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AI活用で工事費・建物のCO2排出量を算定 新ツールがもたらす木内建設のDXと脱炭素戦略

AI活用で工事費・建物のCO2排出量を算定 新ツールがもたらす木内建設のDXと脱炭素戦略

静岡県内で施工実績ナンバーワンのゼネコンとして知られる木内建設。カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組みとして、見積書の情報から建設する建物のCO2排出量をAIが自動で算定・可視化するツールを開発しました。同ツールの概要、開発の背景、CO2排出量を可視化する意義について、開発に携わった未来共創チームの望月寿人氏と東京本店積算部概算積算課の栗林直哉氏にお話を伺いました。

規模を生かした機動力の高さ

木内建設は、2021年1月に創業100周年を迎え、静岡県内でトップクラスのゼネコンとして知られています。静岡県庁別館をはじめ、静岡県コンベンションアーツセンターグランシップ、小笠山総合運動公園エコパスタジアムなど同県内のランドマークとなる建築物を数多く手掛けています。また、静岡・東京・名古屋の三拠点を軸に、マンションや工場、公共施設からインフラの整備まで、総合建設業者として幅広い事業展開をしています。

同社の強みのひとつが、迅速な経営判断です。「東京では、長年マンションなどの集合住宅を中心に手がけており、売上高は静岡本店、東京本店でおよそ半々です。企業としては、大手ゼネコンと比べると大きすぎず、その分経営的判断が必要なルートが長すぎないので、比較的スピーディーに物事を進めることができます」(望月氏)

象徴的なのが「教育研修費」という予算立てです。「新しく挑戦したいプロジェクトがある場合、上長にプレゼンを行って、管理本部で承認されれば最終的に社長が判断するというシステムが全社的に動いています。例えば、社内研修や各自のスキルアップ、DX化など様々な挑戦ができる環境があります」(栗林氏)

社長直轄 未来共創チームリーダー 望月寿人 氏

東京本店積算部概算積算課 係長 栗林直哉 氏

CO2排出量をAIが自動算定

木内建設が2025年、CO2排出量の算定サービスを提供する「Sustineri」(本社・東京都)との共創で開発したのが、建設する建物のCO2排出量をAIを用いて予測・可視化するツール「Susport建設」です。

見積書・予算書を「Susport建設」に読み込ませると、資材別に排出原単位を割り当て、排出原単位に合わせて単位を換算。CO2排出量を算定し、グラフとして可視化することができます。さらに、用いる資材を変更することでどの程度CO2排出量を削減できるかというシミュレーションも可能になっています。

「Susport建設」によって、いままで人の手で1週間かかっていたCO2排出量の算定が約5分でできるようになったと言います。

「実際に手動で算定すると、例えば、クロスが何平米など何千項目あるものを一つひとつ入力していく作業だけで1週間かかっていました。それをいくつもの現場でやるとなると大変なため、ここを自動化するしかないということで、AIを導入したのがSusport建設です」(望月氏)

出典:木内建設資料
「新未来スタートアップ共創の相乗効果〜蓄積データのAI活用が産む、情報予測+脱炭素算定と提案⼒強化〜」

過去データから概算見積もりを自動算出

木内建設では2024年にAIサービスの「燈」(本社・東京都)と組んで、建設費の自動算定ツール「BURM」を開発しています。過去の見積書をデータベース化し、機械学習型AIが蓄積されたデータに基づいて、物件概要から概算見積もりを算出するツールです。

「概算は、過去物件の情報を参考にしながら出すのですが、人手も経験も必要です。そこで、今まで個々人が保有していた情報を一元化して、AIを使って超概算を出すのがBURMです。そこから最終的に出てきた見積書の材料や仕様、数量のデータをSusport建設が読み取ってCO2排出量を計算します。Excelの見積書をアップロードするだけです」(栗林氏)

「両ツールの開発に当たっては、いかに現場の仕事を増やさないかを考えました。アップロードのときのワンクリックの手間はありますが、今までの作業の流れを維持できるようになっています」(望月氏)

新たなツール開発というプロジェクトを成功に導いたのは、3社それぞれの強みを生かした共創でした。「燈さんは東京大学松尾研究室発の建設に特化したスタートアップ企業で、大手企業との協業を通してAIをはじめとしたさまざまな分野で挑戦を続けています。情報の整理、予測AI、数値をまとめることに関してはピカイチで、一人一人が建築を学んでくれているので、ちょっと違った目線での話ができる点も興味深いです。Sustineriさんは、建設分野での見える化に関して、我々の要望に親身に対応していただいており、手作業による算定から情報収集、社内への展開まで段階を追って注力してくれました」(望月氏)

出典:木内建設資料
「新未来スタートアップ共創の相乗効果〜蓄積データのAI活用が産む、情報予測+脱炭素算定と提案⼒強化〜」

スタートアップ企業との共創

こうした脱炭素への取り組みを始めるに当たっては、社内の環境整備にも気を配りました。

望月氏は「なぜこうした取り組みが必要なのかという社員全員でのベクトル合わせが最初にやるべきことでした」と話します。「燈さんとSustineriさんに、社員向けの脱炭素についての研修をお願いしました。経営層向けと社員向けという二段階で中身を変えていただいて、まずは社内に共通理解ができるように努めました」

新しいツールの導入によるCO2排出量の可視化は、さらなる意識変革を促しているといいます。「例えば、現場所長が予算書をもらったときに、自分が担当する現場がどれだけの量のCO2を排出しているのかを意識するとしないでは違いが出ると思います。数値を意識せずに何となく取り組むよりも、見える化することで削減に対する意識づけができるという点では有効なのではないでしょうか」(望月氏)

栗林氏は「当社と同等の会社規模のゼネコンで、ここまでCO2排出量の算定を実施している企業は皆無ですので、お客様には驚かれていますし、周囲からもかなりの反響がありました。将来、CO2排出量の算定が義務化された際にはぜひこのシステムを使わせてほしいというお声もいただいています」と話します。

望月氏は「現状ではどうしても脱炭素素材を使用することはコストアップの要因になり、工事費が上がっている状況では逆風になります。一方で環境への配慮が無視できないのも事実ですので、お客様のニーズに合わせて、環境配慮というボーダーラインを引く基準の提案に役立てたいと考えています」と今後の展望を話していました。

木内建設株式会社

【写真右】社長直轄 未来共創チームリーダー
望月 寿人(もちづき・としひと)氏

【写真左】東京本店 積算部 概算積算課 係長
栗林 直哉(くりばやし・なおや)氏

※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年9月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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