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カーボンネガティブとは?建設業界が知っておきたい定義と最新技術・事例を解説

カーボンネガティブとは?建設業界が知っておきたい定義と最新技術・事例を解説

カーボンネガティブとは、CO2の排出量を上回る吸収を実現し、大気中の温室効果ガスを実質的に減少させる取り組みです。建設業界では、カーボンネガティブコンクリートをはじめとする革新的な技術の社会実装が進んでいます。

本記事では、カーボンネガティブの基本的な意味やカーボンニュートラルとの違い、注目される背景を解説します。また、国内外の具体的な事例や企業が直面するコスト・技術的課題についても解説していますので、カーボンネガティブへの取り組みを検討している建設業界の方は参照してみてください。

カーボンネガティブの意味とカーボンニュートラルとの違い

カーボンネガティブ

近年、パリ協定の目標達成に向けた取り組みが加速するなか、カーボンネガティブへの注目が急速に高まっています。

ここでは、カーボンネガティブの意味やカーボンニュートラルとの違い、注目される背景について解説します。

カーボンネガティブとは

カーボンネガティブとは、CO2の吸収量が排出量を上回る状態を意味します。社会活動によって大気中に放出されるCO2に対し、排出量以上の量を大気中から除去・吸収することで、実質的にマイナスの排出量を達成する取り組みです。

排出量削減だけでなく、森林吸収やCO2回収技術の活用によって、差し引きで大気中のCO2総量を減少させることがカーボンネガティブの本質です。気候変動対策のなかでも、より積極的なアプローチとしてカーボンネガティブは重要な位置付けにあります。

カーボンニュートラルとの違い

カーボンネガティブとカーボンニュートラルの違いは、CO2削減目標の水準にあります。

概念 特徴
カーボンニュートラル 排出量の抑制やオフセットなどの手段を通じて排出と吸収の均衡を目指す考え方
カーボンネガティブ 排出量以上のCO2を大気中から取り除くことを求めるため、実質的な排出量がマイナスになる考え方

排出量と同等のCO2除去を行うネットゼロの概念もありますが、カーボンネガティブはさらに上回る吸収を実現するものです。カーボンネガティブは他の概念と比べてより高い目標を掲げた先進的な取り組みであり、脱炭素の次のステージとしてカーボンネガティブの重要性は今後ますます高まることが見込まれます。

注目される背景とパリ協定

カーボンネガティブが注目される理由は、気候変動の深刻化に対してより踏み込んだ対策が求められている点にあります。パリ協定では産業革命前からの気温上昇を一定水準内に抑える目標が掲げられており、目標達成にはカーボンネガティブの実現が不可欠です。

排出量削減だけでは間に合わない危機感から、吸収量が排出量を上回るカーボンネガティブへの期待が国際的に高まっているのが現状です。建設業界でも、CO2排出量の多さが課題とされるなか、CSRや企業ブランディングの観点からカーボンネガティブに取り組む動きが広がっています。

国際合意と社会的要請の両面から、カーボンネガティブは今後の脱炭素戦略において中核的な役割を担う考え方といえます。

出典:環境省/2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の検討と具体的な取組を紹介します

カーボンネガティブを実現する建設技術とネガティブエミッション

カーボンネガティブの実現には、排出量を上回るCO2吸収を可能にする具体的な技術の導入が欠かせません。建設分野でもネガティブエミッション技術の活用が進んでおり、CO2固定やバイオ炭、DACCSやBECCSなどの工学的手法、さらにブルーカーボンを活かした沿岸開発まで、カーボンネガティブに貢献する建設技術について解説します。

CO2固定技術とバイオ炭の活用

カーボンネガティブを実現するうえで、CO2固定技術とバイオ炭の活用は有効な手段の一つです。バイオ炭は、植物が光合成によって取り込んだCO2を熱分解により炭素として安定的に封じ込めたものであり、土壌中で長期にわたり分解されにくい特性を持っています。

この特性を活かし、バイオ炭を建設資材として応用する動きが広がっており、例えばコンクリートにバイオ炭を混ぜ込むことで、製造工程で発生するCO2を相殺し、実質的にマイナスの排出量を達成する技術も登場しています。

CO2を「出さない」だけでなく「閉じ込める」発想が、カーボンネガティブの実現を技術面から後押ししています。

出典:清水建設株式会社/カーボンネガティブを実現するバイオ炭コンクリート「SUSMICS-C」

DACCSとBECCSの工学的プロセス

カーボンネガティブの実現に向けて、DACCSとBECCSは代表的な工学的アプローチとして期待されています。特徴は次の通りです。

技術 特徴
DACCS 大気中から直接CO2を捕集し地下へ封じ込める技術
BECCS バイオマスの燃焼過程で生じるCO2を回収・貯留することで、差し引きの排出量をマイナスにする技術

いずれも設置場所の制約が少なく、自然環境に依存しない点がカーボンネガティブを推進するうえでの大きなメリットです。ただし、回収に要するエネルギーやコスト面での課題は依然として残っており、実用規模での普及には技術革新が不可欠です。

課題を克服しつつ、工学的手法によるカーボンネガティブの達成していくことが今後さらに現実味を帯びていくと見込まれます。

出典:経済産業省/2050年カーボンニュートラル(CN)の達成に必要な、ネガティブエミッション技術(NETs)の社会実装・産業化に向けた方向性をとりまとめました

ブルーカーボンと沿岸開発

カーボンネガティブの実現において、ブルーカーボンは海洋生態系を活用した有力な吸収源として注目されています。海草藻場やマングローブ、湿地など沿岸の生態系は、森林などのグリーンカーボンと比較して単位面積あたりの炭素貯蔵能力が高く、効率的にCO2を吸収・蓄積できる点が強みです。

建設業界においては、港湾整備や沿岸インフラの開発時に生態系を破壊するのではなく、保全・再生と両立させる取り組みがカーボンネガティブへの貢献策として広がりを見せています。

開発行為に吸収源の創出を組み込むことで、事業活動を通じてカーボンネガティブに近づけます。海の持つ炭素吸収力を活かすブルーカーボン戦略は、カーボンネガティブの達成を支える重要な柱の一つです。

カーボンネガティブコンクリートの国内・海外事例

カーボンネガティブ

カーボンネガティブコンクリートは、製造過程でCO2を吸収・固定することで排出量を実質マイナスにする次世代の建設資材です。国内では大手ゼネコンが炭素固定技術の社会実装を進めており、海外でもスタートアップ企業が革新的なアプローチでカーボンネガティブコンクリートの実用化に挑んでいます。

ここでは、国内外におけるカーボンネガティブコンクリートの具体的な事例について解説します。

国内ゼネコンによる炭素固定技術の社会実装

国内の大手ゼネコンでは、カーボンネガティブを実現するコンクリート技術の社会実装が着実に進んでいます。代表的な例として、鹿島建設が開発した「CO2-SUICOM」はコンクリートの製造工程でCO2を吸収・固定する先駆的な技術であり、カーボンネガティブコンクリートの実用化を世界に先駆けて示しました。

また、清水建設ではバイオ炭をコンクリートに練り込むことで炭素を封じ込める手法を開発し、実用段階へと移行しています。共通するのは、従来の製造時に大量に排出されていたCO2を相殺するだけでなく、排出量を超える吸収を達成している点です。

国内ゼネコンの取り組みは、建設資材をカーボンネガティブに転換する動きとして、業界全体のカーボンネガティブ推進に大きなインパクトを与えています。

海外スタートアップによる革新的アプローチ

カーボンネガティブコンクリートの実現に向けて、海外ではスタートアップ企業が独自の技術で革新を起こしています。カナダのCarbonCure社は、生コンの製造段階で液化したCO2を注入し鉱物として永続的に封じ込める手法を確立しており、カーボンネガティブの達成に直結する技術として注目を集めています。

一方、アメリカのSolidia社はコンクリートの養生プロセスにおいてCO2を取り込ませることで、排出量の大幅な抑制を実現しました。両社に共通する強みは、既存の製造ラインに導入しやすいソリューションとして設計されている点であり、カーボンネガティブ技術の世界的な普及を加速させる可能性を持っています。

カーボンネガティブに取り組む企業のメリットと課題

カーボンネガティブへの取り組みは、企業にとって環境貢献だけでなく経営面でも多くのメリットをもたらします。一方で課題となるのは、コスト負担や技術的ハードルです。

ここでは、カーボンネガティブに取り組む企業が得られるブランド力や企業価値の向上と、直面する課題について解説します。

企業価値とブランド力の向上

カーボンネガティブへの取り組みは、企業価値やブランド力を高めるうえで効果を発揮します。脱炭素を超えた積極的な姿勢を示すことで、ESG投資家からの評価が高まり、資金調達の面でも有利に働く可能性があります。

また、環境配慮を重視する取引先や消費者からの信頼を獲得しやすくなり、カーボンネガティブへの対応がビジネスパートナーとして選ばれる決め手となるケースも増えているのが現状です。

さらに、カーボンネガティブに資する先進技術をいち早く導入することは、同業他社との明確な差別化につながり、市場における競争優位の確立にも寄与します。カーボンネガティブは単なる環境施策にとどまらず、経営戦略としても企業に多面的なメリットをもたらす取り組みです。

コスト負担と技術的ハードル

カーボンネガティブの実現には、コスト面と技術面の双方に課題が残されています。現状では、カーボンネガティブに対応する資材や設備の導入費用は従来のものに比べて高額になりやすく、特に建設業界のような大量の資材を扱う分野では、コスト増が事業全体の収益を圧迫しかねません。

普及を後押しするためには、補助金や税制優遇など経済的な支援策が不可欠です。また、カーボンネガティブを支える技術の多くはいまだ開発段階にあり、安定した品質や効率的な運用を実現するまでにはさらなる研究が求められます。

加えて、吸収技術に過度に依存することで排出量削減への取り組みが鈍化するモラルハザードのリスクも懸念されています。カーボンネガティブの推進にあたっては、課題を正しく認識し、削減と吸収のバランスを保つことが重要です。

建設業界におけるカーボンネガティブに関する事例

カーボンネガティブの考え方は、建設業界においても具体的な技術や製品として実用化が進んでいます。実際の現場でどのようにカーボンネガティブが取り入れられているのか、建設業界における代表的な事例について紹介します。

株式会社大林組

大林グループは、「Obayashi Sustainability Vision 2050」において目標の一つに「脱炭素」を掲げ、「カーボンニュートラル」を実現するための具体的な取り組みを推進しています。

その一環として大林組は、CO2排出量が実質ゼロより少ないカーボンネガティブを実現できるコンクリート「クリーンクリートN」を2022年に開発し、2023年3月に現場打ちの外壁に初適用しています。このたび、クリーンクリートNをプレキャストコンクリートカーテンウォール(PCカーテンウォール)(※1)に初めて適用しました。

クリーンクリートNは、セメントの大部分をCO2排出量の少ない高炉スラグ微粉末などの混和材に置換することで製造時のCO2排出量を最大で80%削減する「クリーンクリート®」の技術を発展させたもので、クリーンクリートにCO2を吸収・固定化した粉体を混ぜ合わせることで、CO2排出量を最大120%削減するコンクリートです。なお、クリーンクリートNの2022年度の適用実績は、環境配慮型コンクリートの一つとして環境省によってCO2固定量が世界で初めて算定され、国連に報告されています。

※1 工場製作したコンクリート製の外壁材

出典:カーボンネガティブを実現する「クリーンクリートN®」をプレキャストコンクリートカーテンウォールに初適用|2024.9.2|株式会社大林組

東急建設株式会社

東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏)は、コンクリート材料に起因するCO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)またはマイナス(カーボンネガティブ)を実現するコンクリート「ゼロクリート」を開発しました。

「ゼロクリート」は、CO2排出量の多いセメント使用量を減らすとともに、CO2を固定するCCU※材料を使用することでCO2排出量を相殺して、カーボンニュートラルまたはカーボンネガティブを実現するコンクリートです。

「ゼロクリート」は、東急建設株式会社の登録商標です(登録商標第6717526号)

※CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization、CO2の回収・利用

コンクリートの製造に関わるCO2排出量は、その約9割が主原料であるセメントの製造に起因しています。そのため、セメントをCO2排出量の少ない材料に置き換えることで、排出量を低減できます。「ゼロクリート」では、高炉スラグ微粉末および酸化カルシウムなどを主体とした混和材を材料として活用し、セメントの使用量を通常の0~20%まで減らします。さらに、CCU材料として軽質炭酸カルシウムを添加しています。軽質炭酸カルシウムは、コンクリート二次製品の工場内で発生する高アルカリ廃水と二酸化炭素を反応させて製造します。

セメント、高炉スラグ微粉末、酸化カルシウムおよび軽質炭酸カルシウムを、独自の調合割合に基づき要求性能に応じて調整できるため、施工性や耐久性を損なわずに、環境性能を高めることが可能です。加えて、高炉スラグ微粉末や高アルカリ廃水など本来廃棄するものを活用することで、廃棄物の削減にも寄与します。

出典:カーボンネガティブを実現するコンクリート「ゼロクリート」を開発|2025.10.6|東急建設株式会社

まとめ

カーボンネガティブ

本記事では、カーボンネガティブの意味やカーボンニュートラルとの違い、注目される背景、実現に向けた技術や企業の取り組みについて解説しました。カーボンネガティブは排出量を上回るCO2吸収を目指す概念であり、パリ協定の目標達成に向けて不可欠なアプローチです。

建設業界ではカーボンネガティブコンクリートの開発・実装が国内外で進んでおり、DACCSやBECCS、ブルーカーボンなどの技術も実用化に向けた歩みを加速させています。一方で、コスト負担や技術的課題も残されており、カーボンネガティブの普及には継続的な投資と制度的支援が求められます。

カーボンネガティブの導入を検討している建設業関係者の方は参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

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