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GX推進法で変わる建設経営|炭素賦課金の導入スケジュールと財務対策

GX推進法で変わる建設経営|炭素賦課金の導入スケジュールと財務対策

GX推進法は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて産業・社会構造の転換を推進する法律です。本記事では、GX推進法の目的や全体像、カーボンプライシングの導入スケジュール、建設業が備えるべきポイントについて解説します。

また、GX経済移行債や補助金・税制優遇の活用法、サプライチェーンでのCO2算定要求への対応策も解説していますので、GX推進法への具体的な対応を検討されている建設業の方は参照してみてください。

GX推進法とは

gx推進法

GX推進法とは、脱炭素社会の実現に向けた経済・社会の変革を促すために制定された法律です。ここでは、GX推進法の概要について解説します。

法律の目的と全体像

GX推進法の最大の目的は、2050年カーボンニュートラルの達成と2030年度の温室効果ガス削減目標を両立させることにあります。理由として、GX推進法は従来のように環境対策を個別に進めるのではなく、今後10年間にわたる具体的なロードマップを示し、経済・社会全体の構造転換を計画的に推進する枠組みとして設計されている点が挙げられます。

GX推進法の目的は、化石エネルギーを中心とした産業・社会の仕組みをクリーンエネルギー主体の構造へと切り替えを進めることです。また、GX推進法ではエネルギーの安定供給を担保しながら脱炭素を進めることを前提とし、成長志向型カーボンプライシング構想の実現を政策の柱に据えています。

GX推進法は、環境と経済成長の両面から日本の産業構造を変革するための基盤となる法律です。

出典:経済産業省/GX(グリーントランスフォーメーション)

GX経済移行債による先行投資支援

GX推進法において、GX経済移行債は民間投資を促進するための重要な財政手段として位置づけられています。GX推進法が掲げる今後10年間で官民合計150兆円超のGX投資目標を達成するには、民間だけでは十分な資金が集まりにくい分野への投資が不可欠です。

GX推進法のもと、国が20兆円規模のGX経済移行債を発行し、先端的な脱炭素技術などへ先行して資金を投じることで、将来の政策方針に対する予見可能性を高め、民間の投資判断を後押しする仕組みが整えられています。

政府が呼び水となる資金を投入し、民間資金の流入を加速させる構造です。さらに、GX推進法ではGX経済移行債の活用範囲を投資支援にとどめず、税額控除などに伴う税収の減少分を補う財政的な役割も担わせており、制度全体の持続性を担保する設計となっています。

出典:環境省/脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要

GX推進機構の役割

GX推進法に基づき設立されたGX推進機構は、民間企業の脱炭素投資を幅広く支援する認可法人です。GX推進法が目指す経済と環境の両立を実現するには、企業が積極的にGX投資へ踏み出せる環境整備が欠かせません。

GX推進機構は、企業の投資に対する債務保証をはじめとした金融支援を行い、資金面での障壁を取り除く役割を果たしています。加えて、GX推進法の制度運営の中核として、化石燃料賦課金や排出量取引に伴う負担金の徴収業務も担っています。

さらに、GX推進機構は排出枠の割当てや口座管理など排出量取引制度の運用管理を一手に引き受けており、制度の実効性を支える重要な存在です。建設業界においても、CO2排出量の多い施工プロセスの脱炭素が求められるなか、GX推進機構による金融支援は設備投資の意思決定を後押しする大きな要因です。

出典:GX推進機構

GX推進法のカーボンプライシング:建設コストへの影響とスケジュール

gx推進法

GX推進法では、成長志向型カーボンプライシングとして排出量取引制度(GX-ETS)の法定化や化石燃料賦課金の導入が定められており、建設コストにも大きな影響を及ぼします。ここでは、化石燃料賦課金の導入時期と負担の見通しや、2026年4月施行の改正ポイントを含め、GX推進法のカーボンプライシングについて解説します。

排出量取引制度(GX-ETS)の法定化

自主的な枠組みにとどまっていた排出量取引が法定化される背景には、GX推進法が掲げるCO2削減目標の確実な達成に向けて、より実効性の高い制度が求められていることがあります。

GX推進法の改正によってCO2排出量が10万トン以上などの一定規模に該当する企業はGX-ETSへの参加が義務化され、排出枠の割当てに関する実施指針に基づき移行計画の策定も求められます。

削減目標を達成できなかった場合には、不足する排出枠を市場で調達しなければならず、さらに指導や勧告、企業名の公表など法的措置が講じられる可能性もあるため注意が必要です。GX推進法のもとで法定化されたGX-ETSは、企業の排出量削減に対する取り組みを制度面から強く促す役割を担っています。

化石燃料賦課金の導入時期と負担

GX推進法に基づく化石燃料賦課金は、2028年度から化石燃料の輸入事業者などを対象に徴収が開始される制度です。GX推進法が化石燃料賦課金を導入する理由は、炭素の排出量にコストを付与することで企業のクリーンエネルギーへの転換を経済的に動機づけるためです。

輸入する燃料に含まれるCO2量に応じて賦課金が課されますが、GX推進法では企業の急激な負担増を避けるため、当初の徴収単価を低めに設定し、段階的に引き上げていく方針が採られています。

漸進的な設計により、企業は将来の負担を見通しながら計画的に投資判断を行えます。一方で、GX推進法における賦課金や排出量取引による負担は、エネルギー価格や資材価格への上乗せを通じて最終的には社会全体で広く分担される構造となるため、建設業界でも燃料費や建設資材の価格上昇の形で影響が及ぶことを考慮しなければなりません。

出典:環境省/我が国におけるカーボンプライシングの導入に向けた検討状況

2026年4月施行の改正ポイント

GX推進法の2026年4月施行における改正は、従来の政策を実効性のある制度へと格上げする重要な転換点です。GX推進法の改正と同時に資源有効利用促進法の一部も見直され、再生資源の利用義務化や環境配慮設計の促進など循環型社会に向けた施策が追加されています。

さらに、GX推進法では企業の脱炭素投資を後押しするための戦略的な税制優遇措置が整備され、優遇措置に伴う税収減はGX経済移行債によって補填される枠組みが構築されます。

建設業界においては、再生資材の活用義務やCO2排出量規制の強化が事業運営に直接関わるため、GX推進法の改正内容を早期に把握し、対応計画を策定することが必要です。

建設業がGX推進法に備えるためのポイント

建設業がGX推進法に備えるためには、リスクへの対策と支援制度の活用を両面から進めることが重要です。資材高騰と賦課金への備えを講じつつ、補助金・税制優遇の活用やサプライチェーンでのCO2算定要求への対応を計画的に行う必要があります。

ここでは、建設業がGX推進法に備えるためのポイントについて解説します。

資材高騰と賦課金への備え

GX推進法によるカーボンプライシングの本格導入を見据え、建設業界では資材高騰や賦課金に対する早期の備えが不可欠です。GX推進法のもとで炭素の排出量にコストが発生する仕組みが整えられるため、セメントや鉄鋼などエネルギー消費の大きい資材を多く使用する建設業は、財務面への影響を特に受けやすい業種です。

排出枠の市場価格が将来的に上昇するリスクを踏まえ、できるだけ早い段階からCO2排出量の削減につながる設備や工法への投資を進めておくことが重要です。さらに、GX推進法が求める脱炭素の取り組みは自社の排出量削減にとどまりません。

サプライチェーン全体での削減が重視されるなか、資材調達先のCO2排出量もコストとして跳ね返る時代が到来しつつあります。GX推進法への対応を調達戦略にまで広げることは、今後の建設コスト管理において欠かせない視点です。

補助金・税制優遇の活用

GX推進法への対応を進める建設事業者にとって、補助金や税制優遇の活用は競争力を高めるために欠かせない要素です。GX推進法では、脱炭素技術の導入や省エネルギー設備への投資を対象とした支援制度が用意されており、支援を積極的に利用することで設備投資の初期負担を大幅に軽減できます。

特にGX推進法の財源であるGX経済移行債を活用した先行投資支援を早い段階で受けられれば、同業他社に先んじてコスト面における優位性の担保が可能です。また、GX推進法に伴い、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や省エネ住宅などGX関連の市場需要は今後拡大が見込まれます。

新たな需要を取り込むためにも、GX推進法に関連する支援策の最新動向を把握し、自社の事業戦略に組み込んでいくことが重要です。

サプライチェーンでのCO2算定要求

GX推進法に伴い、建設業界ではサプライチェーン全体でのCO2排出量の算定・開示が急速に求められています。GX推進法が脱炭素への取り組みを制度化するなか、発注者や元請の建設会社からScope3を含む排出量の報告や具体的な削減施策の提示を要求されるケースが増加しているためです。

要求に的確に応えるには、DXを活用して排出量を正確かつ効率的に算定できる体制の整備が急務です。一方で、GX推進法が重視する脱炭素経営への対応を怠れば、投資家からの評価低下にとどまらず、入札や受注の場面で競争力を失うリスクも現実味を帯びてきます。

GX推進法を契機に、サプライチェーン上の取引先と連携しながらCO2データの見える化を進めることが、今後の建設業における重要な経営課題の一つです。

GX推進法が変える建設業の選別基準

GX推進法の施行により、建設業界では企業の選別基準が変化しつつあります。GX推進法が脱炭素を制度として推進するなか、気候変動対応を企業評価の重要指標とする投資家が急増しており、非財務情報の開示が資金調達力に直結する時代が到来しています。

つまり、GX推進法への対応力そのものが、取引先として選ばれるかどうかの判断材料になりつつあるのが現状です。脱炭素への取り組みを単なるコスト負担と捉えるのではなく、企業の持続可能性を証明する経営戦略として位置づけることが不可欠です。

GX推進法への対応が遅れれば、受注機会喪失の形で事業の存続に直接影響を及ぼすリスクがあります。

建設業界におけるGX推進法に関する事例

GX推進法への対応は、すでに建設業界の現場で具体的な取り組みとして広がりを見せています。ここでは、建設業界におけるGX推進法に関する事例について紹介します。

株式会社大林組

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして、建設現場に可搬型バッテリーを導入し、GX建設機械の運用実証実験を行いました。

大林組は、脱炭素化に向けた施策の一つとしてGX建設機械の普及促進を図っています。一方、大型のGX建設機械は現在のバッテリー容量で終日作業することが難しく、かつ、充電スポットへの移動を考慮した運用が必要です。また充電に必要な電力が大きいため、建設現場で充電を行う場合に電源設備の増設や充電スペースの確保が必要になるなど、さまざまな課題が普及に向けた障壁となっていました。

今般、首都圏の建設現場において可搬型バッテリー(電池容量:85.24kWh)を導入し、電動移動式クレーン(25t吊り)の充電、給電方法を検証する実証実験を行いました。今回導入した可搬型バッテリーは、運搬、設置が容易で速やかにできるため、稼働中のクレーンの近くに設置することで、充電のたびに建機を移動させる必要がなくなりました。また、作業休憩時に建機を充電したり、可搬型バッテリーから直接給電して建機を稼働させることで、1日8時間のクレーン作業を実施できることを確認しました。

可搬型バッテリーの充電は、工事現場の電気使用量が少ない夜間などの時間帯に行うか、工事現場外の拠点で充電し、容量の少なくなった可搬型バッテリーと入れ替えることで、建設現場の電源設備に左右されない電力供給の体制を整えることが可能です。

出典:可搬型バッテリーを活用したGX建設機械の運用実証実験を実施|2025.4.24|株式会社大林組

清水建設株式会社

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、2050年のカーボンニュートラルに備え、大量にエネルギー消費する生産施設の環境性能をCO2排出量の観点から数値評価する独自の環境指標「F-CaS(エフキャス:Factory Carbon Score)」を制定しました。F-CaSの特徴は、従来のZEB認証評価の対象外になっていた生産エリアまで踏み込み、空調、照明、生産ユーティリティ、生産装置など各生産設備のエネルギー消費量からCO2排出量を求め、施設全体の環境性能をF-CaS値としてスコア化することです。

ZEB認証による建物の環境性能の評価が一般化する中、CO2排出量が異なる化石電源(SCOPE1)と非化石電源(SCOPE2)を区別なく一次エネルギーとして評価していること、生産施設においては大量のエネルギー消費を伴う生産エリアを対象外にしていることが課題となっています。2030年度をターゲットにする「第6次エネルギー基本計画」は、一次エネルギーに占めるSCOPE2の比率倍増によりCO2排出量の大幅削減を目指しており、その趣旨に照らしても評価方法の見直しが求められています。

こうした課題を踏まえ、今後、当社は生産施設の計画に際し、生産設備に使用する熱源、例えば電気・ガス・油などの使用量まで積算しSCOPE比率を明確にしたうえで施設全体のCO2排出量を求め、F-CaS値により施設計画の環境性能を評価します。F-CaS値とは、計画中の施設のCO2排出量とベンチマークを比較した値(新たな施設計画のCO2排出量/ベンチマークのCO2排出量)です。ベンチマークは、既存施設のエネルギーの使用実績、あるいは生産施設の一般的な仕様に基づき設定します。F-CaS値のレンジは0~1で、例えば、お客様がCO2排出量50%削減を目標に掲げている場合、F-CaS値0.5が最低限の目標値になります。

出典:大量のエネルギー消費を伴う生産施設のCO2排出量を見える化|2023.8.30|清水建設株式会社

株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、2023年2月1日以降に着工する作業所において、原則として再生可能エネルギー由来のグリーン電力を採用します。

当社はグループ全体としてのCO2削減長期目標を設定した中、第一目標である2030年のCO2排出量の削減目標(2019年比、スコープ1 + 2において46.2%削減)達成に向け、施策推進および意識向上を図っていきます。

当社の作業所から排出されるCO2のうち、スコープ1(重機などの稼働に使う軽油由来)が約75%、スコープ2(タワークレーンや場内照明、仮設事務所などに使う電力由来)が約25%です。スコープ2については、改修工事等でお客様から電力を支給される場合等を除き、積極的にグリーン電力を採用することで、2030年に作業所から排出されるCO2排出量の20%削減(2019年比)を目指します。また、スコープ1については、今後軽油に代えバイオマス燃料および水素燃料等を採用しCO2排出量を削減すべく、モデル作業所等で実証実験を行います。

さらに、2月1日より、CO2削減への意識向上などを目的に、当社の作業所において以下の2つの取り組みを推進します。

出典:CO2削減長期目標達成に向け、全ての作業所でグリーン電力を積極的採用|2023.2.1|株式会社竹中工務店

まとめ

gx推進法

本記事では、GX推進法の目的や全体像をはじめ、GX経済移行債による先行投資支援、GX推進機構の役割、カーボンプライシングの仕組みやスケジュールについて解説しました。

GX推進法は2026年4月の改正施行により排出量取引制度の法定化が進み、2028年度には化石燃料賦課金の徴収も始まるなど、段階的に制度が本格化しているのが現状です。建設業界においては、資材価格の上昇やサプライチェーンでのCO2算定要求の増加といった影響が想定される一方、補助金や税制優遇を活用することで競争力を高める好機でもあります。

GX推進法への対応を経営戦略に組み込みたい建設業の方は参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

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