業界事例

“マンションの脱炭素” 長谷工コーポレーションならではの建設時・運用時の脱炭素戦略(前編)

“マンションの脱炭素” 長谷工コーポレーションならではの建設時・運用時の脱炭素戦略(前編)

はじめに

住まいと暮らしの創造企業グループとして、「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」をグループ企業理念に掲げる長谷工コーポレーション。マンションの設計・施工から管理、修繕まで一貫して事業を行う企業ならではの脱炭素戦略を進めています。

マンション建設時のCO2排出量削減策、脱炭素を進める上での課題、電動重機や環境配慮型燃料の導入、協力会社との連携などについて、建設部門環境システム部CO2削減推進部統括部長の佐藤圭一氏にお話しいただきました。

長谷工独自の環境配慮型コンクリート

長谷工グループは2021年12月に、気候変動対応方針「HASEKO ZERO‐Emission」を制定し、2050年カーボンニュートラルを実現するための取り組みを公表しました。その中で、低炭素施工や脱炭素住宅に係る技術開発、再生可能エネルギーや脱炭素に資する技術や製品の積極導入などを掲げています。

佐藤氏は、マンション建設時のCO2排出量を削減するポイントとして、主要な建材であるコンクリートに由来するCO2排出量を指摘します。「マンションの場合、ほとんどが鉄筋コンクリート造(RC造)のため、使用材料の製造時にCO2が排出されるコンクリートを大量に使用しなければならないという特徴があります」

コンクリートによるCO2排出量を削減することができないかを検討し、そこから生まれたのが、長谷工独自の環境配慮型コンクリート「H-BAコンクリート」。従来の環境配慮型コンクリートは耐久性の問題など汎用性に課題がありましたが、H-BAコンクリートは一般的なコンクリートと同等の性能を持ちながら汎用性も兼ね備えているため、普段使いがし易いという特長があります。「弊社グループが事業主の案件ではほぼ100%H-BAコンクリートを採用しているほか、他の事業主様にも積極的に採用提案を行っています。採用することで、1立方メートルあたり約50kgのCO2排出量の削減につながっています。」(佐藤氏)

H-BAコンクリート

出典:長谷工独自の環境配慮型コンクリート「H-BAコンクリート」

株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長 佐藤 圭一 氏

株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長 佐藤 圭一 氏

さらに、コンクリートに比べCO2排出量が少ない木造マンションの施工も推進しています。2023年2月には、木造とRC造のハイブリッド構造の都市型賃貸マンション「ブランシエスタ浦安」が竣工しました。最上階には、木造住戸が14戸あり、長谷工としては専有部に初めて木造を採用したマンションとなりました。佐藤氏は「木造を導入することでCO2排出量の削減につながるので、これからさらに進めていきたい分野です」と力を込めます。

ブランシエスタ浦安

「ブランシエスタ浦安」 施工外観

出典:長谷工コーポレーションWebサイト

電動ラフテレーンクレーンを現場に初導入

建設現場において見逃せないのが、CO2を排出するのは建設機械です。長谷工コーポレーションでは、建設機械の電動化にも積極的に取り組んでおり、これまで電動バックホウや電動フォークリフトを採用しています。2024年5月には、タダノ社製のバッテリー式フル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」を、横浜市内の新築マンション建設現場2か所で試験導入しました。佐藤氏は「マンション建設現場での採用は国内初です。弊社では全現場にバイオマス発電による再生可能エネルギーを導入しており、電動化することで、従来のエンジン式で排出していたCO2排出量をゼロとすることができました」と説明します。

CO2排出量削減以外にも電動ならではの利点もあるといいます。「実際に現場で使ってみると非常にスムーズに動くので、音が静かで作業員同士のコミュニケーションがとりやすいとの声も聴いています。さらに排気ガスが出ないので作業員の健康にもいいですし、エンジンの排気熱がないので、特に夏場は周りの温度が上がりにくいというメリットもあります。導入に際してコスト面に課題はありますが、電動ラフテレーンクレーンの導入は業界内でも話題になりましたし、これが導入が進むきっかけになれば、と思っています」

「EVOLT eGR-250N」

「EVOLT eGR-250N」を採用した現場

出典:長谷工コーポレーションWebサイト

CO2排出量削減の後押しを

建設時のCO2排出量削減を進める上で、佐藤氏は、脱炭素にかけるコストに懸念があると指摘します。「マンションは高額商品のため、購入者は価格アップに敏感に反応します。特に今はマンション価格が高騰していますし、脱炭素にかけるコストによる価格アップとなるとどうしても目がいってしまいがちです。」

「現状では、関係者全員が諸手を挙げて賛成とはいかないので、脱炭素の取り組みに対し補助金など国の施策を整備いただくことで、関係する全員が同じ方向を見据えて後押ししていく環境づくりに取り組めるのではないでしょうか。また、購入者の環境配慮に対する意識の変化などもポイントになってくるかと思います。」

株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長 佐藤 圭一(さとう・けいいち)氏

株式会社長谷工コーポレーション
建設部門 環境システム部 CO2削減推進部 統括部長
佐藤 圭一(さとう・けいいち)氏

1990年 長谷工コーポレーション入社 建築・土木工事の施工管理
2018年 建設部門計画推進部ゼネラルエンジニア
2022年 同CO2削減推進部長
2024年 同環境システム部 CO2削減推進部統括部長

前編では、環境配慮型コンクリートの開発、RC造と木造のハイブリッド建築、電動建設機械の導入などマンション建設における脱炭素施策や課題などについてお話しいただきました。

後編では、協力会社との連携、建物運用時のCO2排出量実質ゼロを実現する賃貸マンション施工への取り組みなどについて伺います。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年7月)のものです。

後編はこちら:“マンションの脱炭素” 長谷工コーポレーションならではの建設時・運用時の脱炭素戦略(後編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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