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サーキュラーエコノミーとは?必要な3つの理由と建設業界の取り組み事例を紹介

サーキュラーエコノミーは、廃棄物や環境汚染を生まないことを前提としているため、従来の3Rやリニアエコノミーよりも、さらに持続可能な社会を目指すために必要な考え方です。建設業界としても、サーキュラーエコノミーコスト削減や企業価値向上のためにも欠かせない要素となってきています。

本記事では、サーキュラーエコノミーの概要から必要な理由を詳しく解説しています。また、サーキュラーエコノミーに取り組む際のポイントも解説しているため、参考にしてください。

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サーキュラーエコノミーの概要

サーキュラーエコノミーは、従来のリニアエコノミーに対する課題を解決し、持続可能な社会を目指す経済システムとして様々な業界で取り組みが推進されています。以下にサーキュラーエコノミーの概要や3Rとの違い、シェアリングとの関係性を解説します。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーとは、製品や原材料、資源をできるだけ長く使い続け、ムダなく活用することで、ゴミを減らし、環境への負担を少なくする仕組みのことです。

現代社会の経済課題に対する新たな解決策として注目されており、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした一方向の経済活動のリニアエコノミーに代わり、あらゆる段階で資源を効率的に利用しながら価値の最大化を目指します。

サーキュラーエコノミーは特にヨーロッパを中心に広がりを見せており、環境と経済の両立を実現する重要な政策として、世界各国で積極的な導入が進められてきました。経済システムの根本的な転換を図るこの取り組みは、持続可能な社会の実現に向けた重要な要素として期待されています。

サーキュラーエコノミーと3R

日本で長く定着してきた3Rは、人間活動による廃棄物の発生を現実的な前提として受け入れ、その上でリデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)を通じて廃棄物を可能な限り削減することを目指す考え方です。

一方、サーキュラーエコノミーはより根本的な部分に焦点を当てた考え方で、そもそも廃棄物や環境汚染を生まない経済システムの構築を目指します。3Rとの違いは、環境負荷への対処から予防へと、廃棄物に対する考え方を大きく転換している点です。廃棄物そのものの発生を抑制することにより、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを促します。

サーキュラーエコノミーとシェアリング

インターネット上のマッチングプラットフォームを活用して、個人間や企業間で遊休資産を共有するシェアリングエコノミーは、サーキュラーエコノミーを実現する重要な要素の1つとして位置づけられています。

モノや場所、スキル、移動手段などを必要な人と共有することで、資源の有効活用が促進され、結果として廃棄物の削減にもつながる手段です。シェアリングエコノミーはサーキュラーエコノミーの目指す資源循環型社会の実現に貢献する具体的な経済活動として注目されており、両者は密接な関係性を持っています。

関連記事:「木造建築と脱炭素」―グループシナジーを活かしながら、三井ホームが取り組むCO2排出量削減策と、サーキュラーエコノミーへの目線(前編)

サーキュラーエコノミーが注目される理由

現代社会で「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済システムがもたらす課題に対する解決策として、サーキュラーエコノミーが世界的に注目を集めています。

廃棄物による環境汚染や温室効果ガスの排出増加がもたらす地球温暖化の問題は、生活基盤を脅かす重大な環境問題です。現代の産業活動は石油や石炭、天然ガスなどの有限な資源に依存しており、将来的な資源の枯渇も課題として挙げられます。

地球温暖化問題や資源の枯渇問題に対応し、持続可能な社会を実現するためには、経済システムの根本的な転換が不可欠だと認識されていることが、サーキュラーエコノミーが注目されている理由です。

サーキュラーエコノミーが必要な3つの理由

サーキュラーエコノミーが必要な3つの理由として次の内容が挙げられます。

  1. 資源の制約やリスク
  2. 環境の制約やリスク
  3. 成長機会

以下にそれぞれのリスクがどのようなものかを解説します。

1.資源の制約やリスク

世界的なマテリアル需要の急増に伴い、サーキュラーエコノミーの必要性が高まっています。特に金・銀・銅・鉛・スズなどの資源は、2050年までの累積需要が既知の埋蔵量の2倍以上に達すると予測されており、資源の枯渇問題に直面しているのが現状です。

さらに、資源供給が特定の国や地域に集中していることで、国際情勢の変化によって供給が途絶えるリスクも存在します。資源制約とサプライチェーンの脆弱性は、現代の経済システムに課題を投げかけており、循環型経済への移行を促す重要な要因の1つです。

参照:経済産業省 環境エネルギー庁/成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?

2.環境の制約やリスク

廃棄物処理をめぐる国際的な規制強化と国内の制約が、日本のサーキュラーエコノミーへの移行を加速させています。これまで日本は大量の廃棄物を海外に輸出してきましたが、バーゼル条約などの国際的な規制により、国境を越えた廃棄物の移動が厳しく制限されるようになりました。

さらに、国内の廃棄物処分場の容量にも限界があることから、リサイクル率の向上を通じた資源循環の促進が急務です。また、脱炭素の実現に向けて、資源循環は材料製造時のCO2排出量削減にも貢献する重要な取り組みとして位置づけられています。

3.成長機会

世界的な環境意識の高まりを背景に、サーキュラーエコノミーは新たな経済成長の機会として注目されています。企業が環境問題へ向き合う姿勢は世界規模で拡大されており、環境配慮型の製品開発や資源循環の取り組みは、企業の競争力を左右する重要な要素です。

米国では、AppleやMicrosoftなど大手テクノロジー企業が、再生材の活用や廃棄物ゼロを目指す取り組みを積極的に推進しており、サーキュラーエコノミーへの対応が企業の持続的な成長と市場での生き残りに欠かせません。循環型経済への移行に後れをとった企業は、グローバル市場から取り残されるリスクに直面する可能性があります。

サーキュラーエコノミーのバタフライ・ダイアグラム

サーキュラーエコノミーには、廃棄物や汚染をなくす、製品や素材を循環させる、自然を再生するという3原則があります。エレン・マッカーサー財団が考案したバタフライ・ダイアグラムは、サーキュラーエコノミーの3原則につながる本質を視覚的に表現した概念図です。

引用:The butterfly diagram: visualising the circular economy

バタフライ・ダイアグラムは、技術的サイクルと生物的サイクルの2つの循環経路を蝶の羽のような形で表現し、ヒト、技術、自然、産業など、あらゆる要素の寿命までの循環プロセスを分かりやすく示しています

注目すべき点は、製品設計の段階から廃棄物や汚染の発生を防ぐ予防的アプローチと、製品や原材料を可能な限り長く使い続ける資源効率の最大化の考え方が組み込まれていることです。サーキュラーエコノミーの3原則にもつながる、循環型経済の基本的な枠組みを提供する重要な概念です。

サーキュラーエコノミーを取り入れることでのメリット

建設業界としてサーキュラーエコノミーを取り入れることでのメリットとして、次の内容が挙げられます。

  • 建材の高騰や枯渇に対応できる
  • コストカットできる
  • ブランドイメージにつながる

どのような活動がサーキュラーエコノミーに該当するのか、参考にしてみてください。

建材の高騰や枯渇に対応できる

サーキュラーエコノミーの導入は、建材の安定供給と持続可能性につながることがメリットです。資源の過剰消費や不必要な廃棄を抑制することで、建材の需給バランスが改善され、価格の安定化にもつながります。

また、建材の再利用や資源の循環的な活用を進めることで、有限な資源の効率的な利用が可能となることから、将来的な資源枯渇のリスクに対する解決策としても必要な考え方です。

コストカットできる

デジタル技術を活用したサーキュラーエコノミーの導入は、企業の経済的利益にも直結します。製造から販売までのプロセスを最適化することで、資源の利用効率が大幅に向上し、原材料コストの削減が可能です。

さらに、資源の効率的な活用は廃棄物の発生を抑制するため、廃棄物処理にかかる費用も削減できます。サーキュラーエコノミーの実践は、環境負荷の低減だけでなく、企業の収益性向上にも貢献する戦略的な取り組みです。

ブランドイメージにつながる

サーキュラーエコノミーの導入は、企業の持続可能性への取り組みを具体的にアピールできるため、ブランド価値の向上に大きく貢献します。

エコデザインの採用や再生可能エネルギーの活用などの革新的な取り組みは、環境意識の高い企業としての評価を高めるだけでなく、新たな技術開発やビジネスモデルの創出にもつながります。

先進的な取り組みは、企業の競争力強化と新規事業機会の開拓にもつながり、環境と経済の両面でポジティブな成果をもたらす重要な経営戦略です。

サーキュラーエコノミーを取り入れる際のポイント

サーキュラーエコノミーを取り入れる際には、次に示す内容が重要なポイントとなります。

  • 既存の建物を利活用する
  • 解体や再構築を容易にする
  • 資材を削減する
  • バイオベースの資材を活用する

以下にそれぞれのポイントを詳しく解説します。

既存の建物を利活用する

サーキュラーエコノミーを取り入れるには、既存建築物の活用は重要な要素となります。建物のリノベーションやコンバージョンを通じて、現代社会のニーズに適応させることで、建築物の持続可能性を高められます。

海外で広がりを見せている「アダプティブリユース」の考え方も重要なポイントです。アダプティブリユースは歴史的建造物を単に保存するだけでなく、新たな用途で積極的に活用することで、建築資源の循環的利用を実現する考え方として評価されています。

既存の建築物の利活用は、資源効率の最大化と文化的価値の保全を両立させる革新的な取り組みです。

解体や再構築を容易にする

建築でのサーキュラーエコノミーの実現には、建設時から解体を見据えた設計が欠かせません。建物を建てることだけでなく、将来の解体過程を考慮に入れた設計を採用することで、使用されている建材を再利用可能な資源として回収できます。

解体を前提とした設計により、建材は単なる廃棄物ではなく、次の建築プロジェクトで活用できる貴重な資源として位置づけられるのです。

資材を削減する

サーキュラーエコノミーを取り入れるには、建設資材の効率的な利用は重要な要素です。例えば、3Dプリンター技術の活用は必要最小限の資材で建築を可能にし、資源の無駄を大きく削減できます。

また、高耐久性の建材と工法を採用し、かつメンテナンスが容易な設計を行うことで、建物の長寿命化の実現も可能です。長寿命化により建て替えの頻度が減少し、エネルギーや資源の消費を抑制できます。技術革新と設計思想の組み合わせは、資源効率の最大化にとって欠かせない要素です。

バイオベースの資材を活用する

サーキュラーエコノミーを取り入れるには、バイオベース資材の活用もポイントの1つです。再生可能な原料から作られるバイオベースの資材は、枯渇性資源への依存を減らし、持続可能な建築材料の供給を可能にします。

バイオベースの資材を活用することで、有限な資源を使用せずに新しい製品を生み出せる点がポイントです。

関連記事:ブルーエコノミーとは?取り組み事例について紹介

サーキュラーエコノミーへの取り組み事例

サーキュラーエコノミーへの取り組み事例として次の3社を紹介します。

  • 鹿島建設株式会社
  • 株式会社竹中工務店
  • 大成建設株式会社

それぞれの企業の特徴をみていきましょう。

鹿島建設株式会社

建設現場のゼロエミッションの基本は、省資源に努めたうえで建設工事から発生する廃棄物量を抑制し、分別・リサイクルを推進して、埋め立てられる最終処分量を削減することです。

環境への影響を軽減するため、梱包材を用いない資材搬入や、現場での加工を減らすプレキャスト、仮設廃材の発生を極力抑える工法の採用など、省資源や効率化のさまざまな取組みを行っています。

また鹿島では、建設現場発生土について、現場内・現場間での再利用を推進しているほか、国土交通省の官民有効利用試行マッチングに参加しています。さらに、一般社団法人日本建設業連合会の建設副産物部会に参加し、他社との情報共有や協働の取組みを進める等、業界全体での廃棄物削減、資源の有効利用に貢献しています。

引用:資源循環|鹿島建設

株式会社竹中工務店

これまでの当社の取組み

  • 作業所から発生する産業廃棄物のリサイクル率(2022年) 96.3%
  • 電子マニフェストの利用率(2022年) 99.5%
  • 3R功労者等表彰での受賞件数 国土交通(建設)大臣賞:20件、3R協議会会長賞:73件

サーキュラーエコノミーを実現するためには新たな技術開発、サープライチェーンの変革などが必要です。竹中工務店は2030年に廃棄物50%削減、2050年に100%削減を目標に活動を推進していきます。

当社は、サーキュラーエコノミーを実現するために「サーキュラーデザインビルド®」というコンセプトを紡ぎだしました。従来のスクラップ&ビルドから「つくる」・「つかう」・「つなぐ」をキーワードにリユース・リサイクル・アップサイクルなど、廃棄物を削減する取組みを推進してまいります。

引用:資源循環|竹中工務店

大成建設株式会社

従来の大量生産・大量消費・大量廃棄のリニアエコノミーから、資源の投入・消費を抑えつつストックを有効活用し、付加価値を生み出すサーキュラーエコノミーヘの移行が世界的な重要課題となっており、企業にも省資源、再生可能な資材の利用、プラスチックによる自然環境汚染への対応等、サプライチェーンも含めた持続可能な調達への取り組みが求められています。

循環型社会への移行が滞った場合、資源不足による資材価格の上昇や、廃棄物の処分費用の増加によるコスト増等のリスクが大成建設グループに及ぶことが想定されます。また、大成建設グループの取り組みが十分でない場合には、ステークホルダーからの評価が低下し、受注機会が減少する等のリスクが想定されます。

一方で、循環型社会への移行に伴い、大成建設グループにおいてはサーキュラーエコノミー実現に貢献する再生資源使用の拡大、土壌浄化などの環境再生事業の受注機会の増加が見込まれます。また、大成建設グループが進めている資源・建設資材等を有効活用する、循環利用に配慮した設計・システム・製品・技術の開発及び社会実装の促進は、競争優位性の確保・向上に寄与します。

大成建設グループにとって、循環型社会への移行は企業価値向上やステークホルダーからの評価向上に繋がる機会であると考えています。

引用:循環型社会|大成建設

まとめ

本記事では、建設業界向けにサーキュラーエコノミーを解説しました。サーキュラーエコノミーは、資源を循環的に活用する考え方の経済システムです。従来の大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした一方向の経済活動のリニアエコノミーに代わり、あらゆる段階で資源を効率的に利用しながら価値の最大化を目指します。

3Rとの違いは、環境負荷への対処から予防へと、廃棄物に対する考え方を大きく転換している点です。廃棄物そのものの発生を抑制することにより、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを促します。

建設業界としてサーキュラーエコノミーを取り入れることで、建材の高騰や枯渇に対応できることや、コストカット、ブランドイメージ向上などのメリットがあります。

本記事ではサーキュラーエコノミーを取り入れる際のポイントや、実際に取り入れた例を紹介しているため、これから脱炭素への1つの解決策としてサーキュラーエコノミーの考え方を導入しようとしている方は参考にしてみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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