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熊谷組のサステナビリティ・脱炭素推進体制【後編】注力事業「中大規模木造建築」で叶えるCO2削減

熊谷組のサステナビリティ・脱炭素推進体制【後編】注力事業「中大規模木造建築」で叶えるCO2削減

前編では、中大規模木造建築ブランド「with TREE」立ち上げの背景、同ブランドのコンセプトなどについて、お話しいただきました。

後編では、「with TREE」の代表例である「MOTOMACHI CONNECT」が推進・運営する、「広島県庁前ショップ&カフェ(以下、県庁前ショップ&カフェ)」、脱炭素関連対策の社内体制、林産資源循環利用への思いなどについて、お話を伺います。

熊谷組初の純木造建築

「県庁前ショップ&カフェ」は防火地域にあることから、建築基準法改正により新たに基準が定められた「延焼防止建築物」として建物が設計されています。「もともと、事業主からは木造というご要望がありました。環境配慮という観点からも当社としてできることを考えたときに、木の構造を専門にしている会社とうまく連携できたことで、当社として初の純木造建築が実現しました」(川上氏)

「県庁前ショップ&カフェ」は社内外から高い評価を得たといいます。「当社初の純木造ということもあり、コスト面、工期面で予測がつかない部分もありましたし、品質管理においても確立された基準がないという課題もありました。そうした中で、きちんと予算内に収めて工程通りに品質の良い建物を提供できたと考えています。さらに木をたくさん使うことで、木の循環利用を促していますし、それが結果としてCO2吸収・固定という環境価値にも貢献できる建物になっていると思います」(川上氏)

▼広島県庁前SHOP&CAFE

中大規模木造建築推進室
川上 満彦 氏

林産資源循環利用が脱炭素の一助に

川上氏は「環境価値の創出という意味では、木造だけでなく、鉄骨や鉄筋コンクリートなどいくつものカードを提示できる」と話します。「いくつかのカードをうまく組み合わせて、お客様の求めに応えつつ、木の循環利用もどんどん促していきたいという思いがあります。木造に固執しすぎると逆にCO2排出量が増えるというパターンもありますので、効率よく木を使って、事業主からこんな使い方もあるんだ、と木をもっと身近に感じていただけるような提案をしていかなければと思っています」

栂野氏は、中規模木造建築における脱炭素のポイントは林産資源循環利用にあるとし、「大きく生長してCO2吸収効率が落ちた木を建材として使用し、新たに若い苗木を植えてCO2を吸収してもらうという循環を促すことが肝要。木造化に固執するのではなく、効率よく適切に木材を使うことが脱炭素への貢献につながると考えます」と話します。さらに「中規模以上の建物をつくるとなると木造は構造検討の選択肢に挙がらないケースがあるかと思われますが、鉄骨造やRC造と比べると工期の短縮を図ることができ、上手く活用すれば建物軽量化による基礎簡素化と、それに伴うコストメリットも出てきます。自由度の高い空間を実現でき、仕上げに利用すればウェルネスな環境も演出できます。木の選択肢を知り、中大規模木造建築の引き出しが増えればと思います」と続けます。

▼木造ハイブリッド構造を採用した「H10 青山」

出典:日系クロステック

サステナブル建築技術部長 兼 中大規模木造建築推進室長
栂野 晃 氏

脱炭素を“自分ごと”に

熊谷組では、建築建材の脱炭素提案を取り扱う部署として中大規模木造建築推進室を、ZEBやZEH、運用エネルギー効率化提案を扱う部署としてサステナブル建築技術部を設置し、両部署共に建築技術統括部に属しています。中大規模木造建築推進室には兼務者がおり、設計部門、技術部門、構造部門、積算部門、施工部門のそれぞれ精通したスペシャリストが技術的バックアップとフォローができる体制を敷いています。

「建築物をつくる際にかかるエネルギーと建物運用にかかるエネルギーでは、その比率はおよそ1対3で、建物運用にかかるエネルギーの方がはるかに大きい。建物が完成してその償却期間である60年間、長きに渡ってエネルギーが使われ続けるのです。地球温暖化防止、CO2排出量削減という観点からすると、竣工後、引き渡し以降の運用エネルギーを削減するほうが建築物をつくる際に発生するCO2を削減することに比べてパフォーマンスが大きいわけです。サプライチェーンが一体となってCO2排出量を削減するという意味では、上流である生産メーカーさんたちの努力を我々が評価して、努力をされている企業の商品を使うという入り口と、我々の設計で建物運用時の省エネ化という形を作ってお客様に引き渡しをするという出口までの流れがあります。その間に、中大規模木造建築推進室とサステナブル建築技術部があります」(栂野氏)

2025年4月には改正建築物省エネ法が施行されます。栂野氏は「当社としても2030年、2050年のCO2排出量削減の目標値を対外的に公表していますし、改正法への対応も検討しています。ここで重要なのが、社員一人一人がこれらを自分ごととして捉えられるようになるためには何が必要かです。法改正はもちろん、時代のニーズに合わせて我々も知見を高める努力が必要ですし、そうでなければお客様のサポートはできないと思います」と語ります。「脱炭素社会の実現は、熊谷組単体だけでは不可能です。建材製造の協力会社や建物を運用していくお客様までのご理解とご協力を得ることが重要です。各方面に当社の取り組みを知っていただき、木材循環活用にご理解・ご協力いただけるよう、これからも尽力していきます」(栂野氏)

【写真左】サステナブル建築技術部長 兼 中大規模木造建築推進室長 栂野 晃(とがの・あきら)氏

【写真右】中大規模木造建築推進室 川上 満彦(かわかみ・みつひろ)氏

まとめ

「with TREE」が目指す木材循環活用は、土木、建築を手がける熊谷組として、脱炭素社会の実現に向けて何ができるかという問いから生まれたひとつの答えだと感じました。その根底には、環境への貢献を自分ごととして捉える思いが流れています。

俳優の川口春奈さんを起用した熊谷組のTVCM「未来を信じる」篇には、若手社員たちによる「未来のまちづくり」プロジェクトで制作したジオラマが登場します。ジオラマには、環境と人にやさしい土木と建築の有り様が詰まっているといいます。これもまた、脱炭素への貢献、環境価値の創出をまさに自分ごとにしていくという取り組みのひとつではないでしょうか。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年2月)のものです。

前編はこちら:
熊谷組のサステナビリティ・脱炭素推進体制【前編】
注力事業「中大規模木造建築」で叶えるCO2削減

この記事の監修

リバスタ編集部

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