業界事例

“マンションの脱炭素” 長谷工コーポレーションならではの建設時・運用時の脱炭素戦略(後編)

“マンションの脱炭素” 長谷工コーポレーションならではの建設時・運用時の脱炭素戦略(後編)

前編では、環境配慮型コンクリートの開発、木造とRC造のハイブリッド建築、電動建設機械の導入など、マンション建設における脱炭素施策や課題などについてお話しいただきました。

後編では、協力会社との連携、建物運用時のCO2排出量実質ゼロを実現する賃貸マンションの取り組みなどについて伺います。

マンションの新たな価値づくり

建物運用時のCO2排出量実質ゼロを目指して、2023年9月に竣工したのが「サステナブランシェ本行徳」(千葉県市川市)です。

佐藤氏は「サステナブランシェという名前の由来は、住まいと暮らしのサステナブルな未来を目指し、新たなマンションづくりにチャレンジしていくという理念からです。既存の企業社宅を全面改修し、既存リノベーション物件としては国内で初めて、建物運用時のCO2排出量実質ゼロを実現したマンションになります。」と紹介します。

改修工事は、グループ会社の長谷工リフォームが担当しました。太陽光発電パネルは、建物の屋上以外の設置箇所を検討するため、壁面や最上階のガラス手すり部分にも設置。ガラス手すりにはシースルータイプを採用し、眺望や採光にも配慮しています。さらに、発電時にCO2を排出しない「水素」を利用した純水素燃料電池も導入し、さらなるカーボンニュートラルを進めています。

「サステナブランシェ本行徳は、住まいと暮らしのさらなる可能性を見つめ、マンションでどんな取り組みができるかを検証しており、長期的に検証していくものもあれば、比較的手軽にできるものもあります。既存マンションのリフォームについても相談を多く受けるので、サステナブランシェ本行徳を見ていただくことで、どの部分なら取り入れられるかというご提案にもつながっています」(佐藤氏)

サステナブランシェ本行徳

サステナブランシェ本行徳
出典:長谷工コーポレーションWebサイト

全36戸のうち13戸は居住型実験住宅「RESIDENCE LABO(レジデンスラボ)」として、それぞれの部屋で異なる検証が行われています。建物の長寿命化技術や省エネ技術、IoT化やAI技術などさまざまな角度から検証やデータ収集が進められています。「主に弊社グループの社員が住んでいて、住まいながらデータ収集を行っています。脱炭素に関しても、太陽光パネルの場合、発電量データから建物のどの部分に設置するのが発電量を最大化できるかといった検証を行っています。」(佐藤氏)

株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長 佐藤 圭一 氏

株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長 佐藤 圭一 氏

居住型実験住宅

居住型実験住宅

出典:長谷工コーポレーションWebサイト

協力会社との強固な連携

長谷工グループの脱炭素戦略を進める上で欠かせないのが、約300社の協力会社で作る建栄会を中心とした協力会社との連携です。佐藤氏は「弊社は主に首都圏・東海圏・関西圏でマンションを施工しておりますが、建栄会を中心とした協力会社がさまざまな建設現場で仕事をしているので、長谷工グループの脱炭素に対する意識の共有を図りやすいという利点があります。」と説明します。「例えば、建設機械に環境配慮型燃料を積極的に採用できているのも、協力会社と意識共有をできている点が大きいですし、おおむね部材メーカーが決まっていることで、簡易梱包にして運搬する車の台数を減らすという取り組みをする際にも非常に協力的でした。同じ作業員が長谷工グループ内のさまざまな建設現場で仕事をしていることで、脱炭素などの意識も浸透しやすい環境があります。」

また、「建栄会」には施策や課題ごとにさまざまな部会が設置されています。「部会の一つにCSR部会がありますが、この部会では、脱炭素やサステナブル社会の実現に向けた施策を進めていく活動に協力会社がメインになって取り組んでいます。共通意識を持った協力会社と常に一緒に仕事を進めることができている点が、現場の脱炭素戦略を進める上でも大きく寄与しているなと感じています。」(佐藤氏)

環境配慮マンションを未来につなげるためには

佐藤氏は「環境に配慮したマンションは断熱性能や省エネ性能が高まることが多く、お住まいの方にとっていい面もたくさんあると思います。」と話します。「マンション建設における環境配慮イコールコストがかかるというマイナスのイメージではなく、省エネ性能などを高め商品価値を上げるというプラスのイメージを積極的に訴求していくことも大切でしょう。既存のマンションに関して、脱炭素など環境に配慮した設備を積極的に導入提案することも大切です。また、弊社グループの長谷工シニアウェルデザインが運営する高齢者施設から出る廃食油を、バイオディーゼルとして長谷工コーポレーションの建設現場の重機に活用する取り組みも行っており、グループ連携による環境配慮も生まれてくるのではないかと思います。そのためにも、まずは省エネなどをキーにしながら、購入者やお住まいの方への周知が進み、脱炭素など環境配慮型マンションへの需要が高まる方向を目指していければと考えています。」

株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長 佐藤 圭一(さとう・けいいち)氏

株式会社長谷工コーポレーション
建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長
佐藤 圭一(さとう・けいいち)氏

1990年 長谷工コーポレーション入社 建築・土木工事の施工管理
2018年 建設部門計画推進部ゼネラルエンジニア
2022年 同CO2削減推進部長
2024年 同環境システム部 CO2削減推進部統括部長

終わりに

環境配慮型コンクリートの開発や電動建設機械の導入など、新技術をいち早く導入することで脱炭素戦略を進めている長谷工コーポレーション。協力会社との意識共有、強固な連携がこうした取り組みをしっかりと支えています。新たな挑戦を続ける理由の一つには、業界全体として脱炭素に共に取り組んでいきたいという思いも込められています。

脱炭素への取り組みを単なる環境施策として捉えるのではなく、新たな住まい価値創造という企業としての理念の中にしっかりと取り込んでいる姿勢が強く感じられました。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年7月)のものです。

前編はこちら:“マンションの脱炭素” 長谷工コーポレーションならではの建設時・運用時の脱炭素戦略(前編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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