公共工事における工事成績評定は、建設業者の技術力や施工品質を評価する重要な制度であり、高評価の獲得は企業の信頼性向上や今後の受注機会拡大につながります。近年では脱炭素の流れを受けて、環境配慮型の施工が評価に反映されるようになっており、建設業界全体で対応が求められています。
本記事では工事成績評定実施基準の仕組みと脱炭素との関連性、カーボンニュートラル対応試行工事の評価方法、さらに中国地方5県における独自の環境施策や工事評定成績ランキング上位企業の特徴も解説していますので、工事成績評定の向上や脱炭素に取り組む建設業の方は参照してみてください。
目次
工事成績評定実施基準とは

工事成績評定実施基準は、公共工事の品質担保と施工業者の技術力を適正に評価するための重要な制度です。
近年では、脱炭素との関連性も注目されており、環境配慮の取り組みが評価に反映されるようになっています。ここでは工事成績評定実施基準の概要と評価の詳細について解説します。
工事成績評定の仕組み
工事成績評定の仕組みは、公共工事における施工会社の技術力を客観的に数値化する重要な評価制度です。国や地方自治体が発注する工事において、請負業者の施工品質や契約履行状況を100点満点で採点します。
評価は技術検査官、総括技術評価官、主任技術評価官の3名体制で実施され、公平性が担保されています。主任技術評価官が40点、総括技術評価官が20点、技術検査官が40点の配分になっており、現場監督と検査の両面から総合的な判断が行われる仕組みです。
脱炭素との関連性
建設業界では脱炭素社会の実現に向けて、工事成績評定にも環境配慮の観点が組み込まれ始めています。代表例が「カーボンニュートラル対応試行工事」です。
入札段階から環境への取り組みが評価され、1次審査で低炭素建設機械の使用実績やSBT認定の有無が、2次審査では具体的な推進提案が審査されます。工事完成時には、認定を受けた低炭素・低燃費建設機械の実際の活用状況が工事成績評定に反映される仕組みです。
評価後は受発注者が共同で環境配慮工事の実績をアピールできるため、企業の競争力強化にもつながります。
中国地方における工事評定と脱炭素の特徴

中国地方における工事評定と脱炭素の特徴は次の通りです。
| 特徴 | |
| 鳥取県 | 中小企業版SBTの要件と取得方法
令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン |
| 島根県 | 島根県の2050年温室効果ガス排出実質ゼロ表明
森林由来J-クレジットの創出・活用の加速 |
| 岡山県 | 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度
脱炭素先行地域 |
| 広島県 | 2050(ニーゼロゴーゼロ)ひろしまネット・ゼロカーボン宣言
温室効果ガス削減計画書 |
| 山口県 | やまぐち産業脱炭素化戦略
周南コンビナート脱炭素推進協議会 |
それぞれの自治体の特徴を解説します。
【鳥取県】工事成績評定と脱炭素の特徴
鳥取県では、環境配慮型の工事評価を実現するため、企業のCO2削減目標設定を支援する仕組みが整備されています。鳥取県における工事成績評定と脱炭素の特徴について解説します。
中小企業版SBTの要件と取得方法
中小企業版SBTの取得には、科学的根拠に基づいたCO2削減目標の設定が求められます。まず過去数年分の自社エネルギー消費量データを収集し、適切な係数を用いてCO2排出量を算定しなければなりません。
次に基準年を選定し、2030年を目標年として達成すべき削減目標を設定する流れです。目標年が2030年に固定されているため、基準年の選択が重要なポイントです。数値と計画を整理した上で、国際的なイニシアティブであるSBTiへ正式に承認申請を行い、認定取得により、工事成績評定での加点や企業価値向上が期待できます。
出典:とっとりDATTAN/中小企業版SBTの要件と取得方法
令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン
鳥取県では、国際的な環境課題に対応するため「令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン」を策定しました。SDGsやパリ協定、大阪ブルーオーシャンビジョンなど国際目標の採択を受け、令和12年度を目標年度とする環境基本計画として位置づけられています。
計画の特徴は、環境関連のSDGs達成に向けた5つの施策を「暮らし」「地域」「経済」の3つの視点から展開する点です。環境保全だけではなく、県民生活や地域振興、経済活動と環境配慮を両立させることで、持続可能な社会の創造を目指しています。建設業界においても、計画に沿った取り組みが評価に反映されています。
鳥取県の工事評定成績ランキング
鳥取県の工事評定成績上位企業は、地域に根ざした公共インフラ整備で実績を積み重ね、優良工事表彰などの高い評価を受けている企業が中心です。打吹建設株式会社は創業以来、道路工事や橋梁工事を主体に県内の土木建築工事を手がけ、国土交通省や自治体から優良工事表彰や優秀施工者認定を獲得しています。
株式会社武晃建設は鳥取河川国道事務所管内の橋梁耐震補強や国道9号整備工事などを施工し、若手人材が活躍する組織として保育園児への建設機械試乗体験など地域貢献にも力を入れています。大和建設株式会社は長年培った技術で道の駅北条トイレ棟などの公共施設整備を担い、自然と人が共存する街づくりを実現している企業です。
【島根県】工事成績評定と脱炭素の特徴
島根県では、県全体でCO2削減に向けた明確な目標を掲げるとともに、地域資源を活用した取り組みが進められています。島根県における工事成績評定と脱炭素の特徴について解説します。
島根県の2050年温室効果ガス排出実質ゼロ表明
島根県は2050年温室効果ガス排出実質ゼロを長期目標として正式に表明しました。県議会において知事が宣言した目標は、国の施策と連動しながら県全体で脱炭素社会の実現を目指すものです。
具体的には2021年3月に策定された「島根県環境総合計画」に目標が明記され、計画的な取り組みが進められています。表明により、公共工事においても環境配慮が一層重視されるようになり、工事成績評定でも温室効果ガス削減への貢献度が評価基準として組み込まれる可能性があります。
出典:島根県/島根県の2050年温室効果ガス排出実質ゼロ表明について
森林由来J-クレジットの創出・活用の加速
島根県は豊富な森林資源を活用した脱炭素推進のため、森林由来Jクレジットの創出・活用を加速させています。県と島根県森林組合連合会、島根県森林協会、島根県林業公社、ENEOS株式会社が連携協定を締結し、県全域でカーボンニュートラル社会の実現を目指す体制を構築しました。
取り組みでは、県内林業機関との連携によりCO2吸収量をクレジット化し、収益を森林整備費用に還元する循環型の仕組みが特徴です。クレジット収入を長期的な森林管理に充てることで、森林のCO2吸収能力を維持・向上させ、持続可能な環境保全を実現します。建設業界においても、クレジット活用による環境配慮が工事評価に反映される可能性があります。
出典:ENEOS/「森林を活用した脱炭素社会の実現」に向けた包括連携協定の締結について
~島根県内での森林由来のJ-クレジットの創出・活用を加速します~
島根県の工事評定成績ランキング
島根県の工事評定成績上位企業は、伝統的な土木技術に加えて環境配慮や最新技術の導入に積極的な企業が評価されています。株式会社中筋組はグループ6社体制で建設業を中心に石油販売やリサイクル事業、情報産業まで多角的に展開し、21世紀の課題に果敢に挑戦する姿勢が特徴です。
出雲土建株式会社は古来から氾濫を繰り返す斐伊川の治水や県内東西を結ぶ道路整備など、地域の生命と生活を守るインフラ整備を担当し、高度な土木技術とICT技術を積極的に導入しています。
今井産業株式会社は川本アスファルトプラント内に合材プラントと再生合材プラントを併設し、廃材の再生利用を推進するとともに、石見地方の特産品である石州瓦を再利用した環境配慮型舗装を活用するなど、持続可能な施工に取り組んでいることが特徴です。
【岡山県】工事成績評定と脱炭素の特徴

岡山県では、企業のCO2排出量の状況を可視化し、削減に向けた実効性のある施策が進められています。岡山県における工事成績評定と脱炭素の特徴について解説します。
温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度
岡山県は平成14年に地球温暖化防止行動計画を策定しCO2削減に取り組んできましたが、県内の排出量は増加傾向が続いていました。特に県内排出量の約8割を占める産業部門や、増加が著しい業務部門・運輸部門からの削減が急務となっていたため、平成21年度から「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」の運用を開始しています。
大量排出事業者が自らの排出量を認識し、具体的な削減計画を作成・実施することが求められる制度です。県が内容を公表することで事業者の取り組みを促進し、透明性を担保します。建設業界においても、排出量管理が工事評価の重要な要素となっており、環境配慮型の施工が評価されています。
脱炭素先行地域
岡山県では脱炭素先行地域の取り組みが工事評価にも影響を与えています。環境省がCO2排出量抑制に取り組む地域として真庭市を含む中国地方の4地域を選定しました。2030年度までに家庭やオフィスビルなどの消費電力を再生可能エネルギーで100%賄うことを目指すもので、全国では横浜市や新潟県佐渡市など26カ所が指定されています。
真庭市では生ごみから生成したメタンガスによる発電や全公用車の電動化などの先進的な計画を推進しています。先行地域で実施される公共工事では、脱炭素目標に沿った環境配慮型の施工が求められ、工事成績評定においても再エネ活用や低炭素技術の導入が高く評価される仕組みです。
出典:日本経済新聞/脱炭素先行地域、岡山・真庭など中国4地域 環境省
岡山県の工事評定成績ランキング
岡山県の工事評定成績上位企業は、長い歴史と地域貢献の実績を持ち、幅広い分野で高品質な施工を実現している企業が評価されています。株式会社藤原組は大正2年創業で100年以上の歴史を誇り、地域社会への貢献を経営理念として営んできました。
2018年西日本豪雨災害で決壊した真備町小田川の復旧工事に携わり、被災地の復興を通じてインフラ整備の重要性を再確認しています。天野産業株式会社は「概念にトラわれるな その先の一歩へ」をスローガンに掲げ、固定概念を超えた未来志向の姿勢が特徴です。
株式会社小田組は令和9年に創業100周年を迎える老舗企業で、土木・舗装・建築・住宅という幅広い分野で企画から施工まで丁寧な工事を進めています。
【広島県】工事成績評定と脱炭素の特徴
広島県では、事業者の具体的な行動を促す仕組みが整備されています。広島県における工事成績評定と脱炭素の特徴について解説します。
2050(ニーゼロゴーゼロ)ひろしまネット・ゼロカーボン宣言
広島県は2050年に向けて「ニーゼロゴーゼロひろしまネット・ゼロカーボン宣言」を掲げ、独自の脱炭素社会像を示しています。排出削減にとどまらず、カーボンが自然界や産業活動の中で循環し持続的に共生できる「カーボン・サーキュラー・エコノミー」の実現を目指す点が特徴です。
省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入に加え、CO2を建設資材や燃料の原材料として再利用する取り組みや、農林水産業での活用、石油由来プラスチックからの代替促進などを推進しています。
建設業界においても、循環型モデルに沿った施工が工事評価で重要となる可能性があります。
出典:広島県/「みんなで挑戦 未来につながる 2050ひろしまネット・ゼロカーボン宣言」について
温室効果ガス削減計画書
広島県では事業者のCO2削減を実効的に推進するため、削減計画書の提出制度を運用しています。広島県生活環境保全等に関する条例規則第73条で定める事業所に該当する場合、該当日から1年以内に計画書を作成し県に提出しなければなりません。
計画期間が満了した際や、社会情勢の変化などにより計画内容を大幅に変更する必要が生じた場合には、速やかに改定版を提出する必要があります。事業者は具体的な削減目標と行動計画を明確化し、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を図ることが必要です。建設業においても、計画書に基づく削減実績が工事成績評定に反映され、環境配慮型施工への取り組みが評価されます。
出典:広島県/温室効果ガス削減計画・実施状況報告書の作成について
広島県の工事評定成績ランキング
広島県の工事評定成績上位企業は、独自の技術力と長年の実績により高い評価を獲得している企業が中心です。極東興和株式会社は道路や鉄道などの交通インフラ整備に貢献してきた建設会社で、狭隘地で杭施工が可能な「マイクロパイル工法」やアルカリシリカ反応を根治できる唯一の技術「K-LIP工法」など独自工法を持つことが特徴です。
株式会社鴻治組は明治時代から地域社会の発展とともに歩み、道路・トンネル・橋梁・砂防・造成・上下水道整備など幅広い分野で人と自然の調和を大切にした社会基盤整備を担っています。肥海建設株式会社は「知恵、技術、汗、そして真心」を注ぎ込み、高い技術力が認められ国土交通省から数多くの優良工事表彰を受賞し、工事成績優秀企業にも継続認定されています。
【山口県】工事成績評定と脱炭素の特徴
山口県では、工事成績評定制度にも関連する、産業全体の脱炭素を視野に入れた独自の取り組みを展開しています。山口県における工事成績評定と脱炭素の特徴について解説します。
やまぐち産業脱炭素化戦略
山口県は産業界の脱炭素を戦略的に推進するため「やまぐち産業脱炭素化戦略」を策定しました。グリーントランスフォーメーションと呼ばれる大きな変革は、化石燃料への過度な依存から脱却する従来の取り組みの延長だけでは解決できない困難な課題を伴っています。
コンビナート企業など大手を中心に、脱炭素を成長の機会と捉えてアンモニア等の次世代燃料への転換や生産プロセスの高度化、新技術開発や大胆な設備投資に取り組んでいますが、個々の企業だけでは対応が困難な状況です。
県は産業界と危機感や方向性を共有し、企業が競争力を維持・強化できるよう国の施策を積極的に取り込み、県民の理解を得ながら企業の取り組みを後押ししています。
周南コンビナート脱炭素推進協議会
山口県では地域の産業特性を活かした脱炭素推進のため、周南コンビナート脱炭素推進協議会が設立されました。協議会は2050年カーボンニュートラルの実現と産業競争力の維持・強化を両立させることを目的としています。
産・学・官・民の枠を超えた連携により、柔軟性と機動性を持って課題にアプローチし、地域活性化と次世代産業創出を目指す点が特徴です。アンモニアやバイオマスを活用したエネルギーの脱炭素を進めることなど、先進的な取り組みが進められています。
大規模産業集積地での成果は県全体の脱炭素モデルとなっており、建設業界においても、協議会が推進する環境技術や基準に沿った施工が工事成績評定で高く評価される可能性があります。
山口県の工事評定成績ランキング
山口県の工事評定成績上位企業は、伝統的な技術と最新技術の両面で高い評価を獲得している企業が特徴です。株式会社技工団は終戦間もない1946年に満鉄引揚者の技術者と技能労働者が団結し荒廃した国土再建に携わったことが始まりで、自然との調和を大切にしながら確かな技術で地域貢献を続けています。
協和建設工業株式会社は高い専門性と独自技術による総合建設業を展開し、古くから伝わる匠の技を承継しながら新たに開発した技術で挑戦を続け、県内のインフラ整備や石垣・造園施工を手がけている企業です。
株式会社コプロスはICT・DXを積極的に展開し、ドローン撮影による3次元データ作成や重機の自動運転、建設用3Dプリンター活用など最新技術で生産性向上を実現しています。
まとめ

本記事では、工事成績評定実施基準の概要と、鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県における工事成績評定と脱炭素推進の特徴について解説しました。
工事成績評定は公共工事の品質と施工業者の技術力を評価する重要な制度であり、100点満点で採点されます。近年では脱炭素の流れを受けて、カーボンニュートラル対応試行工事や低炭素建設機械の活用が評価に反映される傾向です。
各県では独自の環境施策を展開しており、SBT認定の取得支援や森林由来Jクレジットの活用、温室効果ガス削減計画書の提出制度など、建設業界全体で環境配慮型施工が求められています。
高評価を獲得している企業は、確かな技術力に加えて環境配慮や最新技術の導入に積極的な特徴があります。工事成績評定の向上や脱炭素に取り組む建設業の方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。








