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工事成績評定の加点ポイントを調査!東海地方の最新動向は?

工事成績評定の加点ポイントを調査!東海地方の最新動向は?

東海地方での脱炭素の取り組みが進む中、建設業界でもその流れが広がっています。工事成績評定においては、脱炭素の取り組みが加点されることがあり、今後は実務担当者にとって重要な課題です。

東海地方は、自動車産業や電力産業など、エネルギー集約型の産業が盛んな地域です。そのため、環境問題への意識が高く、早い段階から脱炭素に向けた取り組みが始まっていました。また、これらの産業の発展によって培われた技術力も、脱炭素に貢献しています。

この記事では、東海地方での脱炭素の取り組みの特徴や、工事成績評定における脱炭素の取り組みが加点されるポイントについて解説します。

工事成績評定とは

工事成績評定とは、建設業において工事の品質や進捗状況などを評価するための方法です。

評価項目としては、以下のようなものが挙げられます。

品質:工事物の品質が要求仕様書に沿っているか
安全:工事現場での安全管理が適切に行われているか
工程:工事の進捗状況が予定通りであるか
経費:工事にかかった費用が予算内であるか
設計:設計図面が実際の工事に適しているか

これらの評価項目に基づいて、基準を設けて評価を行います。評価基準は、業界団体や法令によって定められることが多く、例えば品質については、欠陥品の割合や不適合品の数などが基準です。

また、各項目の重要度や評価方法も定められます。

脱炭素の取り組みが加点される理由3つ

脱炭素の取り組みが工事成績評定で加点される理由は、次の3つが挙げられます。

  1. 環境負荷の低減
  2. 社会的要請の高まり
  3. 法令や規制の遵守

以上の理由から、脱炭素の取り組みが工事成績評定で加点されることがあります。

環境負荷の低減

脱炭素の取り組みにより、CO2などの温室効果ガスの排出量を削減することができます。これにより、環境負荷を低減することができます。

社会的要請の高まり

近年、気候変動への対策や持続可能な社会の実現が求められるようになっています。そのため、脱炭素の取り組みが評価される傾向があります。

法令や規制の遵守

脱炭素の取り組みは、法令や規制に基づいて行われることが多く、これらを遵守することが求められます。評価対象となる工事において、法令や規制を遵守していることが加点されることがあります。

東海地方の脱炭素に向けた取り組み事例

ここでは、東海地方で進んでいる脱炭素の取り組み事例を紹介します。

  • 中部地方整備局 全国初となる「カーボンニュートラル対応試行工事」を開始
  • 愛知県「あいち地球温暖化防止戦略2030」
  • 静岡県「企業脱炭素支援センター」の設置
  • 岐阜県「2050脱炭素社会ぎふ」
  • 三重県「ミッションゼロ2050みえ」

中部地方整備局 全国初となる「カーボンニュートラル対応試行工事」を開始

中部地方整備局は、令和3年度に建設現場における脱炭素化を目指したWTO案件工事として「カーボンニュートラル対応試行工事」を開始しました。これは、環境に配慮した建設技術の導入を促進し、2050年までにカーボンニュートラル実現を目指す取り組みの一環です。

試行工事では、入札参加企業の評価基準に「企業能力」の項目を追加し、CO2削減目標の設定や第三者機関による認定取得、低炭素型建機による施工実績などを評価します。これは、環境に配慮した建設活動を推進し、技術力の高い企業を積極的に選定することを目的としています。

令和 3 年度は、「42号熊野第2トンネル工事」、「設楽ダム瀬戸設楽線 4 号トンネル工事」の工事で試行工事を実施しました。これらの試行工事を通じて、効果的な脱炭素化技術を検証し、建設現場における脱炭素化に向けた具体的な指針を策定していきます。

42号熊野第2トンネル工事

  • 工事箇所:三重県熊野市大泊町から木本町
  • 契約業者:アイサワ工業株式会社 名古屋支店
  • 工事延長L= 900 m 、トンネル掘削延長L= 853 m(NATM)

この工事では、建設機械の燃料、トンネル支保材、照明を環境負荷低減に配慮した素材に変更することで、CO2排出量削減に積極的に取り組んでいます。

具体的な取り組みは、以下のとおりです。

  1. 建設機械燃料のバイオディーゼル100%化
  2. トンネル支保材のガラス繊維強化プラスチック化
  3. トンネル内照明のLED化

設楽ダム瀬戸設楽線 4 号トンネル工事

・工事箇所:愛知県北設楽郡設楽町田口から清崎地先
・契約業者:前田建設工業株式会社 中部支店
・工事延長L= 420 m、トンネル掘削延長L= 210 m(NATM)

このトンネル工事では、CO2排出量削減に向けた以下3つの取り組みが行われています。

  1. オフロードダンプの燃料にGTL燃料を採用
  2. トンネル仮設備に低炭素コンクリートを採用
  3. 太陽光発電付き仮設ソーラーハウスを導入

上記のカーボンニュートラル対応試行工事では、入札契約の1次審査と2次審査、そして工事完成時の評価において、カーボンニュートラルへの取り組みが評価されています。

1次審査では、「カーボンニュートラルに関する取組実績」が企業の能力等19点のうち1点として評価されます。

具体的には、燃費性能に優れた建設機械を用いた工事の施工実績や、SBT認定取得企業の証明などが評価対象となります。

2次審査では、「カーボンニュートラル推進の取組み提案」が最大10点として評価され、脱炭素化の加速に向けた具体的な取り組み内容が評価されます。

工事完成時には、低炭素・低燃費建設機械(CN建機)の活用状況に応じ、工事成績評定で評価されます。CN建機の使用率や、CO2排出量削減効果などが評価対象となります。

画像出典:国土交通省中部地方整備局「建設現場における脱炭素化が始まります -モデル工事「カーボンニュートラル対応試行工事」を公告

愛知県の脱炭素に向けた取り組み

愛知県は、2018年2月に「あいち地球温暖化防止戦略2030」を策定しました。この戦略は、2018年から2030年までの期間において、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に進めることを目的としています。

しかしながら、2020年10月に国が「2050年カーボンニュートラル」を宣言して以降、社会情勢は大きく変化しました。これに伴い、愛知県も温室効果ガスの削減目標を引き上げるなど、戦略の見直しを行う必要が生じました。

その結果、愛知県は「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指し、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する目標を掲げ、東海地方以外の他の地域と比べて高い削減率を目指しています。また、2030年度までの間に取り組むべき施策の方向性を示した「あいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)~カーボンニュートラルあいちの実現に向けて~」を策定しました。

(画像出典:愛知県環境局地球温暖化対策課「「あいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)」の 推進について」)

これにより、愛知県はより具体的な目標と方針を掲げ、地球温暖化対策に取り組んでいくこととなります。注目すべき企業事例としては、地域やステークホルダーに受け入れられるクリーンな廃棄物処理業者を目指す、加山興業株式会社の取り組みがあります。

加山興業株式会社の取り組み

加山興業株式会社は、10年以上前から時代に先駆けて環境ソリューション事業を展開しており、2021年度愛知環境賞銀賞や第13回経営者「環境力」大賞、2022年度にはグリーン購入大賞サプライヤーエンゲージメント部門における優秀賞など、さまざまな環境アワードを受賞しています。

CO2削減には2000年代から取り組み始め、エネルギー燃料についてより排出係数の低い燃料を積極的に採用、電力においては自社の工場の屋根に太陽光発電設備を導入しながら、調達する電力においては全量再生可能エネルギー由来の電力を採用しています。現在では、秋田県、三重県、長崎県において再生可能エネルギー供給事業を展開しています。

さらには、産業系廃棄物のマテリアルリサイクルが困難な古紙および廃プラスチック類を主原料とした固形燃料のRPF(Refuse derived paper and plastics densified Fuel)を生産し、ボイラーを稼働させる工場などに燃料として提供するプロジェクトも推進中です。今後においては、一方で、顧客からお預かりした廃棄物を焼却した際に発生する非エネルギー起源のCO2排出量や当社が製造した固形燃料を顧客が利用した際に発生するCO2排出量が当社サプライチェーン排出量の7割以上を占めており、2050カーボンニュートラル実現に向けたトランジション戦略を議論していく必要性が生じました。そのためには、イノベーションを起こしていくための土台が必要であると考えました。

そこで、脱炭素において学術的な側面からの知見を豊富に有する大学機関との連携を積極的に図っていく方針です。

加山興業株式会社のインタビュー記事はこちら

静岡県の脱炭素に向けた取り組み

静岡県では、2050年のカーボンニュートラルと2030年の温室効果ガス排出削減目標の達成を支援するため、2022年4月、公益財団法人静岡県産業振興財団内に「企業脱炭素化支援センター」が設置されました。

同センターは、県内企業の脱炭素に関する悩みや課題に対して広範な支援を提供しています。具体的には、脱炭素に関する悩みの相談窓口開設、脱炭素の普及啓発セミナー・人材育成講座の開催、脱炭素に係る県内中小企業等向けの各種支援制度(補助金、融資等)や国・県等の動向について、随時、本ホームページ等で案内しています。また、2022年度の県内企業等の脱炭素に係る実態調査を実施し、分析結果について公表するとともに、県内企業等の脱炭素に係る取り組みについても取りまとめ、事例集として公表しています。

同センターの設置により、静岡県の強みである自動車産業や茶産業など、地域産業との連携を強化し、脱炭素化と地域経済活性化を両立させる取り組みを進めています。他の地域では、地域産業との連携が十分ではないケースも多いですが、静岡県は地域活性化にも貢献できるような脱炭素化支援を目指しています。

岐阜県の脱炭素に向けた取り組み

岐阜県では「2050脱炭素社会ぎふ」の実現に向け、大規模な排出事業者である県が率先して、自らの事務および事業から排出される温室効果ガスの削減を図っています。県民、事業者および市町村等の主体的な取り組みを促進するため、高い削減目標を掲げた計画を策定するとともに、全庁的な推進体制を構築し、取り組みを大幅に強化しています。

岐阜県は、CO2排出量だけでなく、県外から導入するエネルギー由来のCO2排出量も考慮した「CO2排出量収支」という独自指標を導入しています。これは、地域全体の脱炭素化に向けた取り組みをより包括的に評価することを目的としています。

また、県の率先実施を位置付けた岐阜県地球温暖化防止基本条例の改正を踏まえ、2013年度比で2030年度に70%減」との目標値の設定、取り組み内容・推進体制を明記した計画を策定しています。

(画像出典:岐阜県環境生活部環境管理課「「脱炭素社会ぎふ」の実現に向けて」

三重県の脱炭素に向けた取り組み

三重県では、2019年12月に脱炭素社会の実現に向け取り組むことを決意し、「ミッションゼロ2050みえ~脱炭素社会の実現を目指して~」を宣言しました。この取り組みをオール三重での取組へとつなげていくため、「ミッションゼロ2050みえ推進チーム」を立ち上げました。産官学等が連携したプラットフォームである「ミッションゼロ2050みえ推進チーム」では、具体的な事業・取り組みの実施、検証等を行い、オール三重で脱炭素社会の実現に向けて取り組んでいくことを目指しています

三重県は、豊富な自然エネルギー資源を活かし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んでいます。具体的には、メガソーラー発電所の建設や、風力発電機の設置などを推進しています。水素エネルギーは、脱炭素化における重要なエネルギー源として期待されています。

また、水素製造、輸送、貯蔵、利用などの技術開発や実証事業を積極的に推進しています。

推進チームは次の3チームで構成しています。

トップチーム:脱炭素社会の実現に向けた機運醸成や事業・取り組みの方向性等について意見交換等を行います。
アクションチーム:トップチームの所属団体の実務者等で構成し、県民や事業者向けに展開できる事業を検討し、実施します。
若者チーム:アクションチームと連携し、若者の意見を事業の検討、実施に反映させるとともに主体的に行動します。

(画像出典:三重県「ミッションゼロ2050みえ~脱炭素社会の実現を目指して~」)

まとめ

東海地方は、製造業との連携、自然災害への対策、地域住民との協働といった強みを活かし、脱炭素化の推進に対して積極的に取り組んでいます。

その中でも、全国初の試みとして「カーボンニュートラル対応試行工事」をスタートさせたことで、日本の脱炭素化に対する取り組みの先駆者となっています。

入札契約の1次審査において、「カーボンニュートラルに関する取組実績」を評価、入札契約の2次審査において「カーボンニュートラル推進の取組み提案」を評価されるようになりました。

今後、技術開発の加速、政策支援の強化、人材育成といった課題を克服していくことで、東海地方は脱炭素建設のモデル地域として、全国に先駆けて脱炭素社会の実現に向けて貢献していくことが期待されます。

今回は東海地方の最新動向をご紹介しました。以下の記事では地域ごとに工事成績評価のポイントを解説しています。

東京都編はこちら:「脱炭素の取り組みが評価ポイントに!東京都の工事成績評定の加点まとめ

九州編はこちら:「脱炭素の取り組みが評価ポイントに!九州の工事成績評定の加点まとめ

北海道・東北編はこちら:「工事成績評定の加点ポイントを調査!北海道・東北地方の最新動向は?

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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