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FIP制度とは?FITとの違いや設備投資のメリット、建設業界の活用事例を解説

FIP制度とは?FITとの違いや設備投資のメリット、建設業界の活用事例を解説

FIP制度は市場価格にプレミアムを上乗せして売電する仕組みであり、再生可能エネルギーの自立的な普及を後押しする制度として注目されています。本記事では、FIP制度の基本的な定義やFIT制度との違い、蓄電池を活用した収益性の向上策、さらに脱炭素経営における環境価値の活用法を解説します。

また、建設業界における大手ゼネコンのFIP制度活用事例も紹介していますので、再エネ事業や脱炭素戦略の導入を検討されている方は参照してみてください。

FIP制度の基礎知識|FIT制度との仕組みや定義の違い

fip制度

建設業界では脱炭素の流れを受け、FIP制度への関心が高まっています。ここでは、FIP制度の基本的な定義やFIT制度との相違点、業界で注目される背景について解説します。

FIP制度とは「市場価格+プレミアム」の仕組み

FIP制度は、再生可能エネルギーで発電した電力を市場で販売する際に、補助額としてプレミアムが加算される支援制度です。FIP制度におけるプレミアムは、あらかじめ定められた基準価格から、卸電力市場での期待収入にあたる参照価格を差し引いて算出されます。

プレミアム(補助額) = 基準価格(FIP価格) - 参照価格(卸電力市場における期待収入)

FIP制度のもとでは、市場の需給バランスに応じた売電収入の変動が生じます。つまり、電力の取引価格が上昇する局面ではより多くの収益を見込める一方、価格が下落した場合には収入も減少することが特徴です。

FIP制度は市場原理と連動した設計であるため、発電事業者には市場動向を踏まえた柔軟な経営判断が求められます。

出典:資源エネルギー庁/再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート

FIT制度との違い

FIP制度とFIT制度の違いは、売電の仕組みにあります。

制度 特徴
FIP制度 発電事業者自らが市場で電力を売却して収入を得る
FIT制度 定められた固定価格で電力会社が一定期間買い取る義務を負う

また、FIP制度の特徴として、発電計画と実績のずれを調整するための費用負担が事業者に生じる点も見逃せません。FIP制度への移行が進められている理由の一つは、電力利用者が負担する賦課金の軽減が期待されているためです。

FIP制度は事業者の自立的な経営を促しつつ、社会全体のコスト最適化を目指す制度設計といえます。

建設業界でFIP制度が注目される背景

FIP制度が建設業界で注目される背景には、再生可能エネルギーを主力電源へと育てる国の方針があります。従来のFIT制度は再エネの普及拡大に貢献した一方で、需給バランスを考慮した発電が進みにくい側面がありました。

FIP制度では、電力の需要に応じて発電量を調整することで収益性が高まる設計となっているため、事業者の主体的な市場参加が促されます。建設業界においても、ZEBやZEHなど環境配慮型建築の普及に伴い、再エネ電源の担保や活用への関心が高まっています。

FIP制度を理解することは、脱炭素に向けた事業戦略を検討するうえで欠かせない視点です。

FIP制度の収益性と設備管理におけるメリット

FIP制度は市場価格と連動する仕組みのため、売電のタイミングを工夫することで収益の最大化が見込めます。蓄電池を活用したピークシフトもFIP制度のもとでは有効な戦略です。

一方で、需給管理に伴うバランシングコストへの備えも欠かせません。ここでは、FIP制度の収益性と設備管理におけるメリットについて解説します。

市場連動による売電収入の最大化

FIP制度の魅力は、市場価格の動きを活かして売電収入を高められる点にあります。電力の需要が集中し取引価格が上昇するタイミングを見極めて売電量を増やせば、プレミアムと合わせた総収入が基準価格を上回る可能性が生まれます。

FIP制度では、価格変動に応じて運用方針を柔軟に調整できるかどうかが、収益性を左右する重要なポイントです。市場環境が急激に変化した場合には売電価格の見通しが立てにくくなるリスクも存在します。

一方で、需要予測や販売戦略を適切に組み合わせることで、FIP制度のもとではFIT制度にはなかった収益拡大の機会を得られます。

蓄電池活用によるピークシフトの優位性

FIP制度において蓄電池の活用は、売電収益を向上させる有効な手段です。市場価格が低い時間帯に電力を蓄え、需要が高まり価格が上昇するタイミングで放電・売電を行うことで、効率的な収益の担保が期待できます。

ピークシフト戦略は、FIP制度の市場連動型の仕組みと相性がよいといえます。さらに、蓄電池は需給バランスの調整にも効果を発揮する点がポイントです。発電計画と実績の差異から生じるインバランス負担を抑制できるため、FIP制度における収益の安定化にも直結します。

実際に国の施策としても、FIP制度の推進にあたって蓄電池をはじめとする設備導入に対する支援が進められているのが現状です。建設業界でも自家消費型の太陽光発電と蓄電池を組み合わせた施設計画が増えており、FIP制度のもとで蓄電池を戦略的に導入することは、事業の競争力を高めるうえで欠かせない取り組みです。

出典:経済産業省/FIP制度に関する政策措置について

バランシングコスト(需給管理リスク)への対応

FIP制度のもとでは、発電事業者に対して発電計画と実績を一致させるバランシングの義務が課されており、予測とのずれに応じてコストが発生する仕組みです。バランシングコストはFIP制度における代表的なリスクの一つであり、適切に管理できなければ収益を圧迫する要因になりかねません。

ただし、FIP制度の開始にあたっては事業者の負担を緩和する目的で、バランシングコストに相当する金額をプレミアムに上乗せする形の経過措置が設けられています。制度上の配慮がある間に、発電量を高い精度で見通す予測技術の導入や、蓄電池を活用した出力の調整体制を整備しておくことが重要です。

FIP制度で安定的に収益を担保するためには、バランシングコストへの対応力を早期に高めておくことが求められます。

出典:資源エネルギー庁/FIP制度における基準価格とプレミアム

FIP制度と脱炭素経営における環境価値の活用法

fip制度

FIP制度では、発電事業者が非化石証書を直接取引できるため、環境価値の調達コストを抑えられる可能性があります。ここでは、コーポレートPPAとの組み合わせや国際的な評価向上にもつながることなど、FIP制度と脱炭素経営における環境価値の活用法について解説します。

非化石証書の直接取引によるコスト抑制

FIP制度の特徴の一つとして、発電事業者が非化石証書を自ら保有し取引できる点が挙げられます。FIP制度を利用する事業者は需要家と直接交渉して環境価値の売却が可能となり、仲介を介さない分コストの抑制が見込めます。

また、再生可能エネルギーが持つ環境価値を電力とは分離して扱えるため、需要家企業は電力の調達先に左右されることなく、自社の脱炭素目標に合わせて柔軟に非化石証書を活用できる点もメリットです。FIP制度によって取引の機会が拡大すれば、市場全体の流動性が高まり、需要家にとっても調達手段の幅が広がることが期待されます。

FIP制度は売電収入の担保だけでなく、新たな収益源を生み出す仕組みとしても大きな意義を持つ制度といえます。

コーポレートPPAとの相乗効果

FIP制度は、需要家と発電事業者が長期的に再生可能エネルギーの売買契約を結ぶコーポレートPPAにおいて、有効なスキームとして位置づけられています。バーチャルPPAとFIP制度を組み合わせた場合、需要家は物理的な送電経路を担保しなくても、環境価値だけを安定的に取得できるメリットがあります。

立地や送電網の制約を受けにくいため、全国に事業拠点を持つ企業にとって活用しやすい手法です。さらに、FIP制度を基盤としたPPAは再エネ発電設備の新規導入を後押しする効果も期待でき、追加性の観点からも高く評価されます。

建設業界においても大規模施設の電力調達手段としてコーポレートPPAへの関心が高まっており、FIP制度との組み合わせは脱炭素経営を推進するうえで有力な選択肢の一つです。

RE100・CDP評価への貢献

FIP制度を活用した再エネ電力の調達は、企業の国際的な環境評価を高めるうえでも役割を果たします。RE100やCDPなどの枠組みでは、再生可能エネルギーの利用状況が重要な評価項目となっており、特に追加性を伴うFIP制度の電源から電力を調達していることは、高い評価を得やすい傾向です。

FIP制度のもとで発行されるトラッキング付の非化石証書を活用することで、電力の由来を明確に証明でき、企業が掲げる脱炭素目標の達成度を対外的に示せます。環境価値の可視化は、投資家や取引先からの信頼向上にもつながるため、経営戦略上の意義も大きいことが特徴です。

今後、脱炭素社会の実現に向けた動きがさらに加速するなかで、FIP制度を起点とした持続可能なエネルギー調達体制の構築がますます重要になることが見込まれます。

建設業界におけるFIP制度に関する事例

建設業界では、大手ゼネコンを中心にFIP制度を見据えた再エネ事業への取り組みが進んでいます。株式会社大林組や清水建設株式会社、戸田建設株式会社などの企業は、それぞれ独自の戦略でFIP制度の活用を推進しています。ここでは、建設業界におけるFIP制度に関する事例について紹介します。

株式会社大林組

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、FIP制度を活用し、再生可能エネルギーの環境価値を取引するバーチャルPPAの取り組みに着手しました。

本取り組みは、大林組が開発する物流施設「(仮称)OAK LOGISTICS CENTER川越Ⅰ」(2027年1月末竣工予定)の屋根上に、大林組のグループ会社である株式会社大林クリーンエナジー(本社:東京都港区、社長:菊谷晋吾)が、太陽光発電システムを設置し、電力を供給するものです。同社は、発電した電力を同物流施設に供給するとともに、物流施設が消費しきれない余剰電力を電力卸取引市場で売却し、その環境価値を大林組へ提供します。

大林グループは、2019年に「Obayashi Sustainability Vision 2050」を策定し、「地球・社会・人のサステナビリティの実現」を可能とするため、グループ一体で脱炭素への取り組みを進めています。今回の取り組みは2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた重要なステップです。加えて、発電事業者として得た知見やノウハウを、建設事業におけるお客様の脱炭素に向けたニーズに対するソリューション提案に生かしていくことで、企業価値の向上に寄与するとともに持続可能な社会の実現に貢献します。

出典:FIP制度を活用したバーチャルPPAによる環境価値の取得に着手|2025.12.22|株式会社大林組

清水建設株式会社

東急不動産株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:星野 浩明、以下「東急不動産」)および清水建設株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:新村 達也、以下「清水建設」)は、東急不動産が所有する発電所で使用済みとなった太陽光パネルをリユースし、清水建設の建設現場に設置したことをお知らせします。

このたびリユースされた太陽光パネルは、清水建設が北海道内で施工を担当する「大沼トンネル峠下工区新設工事」および「(仮称)松前2期陸上風力発電所建設工事」の2か所の現場に設置されています。東急不動産が使用済み太陽光パネルを供給し、清水建設が設置・施工を担当することで、安全かつ円滑な運用を実現しました。

設置された使用済み太陽光パネルで発電された電力は建設現場内の設備で活用されています。

日本国内では、2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下「FIT制度」)の設立を契機として、太陽光発電の導入が急速に拡大してきました。太陽光パネルの製品寿命は25~30年程度とされており、FIT制度の認定を受けた発電所の運営が終了する2030年代後半以降に使用済み太陽光パネルの大量排出が大きな社会課題になると見込まれています。今回の取り組みは、使用済み太陽光パネルを再利用・リユースすることで、廃棄物の発生を抑制し、資源の有効活用と環境負荷の低減に貢献します。

東急不動産は、太陽光発電設備のライフサイクルに着目し、再生可能エネルギー事業をより持続可能なものへと進化させていきます。

清水建設は、グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」に掲げたカーボンニュートラル施策の一環として、再生可能エネルギーの創出・活用に取り組んでいます。

また、東急不動産と清水建設はパートナーシップによって、それぞれの技術・ノウハウを活かしながら、今後も環境負荷の低減と持続可能な社会の実現を目指し、再生可能エネルギーの発展に積極的に取り組んでまいります。

出典:使用済み太陽光パネルの再利用で、循環型社会の形成に寄与|2026.1.9|清水建設株式会社

戸田建設株式会社

戸田建設(株)(社長:大谷 清介)は、この度、経済産業省が実施する「令和3年度 再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業」(執行団体:一般社団法人環境共創イニシアチブ)(以下 本実証事業)に採択されました。

2021年度は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化に向けて、発電量が変動しやすい再エネを束ねて制御する再エネアグリゲーション技術の向上を目的に、再エネアグリゲーターとして参画します。

再エネアグリゲーションとは、計画上の発電量と実際の発電量の過不足(インバランス)を、再エネ発電所を束ねるアグリゲーション技術を使って解消する仕組みです。

FIT制度見直しによるFIP制度への移行や、RE100達成のための非FIT再エネ電力へのニーズが増加する中、再エネ発電事業者と小売電気事業者の双方に再エネ発電によるインバランス発生リスクが生じます。

本実証は、昨年度までのVPP実証事業における技術的課題への対応・検証等を目的に、エナリスをリーダー社とする全17社体制(コンソーシアム)のもと、再エネ発電事業者をグルーピングすることでインバランスを低減させる“ならし効果”の検証や、発電所に設置された蓄電池等をインバランス発生量に合わせて充放電する技術開発などを行います。

また、需要側分散電源(DER)のアグリゲーターでもある(株)エナリスとの連携により、発電側再エネアグリゲーションと需要側DERアグリゲーションを連携させて需給バランスをとる「需給一体調整」の検証も進めます。

出典:「令和3年度 再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業」に参画|2021.6.14|戸田建設株式会社

まとめ

fip制度

本記事では、FIP制度の基本的な仕組みやFIT制度との違い、収益性を高めるための蓄電池活用やバランシングコストへの対応策、さらに非化石証書やコーポレートPPAを通じた環境価値の活用法について解説しました。

FIP制度は市場連動型の売電により収益の最大化が期待できる一方、需給管理やコスト負担といったリスクへの備えも求められます。建設業界では脱炭素経営の推進が急務となっており、大手ゼネコンを中心にFIP制度を活用した再エネ事業への参入が広がっているのが現状です。

今後、環境配慮型建築の普及とともにFIP制度の重要性はさらに高まると考えられます。建設業界で再エネ事業や脱炭素戦略に携わっている方は参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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