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【NIKKEI Real Estate Summit 2025】不動産業界の今後の脱炭素に関する考えとは

【NIKKEI Real Estate Summit 2025】不動産業界の今後の脱炭素に関する考えとは

不動産業界の脱炭素に関する考えを発表する場のカンファレンスとして、NIKKEI Real Estate Summit 2025が開催されました。本記事では、建設業界の方向けに都市開発・環境セッションに参加した各企業が発表した持続可能な街づくりの方向性や経営戦略、規制への対応などを解説します。脱炭素に取り組んでいる建設業者の方は、ぜひ参照してください。

NIKKEI Real Estate Summit 2025の概要

2025年2月に東京国際フォーラムにて開催された「NIKKEI Real Estate Summit 2025」は、都市の未来を展望する日本最大級の不動産サミットです。「不動産の力で社会を革新する」をコンセプトに、業界リーダーが集結しました。

初日は都市開発・環境セッションが実施され、持続可能な街づくりの方向性や脱炭素戦略、ゼネコンへの期待など、社会課題解決に向けた議論が展開されました。

ここでは、都市開発・環境セッションに参加した次の企業について紹介します。

  • 野村不動産「BLUE FRONT SHIBAURA」
  • 三井不動産レジデンシャル 楽しくCO2削減「くらしのサス活」
  • JR東日本「TAKANAWA GATEWAY CITY」

それぞれの企業における内容について詳しく解説するので、参照にしてください。

野村不動産「BLUE FRONT SHIBAURA

野村不動産の「BLUE FRONT SHIBAURA」は、オフィスやホテル、商業施設、住宅が融合するツインタワーを中心とした大規模複合開発プロジェクトです。約10年の歳月をかけて進められ、2025年9月にはTOWER Sが全体開業する予定です。

持続可能な街づくりの方向性

野村不動産の「BLUE FRONT SHIBAURA」は持続可能な街づくりを通じて未来志向の都市環境を創造しています。「空と海、世界へひらかれたこの街で、新しい人と社会の未来をつくりだす」のビジョンを核に、都心の利便性と豊かな自然環境の調和を追求しているのが特徴です。

「TOKYO WORKation」と称された革新的コンセプトにより、東京都心のビジネス機能と空や海がもたらす開放感を融合させた新たな働き方を提案しました。さらに周辺エリアを含めた一体開発によって、エリア全体を有機的なワークプレイスとして位置づけ、多様な働き方を実現する環境を創出しています。

経営戦略としての脱炭素施策

野村不動産の「BLUE FRONT SHIBAURA」は、経営戦略として先進的な脱炭素施策を展開しています。太陽光発電システムとカーボンニュートラル都市ガスを積極的に導入することで、街区全体でのCO2排出量実質ゼロの目標を設定しているのが特徴です。

また、オフィスワーカーの健康・快適性向上とCO2削減の一見相反する課題の両立にも挑戦しています。環境性能と就業環境の質を、同時に高める革新的なアプローチです。同社の先進性は外部からも高く評価されており、2021年8月には「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に採択されるなど、環境認証評価の獲得にも積極的に取り組んでいます。

長期的な市場動向・政府規制への対応

野村不動産は「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」のグループビジョンを、2030年のターゲットとして掲げています。グループビジョンのもと、持続的な利益成長と高水準の資産・資本効率を実現するため、ビジネス領域の戦略的拡大と組織としての継続的な進化を推進しています。

コロナ禍以降急速に変化した働き方や働く環境に関する価値観の転換を先取りし、「BLUE FRONT SHIBAURA」オフィスの価値を根本から再定義しているのも同社の特徴です。従来の業務空間という概念を超え、新たな時代に適応した価値創造の場としてのオフィスです。

ゼネコンや協力企業に求めること

野村不動産の「BLUE FRONT SHIBAURA」プロジェクトでは、ゼネコンや協力企業に対して、持続可能な開発を実現するための多角的な協力を求めています。環境負荷を最小化する先進的な建設技術や、環境配慮型材料の積極的な採用を重視しています。

変化する働き方に対応するために欠かせない、最新のオフィス設備やテクノロジーの導入にも同社は着目しました。多様なワークスタイルを支援する柔軟性の高い空間設計の実現も、協力企業に求められる重要な役割です。

さらに、プロジェクトの社会的価値を高めるため、産業界・行政・学術機関との連携によるサステナビリティ施策の推進にも注力し、エコシステム全体での取り組みを協力企業と共に構築していく姿勢を示しています。

三井不動産レジデンシャル 楽しくCO2削減「くらしのサス活」〜おしゃれにかっこよくカーボンニュートラル~

三井不動産レジデンシャルの「くらしのサス活」は、日常生活を楽しみながらCO2削減に取り組むプログラムです。「おしゃれにかっこよくカーボンニュートラル」をテーマに、毎月の電気・ガス使用量をCO2に換算し、削減実績に応じてポイントを付与することで、環境配慮型ライフスタイルを促進しています。

持続可能な街づくりの方向性

「くらしのサス活」は、三井不動産グループの「&マーク」の理念を体現した持続可能な街づくりの具体的施策です。理念に基づき、社会との共生・共存・共創を通じて、時代のニーズに応える革新的な住環境の創造に取り組んでいます。

「くらしのサス活」の根幹にあるのは、人々の生活の質を向上させながら新たな価値を創出する明確な目標です。住宅分野に哲学を適用し、日常生活の中で楽しみながら脱炭素を促進する独自のアプローチで環境配慮と豊かな暮らしの両立を実現しています。

経営戦略としての脱炭素施策

三井不動産グループは、2030年度までに温室効果ガス排出量を2019年度比で40%削減し、2050年度までにネットゼロを達成する長期目標を設定しています。「くらしのサス活」は、各住戸のCO2排出量・削減量を自動的に集計し可視化するシステムを導入しているのが特徴です。

さらに、建物のライフサイクル全体を視野に入れた取り組みとして、2023年10月以降に着工する全物件で「建設時GHG排出量算定マニュアル」を活用したCO2排出量算定を義務化するなど、建設段階からの環境負荷低減に向けたアプローチを展開しています。

長期的な市場動向・政府規制への対応

三井不動産レジデンシャルの「くらしのサス活」は、パリ協定をはじめとする国際的な気候変動対策の加速を企業の社会的責任として真摯に受け止め、住宅分野で実効性の高い脱炭素施策を展開しています。

取り組みの本格的な実装として、同社は2022年以降に設計を開始した首都圏の分譲物件すべてに「くらしのサス活」を標準機能として導入する方針を打ち出しました。2024年からは本格的な稼働が予定されており、分譲住宅市場の環境配慮型住宅の主流化を見据えた先進的な対応です。

ゼネコンや協力企業に求めること

三井不動産レジデンシャルが協力企業やゼネコンに対して求めているのは、サプライチェーン全体を通じた温室効果ガス排出量の削減です。建設会社や資材メーカーなどのパートナー企業に対して、各工程のCO2排出量の積極的な削減と「見える化」に向けた協力を求めています。

また「くらしのサス活」プログラムの魅力を高めるため、CO2削減達成時の特典を提供する「賛同パートナー」の拡充にも力を入れていることも協力を要請している内容のひとつです。環境配慮型の住宅に住む入居者が実感できるメリットを増やし、プログラムの参加意欲を高める好循環の構築を目指しています。

JR東日本「TAKANAWA GATEWAY CITY

JR東日本の「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、日本初の鉄道が海上を走った歴史的なイノベーションの地、高輪で展開される同社最大規模のまちづくりプロジェクトです。単なる開発にとどまらず「100年先の心豊かなくらしのための実験場」として位置づけられ、未来志向の都市環境創造を目指しています。

持続可能な街づくりの方向性

「TAKANAWA GATEWAY CITY」は「国際交流拠点・品川」の中核として位置づけられ、地域の発展を牽引する役割を担っています。さらに「地球益」という広い視野に立ち、環境・社会・経済の調和を図りながら、常に進化し続ける街の創造を目指していることも特徴です。

産業界・行政・学術機関との緊密な共創関係を構築し、多様なパートナーとの連携により国際的なビジネス拠点としての価値を高め、グローバルな視点での持続可能なコミュニティ形成に取り組んでいます。

経営戦略としての脱炭素施策

JR東日本の「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、2025年3月の街びらき当初から、街が提供するサービスで使用するエネルギー全体でのCO2排出量「実質ゼロ」の目標を掲げています。

多様なクリーンエネルギー技術を統合的に導入する計画として、水素やバイオガスなどの次世代エネルギーとさまざまな再生可能エネルギーを組み合わせたまちづくりを実現します。

太陽光発電・風力発電など基本的な再エネ設備に加え、燃料電池コージェネレーションシステムを活用した高効率なエネルギー供給も計画のひとつです。太陽熱や地中熱、下水熱などの未利用エネルギーを効果的に活用する熱エネルギー供給システムを構築し、総合的な環境負荷低減を実現します。

長期的な市場動向・政府規制への対応

JR東日本の「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、少子高齢化やエネルギー問題など「課題先進国」と称される日本が抱える社会的課題に先駆的に取り組むことで、国際競争力の強化に貢献する目標を掲げています。

ビジョンを実現するため「人財・叡智」「医療」「水素・GX」を三本柱として設定し、重点的に投資・開発を進めていく考えです。グループ経営ビジョン「変革2027」に基づき、単なる不動産開発にとどまらない広域的なスタートアップエコシステムの構築を目指しています。

ゼネコンや協力企業に求めること

JR東日本がゼネコンや協力企業に対して求めているのは、水素やバイオガス、風力発電、太陽光発電など多様な再生可能エネルギー技術の効果的な導入と統合です。さらに、将来の水素社会実現を見越した、最先端の水素関連技術の開発と実装にも積極的な貢献を期待しています。

エネルギー効率を高めるための取り組みとしては、国内最大級の蓄熱槽システムの導入と協力企業の専門知識が欠かせません。JR東日本は建物のエネルギー管理を通じ、デマンドレスポンスやゾーン別空調管理システムなど先進的な技術の実装を求めています。

まとめ

本記事では、NIKKEI Real Estate Summit 2025の各企業の取り組み内容を建設業界向けに解説しました。持続可能な街づくりに向けてどのような施策を取っているのか、長期的な市場動向や政府規制にどのように対処していくのかをそれぞれの企業ごとに紹介しています。また、ゼネコンや協力企業にそれぞれの企業が何を求めているのか、建設業界として脱炭素に取り組みを進める際には参照にしてください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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