業界事例

「木」のある街づくりで脱炭素化実現を目指す 東急建設の木造・木質建築への取り組み(前編)

「木」のある街づくりで脱炭素化実現を目指す 東急建設の木造・木質建築への取り組み(前編)

はじめに

地球環境だけでなく、生活者にとっても住みよい街づくりとして、木造建築の普及に取り組む東急建設。中大規模木造・木造建築ブランド「モクタス」をはじめ、戸建て住宅の建設や都市開発で培った経験に新たな技術を加え、「木」のある街づくりによるサステナブルな社会への貢献を目指しています。

木造建築の推進は、脱炭素社会に対してどのような価値をもたらすことができるのか。サステナビリティ推進部長の榊原将氏、木造推進部長の大給乘禎氏、環境部長の梅田直樹氏の3人にお話を伺いました。

社会課題解決に向けて“To zero, from zero.”

東急建設は2021年3月に、2030年を目標年とした新たな企業ビジョン「VISION2030」を公表しました。ビジョンの冒頭には「0へ挑み、0から挑み、環境と感動を未来へ立て続ける。」という言葉が掲げられています。ここには、2030年に向け、創業の精神でもある社会課題の解決に寄与するという想いが込められています。

「英語で表現したのが“To zero, from zero.”という標語です。まずTo zeroというのは、CO2排出量をゼロにするというカーボンニュートラルと、廃棄物をゼロにするという2つの目標を表しています。from zeroは、新たな領域の事業を開拓し、新規事業で感動を与えようという意味です」(梅田氏)

VISION2030・長期経営計画の全体像
出典:東急建設Webサイト

「VISION2030」の中では、気候変動リスクを踏まえ、東急建設が社会課題解決に向けて提供する価値として「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」の3つを挙げています。

「ビジョンの策定にあたっては、取締役がSDGsの17の目標と169のターゲットを全て読み込んで、当社にとってこれが必要だというものを挙げていきました。その上で、約60人のメンバーが、挙げられた目標やターゲットを達成するためには何をやるべきなのか、という議論を約1年間続けて、最終的なビジョンを作り上げていきました」(榊原氏)

価値創造推進室 サステナビリティ推進部 部長
榊原 将 氏

「ビジョン策定メンバーには社長をはじめ取締役のほか、20代の若手も参加。役職や年齢がさまざまなメンバーが参画しました。提供価値のひとつとして『脱炭素』を掲げた背景には、2万棟の木造戸建て住宅の施工実績がある木造・木質建築の第一人者としての想いもありました。ビジョンについて議論していた2020年当時、『脱炭素』という言葉は、日本ではそこまで主流な言葉ではなかった印象です。しかし、メンバーが集まって勉強していくと、世の中は脱炭素の方向を絶対に目指すべきだという議論が起こると同時に、『木造と言えば、東急建設』という明確な提供価値を持ってもいいのではないかという意見も少なくなかったです」(榊原氏)

梅田氏も「ゼネコンなど建設業が環境に与えるインパクトはやはり大きなものがあります。生物多様性や脱炭素への取り組みが大事だというコンセンサスがみんなの中に形成されていったのだと思います」とご説明いただきました。

安全環境本部 環境部長
梅田 直樹 氏

木材の持つCO2排出量削減効果

「モクタス」をはじめとする木造建築へのこだわりは、東急沿線の開発事業の中から育まれてきました。大給氏は「住宅以外で木造・木質建築を手掛け始めたのは最近ですが、沿線開発などの戸建て住宅はもともと木造がメイン。そこから約60年、ずっと木造を手がけてきた歴史があります」と話します。

木造・木質建築には地球環境保全にどのような効果があるのでしょうか。まず挙げられるのが、CO2排出量削減による温暖化防止への貢献です。

「樹木は成長の過程で光合成により、空気中のCO2を吸収し炭素を貯蔵する機能を持っていますが、木を伐採して加工した木材となった状態でも貯蔵し続けています。これは他の材料にはあまり見られない特性です。建築物等、解体後に木材を燃やしてしまえばCO2を発生させてしまうことになりますが、伐採時にきちんと再植林をすることで、「伐って、使って、植えて、育てる」という森林の持続的サイクルに繋がり、カーボンゼロの材料として利用できるわけです。製造時や建築時のCO2排出量も、コンクリートや鉄に比べて少なくて済みます」(大給氏)

大給氏は、木材が持つ人体への効果にも触れます。「日本人は昔から木に親しんできた歴史もありますし、木の持つ柔らかさが生活する人、働く人にも良い効果をもたらすというメリットがあります。加えて最近では、木材の調湿性能や香りなどが、免疫力向上やリラクゼーション効果をもたらすといった研究結果もでてきています」

星乃珈琲店 美しが丘店
出典:東急建設Webサイト

建築事業本部 事業統括部 木造推進部長
大給 乘禎 氏

都市に木(もく)を足す

かつては地震や火災等の面から敬遠されがちだった木造建築ですが、2000年の建築基準法の改正や2010年の公共建築物等木材利用促進法の施行なども追い風となり、さまざまな木質系構造部材が登場しています。大給氏も「耐火面でも、RC造などと同等の建物を作れる技術が開発されてきて、戸建て住宅以外の分野でも木造建築に取り組みやすい土壌ができてきました」と話します。

このような流れの中で2019年に誕生したのが、中大規模木造・木質建築ブランド「モクタス」です。ブランド名には、建物一つひとつだけでなく、都市に木(もく)を足すことで心地よい街づくりに貢献したいという東急建設の想いを込めました。「ずっと木造の住宅を作ってきた歴史があるものの、少子高齢化で住宅の需要が長期的に減っていくなか、住宅だけでなく、非住宅でも木造を推進していくという方針を打ち出したのが始まり。ゼネコンの中で2万棟を超える木造住宅開発の実績があり、そこをもっと表に出していこうという意味もあってブランド化しました。今の脱炭素の流れを先取りできたという面もあるかと思いますが、少しずつ「モクタス」も認知されてきています。木造と言えば、東急建設といってもらえることを目指して今後も取り組んでいきたいと思います」(大給氏)

南関町役場 増築棟(新庁舎)
出典:東急建設Webサイト

価値創造推進室 サステナビリティ推進部 部長
榊原 将(さかきばら・まさる)氏【写真左】

建築事業本部 事業統括部 木造推進部長
大給 乘禎(おぎゅう・のりただ)氏【写真中央】

安全環境本部 環境部長
梅田 直樹(うめだ・なおき)氏【写真右】

前編では、脱炭素を掲げた「VISION2030」の概要、木造建築へのこだわり、木造・木質建築ブランド「モクタス」立ち上げの背景などについてお話しいただきました。

後編では、「モクタス」の詳細、木造建築を取り巻く現況、CO2排出量削減への取り組み、今後の展望などについてお聞きしていきます。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2024年3月)のものです。

 

後編はこちら:
「木」のある街づくりで脱炭素化実現を目指す東急建設の木造・木質建築への取り組み(後編)

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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