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工事成績評定とは?高得点になるポイントも解説

建設業者が安定した公共工事を受注するには、工事成績評定の制度に対する理解が必要です。工事成績評定は点数制ですので、制度を理解した上でどのように対処すれば高得点につながるかを把握しておくことで、建設業者としての安定した評価にもつながります。

工事成績評定とはどのようなものなのか、本記事では工事成績評定の定義、その仕組みや高得点になるポイント、メリットとデメリットなどについて詳しく解説しています。

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工事成績評定について

工事成績評定は、工事の発注者が品質や施工プロセスを定量的に評価するための手段です。特に公共工事の受注においては、この評定が重要な役割を果たします。

工事成績評定に関して、次の内容で解説します。

  • 工事成績評定とは
  • 工事成績評定の役割
  • 施工プロセスチェックについて
  • 平均点はいくつ?

それぞれの内容を詳しく解説するので、是非とも参考にしてみてください。

工事成績評定とは

工事成績評定は、公共事業で取り入れられており、工事が完了する際に発注者が施工状況、品質、出来栄えなどを総合的に評価する制度ですこの工事成績評定は公共工事の品質管理と施工者の技術力を評価するための重要な制度となっています。

工事成績評定は平成12年に施行された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(適化法)」により、全国で総合評価方式による入札が導入され、その評価指標として本格的に活用されました。

その後、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」に基づき、評価項目の見直しが行われ、特に安全対策が重視されるようになりました。これにより、評定制度はより充実し、安全と品質の面でさらに発展しましたまた、地域のインフラを支える政府機関として、多岐にわたる公共工事を発注している地方整備局では、原則として請負金額が500万円以上の工事を発注しています。主な工事の分野には以下のものがあります。

  • 河川工事
  • 海岸工事
  • 砂防工事
  • ダム工事
  • 道路工事
  • 公園緑地工事

地方整備局の工事成績評定は、地方整備局が発注する公共工事の品質や技術水準を評価する制度となります。評価は、「技術検査官」「総括監督員」「主任監督員」の3名体制で実施されます。評価項目は施工体制、施工状況、出来形、出来栄え、工事特性、創意工夫、社会性、 法令遵守といった観点から構成され、評価基準に基づいて100点満点で行われます。

工事成績評定の結果は、建設業者の技術力を客観的に示す指標として活用され、将来の入札契約における企業評価にも影響します。そのため、建設業者にとって工事成績評定は、技術力向上と品質担保への重要な動機付けとなります。

工事成績評定の役割

工事成績評定により施工完了後に発注者が工事内容を評価するために、受注者は高得点獲得を目指して施工品質の向上に努めるようになり、継続的な高評価の獲得が次回以降の入札の優位性につながる仕組みが確立されました。

このように、工事成績評定は、受注者の技術力向上を促し、公共工事全体の品質水準の維持・向上させる重要な役割を果たしています。さらに、入札・契約の透明性および公平性を担保する指標としても機能しています。

施工プロセスチェックの重要性

工事成績評定における施工プロセスチェックは、工事契約の締結直後から開始されます。発注者は、契約締結後の初期段階から、工事カルテの登録申請が10日以内に適切に行われているかなど、契約に関する基本的な事項を確認し、記録します。

施工中は発注者側の監督員が、施工体制台帳や施工計画書の内容、工程管理、安全管理体制の整備状況など、多岐にわたる項目をチェックします。チェック項目は、工事の進捗に応じて段階的に確認され、その都度記録が蓄積されていきます。

施工プロセスチェックの結果は、工事完了時の成績評定における基礎資料となり、考査項目別運用表の作成に活用されます。そのため、受注者は契約直後から段階ごとの確認項目を十分に理解し、適切な対応を取らなければなりません。このように、施工プロセスチェックは工事の品質保証と適正な評価の実現に重要な役割を果たしています。

平均点はいくつ?

工事成績評定は、基礎点が65点と設定されており、基礎点を基準に評価に応じて加点または減点が行われ、最終的な点数が決まります。

2022年度の江東区の開示データによると、土木工事の平均点が70.8点、2003年度の国土交通省直轄土木工事では73.6点と報告されています。開示データから、工事成績評定の平均点は70点台前半に集中する傾向が見られます。また、落札率と工事成績評定点には相関関係があり、落札率が低い場合、評定点も低くなる傾向があります。

一方で、地方整備局では工事成績評定の平均点が80点以上の企業を「工事成績優秀企業」として認定・公表しており、平均的な評定点の70点台前半と比較して認定基準は高い水準で設定されているのが現状です。継続して80点以上の評定を獲得する企業は、優れた技術力と品質管理能力を持っていると評価されます。

参照:江東区/令和4年度工事成績評定結果(平均点)の公表について

格付け審査と工事成績評定の影響

格付け審査と工事成績評定は、建設業者の選定と公共工事の品質保証において重要です。次に格付け審査と工事成績評定がどのような影響があるのか、具体的に説明します。

格付け審査の影響

格付け審査とは、建設業者の財務健全性、管理能力、施工能力などを総合的に評価するシステムのことです。公共工事を受注する際に建設業者は詳細な審査を受け、付けられた点数によって建設業者はA~Dの等級区分に分類されます。

格付け審査で高い評価を得た企業は大規模な公共工事プロジェクトに参加できるため、建設業界内での信頼性と市場地位が向上します。また、明確な格付けによって、自社の能力に適したプロジェクトを受注し、リソースの無駄を防ぐことができます。

一方、低い評価を受けた企業は小規模な工事に限定され、事業拡大の機会が制限されます。一度低い格付けを受けるとその評価を改善することが難しくなる可能性もあります。

設業者の格付け審査は、客観的事項と発注者別評価(主観点)という2つの評価軸で構成されています。

指標 評価内容
客観的事項 経営規模、経営状況、技術力、社会性など
発注者別評価(主観点) 工事実績や地域貢献の度合いなど

客観的事項では、「経営事項審査(経審)」として、建設業者の経営体力と技術力が総合的に評価され、発注者別評価は、発注者が管轄する地域での工事実績、工事成績評定の平均点、災害時の協力体制、地域でのボランティア活動など、地域貢献度が評価されます。

建設業者の等級区分は、公共工事の適正な執行と税金の効率的活用を目的として、A・B・C・Dの4段階に分けられています。この区分は建設会社の技術力、施工体制、資金力に応じた工事規模を確保するために設定されています。

具体的に、等級区分下記の通りです。

ランク 受注できる工事
A 7億2000万円以上の大規模工事
B 7億2000万円までの中規模工事
C 3億円までの小規模工事
D 6000万円までの極小規模工事

工事成績評定の影響

工事成績評定は、完成した工事に対して施工品質やコンプライアンス、出来形などを評価するシステムであり、工事成績評定の結果が企業の評判に直接影響します。

工事成績評定で高い評価を得た企業は、顧客からの高い信頼を得ることができます。また、新規クライアントの獲得や大規模プロジェクトへの参加資格など、ビジネスの成長機会の増加にもつながります。さらに、工事成績評定で指摘されたプロセスを改善することで、施工品質と効率が向上します。

しかし、高評価を連続して獲得するというプレッシャーが企業にとって過剰なストレスとなり、品質よりも数値を追求する行動を引き起こすリスクもあります。また、短期間で評価スコアの向上を目指すことが、長期的な品質向上努力を妨げる可能性もあります。

工事成績評定の採点表

以下に実際の採点表を記載いたします。この採点表の通り、工事成績評定は項目別に評定点が定められています。

引用:国土交通省/改定細目別評定点採点表

評価項目と合わせて、それぞれの項目がどの程度の比重となっているか確認することも重要です。出来形や品質など評定点を大きく取れる項目に注力することが、高得点を取るポイントです。

工事成績評定で高得点になるポイント

工事成績評定で高得点になるポイントは次の通りです。

  • チェックリストを入手する
  • 書類を正確に作成する
  • 評価される基準を確認する
  • 加点項目は積極的に取りにいく
  • 考査項目別運用表を確認する

それぞれ詳しく解説するため、高得点を取れるよう参考にしてみてください。

チェックリストを入手する

工事成績評定で高得点を獲得するためには、発注者である自治体が使用する評価基準を事前に把握することが重要です。具体的には、評価の基礎となる「考査項目別運用表」と「施工プロセスのチェックリスト」の2種類のチェックリストを入手し、その内容を十分に理解しなければなりません。

チェックリストは、多くの自治体のホームページで公開されており、ダウンロードして利用できます。自治体ごとに評価項目や点数配分が異なる場合があるため、必ず工事を発注する自治体のチェックリストを確認することが重要です。

チェックリストを入手し、工事着手前に内容を精査することで、評価のポイントを事前に把握でき、評価ポイントに基づいた施工計画の立案と実施が可能となります。

書類を正確に作成する

各種書類の正確な作成と提出も極めて重要な要素です。特に施工体制台帳は、工事に関わる元請から全ての下請業者までの情報を体系的に図化してまとめた重要書類であり、工事の安全管理体制を示す基本的な書類として評価されます。

また、産業廃棄物の契約書類や火気使用届などの法定書類も、1つの不備も許されない重要書類です。施工体制台帳は一次下請業者ごとに作成が必要となり、添付書類も含めて漏れがないように細心の注意を払わなければなりません。

書類作成においては、記載内容の正確性はもちろん、提出期限の遵守も重要な評価ポイントです。また、書類の整理・保管方法も評価の対象となるため、体系的なファイリングシステムを構築し、必要な時にすぐに提示できる状態を維持することが高得点につながります。

評価される基準を確認する

工事成績評定における評価基準は、施工体制、施工状況、出来形、工事の創意工夫、地域への貢献度など多岐にわたる項目で構成されています。特に「品質」「出来形」「施工管理」の3項目は配点の大きな部分を占めており、「品質」「出来形」「施工管理」の項目で高得点を獲得することが極めて重要です。

施工計画の作成や安全管理などの基本的な項目は、適切に実施して当然という前提とされており、求められる最低条件です。

高得点を目指すためには、基本的な項目を確実に実施した上で、特に重要度の高い品質・出来形・施工管理の3項目で、期待される水準を上回る成果を上げることが必要です。そのため、綿密な計画立案と確実な実施、詳細な記録の保持が求められます。

加点項目は積極的に取りにいく

工事成績評定で高得点を獲得するためには、「品質」「出来形」「施工管理」の3項目で積極的な加点獲得を目指すことが重要です。3項目は評価の大きな割合を占めており、ここでの加点が全体の評価を大きく左右します。

加点対象となる具体例は次の通りです。

評価項目 加点対象(例)
品質
  • 掘削積込み作業時は超ロングアームバックホウを使用し、ブロック内運搬時には、キャリアダンプを使用
  • コンクリート内部と外部の温度差を低減する工夫
  • 天端敷砂利工敷均し時に、角材による型枠を設置し施工を行う
出来形
  • 測定基準 40m毎の基準を10m毎に設定する、より詳細な数量管理
  • 工事現場の400m手前から規制のお知らせ(電光掲示板とアローライン)を設置
  • 出来形管理計画表を作成する
施工管理
  • 起工時の図面を用いて、不整合がないか確認
  • 細かい写真撮影
  • 部門合同で「設計図書検討会」を開催

品質管理では規格値を上回る精度での施工、出来形管理では要求精度以上の施工精度の実現、施工管理では先進的なICT技術の活用など、受注者が保有する高度な技術力を積極的にアピールすることが効果的です。

考査項目別運用表を確認する

工事成績評定における「考査項目別運用表」は、発注者によって評価項目や配点が異なることがあります。そのため、プロジェクトごとに戦略的な準備が必要となります。工事着手前に運用表を確認し、効率的な得点獲得の戦略を立てることが重要です。

例えば、現場の整理整頓や標識の設置など、実施が容易で確実に加点できる項目から着手し、その上で品質管理や施工管理といった配点の大きい項目に注力するなどの戦略的なアプローチが効果的です。

このように、運用表を詳細に分析することで、計画的かつ戦略的に得点を獲得し、より高い評価を目指すことが可能です。

評定結果によるメリットとデメリット

工事成績評定は、建設業者の技術力と品質管理能力を示す重要な指標です。高い評価を受けた業者は、公共工事の入札において優位性を持てるほか、継続的な受注機会の担保につながります。

一方で、評定点数の向上にこだわりすぎると、過剰な規則や手続きを設定してしまい、過度な負担を強いることになりかねません。また、形式的なルール遵守が目的化してしまい、本来の安全管理や品質担保の本来の目的がおろそかになるリスクもあります。

工事成績評定への取り組みは、基本的な品質担保と安全管理を確実に実施しつつ、過度な負担を避ける適切なバランスを取ることが重要です。さらに、評定制度の本来の目的である工事品質の向上と、現場の実行可能性を両立させる視点が必要です。

まとめ

工事成績評定は、公共工事の品質管理と施工者の技術力評価を目的とした重要な制度です。この制度では、工事竣工時に発注者側が施工状況や出来栄えなどを総合的に評価します。

工事成績評定は、受注者である建設業者の技術力向上への意欲を高め、公共工事全体の品質水準の維持・向上に寄与する重要な役割を果たすことが特徴です。さらに、入札・契約の透明性と公平性を担保する指標としても機能しています。

また、工事成績評定は公共工事を受注する際の格付けにも影響するため注意しなければなりません。建設業者にとって工事成績評定は安定した経営を保つために意識すべき重要な要素となっています。本記事では、工事成績評定の説明に加えて、工事成績評定で高得点になるポイントも解説しているため、参考にしてみてください。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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