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リソース不足やインフラ老朽化対応にとどまらない 「i-Construction2.0」脱炭素との関連性と未来展望

リソース不足やインフラ老朽化対応にとどまらない 「i-Construction2.0」脱炭素との関連性と未来展望

人手不足と老朽化インフラへの対応に追われる建設業にとって、「どうやって人を増やさずに、現場を回すか」は共通の課題です。
i-Construction 2.0(以下「i-C2.0」)は、こうした課題に対応するために、国土交通省が2024年4月に打ち出した建設現場の「オートメーション化」プランで、2040年度までに3割の省人化と生産性1.5倍向上を目指します。

これは、従来のi-Constructionをさらに発展させたもので、「施工の自動化」「データ連携の自動化」「施工管理の自動化」の3つを柱とし、建設現場の働き方改革や人手不足の解消、および安全性の向上と快適な環境の実現を目指すとされています。

そもそも、建設現場のリソース不足やインフラの老朽化対応のために考えられた国家的な戦略ですが、DXや人手不足の問題解決というアプローチ以外に”脱炭素”を実現するための側面はないかを探っていきます。

i-Construction2.0と脱炭素との関連性

脱炭素という観点から見たとき、建設業やインフラ分野には複数の重要な論点があります。各々について説明します。

1.CO2排出源について

まず注目すべきは、排出源の構造です。建設・土木分野におけるCO2排出は、大きく「エネルギー起源」と「プロセス起源」の2種類に分類されます。前者は建設機械や発電設備が使用する燃料・電力による排出であり、後者はコンクリートや鉄鋼など資材の製造過程で生じる排出を指します。特にセメント製造に伴う非エネルギー起源CO2は、建設分野全体の中でも大きな割合を占め、温室効果ガス削減の鍵を握る要素とされています。

2.i-C2.0が目指す効果

i-C2.0は、単なる省人化・効率化の枠を超え、「建設施工分野の脱炭素化の促進」を明確に位置づけています。技術基本計画では、「建設機械のエネルギー効率向上」「次世代燃料の導入」「低炭素コンクリートの活用」などが挙げられ、施工プロセス全体の自動化・効率化によって機械稼働時間や燃料消費を抑制し、結果としてCO2排出の低減を目指しています。

3.作業・施工効率の工場で目指す脱炭素

施工の効率化そのものが、脱炭素への道を拓く点も重要です。作業時間や人員、機械稼働回数を減らすことで燃料・電力の使用量が削減され、省エネルギーが実現します。さらに、作業のオートメーション化や遠隔操作技術の導入により、現場での人の移動や重機のアイドリング時間を抑えられ、現場全体のカーボンフットプリントを縮小することが可能となります。

4.データ活用や最新ICT活用が重要

i-C2.0がもたらす脱炭素効果は施工段階にとどまらず、インフラの更新や維持管理の工程がデータ化・モデル化され、BIM/CIMやセンサーによって可視化されることで、補修や点検の最適化が進みます。これにより、不要な作業や過剰な資材使用を防ぎ、結果としてCO2排出量の削減につながります。国土交通省の資料でも、維持管理や更新フェーズでのICT活用が、建設分野の脱炭素化に資する技術として位置づけられています。

i-Construction2.0と脱炭素の現場で意識すべきポイント

i-C2.0を脱炭素の観点から実践していくためには、現場での具体的なアプローチが欠かせません。特に「機械・燃料の転換」「データ活用の強化」「維持管理の最適化」「排出量の見える化」という4つの視点が重要です。


この4つの視点を踏まえた運用こそが、i-C2.0を「効率化」から「環境価値創出」へと発展させる道筋になります。実務レベルでは、個々の現場で「どこまでやるか」を決め、試行と検証を繰り返すことが、社内にノウハウを蓄積する近道になります。

i-Construction2.0と脱炭素の課題と留意点

i-C2.0と脱炭素の関連性は明確ですが、実現に向けては克服すべき課題もあります。
第一に、導入コストの高さです。ICT建機や低炭素材料は高額であり、中小企業には負担が大きいのが現実です。補助金制度や共同利用、リースなどの仕組みを活用する工夫が必要です。

第二に、技術・人材の課題です。デジタル施工を支える人材が不足しており、設計から維持管理までを俯瞰できる「横断型人材」の育成が急務です。

第三に、効果の定量化です。効率化が必ずしもCO2削減に比例するわけではないため、排出データの収集と分析を通じ、科学的に削減効果を検証する必要があります。

第四に、資材製造段階での排出との整合性です。施工現場で省エネを進めても、資材製造過程で排出が多ければ全体の効果は薄れます。ライフサイクル全体での最適化が求められます。

最後に、制度整備の課題があります。低炭素施工を正当に評価する発注制度や環境配慮型入札の導入など、政策的後押しが重要です。

以上を踏まえると、i-C2.0による脱炭素化を実効性のあるものとするには、単に技術を導入するだけではなく、経営・人材・制度の三位一体による改革が求められます。建設業界全体として構造転換を進め、現場から社会までを巻き込む動きが、真のカーボンニュートラル建設業への道筋となります。

建設業における「二重の効益」

i-C2.0は、生産性向上と人手不足解消を目的とした国家戦略ですが、真の価値はその先にある「環境価値の創出」にあります。施工のデジタル化と自動化によって燃料や資材の使用を減らすことは、CO2排出削減そのものにつながります。

つまり、i-C2.0の実践によって、建設業は「経済的利益」と「環境的価値」という「二重の効益」を同時に得ることができるのです。これからの現場では、単に効率化を目指すだけでなく、「その効率化がどのように脱炭素に貢献するのか」を意識することが重要です。

設計・施工・維持管理をデータでつなぎ、現場ごとの排出を見える化しながら改善を進めることが、持続可能な建設産業への第一歩となります。i-C2.0は、建設業を「支える産業」から 「未来をつくる産業」へと導く転換点といえると考えます。

 

出典・参考

・国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」 令和6年4月
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf

・国土交通省「令和7年度 建設施工の地球温暖化対策検討委員会」
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001891109.pdf

・国立研究開発法人 国土技術政策総合研究所「社会資本のライフサイクルをとおした二酸化炭素排出量の算出」
https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/kpr/prn0063pdf/kp006312.pdf

・内閣府「CO₂排出削減効果の定量化による公共調達のGXの推進」
https://www8.cao.go.jp/cstp/bridge/keikaku/r6-12_bridge_r7.pdf

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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