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バイオディーゼル燃料の普及で建設業界の脱炭素を加速 三和エナジーの燃料開発技術

バイオディーゼル燃料の普及で建設業界の脱炭素を加速 三和エナジーの燃料開発技術

はじめに

軽油など燃料配送業を展開する三和エナジーは、埼玉県狭山市に国内最大級のバイオディーゼル燃料(以下、BDF)製造プラントを建設。2024年2月に竣工し、BDFの製造・供給に本格的に乗り出しました。廃食油などを原料とするBDFは軽油などと比較して、CO2排出量が削減できるという大きな特徴があります。同社は、BDFのこうした特徴を活かして、建設現場の重機への供給を推進しています。今回は、代表取締役社長の高松克行氏に、同社が建設現場向けに供給するBDFの特徴、開発へのこだわり、建設業界におけるBDF普及への課題などについてお話をお聞きしました。

三和エナジー株式会社 代表取締役社長  高松 克行 氏

三和エナジー株式会社 代表取締役社長
高松 克行 氏

建設機械に適した「高純度」へのこだわり

2024年2月竣工のBDF製造プラント「新狭山バイオプラント」は総敷地面積2,300㎡に、バイオ精製蒸留機6基を擁し、B5軽油(BDFを5%混合した軽油)では月間約4,300klの生産スペックを持っています。BDFは、天ぷらなどで使われた食用油などを集めた廃食油を原料としています。廃食油の原料である植物が成長する過程で吸収したCO2と、BDF使用時に排出されたCO2が相殺されることで、カーボンニュートラルを実現できるとされています。

「新狭山バイオプラント」で製造されるBDFは、B5軽油、B30軽油、B100、バイオA重油の4種類です。B5軽油は建設機械や車両、B30軽油は建設機械、B100は専用発電機での使用が推奨されています。また、バイオA重油は船舶・ボイラー向けの燃料です。CO2排出量の削減率は、B5で5%、B30で30%、B100で100%とされています。

高松氏は、三和エナジー製造のBDFの特徴として高純度な点を挙げます。「BDFの品質を示すバイオエステル値は、国の基準である96.5%に対して、弊社の場合99%以上となっています。BDFは昔から作られているのですが、技術的な問題もあり、特に建機に関しては、故障するのではないかという心配が導入のネックになっていました。弊社の場合は、減圧蒸留という工程を入れることで、建機などに影響を与えない高純度のBDFを製造するという点にこだわっています」三和エナジーの供給するBDFは、現場で従来から使われている建設機械に軽油の代わりとしてそのまま使うことができるため、導入へのハードルが低い点も特徴のひとつです。

高松氏は、BDFに対する建設業界各社の関心の高さも肌で感じていると言います。「建設業界からはかなりのご要望をいただいています。最初から爆発的に売れるというわけではないですが、プラント見学も盛況で、今後具体的な予算取りなどが進めば、導入への動きがかなり加速するのではないかと見ております」

新狭山バイオ燃料製造プラント(埼玉県狭山市)

新狭山バイオ燃料製造プラント(埼玉県狭山市)

新狭山バイオ燃料製造プラント(埼玉県狭山市)

製造から配送までワンストップ対応

BDFの製造から管理、配送まで一気通貫で対応できる点にも強みがあります。三和エナジーは、ガソリンスタンド運営の宇佐美グループの一員であり、建設現場を中心としたパトロール給油を主軸に展開しています。高松氏は「弊社の場合、従来からのパトロール給油を通じて、大手ゼネコンなど建設業界のお客様とのお取引が非常に多い。BDFを製造しても、販路がないと、需要と供給のバランスが取れません。その点、弊社の場合は従来からのお客様がBDFに対する需要を有しているので、販路もしっかりしています。自社で製造して自社で運ぶというのが弊社の強みということになります」と力を込めます。宇佐美グループの法人燃料配送サービスは、現在7社体制で、東日本エリアでは、北海道2拠点、東北4拠点、関東26拠点で中部2拠点、近畿12拠点、九州4拠点、車両台数は661台です。「建設現場でBDFを使うとしても、軽油との併用を求める場合が多いです。そうしたケースでも、弊社では2層式のタンクローリーを保有していますので、すぐに需要に応えることができます」(高松氏)

2層式のタンクローリーで軽油との同時配送も可能

2層式のタンクローリーで軽油との同時配送も可能

備蓄の適正配置で安定供給を目指す

グループの第二のバイオプラントとして、現在、大阪府岸和田市内で新プラントの建設が進んでいます。高松氏は「安定供給という側面から、製造拠点と備蓄の適正配置が欠かせません」と指摘します。「現在は、狭山で製造したBDFを全国の各拠点に運んで備蓄していますが、岸和田の新プラント完成後には、名古屋と福岡には新プラントからB100を運ぶという体制になると思います。特に福岡に関しては、B100からB5を製造するブレンダーマシンを配置することで、現地でB5を製造することが可能になります。プラントの建設はどうしてもコストが高くなりますから、今後はブレンダーマシンを配置するエリアを広げることで、安定供給だけでなく、コスト面からもお客様のニーズに応えられるよう展開していきたいと思います」

また、高松氏は「BDFの導入については、建設業界は他業界に比べて圧倒的に進んでいると感じています」と話します。「入札における環境ポイントやESG投資など、CO2排出量削減を促す要因が多い業界という側面が影響しているのではないでしょうか。弊社としても、SDGsに対応できる引き出しを増やしておきたいということで、環境ビジネスに関しては常にアンテナを張っている状態です。ただ、あまり畑違いの分野に手を出すのも現実味がないですし、既存のインフラをいかに活用して社会貢献ができるかが肝要だと思います。基本、ルーティンの仕事とリンクさせながら、弊社ができることは何かをこれから先もずっと探し続けていきます。その意味で、BDF事業は石油業界の会社でしかできないことの一つであり、今までの経験値を生かして現時点で弊社として出せる答えの一つではないかと思います」

三和エナジー株式会社 代表取締役社長
高松 克行 氏

終わりに

建設現場での建機利用に由来するCO2排出量をいかに削減していくかという課題については、多くの建設会社が頭を悩ませています。BDFの使用に関しては、カーボンニュートラルが期待される半面、「建機が故障するのでは」というマイナスのイメージもチラつきます。三和エナジーでは、こうした業界の不安を払拭しようと高純度にこだわったBDF製造を展開しています。建設業界のカーボンニュートラルに向けた選択肢としての可能性を感じるお話でした。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年10月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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