 
						海上や陸上の大型土木工事を主に手掛けるみらい建設工業株式会社(以下、みらい建設工業)は2024年11月に建設業界特化型のCO2算定サービス「TansoMiru(タンソミル)」を導入しました。同サービス導入の背景、導入に期待する効果、脱炭素社会実現に向けた同社の取り組みや展望などについて、安全品質環境本部副本部長兼品質環境部長の渡邉真澄氏にお話を伺いました。
再エネ事業受注拡大に注力
海上・港湾工事を得意分野とするみらい建設工業。渡邉氏は事業内容について「みらい建設工業は空港や港湾などの海上インフラを中心に施工している総合建設会社です。いわゆるマリコンとしてのイメージが強いのですが、実は陸上の造成工事や解体工事も手がけています」と説明します。
最近注力しているのが、再生可能エネルギーの整備事業とのこと。「太陽光発電の架台を施工する前の造成工事や風力発電の基礎工事などの受注拡大を目指しています。もともと護岸の整備工事などの経験もありますし、海と陸、それぞれでの土木等の経験を生かして取り組んでいるところです」
こうした取り組みの背景には、建設業が担う社会的役割として、事業を通じて社会に貢献するという思いがあります。渡邉氏は「インフラ整備や国土強靭化を通じて社会に貢献する企業を目指していこうということで、最近の社長メッセージの中でも『企業価値の向上とみらいへの責任』『次世代の育成』『社員の成長と活躍』という3つのキーワードを示しています」と話します。
▼みらい建設の海上・港湾工事模様

▼ソーラー新設工事に伴う土木基礎外構工事の様子

SBT認定を取得し、脱炭素推進
社会に貢献する企業として近年、脱炭素施策への取り組みをも加速しています。CO2排出量については、2023年度比で、2030年に30%削減、2050年にはカーボンニュートラルという目標を設定しています。推進の大きなきっかけになったのが、環境省のエコ・ファースト制度です。「社内でエコ・ファースト企業の認定を目指そうという動きがあり、2023年4月に認定をいただきました。認定を取るためにはGHGカーボンニュートラルという項目があり、CO2排出量の削減目標値、そのためにはどのような取り組みをするのかを示す必要があります。そこが当社の脱炭素施策の本格的なスタートになりました。その後、SBT認定も取得、取得前には当時の役員の方が主体となって具体的な取り組み推進のために社内で勉強会を開いています 」
2022年には「みなとSDGsパートナー」に登録されました。同登録制度は、港湾関係企業等によるSDGs達成に資する取組の普及促進を支援し、ひいては日本の港湾及び港湾関係産業の魅力向上と将来にわたる持続的な発展に貢献することを目的として国土交通省港湾局によって創設されたものです。
CO2排出量計測の省力化、省人化
脱炭素施策を進める上で欠かせないのが、事業に伴うCO2排出量の把握です。その課題を解決するために、みらい建設工業では、リバスタが提供する建設業界に特化したCO2排出量の算出・可視化が可能なクラウドサービス「TansoMiru(タンソミル)」の導入を開始しました。
2024年8月時点では、「管理」「電力」「産廃」という3つのサービスを展開しており、一般社団法人電力データ管理協会を通じて取得した電力データや、リバスタが提供する電子マニフェストサービス「e-reverse.com」のデータと連携することで、電気使用量を自動で取得しCO2排出量を算出したり、建設現場から排出される産業廃棄物の収集・運搬時のCO2排出量を自動集計で把握・管理することが可能です。みらい建設工業は3つのサービスを順次導入しました。
「2023年度から排出量の本格的な算出を始めました。計算式や電力、ガス、燃料の使用量を報告する記入式シートを自分たちで作って、各支店、作業所のデータを集めるようにしました。なるべく現場に負担をかけないことを一番に考えて始めたのですが、それでもなんらかの負担にはなってしまうし、集計作業も大変でした。そんなときに、リバスタ社からアプローチがあって、元々『e-reverse.com』を使っていたこともあって導入に至りました」

安全品質環境本部副本部長 兼 品質環境部長 渡邉 真澄 氏
実際に「TansoMiru」の導入はどのような効果をもたらしたのでしょうか。
渡邉氏は「データの収集、登録、計算の負担が減りました。元々登録していた『e-reverse.com』のサービスと連携できるので、新たな現場登録が不要な点も、なるべく省力化、省人化できるシステムを探していた当社のニーズに合っていました。さらに『TansoMiru管理』でCO2排出量の可視化が可能になった点も大きいです」と話します。
▼TansoMiru管理のデモ画面

CO2排出量可視化のメリット
可視化のメリットについて渡邉氏は「毎年のデータをグラフ化するのも簡単ですし、経年でCO2排出量の波を追っていけるようになります。単位や現場・支店単位でトレンドを把握することをできます」と説明します。「工事のときのCO2排出量はこれくらいだという目安づくりが可能になります。また、工事によっては工種ごとに可視化できるので、例えば同じ工種でも前年度に比べて排出量が増えていれば、その原因は何かという検討材料としても使えると思います」
渡邉氏は、今後の脱炭素への取り組みについて「海上・港湾、河川工事などのマリコン事業は、未来に長く残っていくものであり、公共工事が多いという特性もあります。そうした事業に携わる会社として、脱炭素社会実現は取り組むべき難しい課題だと思います」としたうえで、「そのためには、まず実際に何がどうなっているかという情報やデータを集めなければ何も始まらない。まずは情報収集をしっかりと進めて、今後の展開に向けた土台を固めていきたいと思います」とお話しいただきました。
|   安全品質環境本部副本部長 兼 品質環境部長 | 
※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年7月)のものです。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。







