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「緩和と適応」―建設会社が環境へ与えるインパクトにどう向き合うのか。りんかい日産建設が取り組むCO2削減とサステナビリティ経営(前編)

「緩和と適応」―建設会社が環境へ与えるインパクトにどう向き合うのか。りんかい日産建設が取り組むCO2削減とサステナビリティ経営(前編)

はじめに

りんかい日産建設は2022年からリバスタの「産廃CO2サービス」を導入し、建設廃棄物運搬時のCO2排出量の算定を開始しています。

管理本部CSR担当執行役員である大下英治氏に、同社のサステナビリティ経営の取り組みや同サービス導入のきっかけや活用についてお話しいただきます。

また、建設会社としてCO2削減に取り組む背景、CO2排出量計測の重要性についてもお話を伺いました。

現場の負担なく産廃CO2を自動計測

―「産廃CO2サービス」を導入していただいたきっかけと活用方法について教えてください。

建設工事現場での産廃管理業務を徹底して効率化できるリバスタの「電子マニフェストサービス」を以前より利用していました。

このサービスを利用していると産廃輸送に関わるCO2排出量が自動で計測できる「産廃CO2サービス」を追加負担がかからず利用できると案内を受け、導入を決めました。
比較的低コストで、作業所などでの実務者の負担もなくCO2の計測サービスが利用できることにメリットを感じました。

まずは本社担当部門でデータを受領し、これをScope3(うち、カテゴリ5)に当てはめて考えるところから活用を始めました。
自動で計算される個別の詳細を見ながらデータを蓄積している段階で、まだまだScope3全体を積み上げで計測するには至っていませんが、これを足がかりに正確なScope3把握に努めたいと考えています。

このような足がかりになっていることが効果の第一歩です。

>リバスタ「電子マニフェストサービス」について、詳しくはこちら

本格的な取り組みのきっかけとなった1本の電話

―社内でCO2削減などのサステナビリティに本格的に取り組むことになったきっかけはありますか。

2019年頃から社内で数名集まってSDGs勉強会を開催しました。
当時、本格的には開催していませんでしたが、本腰を入れるきっかけとなったのは、ある社員からかかってきた1本の電話でした。

「小学生の子どもが学校の宿題でSDGsについて調べている。パパの会社はSDGsについてどんなことをしているのか教えて、と聞かれました」と。
その社員は父親として答えられなかったって言うのですよ。その話を聞いて、このままではまずい、会社としてどうにかしなければならないというところから本格的にスタートしました。

(画像出典:「RNサステナビリティ・レポート2023」p10)

土木建築が自然に与えるインパクトは

―大下様がサステナビリティについて考える原点となった経験はありますか。

1993年に西サモア国のアピアに赴任したときのことです。2つの大型サイクロンで町が壊滅状態になったなか、我々のミッションは護岸をつくることでした。

ところが、海に面したあるホテルのオーナーが「100年に1度のためだけに、99年と364日海が見られないのであれば護岸はいらない」と言うのです。
この人は何を言っているのだろうと、その時は言っている意味がよくわからなかったんですね。

その後財団法人に出向して、津波や震災が起きたときの避難マニュアルを作ったり、東日本大震災の復興を経験したりするなかで、西サモアのときと同じ課題に直面したのです。
「ここに西サモアと同じ高い壁を作っていいのか」と。

そこからたどり着いたのが「緩和と適応」。建設会社としてモノづくりによる環境への「適応」はできる。
では、「緩和」の方はどうするか。これが西サモアへの赴任から30年かけてようやく行き着いたところです。

 

―建設、土木という言葉だけを聞くと、環境に適応していくという部分に目がいきますが、同時に作ったものは必ず環境の中に置かれるということですね。

土木や建築、建設会社が一体全体どういうふうに自然にインパクトを与えているのかというのを計算してみると、当社の場合2年間仕事をしたら、東京ドーム一杯分の土地の改変を行っていることになるんですよ。

土地1ヘクタールにどのくらいの生物がいるのかを考えるとこれは大変な問題です。
さらに言うと、例えば海外でプロジェクトを行う場合、コンクリートを作るための砂利は現地の河川から調達するのですが、川の流れが変わるといった問題も起きてくるわけですね。

土木建築というのは自然に大きなインパクトを与えるので、環境に対して一番責任を持つべき仕事だと思います。

護岸として海沿いに15メートルの壁を作ることはできる。でも、こうした「適応」には限界がある。
もちろん一社でできることは限られているのですが「緩和」へ向かう流れは止められないと思います。

CO2排出量の9割を占めるScope3

―Scope1、2だけでなく、Scope3の計測まで取り組む理由はどこにあるのでしょうか。

企業としてCO2を排出している以上は削減に取り組む必要がありますが、自社で直接できる部分はScope1とScope2だけです。

2022年4月に本社ビル全館と一部の支店での使用電力を再生可能エネルギー100%に切り替えてScope2の電気使用量は約半分になりました。

ところが、建設会社として排出しているCO2の量は、Scope3が90%
そうすると、1、2が半分になっても実は全体としてほとんど変わっていない。
そうするとScope3で当社がどのくらいの量のCO2を排出しているのかをまずは明確にすることが必要だと考えました。

Scope3の中でも例えば上流の原材料については我々ができることは少ないのですが、CO2排出量が少ない原材料が登場したときコスト的には高くてもそちらを選ぶと言う選択が将来的にはあるかもしれない。

しかし、そもそも排出量が把握できていないとその選択さえできないわけです。
そうした将来の選択に備える意味でも、数字を把握し勉強しておく必要があると思います。

(画像出典:「RNサステナビリティ・レポート2023」p21)

数値化こそがCO2排出量管理の第一歩

―CO2排出量を計測し、数値化していくことが重要だということですね。

そもそも測れないものは管理できないんですよね。
何を数値化するのかというのは難しいですが、本当に重要なのは100の内の99か1かということよりも、まずは物事を数値化して問題解決に取り組もうとする姿勢だと思います。

定性的なものをどのくらい定量化していくか。例えば現場で重機を運転していて、200リットル使っていた燃料を180リットルにしたら、CO2がどれだけ削減できたかわかる、となると現場の意識も変わってくると思うのです。

数値を見ることで、こうすると燃料が減るのかなという意識付けになるでしょうし、そこから出るCO2量も減ってくる。
そういうふうに現場が変わってくるといいなと期待しているところです。

りんかい日産建設株式会社

管理本部執行役員CSR担当

大下英治(おおした えいじ)氏

  • 1988年4月りんかい建設(当時)に入社。
  • 土木技術者として、西サモア、インドネシア、ドマイ、アサハンなどに赴任。2011年の東日本大震災後は復旧、復興工事に従事し、女川港の復興、再開港に尽力する。
  • 2019年からSDGs対応、働き方改革などの勉強会を座長として組成。2021年からCSR担当執行役員としてSDGs勉強会、サステナビリティレポートの発行などを推進。2023 年4 月より現職。

前編では、サステナビリティ経営への本格的取り組みを始めたきっかけ、大下氏自身の意識改革となった経験、CO2排出量削減に取り組む上での数値化の重要性などについてお話しいただきました。

後編では、りんかい日産建設がサステナビリティへの取り組みとして策定したRN THE FUTURE PROJECT」の内容、社員全体を巻き込むための方策、サステナビリティ経営が企業の価値創造に及ぼす影響などについて伺います。

後編はこちら:「緩和と適応」―建設会社が環境へ与えるインパクトにどう向き合うのか。りんかい日産建設が取り組むCO2削減とサステナビリティ経営(後編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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