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建設業界で広がる脱炭素の取り組みとは?大手の最新動向もあわせてチェック

建設業界で広がる脱炭素の取り組みとは?大手の最新動向もあわせてチェック

現在、世界の国々では、脱炭素社会を実現するためにさまざまな活動が行われています。日本でも政府から公的機関、民間企業へと脱炭素に向けた動きが活発化しており、建設業界でも、大林組や鹿島建設といった大手企業はすでに国際的な脱炭素活動に参加しています。いずれは中小企業や零細企業においても、脱炭素に向けた活動が必須になるのではないでしょうか。

そこで本記事では、建設業を含めた数々の民間企業が参加している、国際的な脱炭素活動を紹介します。建設業界大手の状況と具体的な取り組み事例も紹介していきますので、自社で取り組む際の参考にしてください。

目次

建設業界における脱炭素とは

建設業界における脱炭素とは

脱炭素とは、地球温暖化への対策としてCO2排出量を削減する取り組みの1つです。地球温暖化の原因となるCO2の多くは建設業界から排出されています。このため、脱炭素と建設業界は密接に関わり合っています。脱炭素社会の実現に向けて、建設業界と脱炭素の関係を詳しく確認していきましょう。

脱炭素とは

脱炭素とは、温室効果ガスであるCO2の排出量をゼロにする取組みです。

私たちの生活は、石油や石炭・天然ガスなどの化石燃料によるエネルギーで成り立っています。しかし、化石燃料は燃焼によってCO2などの地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出します。

そこで、化石燃料に変わる合成燃料やバイオマス燃料使用することで再生可能エネルギーなどの開発・普及を目指しています。こういった化石燃料からのエネルギー転換の取り組みによって、温室効果ガスの排出量削減を目指しています。

建設業界と脱炭素の関わり

脱炭素が、CO2排出量をゼロにする取り組みであることは前述した通りです。しかし、建設業界では建設資材の生産時や建物の建設時などにCO2を大量に排出しています。

脱炭素を実現するためには、建設業界の排出削減の組みが必要不可欠です。

建設業界の脱炭素化のために法律が作られており、例えば2015年7月に制定された建築物省エネ法は2025年4月以降、すべての住宅・建築物に省エネ基準を適合することを義務とする内容に改正されます。

建築物省エネ法はもともとエネルギー需要の高まりに対応するための法律でしたが、2021年の改正により、脱炭素の取組みの一環として明確に位置付けされました。

省エネ効果の高い住宅・建築物の普及によって、脱炭素の実現への効果が期待されています。

建設業界における脱炭素の現状

脱炭素の取り組みが重要視されている理由

引用:建設現場における脱炭素化の加速に向けて|国土交通省

産業部門が全体の35.0%を占める日本国内のCO2排出量のうち、1.4%にあたる571万トンは建設機械が排出しています。

こういったことから、建設業界では「ICT施工の導入」や「代替燃料の使用」によって、CO2排出量の削減が進められています

民間企業が参加する、国際的な脱炭素活動・取り組み

脱炭素に向けた国際的な取り組みや活動のなかで、日本の民間企業が参加しているのは主に以下の6つです。

CDP:気候変動・水・森林に関する情報を収集し、大企業への公開質問や格付けなどを行っている非営利団体。2022年には、1700以上の日本企業が情報の開示に参加した

SBT:企業の温室効果ガス削減目標の国際認証。日本でも自社の目標を立てSBT認定を取得する企業が増えており、2025年7月11日時点で1874社が参加している

RE100:企業が自社の電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す取り組み。日本の環境省と防衛省・外務省がアンバサダーとして参加し、活動を促進。86社の日本企業が参加している(2024年3月1日時点)

Race to Zeroキャンペーン:世界中の企業や団体、地域、大学などに2050年カーボンニュートラルを呼びかける取り組み。日本では大企業に加えて、東京都や東京大学なども参加を表明している

TCFD:G20(主要20か国首脳会議)の要請を受けて設立された団体。気候関連問題に対するリスク管理や目標をどう行っているのか、企業の財務諸表に反映させることなどを提言している。日本では1252の企業・機関がTCFDに賛同している(2023年3月27日時点)※TCFDは2023年10月に解散しており、日本ではTCFDコンソーシアムがその活動を引き継いでいます。

GRI:サスティナビリティの概念を具体的な指標に可視化したガイドライン「GRIスタンダード」を策定している非営利団体

上記の活動に参加しているのは大企業が中心ですが、大企業は中小企業・零細企業を含めて膨大な取引先を持っています。いずれは、大企業が始めた脱炭素の流れが周囲に波及する形で、業界標準が形成されていくのではないでしょうか。

関連記事:【基礎編】脱炭素をアピールする「国際イニシアチブ」とは? CDP、RE100、SBTなどを紹介

脱炭素の取り組みが重要視されている理由

脱炭素の取り組みが重要視されている理由

大企業が始めた脱炭素の流れを汲み取るには、そもそもなぜ「脱炭素が重要視されているのか?」という点を、正確に把握することが重要です。脱炭素の取り組みにおける必要性を理解できれば、具体的に自社が何をすべきかが見えてきます。以下では、脱炭素の取り組みが重要視されている理由を解説します。

地球温暖化による気候変動への対処法として注目されている

脱炭素への取り組みは、地球温暖化などによる気候変動の対処法として注目されています。

脱炭素への取り組みは国単位ではなく、それぞれの企業が実践できる内容す。そのため環境問題への解決を目指して、脱炭素への取り組みに力を入れる企業は今後も増えると予想されます。

投資家の判断材料としても利用されている

脱炭素への取り組み実績は、投資家や金融機関から投資・融資を受ける際の判断材料にもなります。昨今はESG投資の市場が拡大し、多くの投資家が環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)を指標として投資対象を決定しています。

ESG投資は企業にとっても重要な資金調達法となり、今後の事業に影響する可能性があります。そこで企業はESG投資を考慮して、脱炭素を含めたさまざまな取り組みを実施しているデータを公表し、投資先としての魅力をアピールしなければなりません

金融機関もサステナブルファイナンスを意識し、脱炭素などの問題に積極的に取り組んでいる企業への融資を進めています。企業の経営につながる点もまた、脱炭素の取り組みが注目されている理由の1つです。

現在使用している燃料はいずれ枯渇する

脱炭素への意識を向上させ、実際の行動に移すことは、現在使用しているエネルギーからの脱却につながります。家庭でも使用されている化石燃料は、いずれ枯渇することが予想されています。

そこで脱炭素およびサステナブルに注力し、エネルギーの転換を図る動きが加速しているのが現状です。再生可能エネルギーの利用は、地球環境によい影響を与えます。将来の自然を守り、今起きている災害の原因に対処するきっかけにもなるため、積極的な利用が求められます。

建設業も、多くのエネルギーを事業のなかで使用している状態です。エネルギーを多く使用する事業は結果的に環境に影響を与え、エネルギーの枯渇を早めることにつながります。脱炭素は建設業に属する企業が、エネルギー枯渇のリスクから離れるための施策としても有効す。

脱炭素はビジネスの一環にもなる

脱炭素は環境問題への配慮だけでなく、ビジネスの一環としても活用できる手法です。例えばデカップリング現象は、その代表とも言えます。デカップリング現象とは、GDPが上昇しているにもかかわらず、CO2排出量が減少している現象のことを指します。

一般的に従来の事業は、電気や燃料を使用する作業でCO2が排出されていますた。そのため生産量を高めて利益を得るには、どうしてもCO2排出量が増えてしまいます。しかし、脱炭素を軸に新しいビジネスモデルを確立することで、利益を上げつつCO2を減らすことが可能になります。例えば省エネの新しい手法を使ったり、社会の仕組みそのものを変えたりするグリーンエネルギー革命を実践することが考えられます。

昨今は日本も含めた先進国などにおいて、このデカップリング現象が観測されています。新しいビジネスモデルの形成などにつながる可能性がある点もまた、脱炭素の注目度を高める理由す。

SDGsが一般層にも普及している

SDGsが一般層にも普及している昨今において、脱炭素へ取り組んでいるという事実は、企業のイメージアップにつながります。地球環境や社会のために脱炭素を実行している点をアピールできれば、企業価値を高めてブランディングができるでしょう。

特に建設業は、事業の規模が大きいため、脱炭素への高い効果が見込めることをアピールできます。SDGsに興味があり、自分も積極的に環境・社会問題に関わっていきたい人たちにとって、脱炭素に取り組んでいる企業は魅力的に映るでしょう。

関連記事:建築業がSDGsの目標に向けてできる取り組みを解説

グリーン成長戦略と建設業界の将来性

建設業界として脱炭素を進めるにあたって、経済産業省が提唱するグリーン成長戦略を理解することも必要です。グリーン成長戦略の概要や再エネ設備市場、新しいビジネスモデルなどを解説します。

グリーン成長戦略の概要と14分野

グリーン成長戦略は、日本が2050年カーボンニュートラル実現に向けて策定した戦略です。2050年カーボンニュートラル実現の目標達成には従来の延長線上の取り組みでは不十分であり、エネルギーと産業部門における抜本的な構造改革が求められています。

グリーン成長戦略では、将来的な成長が見込まれる14の重要分野を特定し、産業政策とエネルギー政策の両面からアプローチする具体的な実行計画を策定しています。

経済産業省では、次の14の分野が発表されています。

産業 分野
エネルギー関連産業 洋上風力・太陽光・地熱
水素・燃料アンモニア
次世代熱エネルギー
原子力
輸送・製造関連産業 自動車・蓄電池
半導体・情報通信
船舶
物流・人流・土木インフラ
食料・農林水産業
航空機
カーボンリサイクル・マテリアル
家庭・オフィス関連産業 住宅・建築物・次世代電力マネジメント
資源循環関連
ライフスタイル関

建物のエネルギー効率向上や再生可能エネルギーの活用、持続可能な建材の開発など、建築業界としても脱炭素に向けた技術イノベーションで重要な役割を担っています。

再エネ設備市場としての建設業界

グリーン成長戦略の推進により、再生可能エネルギー設備の建設市場で、可能性が広がっています。ゼロエネルギービル(ZEB)の普及拡大をはじめ、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー関連の建設プロジェクトが増加しています。

増加の背景の1つが、環境省が推進する科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標(SBT)への対応です。SBT認定を受けた企業や組織は、具体的な削減目標達成に向けて積極的な取り組みを求められており、建設業界においても再生可能エネルギーの導入が本格化しています。

建設業に求められる新しいビジネスモデル

従来のような施工効率や工期短縮を重視したアプローチから、環境負荷を最小限に抑えることを前提とした新しいプロジェクト管理手法の確立が求められています。企画段階から完成後の運用まで、全工程でCO2排出量を考慮した総合的なマネジメントが必要です。

また、調達プロセスにおいても従来のコスト重視の資材選択から、環境配慮型の低炭素材料を積極的に採用するグリーン調達への移行が加速しています。再生材料の活用や製造過程でのCO2排出量が少ない建材の選定などが重要な判断基準です。

さらに、カーボンニュートラル対応の試行工事の実施により、実際の現場における脱炭素技術の検証と改善が図られています。

建設業が脱炭素の取り組みに携わるメリット

建設業が脱炭素の取り組みに携わるメリット

建設業に属する企業が、脱炭素の取り組みに携わることには、多くのメリットがあります。具体的なメリットを把握し、活かす方法を考えることが、企業の将来を左右します。以下では、建設業の企業が脱炭素に積極的になるメリットを解説します。

建築時に排出されるCO2を削減できる

建設業の事業では、生産過程で多くのCO2を排出します。しかし、省エネにつながる施策を実行したり、CO2の排出量が少ない材料を選択したりすることで、事業における環境への負担を軽減できます。脱炭素はその代表的な取り組みであり、多くの企業が実践できる内容となっています。

CO2の削減は環境や社会に多くのメリットを与えるため、積極的な取り組みが重要となります。

建物を使用する際に排出されるCO2削減にも影響を与える

脱炭素への取り組みは、建築時だけでなく建物を使用する際に排出されるCO2の削減にもつながります。脱炭素社会の実現に向けて、2050年には建物自体から発生するCO2の排出量を抑える必要があります。

そこで断熱性能の向上を意識した設計や、高効率設備機器の導入による省エネ、再生可能エネルギーの利用など、さまざまな施策によって年間のエネルギー収支をゼロにすることを目標とした建築物「ZEB」の普及を日本政府が推進しています。

建物を使用する際のCO2排出量は、1990年から2008年にかけて半分程度にまで減少しています。しかし、2010年から2020年にかけては横ばいとなっているため、今後は「ZEB」のような施策をより本格的に始動させていくことで、より脱炭素のメリットを活かせるようになることが期待されています。

建築物は今後も長く使用されるため環境への影響力が高い

建築物は何十年と使用される可能性が考慮されるため、環境に与える影響力が強い分野となっています。そのため建設業は積極的に脱炭素に取り組むことで、効果的な環境改善を実現できる点にメリットがあります。

将来に備えた施策を展開しやすく、その効果が未来につながりやすい点は、建築業における脱炭素活動の特徴と言えます。

技術革新によって事業の成長性を高められる

脱炭素による技術革新によって、事業の成長が見込める点もメリットの1つです。脱炭素のために最新設備を導入したり、新しい働き方や考え方を取り入れたりすることで、会社全体の成長につながる可能性もあります。脱炭素を軸に新しい技術を導入することが、結果的に会社や従業員へのメリットになるケースもあります。

脱炭素への取り組みが企業イメージの向上につながる

先にも解説したように、SDGsをはじめとした環境への配慮は一般層にも広まっています。企業が積極的に脱炭素の取り組みを実行することが、イメージの向上につながる可能性は高いでしょう。複数の業者のなかから施工先を選ぶ際に、環境への配慮をしている企業を選択するケースも、今後増えると考えられます。

環境を意識する顧客層を取り込むために、脱炭素につながる行動を進めるのも1つの施策です。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の導入拡大がポイント

建設業が脱炭素を進めるにあたって、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の導入が重要なポイントです。ZEBの定義から抱えている課題、ZEB普及に向けた支援策と補助金制度を解説します。

脱炭素社会におけるZEBの定義と必要性

ZEBは単なる省エネ建物ではなく、居住者や利用者の快適性を維持しながら、建物が年間で消費する一次エネルギーと創出するエネルギーの収支を実質的にゼロにする高度な建築技術です。

ZEBの実現には、断熱性能の向上や高効率設備の導入による大幅な省エネルギー化と、太陽光発電などの再生可能エネルギー設備による創エネルギーの両方の視点が欠かせません。国は2030年に向けた明確な目標を設定しており、新築されるすべての住宅・建築物においてZEH・ZEB基準レベルの省エネ性能確保を求めています。

出典:環境省/ZEB普及目標とロードマップ

ZEB導入の技術とコスト課題

建物のエネルギー収支をゼロにするためには、高効率な省エネルギー設備の導入だけでなく、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー設備の設置が不可欠です。ZEBを実現するためには、従来の建築コストと比較して大幅な費用増加が避けられません。

さらに、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入コストも重要な検討事項です。EMSは建物内の照明や空調システムのエネルギー使用状況をリアルタイムで監視し、最適な制御を自動的に行うシステムですが、導入には専門的な技術と費用が必要です。

技術的・経済的ハードルは、ZEB普及の阻害要因となりかねません。建設業界では、技術革新による設備コストの削減や、長期的な運用コスト削減効果を含めた総合的な経済性の検証が重要な課題となっており、持続可能なビジネスモデルの構築が求められています。

ZEB普及に向けた支援策と補助金制度

2025年4月に施行される改正建築基準法および改正建築物省エネ法により、建築物の省エネ性能向上が法的に義務化され、ZEB導入の制度的基盤が強化されています。

法改正の背景には、2050年カーボンニュートラル実現と2030年度温室効果ガス46%削減の目標があります。政府は2021年10月に削減目標を強化し、建築分野の脱炭素を加速させる方針を明確にしました。

実際の導入促進策として、建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業をはじめとする多様な補助金制度が整備されています。財政支援により、ZEB導入時の初期コスト負担軽減が図られており、建設事業者や建物所有者にとって導入のハードルが下がっています。

建設業界で広がっているのはCDPとSBT

国際的な取り組みの中で、建設業界の参加が活発なものは「CDP」と「SBT」です。

リバスタ編集部で建設業界の売上高上位100企業を独自に調査したところ、上位20の企業はCDPの格付けスコア(リスト)・SBT認定のどちらかを取得していました。環境省の報告でも、SBTを取得している日本企業の中で特に多い業種として、建設業が挙げられています。

ここでは、建設業界で広がるCDPとSBTの詳細を見ていきましょう。

機関投資家の支持を得て拡大する非営利団体「CDP」とは

CDPは気候変動、森林、水に対する企業の取り組み情報を収集して開示する非営利団体です。

CDPの主な取り組みは、世界中の大企業に対して環境に関する質問書を送付し、企業からの回答内容にスコア(格付け)を付けて公開することです。スコアは「気候変動」「森林」「水セキュリティ」の3部門からなり、最上級の評価はAリストです。CDPの質問書に回答するかどうかは企業の自由ですが、CDPの回答は世界中の機関投資家・金融機関などから注目されています。質問に回答しなければ投資家からの評価が下がる恐れもあり、CDPの質問に回答する企業は年々増えています。

特に日本はCDPの質問に回答する企業が多く、2022年度には1700超の日本企業が情報を開示しました。建設業界でも売上上位20社のうち15社に開示要請があり、気候変動部門でAリストを受賞している企業もあります(リバスタ編集部調べ)。

関連記事:CDPとはどんな組織?特徴や活動内容について解説

建設業界でも認定取得を受ける企業が続出「SBT」とは

SBTは企業の温室効果ガス削減目標の国際的な認証で、CDPなどの非営利団体が共同で設立・運営しています。

SBTの特徴は、地球温暖化に関する国際的な枠組みである「パリ協定」が掲げる水準※と科学的に整合性がとられていること。

※パリ協定の水準:世界の気温上昇を産業革命前より2度を十分に下回る水準に抑える、または1.5度に抑える努力をすること

つまりSBTを取得すれば、「国際目標と気候科学に沿った温室効果ガス削減目標を立てている」と外部にアピールできます。日本でもSBTを取得する企業が増え、特に建設業界の取得が顕著です。リバスタ編集部の調査では、建設業の売上高上位20社のうち、すでに13社がSBTに賛同し、認定済、あるいは認定を目指しているところにあります。今後もSBT認定を取得する企業は増えていく見込みです。

なお、SBTには中小企業向けのコースも用意されています。中小企業向けコースでは温室効果ガス排出量削減の対象範囲を狭める、削減目標に対する審査を不要とするなどの措置があり、通常のSBTよりも認定取得を目指しやすくなっています。

業界トップの企業がCDPやSBTの活動に参加するとどうなるのか

大企業の活動は、いずれ多くの中小企業・零細企業に波及していきます。特に数多くの事業者が関係している建設業界においては、大企業の脱炭素活動の影響は広範囲に及ぶと予想されます。

たとえば、建設業大手が続々と取得しているSBT認定では、事業者自らのCO2排出量だけではなく、サプライチェーンの排出量削減まで求められます。これは、業界大手の取引企業すべてに排出量削減が求められるということでした。今後は、取引先から脱炭素についての情報開示や取り組みを求められる機会が出てくる可能性があります。脱炭素は単なるブランディングではなく、企業間取引継続のために必要な活動になることが予想されます。

建設業が脱炭素のためにできること

建設業が脱炭素のためにできること

建設業はほかの業界とは異なる形で、脱炭素社会の実現に貢献できます。どのような施策が脱炭素を実現するのかを知ることが、環境に貢献するための第一歩となるでしょう。以下では、建設業が脱炭素のためにできることを解説します。

再生可能エネルギーの利用

建設業が脱炭素を実現する際には、再生可能エネルギーの利用が検討されます。従来のエネルギーの使用量を削減するだけでなく、再生可能エネルギーに転換していくことが、脱炭素を実現するポイントです。化石燃料は枯渇のリスクもあるため、継続して使うことにはデメリットも考えられます。

建設業に属する企業はそのことを考慮して、再生可能エネルギーの利用を検討すべきです。

建設作業からCO2の排出量を削減する

建設作業そのものから、CO2の排出量を削減することも重要です。設計段階から脱炭素を考慮した施策を打ち出すことで、最終的なCO2排出量を大幅に削減できる可能性があります。設計・施工・運用・更新・改修・解体といった各段階で、具体的にどのような行動がCO2削減につながるのか、事前に検討することが重要です。

建築物の省エネ法への理解を深める

建設業に属する企業は、「建築物省エネ法」への理解を深めることも脱炭素への取り組みにおいて重要なプロセスとなります。2025年4月以降に着工するすべての建築物は、「省エネ基準」への適合が義務付けられます。建築確認手続きのなかで、省エネ基準への適合性審査が実施されるため、対策が必要になります。

脱炭素への施策にも影響すると予測されるため、事前に制度の内容をしっかりと把握することが重要です。

工事方法の改善

建設業は既存の工事方法を改善し、脱炭素につながる要素を積極的に取り入れていくことも大切です。例えばICTを活用して作業工程を簡略化させ、施工にかかる時間を短縮してCO2の排出量を抑えるといった方法が考えられます。

また、建築に使用する原材料からCO2排出量をゼロにすることで、根本的に環境問題を引き起こさない配慮も考えられます。環境に優しいグリーン調達の実行も、工事方法を改善するきっかけになり得ます。

社内で脱炭素の重要性を周知させる

脱炭素の重要性や脱炭素社会の実現に向けた対策を、従業員に理解してもらうのも重要です。どれだけ企業が積極的に脱炭素の施策に力を入れても、それを実行する従業員の気持ちが追いついていないと、高い効果が出せない可能性があります。

これから脱炭素の取り組みを実行する企業や、想定していた成果が出せない企業は、まず社内への情報共有と教育を行うのもポイントです。セミナーや勉強会を開いたり、専門の部署を立ち上げるなど、会社全体で脱炭素および環境問題への意識を構築するのがコツです。

必要に応じて外部から人を招き、業務環境の改善などを進めることも考えられます。企業としての取り組みが先行して、従業員の意識が低くならないようにフォローすることが大切です。

建設材料の脱炭素化:低炭素コンクリートの実用化

建設材料でも脱炭素が進められており、低炭素コンクリートの実用化が注目されています。低炭素コンクリートの概要やモデル工事での活用事例、課題と今後の展望を解説します。

脱炭素を加速する低炭素コンクリートとは

低炭素コンクリートは、製造工程におけるCO2排出量を削減した次世代型建材として位置付けられています。具体的な基準として、ポルトランドセメントの置換率が55%以上に達するもの、または同等以上のCO2削減効果を持つものが低炭素型コンクリートと定義されています。従来のセメント使用量を大幅に減らすことで、製造段階での環境負荷を軽減する狙いです。

さらに、CO2吸収型コンクリートも開発されています。CO2吸収型コンクリートは従来の水による硬化反応とは異なり、大気中のCO2と直接化学反応することで硬化する特性を持っています。

モデル工事での活用事例

国土交通省は低炭素コンクリートの実用化促進に向けて、直轄工事における具体的なモデル工事を展開しています。高炉スラグ微粉末を活用した低炭素型コンクリートブロックは、ポルトランドセメントの置換率を55%以上に設定し、無筋のプレキャストコンクリートを対象として実施されています。

国土交通省が通常の積算基準で工事を発注する一方、新技術導入に伴う追加的な研究開発費用は経済産業省などの技術開発予算から支出する仕組みです。

官庁横断的な取り組みは、技術開発の加速と実用化の促進が同時に実現されている、建設業界の脱炭素に向けた効果的な政策モデルです。

出典:国土交通省/国土交通省のインフラ分野におけるカーボンニュートラルに向けた取組

課題と今後の展望

低炭素コンクリートの普及にあたっての障壁は、材料調達の困難さと初期コストの高さです。特殊な原材料の安定供給体制が未整備であることから、施工現場では必要な材料を一定量確保するための新たな調達ルートや専用の管理場所を確保する必要があり、従来の建設プロセスとは異なる対応が求められています。

技術的な課題として、低炭素コンクリートの特性に適合した施工技術の習得が重要です。従来のコンクリート工事とは異なる硬化特性や作業性を理解し、適切な施工を行うための新しいスキルが作業員に求められており、技術者の教育・訓練体制の整備が必要です。

課題解決に向けて、専用のストックヤード設置や広域的な流通ネットワーク構築により、安定した材料供給が可能になることが期待されています。さらに、大学や技術者協会における専門教育プログラムの開発により、グリーンコンクリート技術に精通した人材育成が進められており、技術普及の基盤整備が着実に進展しています。

CDPやSBT、気候変動への取り組み事例

CDPやSBT、気候変動への取り組み事例

ここでは、建設業界大手がCDP、SBTとどう関わっているのか、最新の状況を解説します。脱炭素に向けた具体的な取り組み事例もご紹介していきますので、参考にしてみてください。

株式会社大林組

大林グループは、2019年に長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050」を策定し、2040年〜2050年における目標の一つとして「脱炭素」を掲げています。このビジョン実現に向け、「カーボンニュートラル」をビジネス機会として経営計画に織り込み、具体的な取り組みを推進していきます。

引用:脱炭素社会|株式会社大林組

大成建設株式会社

大成建設グループは、環境方針に掲げた「持続可能な環境配慮型社会の実現」のために、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を策定し、脱炭素社会の実現に向けた責務、事業を通じた貢献、取り組みを定めています。

大成建設グループは、建設業を中核とした企業グループとして、事業活動が脱炭素社会への移行に及ぼす影響と脱炭素社会への移行から受ける影響を十分に認識し、事業活動および事業活動に関連するCO2排出量を2050年までに0(ゼロ)にすることを責務とします。

引用:脱炭素社会の実現に向けて|大成建設株式会社

三井不動産株式会社

当社グループの目標
グループ全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに40%削減(2019年度比)2050年度までにネットゼロ
※SCOPE1+SCOPE2は2030年度までに46.2%削減(2019年度比)

サプライチェーンと一体となって、2030年度に向けた取り組みを着実に実行
さらに、2050年度の脱炭素社会実現に向けた行動を推進

行動計画01:新築・既存物件における環境性能向上
行動計画02:物件共用部・自社利用部の電力グリーン化
行動計画03:入居企業・購入者の皆様へのグリーン化メニューの提供
行動計画04:再生可能エネルギーの安定的な確保
行動計画05:建築時のCO₂排出量削減に向けた取り組み
その他の重要な取り組み:
・森林活用
・外部認証の取得
・オープンイノベーション
・街づくりにおける取り組み
・社内体制の整備

引用:脱炭素社会実現への取り組み|三井不動産株式会社

東急建設株式会社

東急建設は、マテリアリティに「気候変動(対応と適応)」を設定し、気候変動への取り組みを最重要課題の1つと認識しています。長期経営計画 ”To zero, from zero.”では、「脱炭素」、「廃棄物ゼロ」、「防災・減災」を3つの提供価値と定め、関連するイニシアティブへの積極的な参画や各種施策を通じて、カーボンゼロに挑戦しています。

引用:気候変動リスクへの取り組み|東急建設株式会社

 

まとめ

脱炭素の流れは世界から日本へ、日本政府から公的機関、民間企業へと広がっています。建設業界でも、CDPのスコアやSBT認定を取得する企業が多く出てきているため、今後も大企業から中小企業・零細企業へと影響が広がっていくでしょう。

建設業大手がこぞって取得しているSBT認定では、自社だけではなくサプライチェーンのCO2排出量削減を求められます。そのため、建設業界でも脱炭素の取り組みを行っているか対外的な証明が必要になり、情報開示が求められる時代となっています。こうした動向に注視しつつ、自社で何ができるのかを検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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