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安藤ハザマ トンネル建設現場にBDF導入 バイオディーゼル燃料の現場投入と今後の課題

安藤ハザマ トンネル建設現場にBDF導入  バイオディーゼル燃料の現場投入と今後の課題

トンネル建設現場にBDF導入

建設現場の建機の燃料として使用することで、軽油に比べてCO2排出量が削減できるとしてバイオディーゼル燃料(BDF)が注目を集めています。株式会社安藤・間(以下、安藤ハザマ)は2024年6月から、築造中の大石トンネル作業所(岩手県和賀郡西和賀町)にB5軽油(BDFを5%混合した軽油)を導入しました。B5軽油導入の狙い、現場での声、使用する上での課題、今後の展望などについて、安藤ハザマ 大石トンネル作業所長の佐々木氏と工事課長の小山内氏にお話しを伺いました。

事前の情報収集で不安を払拭

大石トンネルは、2021年5月に発生した地震による地すべりで一部区間通行止めが続く西和賀町大石地区の国道107号に新たに作るトンネルで、2022年10月に着工、2025年末の開通を目指しています。発電機3台と協力会社持ち込みの建機10数台を使用しており、燃料油を安藤ハザマが支給する形で、従来の軽油からB5へと切り替えました。7月からは全量をB5とし、使用量は1日あたり約3,000lとなっています。

BDFは、廃食油の原料である植物が成長する過程で吸収したCO2によって、BDF使用時のCO2排出量が相殺されることでカーボンニュートラルを実現できるとされています。安藤ハザマは2019年にSBT認定を取得し、また「中期経営計画2025」でScope1+2の2030年度55%以上削減(2017年度比)を目標として掲げており、建機の軽油利用に起因する温室効果ガス排出量削減のため、大石トンネル作業所にB5を試験導入しました。

現場では当初、B5導入に対して不安もあったと言います。佐々木氏は「BDFの存在自体は知っていましたが、より詳細な情報は導入にあたり収集し理解を深めました。従前は、機械トラブルなどの不具合発生の情報が多く、使用は控えたいと考えていたのが正直なところです」と振り返ります。

もっとも、導入が決まった時点では、BDF使用について前向きな気持ちも生まれたとのことです。「不安よりも将来のための検証をしてみようという考えの方が強かったです。関係各所や同業他社等々から情報収集した結果、不具合が発生したとしても想定内で済むだろうと認識できたのも大きかったです」(佐々木氏)

協力会社や現場の作業員の中にも、導入の趣旨に賛同し、前向きに捉える空気があった半面、機械メーカーの中には、「故障の保証は負えない」「修理等の補償は要求する」と消極的な会社もいたということです。

大石トンネル(岩手県和賀郡西和賀町)工事現場

トンネル内の掘削工事の様子

現場導入で課題を検証

導入後の使用感について小山内氏は「いくつか不具合とまでは言えない事象は発生しましたが、現在のところ使用感としては悪くない印象です。環境負荷低減には一定程度の成果があることは認識しています」と肯定的に評価しています。併せて、今後の導入を推進するために、①僻地での安定的な燃料供給②気温等の気候的要因による不具合発生③フラッシング効果等に伴う機械的トラブル発生④燃費悪化・燃料コストアップによる収益低下、という4つの課題を挙げ今後現場で検証を続けていくとしています。

佐々木氏は実際にBDFを使用するに当たり、BDFについての情報公開の重要さを実感していると言います。「使用のメリットとデメリットについて正確な情報公開が必要ですし、機械メーカーの消極性解消に向けた情報発信等の取り組みも課題の一つだと思います。地球環境への負荷低減策の一環と考えれば、一企業だけではなく国としても取り組むべきものであり、公共工事受注のアドバンテージとなるような仕組みづくりの働きかけも必要となってくるのではないでしょうか」

さらに、国の施策が進めば、将来的には各企業の需要も増加し、現在と比較して、生産量の増加、流通コスト低減、コストダウンという流れになることへの期待も持っています。また、B5は品確法で定められ軽油同等扱いとなっていますが、今後、国の施策としてBDFの混和可能割合を上げていただき、GHG排出削減量が向上することにも期待しています。

B5軽油の給油

CO2排出量削減への期待感

安藤ハザマでのBDFの位置付けについて、佐々木氏は「10年ほど前に使用したことがありますが、当時はBDF精製技術の成熟度等の課題もあり現場からの評価も低かったのですが、現在は精製技術が向上し、当時と比べて品質面での課題が解決されてきていることから、導入の検討を再開しました」と話します。今回の導入に当たっても、Scope1削減への期待が大きいとのこと。

BDFの安定供給、不具合が起きた場合の建機メーカーからの保証対象外、建機所有者のBDF利用承認等、さまざまな課題が残っている実情がありながらも、小山内氏は「B5はこうした課題に対応しやすいと考えているので、軽油でのバックアップを含め安定供給を前提として社内で展開していきたい」と今後の導入に向けて期待を込めています。

いち現場の使用燃料全量をBDFに変更するという画期的な事例として、脱炭素に貢献できる現場での具体的な方策が新たに一つ加わったことは間違いなく、今後の導入拡大がどのように進むのか目が離せない状況が続きます。

株式会社 安藤・間 大石トンネル作業所 所長
佐々木 淳(ささき じゅん)氏【写真左】
株式会社 安藤・間 大石トンネル作業所 工事課長
小山内 陸(おさない りく)氏【写真右】

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年9月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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