産業廃棄物収集運搬・処理業等を手がける大栄環境グループの一員である共同土木は、環境創造企業として、社会的基盤を支える事業を担う立場から、脱炭素社会の実現と循環型社会の形成を経営の最重要課題として位置づけています。代表取締役の中村氏と取締役 岡林氏に、カーボンニュートラル時代に廃棄物処理業に求められる役割、目指す方向性、脱炭素社会の実現に向けた施策や展望などについてお話を伺いました。
資源として再び社会に戻す『循環』という視点
共同土木は2020年4月に関西・中部圏を中心に全国展開する大栄環境グループの一員となりました。環境負荷の低減や気候変動への対応など、グループとして共有する環境理念に基づき、早い段階から方向性の明確化を進めてきました。
中村氏は「気候変動への対応は、もはや社会全体の責務であり、廃棄物処理業もその例外ではありません。当社としても、これまでの『安全・確実な処理』だけでなく、『CO₂排出量を抑え、資源として再び社会に戻す処理』へと、事業のあり方そのものを見直す段階にきていると感じています」と話します。具体的なスコープとして、「まずは施設運営、廃棄物の収集運搬、処理・再資源化の事業活動全体を含め、CO₂排出量削減に向けた取り組みを進めています。当面は、温室効果ガス排出削減の中期目標である『2030年までに大栄環境グループ全体の電気使用によるCO₂排出量実質ゼロを達成』するため、施設稼働に伴うCO₂排出量の削減を優先事項として取り組んでいます」と話します。

大栄環境グループでは、カーボンニュートラルや循環経済への移行などの社会課題に取り組みつつ、グループとして持続的な成長を実現していくために、5つの重要課題(マテリアリティ)を特定した上で、それらを解決するための中期経営計画(D-Plan2028)を策定し、グループ全体に共有を図っています。これらの活動は、年1回開催される責任者会議や定期的に行われる委員会等の会議体で協議し、方向性の再確認を行うとともに、現場の声を大切にしながら、グループ全体ですり合わせていくことで、実効性のある取り組みにつなげています。
中村氏は「これまでの廃棄物処理は、発生した廃棄物を安全かつ適正に処理・処分することに重点が置かれてきましたが、近年はそれにとどまらず、資源として再び社会に戻す『循環』という視点が求められるようになっています」とニーズの変化について語ります。こうした変化への対応として、産業廃棄物の適正処理を通じて、社会に必要とされる循環の仕組みをつくること、すなわち「循環型社会の形成」に貢献していくことを大栄環境グループの使命と位置付けています。
具体的には、廃棄物の収集運搬から中間処理、再資源化、最終処分に至る工程全体を対象とし、エネルギーの使用量の削減、再生資源の有効利用、CO₂排出の抑制、並びに安全で適正な処理体制の確立までが含まれています。
「資源循環には、お客様や取引先との連携が重要であり、協働によって初めて循環の輪がつながります。現在、当社では建設工事現場での分別サポートを行いながら、グループ企業や樹脂原料メーカーと協働し、排出事業者の方々に廃プラスチックの回収、再生樹脂化・成形加工・製品化をワンストップで支援する資源循環スキーム(iCEP PLASTICS)の提案を進めています」(岡林氏)

処理品質を維持しながらCO₂排出量削減に貢献
共同土木が擁する東京中間処理工場(東京・南砂)は、東京都心から10キロ圏内というアクセスの良さに加え、都内最大級の敷地面積(約9000平方メートル)を誇り、精選別機や破砕機、圧縮梱包機、手選別ラインなどの設備を完備しています。受け入れ体制として、自社車両、持ち込み車両、再計量用のトラックスケールを設置しており、効率的な場内誘導を実現しています。また、都市部の再開発事業や老朽化に伴う社会インフラの更新により発生するアスベスト廃棄物や廃蛍光灯類、リチウムイオン電池などの一定の管理が必要な廃棄物を積み替え保管できる設備を有し、運搬効率や運搬に伴うCO₂排出量削減に貢献することで顧客のニーズにも対応しています。
中村氏は、同工場について「2020年4月に大栄環境グループの一員となり、先ず、最初におこなったのが処理工程の見直しによる設備等のスリム化でした。従来の処理品質を維持しながら破砕機等の集約化を行うことで、施設稼働に伴うエネルギーの省力化を実現しました」と振り返ります。2023年2月には自家消費型太陽光発電システム(年間発電量191.4Mwh)を導入し、施設全体で使用する電力の約28%を同システムで賄うことに成功しました。
二次処理廃棄物の輸送分野では、内航船を活用したモーダルシフトの導入により、輸送にかかるCO₂排出量の削減を計画し、大栄環境株式会社、井本商運株式会社と共同で「物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」に基づいた認定を受けました。中村氏は、今後について「本社事務所と埼玉中間処理工場にて先行して導入している再生可能エネルギー由来の電力(100%再エネ電力)の購入を、東京中間処理工場においても進めていくとともに、電動フォークリフト等の採用を検討していきます」と話します。
▼東京中間処理工場


参照:東京中間処理工場
「地域循環共生圏」構築という理念
東京中間処理工場は、工業専用地域内に位置しており、半径1㎞以内に住居が存在していないことから、地域住民との関わりを持つ機会があまり多くないのが実情です。しかし、中村氏は「近隣自治会との定期的な意見交換や、地域清掃活動への参加を継続して行っています」と地域との共存を重視する姿勢を示します。
2022年度からは地域清掃の活動を広げるために、江東区アダプトプログラム(こうとうまち美化応援隊)に登録し、同じ江東区に所在する㈱竹中道路と合同で最寄駅である東京メトロ南砂町駅前の「江東区立新砂あゆみ公園」や「江東区立木場親水公園」の清掃活動も実施しています。また、有事の際には、災害廃棄物の受け皿としての役割を担えるように、事業継続計画(BCP)を策定し、施設の管理体制を構築しています。
こうした姿勢の背景には、大栄環境グループが、環境省が提唱する「地域循環共生圏」の構築を目指し、事業を通じて地域社会の発展に貢献することを目指しているという点が挙げられます。「私ども共同土木としても関東圏での事業展開を強化し、自治体や地域の事業者の方々と協力し合いながら、積極的に地域課題の解決に取り組んでいくことで地域社会の発展に貢献するとともに、持続可能な循環型社会の実現を目指していきたいと考えています。現在、関東圏における大栄環境グループの子会社は5社に増えており、建設解体工事から一般廃棄物・産業廃棄物の収集運搬、中間処理・再資源化、最終処分までをワンストップで最適な提案が出来る体制を整えることができました。これからも、より質の高いサービスを排出事業者の皆さまにご提供できるようグループ企業が一体となって取り組んでいく所存です」(中村氏)
参照:地域循環共生圏の構築
地域単位での脱炭素モデルを共創
廃棄物処理現場における脱炭素実現に向けては、企業や団体、自治体などが一体となった努力が欠かせません。この点について中村氏は「脱炭素社会の実現には、再エネ導入や省エネ化といった技術的対策に加えて、地域資源の循環、サプライチェーン全体での排出削減、そして多主体の協働による仕組みづくりが不可欠です。企業と自治体がそれぞれの強みを活かしながら、地域単位での脱炭素モデルを構築していくことが重要であると考えます」と語ります。
加えて、建設や解体現場で発生する廃棄物をどう処理するかだけでなく、どう循環させるかという視点から考えていく必要があり、設計段階から「再利用・再資源化」を見据えた資材選定や分別設計の取り組みが求められているといいます。「当社としても、現場を支える皆さまと連携しながら、より環境負荷の少ない処理・再資源化の仕組みをさらにブラッシュアップさせていくことで、脱炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています。大栄環境グループの経営理念である「創造・改革・挑戦」の精神をもって、環境創造企業として進化してまいります」(中村氏)

大栄環境株式会社 執行役員 兼
株式会社共同土木 代表取締役 中村 龍男氏(左)
株式会社共同土木 取締役 岡林 祐太氏(右)
※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年11月)のものです。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。







