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オペレーショナルカーボンとは?削減に向けた取り組みの建設業界の事例を紹介

オペレーショナルカーボンとは?削減に向けた取り組みの建設業界の事例を紹介

建設セクターのCO2排出量の内、多くの割合を占めるのがオペレーショナルカーボンであることから、オペレーショナルカーボン建設業界で注目されています。この排出量の多さから、脱炭素を実現するためにはオペレーショナルカーボンの削減が建設業界において取り組むべき重要な課題の1つとなっています。

本記事では、オペレーショナルカーボンの概要や、エンボディドカーボンとの違いなどを解説しています。また、削減するための取り組み内容や、実際に企業が取り組んでいる事例も紹介しているため、脱炭素に向けて取り組んでいる方は参考にしてみてください。

オペレーショナルカーボンとは

オペレーショナルカーボンは、建物のライフサイクルの中でCO2排出量に焦点を当てた重要な指標の1つです。オペレーショナルカーボンの概要と、エンボディドカーボンとの違いを解説します。

オペレーショナルカーボンについて

オペレーショナルカーボンとは、建物やインフラの日常的な使用時に発生する温室効果ガスの排出量を指します。主に照明設備や冷暖房システム、給湯、各種電化製品の稼働に伴うエネルギー消費による排出であり、建物のライフサイクル全体における環境負荷を評価する上で重要な指標です。

近年、オペレーショナルカーボンの削減が建築分野の重要課題として認識され、省エネルギー性能を高めた建築物や、消費エネルギーと創出エネルギーの収支をゼロにするZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計・導入が進められています。オペレーショナルカーボン削減の取り組みは、脱炭素の実現に向けた施策として注目されています

エンボディドカーボンの違い

建築物のライフサイクル全体で排出されるCO2を「ライフサイクルカーボン」と呼び、資材製造から使用、解体までの全過程を含みます。ライフサイクルカーボンの内、建物の日常的な使用による排出量である「オペレーショナルカーボン」を除いた部分が「エンボディドカーボン」です。

エンボディドカーボンには、建材の製造や建設時の排出量だけでなく、使用段階における修繕や設備の交換、さらには解体・廃棄時の排出量も含まれます。

近年の環境配慮型建築では、オペレーショナルカーボンの削減に加えて、エンボディドカーボンの低減も重要な課題として認識されており、低炭素材料の選択や建設プロセスの効率化、長寿命設計などの取り組みが進められています。

建設セクターが排出するCO2は全体の37%

建設セクターは、全世界のCO2排出量の37%を占める重要な分野となっていす。建設セクターの排出量は、大きく2つに分類されます。1つは建物の利用時に発生する「オペレーショナルカーボン」で、建設セクター全体の約70%を占めています。

もう1つは建物を建てる際に発生する「エンボディドカーボン」で、残りの30%を占めています。全世界の排出量の37%という数字は、建築分野での脱炭素が重要なことを示すとともに、特に日常的な建物利用時のCO2排出量削減が最重要課題であることを示唆していす。

そのため、省エネルギー設計や再生可能エネルギーの活用など、運用段階での環境負荷低減に対する取り組みが求められています。

オペレーショナルカーボンの要因

オペレーショナルカーボンは、建物内で使用されるすべてのエネルギー消費に伴う排出量をCO2換算値として算出します。具体的には、暖房や冷房システムの運転、照明設備の使用、電力を消費する様々な機器の稼働などが主な排出源です。

日常的な建物利用に伴うエネルギー消費は、各種燃料の燃焼や電力使用によってCO2を排出し、建物全体の環境負荷として計上されます。オペレーショナルカーボンの削減には、エネルギー効率の高い設備の導入や、再生可能エネルギーの活用が効果的です。

オペレーショナルカーボンを削減する取り組み

オペレーショナルカーボンを削減するためには、次の2つの取り組みが重要です。

  • エネルギー効率を改善する
  • 再生可能エネルギーを活用する

以下にそれぞれのポイントを詳しく解説します。

エネルギー効率を改善する

建築物のオペレーショナルカーボン削減には、様々な設備機器の効率改善が重要な役割を果たします。大きな省エネ効果が期待できるのが、高効率エアコンの導入です。

また、換気による熱損失を最小限に抑えるため、効率の高い換気設備を採用することで、建物全体のエネルギー効率を向上させられます。さらに、建物の外皮性能向上も重要な取り組みの1つです。高断熱・高性能なサッシの採用や、床、壁、天井への高性能断熱材の充填によってエネルギー効率の改善効果が見込まれます。対策を総合的に実施することで、建物の熱損失を大幅に抑制し、暖冷房に必要なエネルギー消費を削減可能です。

エネルギー効率改善の取り組みは地球温暖化対策としても重要な役割を果たし、持続可能な社会の実現に貢献できます。

また、建物の省エネ性能を高めることは、単にエネルギーコストの削減だけでなく、室内環境の快適性向上にも寄与し、建物利用者の満足度向上にもつながります

再生可能エネルギーを活用する

建築物の温室効果ガスの排出量削減には、再生可能エネルギーの効果的な活用が重要な解決策の1つです。従来の石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料に依存したエネルギー供給から、環境負荷の少ない再生可能エネルギーへの転換が徐々に進められています。

代表的な取り組みが、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)です。ZEBは、快適な室内環境を維持しながら、建物で消費する年間の1次エネルギー収支をゼロにすることを目指します。

建物のZEB化は太陽光発電などの再生可能エネルギーを積極的に導入し、建物のエネルギー消費を相殺する仕組みを構築することで実現されます。

このような環境配慮型建築は、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)投資の対象としても注目されており、経済的価値と環境価値の両立を実現する新たな建築スタンダードとして、今後さらなる普及が期待されています。

建設業界におけるオペレーショナルカーボン削減の取り組み

建設業界におけるオペレーショナルカーボン削減の取り組みとして、次の3つの取り組みが挙げられます。

  • ZEH
  • ZEB
  • スマートハウス

以下にそれぞれの特徴を詳しく解説します。

ZEH

ZEHは、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称で、年間のエネルギー収支をゼロ以下にすることを目指した住宅です。ZEHの住宅では、家庭で使用するエネルギーと太陽光発電などによって創出されるエネルギーのバランスを取ることで、実質的なエネルギー消費量をゼロ以下に抑えることを実現します。

そのため、まず使用するエネルギー量自体を大幅に削減しなければなりません。家全体の断熱性能を高め、設備機器の効率化を図ることで、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を維持しながら、エネルギー削減の達成が必要です。

ZEHの普及は、家庭での脱炭素を促進するとともに、エネルギーコストの削減や居住環境の質の向上も見込めます。今後は、さらなる技術革新と普及促進策により、ZEHの標準化が期待されます。

ZEB

ZEBは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼ばれます。ZEBは、快適な室内環境を維持しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指す仕組みです。

建物内では人々が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることは現実的ではありません。ZEBでは、高度な省エネルギー技術の導入によってエネルギー消費量を可能な限り削減し、さらに太陽光発電などの創エネルギー設備を活用して、消費したエネルギー分を補うことで、実質的にエネルギー収支ゼロを実現します。

ZEBの建築物は、環境負荷の低減とともに、長期的な運用コストの削減や快適な室内環境の提供を両立させる、次世代の建築モデルとして注目されています。

スマートハウス

スマートハウスは、太陽光発電や燃料電池などの発電設備を備え、ITを活用して効率的にエネルギーを利用する次世代の省エネ住宅です。スマートハウスの特徴は、生活に必要なエネルギーをできるだけ住まい内で自給自足し、無駄なく使用することにあります

システムを構成するのは主に3つの要素です。1つ目は電気を自前で生み出す発電設備、2つ目には生成した電気を貯蔵して必要時に利用する蓄電池があります。そして3つ目は家電製品と有線・無線のネットワークで接続して一元管理する家庭内エネルギー管理システムです。

特に、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)と呼ばれる管理システムが中核的な役割を担い、住宅全体のエネルギー使用を最適化します。スマートハウスにより、環境負荷の低減とともに、居住者の快適性と利便性の向上を実現しています。

オペレーショナルカーボンを削減に向けた企業の取り組み

オペレーショナルカーボンの削減に向けた企業の取り組みとして、次の3つの事例を紹介します。

  • 三井ホーム株式会社
  • 大和ハウス工業株式会社
  • 株式会社ヤマダホームズ

以下にそれぞれの取り組みを解説いたしますので、参考にしてみてください。

三井ホーム株式会社

建築素材としての「木」は、鉄骨やコンクリートよりも軽量で加工・運搬が容易なことから、木造建築は鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造と比べ、建設時のCO₂排出量を大幅に削減できます。また、「木」は生長過程でCO₂を吸収し、伐採後も炭素を固定化し続けるため、木造建築は長期間炭素を大気に戻さず、地球温暖化防止に貢献します。

当社のLCCM住宅は、主要構造材に「木」を用いた環境負荷が少なく、高耐久・長寿命な住まいです。一般的に日本の住宅寿命が世界各国に比べて短いことが指摘されるなか、長期優良住宅に対応することで、適正な維持管理のもと75年から90年の耐久性を確保します。これらの性能により、建設時から解体時に至るまでのロングライフサイクルを通して、カーボンマイナスを実現します。

引用:三井ホームはLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅を推進します|2023.02.15|三井ホーム

参考:長期優良住宅とはどんな制度?概要やメリットについても解説 | 株式会社JNS建築事務所

大和ハウス工業株式会社

LED照明やタスク・アンビエント照明、センサーを用いた自動制御などを導入し、事務所と駐車場の屋根上に計68kWの太陽光発電設備を設置して、ZEB※を達成。さらに、自然光を活かした柔らかい照明や自然の風が心地よい自然換気など、知的生産効率を高めるアイテムも取り入れています。

「大和ハウス佐賀ビル」では、自然換気や井水、太陽熱を活用した空調システム、自然光を活用した照明などによって、徹底した省エネを行っています。これにより、2016年省エネルギー基準の建物と比較して約52%の電力使用量を削減できます。さらに、屋上に設置した太陽光発電システムと蓄電池を連携させた「電力自立システム」を導入し、営業中に使用する電力の自給を目指しています。

引用:D’s SMART OFFICE|大和ハウス工業株式会社

株式会社ヤマダホームズ

株式会社ヤマダホームズ(本社︓群⾺県⾼崎市、代表取締役兼社⻑執⾏役員︓清村浩⼀、以下 ヤマダホームズ)は、動く蓄電池(EV)を標準搭載し、太陽光発電システム、V2H、IoT システムを使って「創エネ・蓄エネ・省エネ+エンタメ・健康・セキュリティ、そして繋がる IoT」を実現する近未来スタンダード住宅「YAMADA スマートハウス」を、2023 年 10 ⽉ 14 ⽇(⼟)より販売を開始しました。家電、家具はもちろん、リフォーム、⾦融、動く蓄電池(EV)に⾄るまで住空間全てのインフラをラインナップしたヤマダホールディングスグループのシナジーを最⼤化した究極スマートハウスが誕⽣しました。

経済産業省が推進する、家で発電した電気を電気が⾜りない家庭に直接供給できる VPP(バーチャル・パワー・プラント)社会は、すぐそこまで迫っています。⼀⼾建てで電気を融通・有効活⽤し、スマートハウス 1,000 棟分のネットワークで⼩型の⽔⼒発電所1基分を賄うことができます。 地球温暖化に貢献し地球環境に優しい YAMADA スマートハウスが、未来の⼦供たちへ安⼼を提供します。

引用:NEWS RELEASE|2023.10 27|YAMDA HOMES

まとめ

本記事では、建設業界の方向けにオペレーショナルカーボンを解説しました。オペレーショナルカーボンとは、建物やインフラの日常的な使用時に発生する温室効果ガスの排出量を指します。

近年、オペレーショナルカーボンの削減が建築分野の重要課題として認識され、オペレーショナルカーボンの排出削減方法として省エネルギー性能を高めた建築物や、消費エネルギーと創出エネルギーの収支をゼロにするZEBの設計・導入が進められています。

また、ZEHやスマートハウスもオペレーショナルカーボンの削減に対する解決策として注目すべき要素です。オペレーショナルカーボンを削減に向けた企業の取り組みとして3社の事例を紹介しているため、脱炭素に向けた取り組みを実施している方は参考にしてみてください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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