CDPスコアは、企業の環境対応力を国際的に評価する重要な指標であり、Aリストへの選定は投資家や取引先からの信頼獲得に大きく貢献します。本記事では、CDPスコアの仕組みや評価基準、日本企業のAリスト選定状況、スコア向上のためのポイントを解説します。
また、建設業界におけるAリスト常連企業の具体的な取り組みや、サプライチェーン排出量の管理手法についても解説していますので、CDPスコアの改善やAリスト入りを目指している建設業界の方は参照してみてください。
目次
CDPスコアの仕組みと評価基準

CDPスコアは、企業の環境対応力を測る国際的な評価指標であり、気候変動をはじめとする3つの主要分野を対象としています。CDPスコアは「情報開示」「認識」「マネジメント」「リーダーシップ」という4段階の成熟度モデルを基に評価され、最終的にA〜D-の8段階で格付けされます。最上位であるAリストに選定されるためには厳格な要件を満たさなければなりません。
ここでは、CDPスコアの仕組みと評価基準について解説します。
4つのレベルとスコアリングの構造
CDPスコアの評価プロセスは、段階的に企業の成熟度を測定する構造です。具体的には、次の4つのステップを通じて総合的にスコアリングされます。
- 情報開示
- 認識
- マネジメント
- リーダーシップ
最終的にAからD-までの格付けが付与され、最上位のAリストに到達した企業は、環境分野におけるリーダーとして国際的に認知されます。CDPスコアの特徴は、評価結果が出た後のアクションについても指針が示される点です。
企業はCDPスコアを単なる格付けとして受け止めるのではなく、次の改善につなげる実践的なツールとして活用できます。Aリスト入りを目指す企業にとっては、各段階で求められる水準を正確に把握し、計画的に対応を進めることが重要です。
3つの主要分野(気候変動・水・森林)
CDPスコアは、環境課題を包括的に捉えるために次の3つの重要な領域を評価対象としています。
- 気候変動
- 水
- 森林破壊
企業は領域ごとに設けられた設問に回答する形式で情報開示を行い、それぞれ独立したCDPスコアが算出されます。CO2の排出量状況や削減施策、気候リスクへの対応状況などの項目が問われるほか、水資源の管理や森林資源の保全に関する取り組みも個別に評価されます。
分野ごとにスコアリングが行われるため、ある領域ではAリストに選定されながら、別の領域では改善が必要となるケースも生じるため注意が必要です。つまり、CDPスコアで全分野にわたり高評価を獲得しAリスト入りを達成するには、気候・水・森林のそれぞれに対して偏りのない戦略的な取り組みを展開することが求められます。
リーダーシップ(A/A-)獲得の必須要件
CDPスコアで最上位のリーダーシップレベルを獲得するには、定量データの提出だけでは十分ではありません。Aリスト入りを果たすためには、記述式の回答欄において自社の具体的な取り組みや背景を独自の言葉で丁寧に説明することが重要な条件です。
建設業界では、現場ごとに環境負荷の状況が異なるため、業界特有の課題と対策を自社の文脈で記載する姿勢が評価を左右します。他社の回答を流用するような画一的な記述は信頼性を損ない、CDPスコアの低下につながるリスクがあるため注意が必要です。
さらに、一度Aリストに選定されたとしても、その水準を維持するには対応内容を年々高度化させていく努力が欠かせません。CDPスコアにおけるAリスト獲得は到達点ではなく、継続的な改善サイクルの一部として捉えることが重要です。
CDPスコアの日本企業の選定状況
日本企業のCDPスコアにおけるAリスト選定数は年々増加しており、世界最多となる240社超が選出されている状況です。ここでは、CDPスコアにおける日本企業の選定状況について解説します。
日本企業が「世界最多」の240社超を選出
CDPスコアにおいて、日本企業の存在感は国際的に際立っています。2025年版の評価結果では、Aリストに選ばれた日本企業が240社を超え、国別で世界最多を記録しました。現状の実績は、日本企業が環境課題に対して積極的に情報開示と具体的な施策を推進してきた成果です。
グローバルにAリスト企業の数が拡大する傾向にある中でも、日本がトップの座を維持している背景には、投資家をはじめとするステークホルダーからの要請に応える形で、実効性のある環境データの整備を進めてきた経緯があります。
CDPスコアで高評価を得てAリスト入りを果たすことは、単なるランキング上の成果にとどまらず、海外投資家や取引先からの信頼獲得に直結する要素です。
Aリスト選定数の推移と2026年の傾向
CDPスコアにおけるAリスト選定数は、近年顕著な増加傾向を示しています。気候変動分野に限っても、最高評価を獲得した企業数は前年と比較して大幅に拡大しており、700社を超える規模に達しました。
傾向は水や森林分野でも同様に見られ、3領域すべてでCDPスコアの高評価を目指す企業が世界的に増えています。Aリスト選定数が増加していることから、投資家や市場に対して、企業側による精度の高い環境データの開示が必要です。
2026年に向けても、環境情報開示への国際的な要求水準はさらに高まると予想され、Aリスト入りの競争は一層激化することが見込まれます。CDPスコアでAリストを獲得し続けるためには、従来の取り組みを維持するだけでは不十分であり、開示内容の質と深度を継続的に引き上げていく姿勢がより重要です。
Aリスト入りによる対外的な信頼性向上
CDPスコアでAリストに選定されることは、企業の対外的な信頼性を大きく押し上げる効果があります。Aリスト企業は、気候変動や水資源、森林保全など環境リスクへの対応において優れた実践が認められた存在であり、投資家や取引先企業からの評価が格段に高まることが特徴です。
建設業界では、発注元や協力会社との関係構築においてCDPスコアの評価が差別化要因となるケースも増えることが予測されるため、Aリスト入りが受注機会の拡大につながる場面も見込まれます。
さらに、CDPスコアの取得過程では自社の環境対応の現在地を客観的に把握できるため、社内の経営改善にもつながる点は見逃せません。Aリストの価値は外部からの信頼獲得だけでなく、内部の環境経営を高度化させる契機にもなり得ます。
建設業界におけるCDPスコアアップとAリスト維持のポイント

建設業界でCDPスコアを向上させAリストを維持するには、業界特有の課題への対応が不可欠です。特にサプライチェーン全体の排出量管理は重要なテーマであり、Aリスト常連企業の取り組みから学べる点も多くあります。
さらに、質問書の変化や将来動向への備えも欠かせません。ここでは、建設業界におけるCDPスコアアップとAリスト維持のポイントについて解説します。
サプライチェーン排出量(Scope 3)の管理
CDPスコアの向上を目指すうえで、サプライチェーン全体の排出量を適切に管理することは極めて重要です。建設業界では、資材調達から施工、廃棄に至るまで多層的なサプライチェーンが存在するため、自社の直接排出量であるScope1・2だけでなく、間接排出量にあたるScope3の把握と見える化が不可欠です。
実際にAリストに選定されている企業の多くは、自社内の取り組みにとどまらず、協力会社や資材メーカーとの連携を通じたサプライヤーエンゲージメントを実践しています。CDPスコアの評価においても、サプライチェーン全体への働きかけの有無が高評価と低評価を分ける大きな要因です。
環境対応が経営戦略に欠かせない時代において、Scope3の管理体制を構築することは、CDPスコアでのAリスト獲得だけでなく、企業としての持続的な競争力を左右する課題といえます。
実例に学ぶ「Aリスト常連」企業の工夫
CDPスコアでAリストを継続的に獲得している企業には、共通する戦略的な工夫が見られます。竹中工務店は気候変動領域においてリーダーシップレベルの評価を受け、複数年にわたりAリスト選定を維持しています。
同様に東京建物も気候変動分野で最高評価を連続して獲得しており、建設・不動産セクターにおけるCDPスコアの高水準維持の好例です。Aリスト常連企業に共通しているのは、環境への取り組みを単独の施策として扱うのではなく、経営戦略と一体化させている点です。
加えて、情報開示の透明性を年々高め続けることで、CDPスコアの評価基準の変化にも柔軟に対応しています。Aリストを一度獲得するだけでなく維持し続けるには、経営レベルでの統合的なアプローチが不可欠であることを、先行企業の実績が示しています。
出典:株式会社竹中工務店/CDP気候変動のAリスト(最高評価)に2年続けて認定
質問書の変化と将来の動向への対応
CDPスコアの質問書は毎年見直しが行われるため、将来の動向を見据えた対応力が評価向上のポイントです。近年の傾向として、単一分野での高評価にとどまらず、複数のテーマにまたがるAリスト選定を実現する統合的な戦略が重視されるようになっています。
実際に大日本印刷のように、事業領域の広さを活かして複数分野でAリストに認定される企業も登場しており、複数テーマにまたがる動きは2026年以降さらに加速すると見込まれます。
建設業界においては、気候変動への対応に加え、生物多様性や水資源リスクなど自然資本に関わる開示の重要性が高まっているのが現状です。建設プロジェクトは環境に対して多面的な影響を及ぼすため、CDPスコアの評価項目が拡充される流れに先手を打って対応することが求められます。
出典:DNP/CDPの最高評価「Aリスト」に2つの分野で認定
CDPスコアに関する建設業界事例
CDPスコアの向上やAリスト選定を目指すうえで、建設業界における先進企業の具体的な取り組みを知ることが求められます。実際の事例を通じて、各社がどのような戦略でCDPスコアの高評価やAリスト入りを実現しているのかを把握することが重要です。以下に建設業界におけるCDPスコアに関する取り組み事例をご紹介いたします。
株式会社大林組
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出典:CDP気候変動において最高評価の「Aリスト」に4年連続で選定|2024.2.21|株式会社大林組
鹿島建設株式会社
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出典:CDP気候変動部門の最高評価Aリストに3度目の認定|2024.2.16|鹿島建設株式会社
戸田建設株式会社
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出典:CDP 2025 気候変動で最高評価のAリストに選定|2026.1.23|戸田建設株式会社
まとめ

本記事では、CDPスコアの仕組みや評価基準、日本企業の選定状況、Aリスト獲得・維持に向けたポイントについて解説しました。CDPスコアは4段階の評価構造を持ち、気候変動・水セキュリティ・森林の3分野でそれぞれスコアリングが行われます。
日本企業のAリスト選定数は世界最多を記録しており、今後も環境情報開示への要求は高まり続けることが見込まれます。特に建設業界では、サプライチェーン全体の排出量管理や自然資本への対応など、業界特有の課題を踏まえた戦略的な取り組みがCDPスコア向上のポイントです。
Aリスト入りを通じた対外的な信頼性の担保は、受注競争力の強化にも直結します。CDPスコアの改善やAリスト選定を目指している建設業界の方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。








