化により、人のいない時間帯の電力使用を大幅に削減し、エネルギー使用パターンの分析結果から導き出された効率的な運用計画により、従来以上に合理的な資源活用を実現します。

これらの機能は単なるコスト削減にとどまらず、CO2排出量の減少をもたらし、地球環境保護に直接貢献できることがメリットです。脱炭素社会の実現が急務となる現代において、BEMSの導入は企業の環境責任を果たすための具体的行動として高く評価されます。BEMSを経営戦略の中核に据えることで、企業ブランディングや社会的責任(CSR)の向上にもつながります。

BEMS導入のデメリット・課題

BEMSは多くのメリットを提供する一方で、導入時にはいくつかのデメリットや課題も存在します。システム構築には相応の初期投資が必要であり、運用には専門的な知識を持つ人材の確保が欠かせません。

また、継続的に生成される大量のデータを効果的に活用するためには、高度な解析技術が求められます。これらの要因が導入の障壁となる場合があり、事前の十分な検討が重要です。

ここでは、BEMS導入における主要な課題である費用面の負担、人材確保の困難さ、データ処理の複雑性について解説します。

導入費用とコスト

BEMS導入における課題は、システム規模に応じた高額な初期投資です。小規模な施設では数百万円程度で済みますが、中規模施設になると500万円から2000万円、大規模な複合施設では3000万円を超える導入費用が必要です。

さらに継続的な運用費用として、データ管理やクラウドサービス利用料が月額数万円から数十万円、年間の保守メンテナンス費用やソフトウェア更新費用も相当額発生します。このため導入検討時には、初期投資とランニングコストの総額を正確に算出し、長期的な省エネルギー効果による削減額との収支バランスを慎重に評価することが必要です。

補助金制度の活用により負担軽減も可能なため、補助金の活用も踏まえたうえで、事前の十分な検討が求められます。

専門スキルを持った人材不足

BEMS運用における課題として、専門技術を有する人材の確保があります。BEMSは高度なエネルギー管理技術を基盤としているため、運用担当者には電気工学やデータ分析、システム制御に関する幅広い専門知識が必要です。

複合的なスキルを兼ね備えた人材は極めて限られており、適任者の採用は容易ではありません。また、社内の既存スタッフをBEMS担当者として育成する場合も、技術研修や実務教育に相当な時間と費用を要します。

人材不足により、導入したシステムの性能を十分に活用できない状況も発生しがちで、BEMS導入を検討する企業にとって人的リソースの確保は重要な検討事項です。

膨大なデータの解析が必要

BEMS運用において避けて通れない課題が、システムから生成される大量データの適切な解析処理です。建物内の各種センサーから24時間365日収集される膨大な情報は、従来の設備管理とは異なる高度な分析手法を必要とします。

単純にデータを眺めるだけでは有効な改善策を導き出すことはできず、エネルギー使用パターンの読み取りや異常値の判断には経験と洞察力が求められます。特に導入初期段階では、データの意味を正確に理解し効果的な活用方法を見つけ出すまでに時間を要し、試行錯誤を繰り返しながら徐々にノウハウを蓄積していかなければなりません。

導入初期の期間中は期待した成果が得られない場合もあり、長期的な視点での取り組みが重要です。

BEMS導入の事例

BEMS導入の事例として、次の3つの例を紹介します。

  • 脳神経リハビリ北大路病院
  • 那覇空港国内線ターミナルビル
  • 株式会社 文明堂東京 浦和工場

それぞれの事例を解説しますので、導入の際に参照してみてください。

脳神経リハビリ北大路病院

脳神経リハビリ北大路病院の事例は、中小規模施設でのBEMS導入成功例として注目されます。同病院では2015年に4階建て施設にシステムを導入し、約300万円の初期費用のうち50万円を補助金で軽減することで導入コストを抑制しました。

運用開始後の効果は顕著で、年間約170万円のコスト削減を達成し、電力使用量も33,000kWh減少させることに成功しています。さらに、数値的な成果だけでなく、スタッフ間で電力デマンド管理への理解が深まり、組織全体の省エネルギー意識が向上した定性的効果も得られている点が注目すべきポイントです。

脳神経リハビリ北大路病院の事例は、適切な規模でのBEMS導入により、経済効果と意識改革の両面で改善を実現できることを示しています。

出典:京都市/脳神経リハビリ北大路病院BEMS導入について

那覇空港国内線ターミナルビル

那覇空港国内線ターミナルビルの事例は、大規模施設でのBEMS導入による効果を示す例です。那覇空港国内線ターミナルビルでは2003年の比較的早い段階でシステムを導入し、空調用冷水設備と照明システムの効率化を重点的に推進しました。

2008年の効果測定では、導入前と比較して月間約40万kWhの大幅な電力削減を達成し、これは全体使用量の6.4%に相当する削減率です。空港という24時間運用される大型公共施設の特性を活かし、システム規模が大きいほど削減効果も比例して拡大することを実証しました。

那覇空港国内線ターミナルビルの成功事例は、エネルギー消費量の多い大規模施設ほどBEMS導入による投資回収効果が高く、社会的なインパクトも大きいことを明確に示しています。

出典:那覇空港/環境への取り組み

株式会社 文明堂東京 浦和工場

株式会社文明堂東京浦和工場の事例は、製造業におけるBEMS導入の実践的な成功モデルを示しています。導入のきっかけは補助金制度への申請条件であったグリーン電力導入でしたが、その後の生産体制変更により他工場からの製造移管が発生し、契約電力が超過する課題に直面しました。

しかしBEMS導入から9か月の短期間で70,332kWhの電力削減を実現し、金額換算では211万9千円のコスト削減効果を達成しています。特に注目すべきは投資回収期間の大幅短縮で、当初3年5か月の予定が体感温度の適正化などの運用改善により1年9か月まで短縮されました。

出典:出光興産/BEMS導入で211万円のコスト削減 初期コストも1.9年で回収可能に

まとめ

本記事では、建設業界で注目を集めているBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)について解説しました。BEMSは建物のエネルギー使用状況をリアルタイムで監視・分析し、最適な制御を行うシステムです。

導入により大幅なコスト削減と環境負荷低減を実現できる一方、初期投資や専門人材の確保、データ解析などの課題も存在します。しかし、病院や空港、製造業での成功事例が示すように、適切な運用により短期間での投資回収も可能です。

建設業界において持続可能な建物運営が求められる現代、BEMSは重要な技術として今後さらなる普及が期待されます。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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