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持続可能な環境配慮型社会の実現 建設現場のCO2排出量を計測・集計するシステム「T-CARBON/Watch®」

持続可能な環境配慮型社会の実現 建設現場のCO2排出量を計測・集計するシステム「T-CARBON/Watch®」

建設現場で発生するCO2 排出量の把握は、建設業界においてカーボンニュートラルを推進するうえで重要な課題です。
大成建設は、この課題への新たな取り組みとして、現場で発生するCO2排出量を計測・集計するシステム「T-CARBON/Watch®」を2021年9月から開発に着手し、2023年度より国内の全作業所に展開しています

T-CARBON/Watch®導入の狙い、運用上の課題、CO2 排出量を正確に把握することの意義などについて、サステナビリティ経営推進本部カーボンニュートラル推進部環境技術室の竹尾健一氏、髙橋健吾氏、高橋佳子氏にお話を伺いました。

建設現場のCO2排出量の効率的な計測・集計を目指す

T-CARBON/Watch®は、建設現場で発生するCO2 排出量を計測・集計するシステムで、社内外のシステム情報と連携することで自動的にデータを集計しています。連携しているデータは、

①電力会社ホームページに掲載される電力使用情報、
②燃料供給業者から提供される現場内での給油情報、
③社内システムで集計されている燃料購入情報、
④社外サービスから提供される電子マニフェストデータによる廃棄物運搬情報、
⑤建設現場に設置したカメラと AI の画像認識機能を用いて現場に出入りする(スポット入場)車両の稼働状況から排出量を自動算出する「現場運用情報」(一部の現場)

の5つです。

従来のCO2 排出量集計では、重機や車両の稼働台数を数えてそれに燃費をかけることでCO2排出量を計測していました。しかしこの方法では集計に手間がかかることに加えて、環境に配慮した燃料や燃費の良い重機を使ってもCO2排出量に反映されないという課題がありました。髙橋健吾氏は「当時の方法では、ごく一部の現場をサンプルとして選んで、期間も一部に絞って実施していたため、本当に会社全体の CO2排出量を把握できているのかという課題がありました」と振り返ります。「まず実現したかったのは、多くの現場で、かつ通年でCO2排出量を計測し、当社が実際にどれだけのCO2を排出しているのかを把握するということでした」(髙橋健吾氏)

▼建設現場のCO2排出量計測・集計システムの概要

出典:大成建設Webサイト
https://www.taisei-sx.jp/environment/tgt/decarbonization/

 導入に当たってはさまざまな苦労もあったといいます。システムの肝となったのは、現場の負担にならないこととデータの正確性です。竹尾氏は「そもそも法律でCO2排出量を集計しなければならないと定められているわけでもありませんし、現場の理解を得て定着させるためには、現場に負担がかかるシステムにはできない。さらに、正確なデータが集まる設計にしておかなければ、運用段階で大変なことになるという予測がついていたので、その点には力を入れました」と話します。

髙橋健吾氏も「導入はいきなり全現場で始めたわけではなく、少しずつ浸透させていきました。いくつかの現場で試行することで、運用面での課題やデータ連携の不具合などを洗い出し、修正して1年後から全ての現場に導入しました」と話します。

サステナビリティ経営推進本部 カーボンニュートラル推進部
環境技術室 室長 竹尾 健一 氏

サステナビリティ経営推進本部 カーボンニュートラル推進部
環境技術室 課長 髙橋 健吾 氏

スポット入場車両をカメラとAIの画像認識機能で把握

CO2排出量を正確に把握する上で見逃せないのが、スポット入場車両のCO2排出量です。これを計測するために導入したのが、カメラとAIによる画像認識機能です。「ラフタークレーン、コンクリートポンプ車、残土運搬車両などのスポット入場車両は建設現場外で給油することが多く、燃料供給業者から提供される現場内給油情報などのデータ連携では把握できないことが課題でした。これを解決するため、入場ゲートに設置したカメラとAIによる画像認識機能によってスポット入場車両の通行状況を計測することで、自動的にCO2排出量を計算・集計しています」(髙橋健吾氏)

▼建設現場のスポット入場車両をカメラで検知

実際にカメラの運用を管理している高橋佳子氏は「導入初期は、現場の方々とのコミュニケーションの取り方や、入場車両の通行状況を計測するための検知線の引き方などでトラブルが起こるなど、試行錯誤でした」と話します。

▼入場車両の通行状況を計測するための検知線の引き方

サステナビリティ経営推進本部 カーボンニュートラル推進部
環境技術室 高橋 佳子 氏

カメラとAIによる画像認識では、車種の識別精度が重要となります。しかし建設現場の環境は現場ごとに異なるため、車両以外にカメラに映り込むものや日光の照り返し、雨による水滴など多様な情報が識別に影響を与えるといいます。さらに、季節によって日没時刻が異なるため、周囲が暗くなったときの対応も必要です。「これらをAIに学習させていき車種の識別精度を高めていくことが課題となっています。また現状ではカメラのコストが高く、多くの建設現場で運用することへの障害となっています。今後展開していくには、いかにコストを下げていくかが重要になると思っています」(竹尾氏)

また、T-CARBON/Watch®の導入には、燃料由来のCO2排出量を削減したいという狙いもあります。髙橋健吾氏は「基本的に建設業界が排出するCO2量で一番多いのが燃料由来のものです。実際にこれを減らすには、使用する機械の台数を減らすか、燃料から排出されるCO2量を減らすかの二択ですが、前者は現実的ではありません」と指摘します。続けて「近年バイオディーゼルなど環境配慮型の燃料が登場していますが、従来の計測方法では、せっかく環境配慮型の燃料を使ってもCO2排出量をどれだけ減らせたかが把握できませんでした。燃料の使用量を計測することで、環境配慮型の燃料や燃費が向上している建設機械の効果を把握していきたいという目的もあります」と話します。

▼入場ゲートにカメラを設置しAIで画像認識を行っている新宿の建設現場写真

効率的な自動化には、社内外システムとの連携が肝要

建設現場のCO2排出量計測・集計を迅速化・精緻化していくうえで、
T-CARBON/Watch®のように社内外のシステムと連携して自動化する意義はどこにあるのでしょうか。竹尾氏は「建設現場における工事は当社だけでは完結せず、多数の専門工事業者の協力を必要とします。そのため建設現場で排出されたCO2量を集計するには、自社だけでなく多数の協力会社から燃料・電力使用量のデータを集める必要があります」と、一般的な事業におけるScope1、2とは異なる建設現場の特殊な条件を挙げます。「この点が、計測・集計の効率化や精度向上を阻害する大きな要因です。社内だけでなく社外のシステムとの連携は、このような条件下におけるCO2排出量計測・集計の手助けとなります。

例えば、リバスタ社の提供する電子マニフェストサービス『e-reverse.com』のオプションサービスである『TansoMiru産廃』の導入により、作成したマニフェスト情報から産業廃棄物収集・運搬時のCO₂排出量を自動算定できるようになったことで業務の効率化やデータ精度の向上に繋がりました。今後もCO2排出量計測・集計の効率化やデータ精度のより一層の向上、ひいてはCO2排出量の削減に努めていきます」

【写真右】サステナビリティ経営推進本部 カーボンニュートラル推進部
環境技術室 室長 竹尾 健一(たけお・けんいち)氏

【写真中】サステナビリティ経営推進本部 カーボンニュートラル推進部
環境技術室 課長 髙橋 健吾(たかはし・けんご)氏

【写真左】サステナビリティ経営推進本部 カーボンニュートラル推進部
環境技術室 高橋 佳子(たかはし・よしこ)氏

※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年4月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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