業界事例

「ともに、未来につづく道を」前田道路が推進する「低炭素合材」とCO2排出削減策

「ともに、未来につづく道を」前田道路が推進する「低炭素合材」とCO2排出削減策

舗装工事とアスファルト合材の製造販売を主軸に、2025年に創業100周年を迎えた前田道路。アスファルト合材の製造時には大量のCO2が排出されるなど、舗装業界では脱炭素への取り組みが大きな課題となっています。前田道路では、CO2排出量削減に寄与する「低炭素合材」の製造販売を積極的に進めるなど、アスファルト合材の脱炭素を加速しています。

CSR・環境部CSR・環境課長の齊藤秀俊氏と技術本部技術部技術推進課長の村田純氏に、低炭素舗装の推進体制などについてお話を聞きました。

環境にやさしい「低炭素合材」の開発

前田道路は、気候変動への取り組みとしてScope1、2のCO2排出量削減目標を2030年度までに50%(2013年度比)、2050年度にはカーボンニュートラル達成としています。

齊藤氏は「弊社が属するインフロニアHD全体において、Scope1、2のCO2排出量は前田道路が大部分を占めています」と道路業界ならではの事情を語ります。「道路舗装の施工資材として用いられるアスファルト混合物の製造工場が全国に90工場あり、アスファルト合材製造のために骨材の加熱乾燥で重油や都市ガス等の燃料を使用していますし、骨材供給のための重機燃料として軽油を使用しております。またアスファルトや製品の保温で電力が必要となるため、Scope1、2のCO2排出量が他の事業会社にはない事業分野により多くなってしまいます」

そこでアスファルト混合物の製造、施工段階で排出するCO2を削減する方法はないか。そこで開発したのが「低炭素合材」です。村田氏は「CO2排出量削減に向けた技術開発と導入自体は10年以上前から進めてきましたが、単に自分たちの会社の中だけでCO2排出量を減らすのでは個社の努力に留まってしまう。できれば弊社の取り組みをアウトプットして他社からも評価してもらえるような製品ができたらいいなという考えから生まれたのが、低炭素合材です」と説明します。

▼アスファルト舗装のCO2排出量の考え方

出典:前田道路Webサイト

舗装業界注目の中温化技術

「低炭素合材」とは、アスファルト合材の中温化技術、実質CO2フリー電力の活用などCO2排出量を低減した手法で製造された、温室効果ガスの排出削減に寄与する環境に優しいアスファルト合材の総称です。とりわけ注目されるのが、マイクロバブルテクノロジーによって低い温度でも製造・施工を可能にした中温化アスファルト混合物「ecole(エコール)」です。

「アスファルト合材は、アスファルトという液体をいわば石と石の接着剤として使っているのですが、アスファルトは温度が高いと柔らかくて、温度が低くなると固まるという性質を持っています。この性質を利用しているアスファルト混合物は、製造時に多くの燃料、エネルギーを使うのでCO2を排出してしまいます。ecoleは、従来の合材より30°C温度を低くしても製造・施工が可能な技術です」(村田氏)

ecoleは、高温時のアスファルトに少量の水を噴霧混合することで水が急激に気化することにより、アスファルトを発泡させて製造したフォームドアスファルト混合物です。ecoleは当社独自の技術により泡を微細泡(マイクロバブル)化することで性能を向上させています。また、再生用添加剤も同時に発泡(Wフォームド)させることにより、高再生率の再生アスファルト混合物にも適用可能です。

これらの独自の技術によって、製造温度を低減し、通常の合材よりもCO2排出量を最大20%削減する効果があるといいます。施工時の材料温度も低くなるので、施工現場における作業員の熱中症対策にもつながっています。

また、中温化技術は舗装業界の中でも最も大きなトレンドの一つとして注目されています。2024年5月にはアスファルト合材協会と日本道路建設業協会の連名によって『低炭素(中温化)の手引き』が発刊され、中温化技術の普及促進を図っています。また、2024年8月には国土交通省が『道路におけるカーボンニュートラル推進戦略(骨子)案』の中で4つの基本方針の一つとして「道路のライフサイクル全体の低炭素化」の方向性を公表し、中温化技術を用いた低炭素な材料の導入を促進するとしています。「弊社においてもこの中温化技術を促進するために必要なアスファルトフォームド装置の設置を進め、来期には前田道路全体の約90%の工場において設置完了となる予定です。このように、産官が連動して中温化技術を進めるべく、実装を進めています」(齊藤氏)

CSR・環境部 CSR・環境課長 齊藤 秀俊 氏

ecoleを使った「低炭素合材」には、通常の合材よりも低い温度でも施工がしやすいというメリットがあります。さらに通常合材と施工方法も価格も同じです。

「ecoleの製造にあたっては、特殊なフォームドマシンの設置に初期費用が必要です。また、中温化の効果を高めるための発泡補助剤のランニングコストもかかります。ただ、目的はCO2排出量の削減であり、コストアップになるから使ってもらえないのでは意味がない。そこは弊社の企業努力で、できるだけ現在使っている製品と同程度の単価で提供することで、施工業者に使ってもらえることを目指しています」(村田氏)

技術本部 技術部 技術推進課長 村田 純 氏

CO2排出削減量を証書で “見える化”

「低炭素合材」を使用した現場には、CO2排出量の削減を証明するアクションレポートを発行しています。低炭素合材を使用した場合、通常の合材に比べてどのくらいCO2排出量が減少したかを数値化した証書です。「個々の工事現場ごとに数値を出すのは大変な作業なのですが、弊社独自のシステムを用いてスピーディーに排出量の算出と証書発行をしています。どのくらい減ったかという “見える化” は発注者にとっても一番関心が高い部分です。例えばCO2排出量が10キロ減った、といってもよくわからないという声もあり、スギの木何本分、といったよりイメージしやすい表現に置き換えることをしています」

▼アクションレポート

出典:前田道路Webサイト

村田氏は「道路はやはり皆さんの生活になくてはならないインフラなので、なくすわけにはいかないものです。ただ、生活に欠かせない道路に由来するCO2が自分たちの生活を脅かすというサイクルもやはり良くないわけで、インフラの脱炭素というのは、自分たちの生活を持続可能なものにしていくという意味でも第一に来る課題だと思います。二者択一ではなく、必要不可欠なものだからこそ、持続可能な形にしていくことに意義があるのではないでしょうか」と話します。

出典:前田道路Webサイト

前田道路では、2024年度から全拠点でRE100に対応したCO2フリー電力を導入しました。また、子会社の日本バイオフューエル株式会社では、バイオ重油の製造を開始しました。有効利用の進んでいない植物と動物の廃棄油脂(植物油製造工場やバイオディーゼル製造工場から発生する副産物)を原料としたバイオ重油を、重油の代替燃料として社内で利用するよう推進しています。

【写真右】CSR・環境部
CSR・環境課長 齊藤 秀俊(さいとう・ひでとし) 氏
【写真左】技術本部 技術部
技術推進課長 村田 純(むらた・じゅん) 氏

CO2排出量削減のために

齊藤氏は「自分たちの中で、CO2排出量削減のためにまずはできることから着手してみて、それが他社でも可能であれば、採用してもらって普及が進むことで全体的な取り組みへと広がりが出てくるのではないかと思います」とさまざまな施策に取り組む理由を話します。「まずはいろいろな技術開発などCO2削減策に取り組んでみてどういう形で社会に貢献できるのかトライしてみることが、弊社の強みの一つにもなっていくと思います」

 

※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年3月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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