人手不足と脱炭素対応への要請が同時に強まるなか、建設業界では生産性向上とCO2削減の両立が経営の最重要課題となりつつあるのが現状です。国土交通省が2024年に「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに建設現場の省人化3割・生産性1.5倍を掲げたことで、土木分野のDXを支える中核技術として、CIMへの注目はかつてないほど高まっています。
本記事では、CIMの定義とBIMとの違いから、原則適用の動向、3次元モデルと属性情報の役割、導入メリットや課題への対策までを解説します。また、建設業の活用事例も紹介していますので、CIMの導入検討を始めたい建設業の方は参照してみてください。
目次
IMとは?建設業界がDXと脱炭素を推進する背景

国土交通省は2040年度までに建設現場の省人化を3割以上、すなわち生産性を1.5倍に引き上げる方針を掲げており、その推進エンジンとなるのがCIMです。
CIMの基本的な定義とBIMとの違い、国土交通省が進めるBIM/CIM原則適用の動向、3次元モデルと属性情報が果たす役割について解説します。
出典:国土交通省/「i-Construction 2.0」を策定しました
CIMの定義とBIMとの違い
CIMとは、橋梁やダム、トンネル、道路など土木構造物の調査・設計段階から3次元モデルを取り入れ、建設プロセス全体の効率化を実現する取り組みです。同じ3次元モデルを扱う仕組みでもBIMとは対象範囲が異なります。
| 取り組み | 対象 |
| BIM | オフィスビルや住宅、商業施設といった建築物単体を主軸に置く |
| CIM | 線状かつ広範囲に及ぶ社会インフラを扱う |
設計では、構造物の形状データだけでなく、周辺の地形や地質、河川との位置関係といった環境情報まで一体的にモデル化する必要があります。建設業界では、広域の情報を統合管理できるCIMの強みが、土木分野のDXを支える基盤として位置づけられています。
国土交通省が推進する「BIM/CIM原則適用」
国土交通省は令和5年度から、規模の小さい案件を除く直轄の公共工事においてBIM/CIMの原則活用へと舵を切りました。3次元モデルを軸にした建設生産・管理システム全体の生産性向上と、発注者と受注者双方の業務効率化を狙いとする施策です。
橋梁設計や河川工事などの直轄案件で3次元モデルの作成と活用が前提となり、令和8年度にはさらに対象範囲を広げた高度な原則適用への移行が準備されています。あわせて、産官学が連携して基準や要領を議論する「BIM/CIM推進委員会」も設置され、ガイドラインの整備が継続的に進められている状況です。
CIMの活用は直轄工事に対応するゼネコンや建設コンサルタントだけでなく、地方自治体の発注工事へも波及することが見込まれます。
3次元モデルと属性情報の役割
CIMモデルの特徴は、構造物の形を再現する「3次元形状データ」に、部材ごとの名称や規格、使用材料、設計強度といった属性情報が紐づいている点にあります。つまりCIMは単なる立体図面ではなく、それぞれの要素が意味を持つ情報のかたまりとして扱える仕組みです。
橋脚の鉄筋径やコンクリート強度、ボルトの規格などをモデル上の各部材に直接埋め込むことで、設計変更時の数量算出が自動化され、施工後の維持管理段階でも補修や点検の履歴を一元的に追跡できます。
建設業界では従来、紙図面と台帳が分散管理されることで情報の引き継ぎに大きな手間が生じていましたが、属性情報を備えたCIMモデルは課題を解消する基盤として機能します。
CIM導入のメリットは?建設業の業務効率化と環境負荷低減
CIMの導入は、建設業の幅広い課題に応える効果をもたらします。フロントローディングによるミスの削減、関係者間での迅速な合意形成、LCA(ライフサイクルアセスメント)の高度化の3つの観点について解説します。
フロントローディングによるミスの削減
フロントローディングとは、設計の初期段階で想定される課題を洗い出し、施工以降の工程で発生する手戻りを未然に防ぐ考え方です。CIMによる3次元モデルを使えば、従来の2次元図面では見落としがちだった構造物同士のぶつかり、例えば橋梁の鋼桁とケーブル配管の干渉、地下構造物における配筋と埋設管の交差などの問題を、設計段階で立体的に検出できます。
現場での急な設計変更や資材の追加発注、不要になった部材の産業廃棄物処理など無駄が大幅に減り、工事コストと環境負荷の双方を抑える効果が得られます。建設業界ではフロントローディングが、生産性向上と脱炭素の両立を支える実践的な手法として浸透し始めています。
関係者間での迅速な合意形成
CIMによる3次元可視化のメリットの一つは、専門知識を持たない関係者にも完成形を直感的に伝えられる点です。図面の読解に慣れていない地域住民や、自治体の発注担当者であっても、立体モデルを通じて橋梁の高さや道路線形、周辺景観との調和を一目で把握できるため、合意形成までのやり取りが大幅に短縮されます。
また、施工手順を時間軸に沿って再現する4Dシミュレーションを併用すれば、クレーンの旋回範囲や仮設足場の段取り、交通規制のタイミングなど現場の動きを事前に検証できるほか、安全性の検討にも有効です。
CIMの可視化機能は、住民説明会から発注者協議までを円滑に進める手段として、プロジェクト全体の工期圧縮にも直結します。
LCA(ライフサイクルアセスメント)の高度化
LCAとは、構造物の設計から建設、供用、解体までの全段階を通じて発生する環境負荷を定量的に評価する手法です。LCA評価にあたって、セメントや鉄筋といった資材の製造時排出量、建設機械の稼働時排出量、補修・更新時の追加排出量までを一連で捉える必要があります。
CIMは3次元モデルに材料種別や数量、施工履歴などの情報を統合できるため、LCA算定の基礎データを精緻に管理できる点で強みを発揮します。橋梁の補修計画では、過去の使用資材や補強履歴をモデル上で参照できるため、低炭素コンクリートやリサイクル鋼材への切り替え判断が容易です。
2024年6月の品確法改正で脱炭素への寄与が公共工事の評価軸に加わったこともあり、CIMを基盤としたLCAの高度化は今後の標準的な進め方となることが見込まれます。
出典:国土交通省/国土交通省土木工事の脱炭素アクションプランを公表しました!
CIM活用の課題と対策|建設業が導入を成功させる3ステップ

CIMの導入効果を最大化するには、初期投資や運用面で立ちはだかる課題を一つずつクリアしていく姿勢が欠かせません。建設業がCIM導入を確実に成功させるための3ステップとして、導入コストと専門人材の確保、フェーズを跨ぐデータ連携の標準化、ICTツールによる属性情報の管理について解説します。
導入コストと専門人材の確保
CIM導入におけるハードルは、ソフトウェアやハードウェアにかかる初期費用と、3次元モデルを扱える専門人材の確保にあります。建設業界で広く用いられる土木設計用CADや干渉チェックソフトはライセンス費用が高額で、運用に耐えるハイスペックPC、サーバー、クラウド環境の整備までを含めると、中小規模の建設コンサルタントや専門工事会社にとっては大きな投資判断となりかねません。
あわせて、3次元モデルの作成や属性情報の付与には専門スキルが必要で、社内研修だけでなく、CPDS認定講習やソフトベンダーの認定資格制度など外部リソースの活用も有効です。CIMの導入を成功させるには、対象案件を絞った段階的なツール導入と、若手技術者を中心とした計画的な人材育成を並走させる進め方が現実的です。
フェーズを跨ぐデータ連携の標準化
CIMの効果を最大限に引き出すには、調査・設計・施工・維持管理という一連のフェーズを跨いだデータ連携を途切れさせないことが重要です。建設プロジェクトでは、測量会社が取得した地形データを設計コンサルタントが3次元モデルに反映し、ゼネコンが施工計画に展開し、最終的に発注者や管理事業者へと引き継ぎます。フォーマットの非互換や属性情報の欠落が起これば、せっかくのモデルも価値を失うことになりかねません。
国土交通省が公開するBIM/CIM活用ガイドラインや取扱要領では、標準フォーマットでのデータ受け渡しが定められており、リクワイヤメント(発注者の要求事項)を受発注者双方が正しく理解することが前提です。CIMの真価は、情報の断絶を防いだときに初めて発揮されます。
ICTツールによる属性情報の管理
ICTツールとCIMモデルを組み合わせると、属性情報の取得から活用までを効率化できます。例えば、ドローン空撮や地上型レーザースキャナ(TLS)で取得した現場の点群データをCIMモデルに重ね合わせれば、設計値と実測値の差を立体的に比較でき、出来形管理や品質管理の作業を大幅に省力化できます。
さらに、クラウド型の共通データ環境(CDE)に3次元モデルと属性情報を集約することで、現場・本社・発注者がリアルタイムで同じ情報を参照でき、進捗確認や工事写真の紐づけもスムーズに進められることが特徴です。
CIMモデルに紐づいたデータは、構造物の引き渡し後も維持管理段階で補修履歴や点検結果の参照基盤となり、建設業界が目指す循環型の生産システムを支える資産として活用されていきます。
建設業界におけるCIMに関する事例
CIMの活用は、すでに多様な現場で具体的な成果を生み出しています。ダム再開発工事におけるBIM/CIMと3次元流体解析の組み合わせ、海底シールド工事での品質管理の可視化、そして道路施工現場でのDX推進の取り組み事例について紹介します。
株式会社大林組
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出典:ダム再開発工事にBIM/CIMを活用した3次元流体解析技術を導入|2025.11.19|株式会社大林組
鹿島建設株式会社
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出典:海底シールド工事へのCIM導入で、品質管理を“見える化”|2017.2.22|鹿島建設株式会社
清水建設株式会社
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出典:BIM/CIMを基軸に道路施工現場のDXを推進|2025.4.4|清水建設株式会社
まとめ

本記事では、CIMの定義やBIMとの違い、国土交通省が進めるBIM/CIM原則適用の流れ、3次元モデルと属性情報の役割について解説しました。あわせて、フロントローディングによるミス削減や関係者との迅速な合意形成、LCAの高度化といった導入メリット、コストや人材確保といった課題への対策も紹介しています。
建設業の実務でCIMを定着させるには、まず自社が請け負う直轄工事や自治体案件の適用範囲を確認し、工種ごとに必要となる3次元モデルの詳細度を整理することが起点です。若手技術者を軸としたモデラーの育成計画と、ドローンやレーザースキャナによる点群取得環境の段階的な整備を並行して進めれば、無理のない導入が実現できます。
建設DXと脱炭素の両立を目指す方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。









