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熊谷組のサステナビリティ・脱炭素推進体制【前編】注力事業「中大規模木造建築」で叶えるCO2削減

熊谷組のサステナビリティ・脱炭素推進体制【前編】注力事業「中大規模木造建築」で叶えるCO2削減

熊谷組は2021年3月、住友林業との協業で、中大規模木造建築ブランド「with TREE」を立ち上げました。「with TREE」のコンセプトは「環境と健康をともにかなえる建築」です。

熊谷組はなぜ中大規模建築の木造化・木質化の推進に取り組むのか―。木造建築がもたらす環境価値、木の循環利用への取り組み、「with TREE」の施工例などについて、サステナブル建築技術部長兼中大規模木造建築推進室長の栂野晃氏、中大規模木造建築推進室の川上満彦氏にお話を伺いました。

協業から生まれた中規模木造建築への取り組み

「with TREE」のメイン対象である中規模木造建築とは、高さ13m以下、軒高9m以下、延床面積1000㎡以下で、戸建て住宅より大きく、大規模建築物より小さい建物を指します。川上氏は「例えば、地方のロードサイド店舗や3、4階建ての小さなオフィスビルなどが該当します。当社が手がける規模としては少し小さいのですが、住友林業との協業を始めたことで、住友林業のネットワークを通じて受注できるような体制が整ってきました」と話します。

▼中大規模木造建築ブランド「with TREE」

住友林業との協業を始めた背景のひとつには、中長期的な人口減少に伴う国内住宅市場・建設市場の縮小均衡への対応がありました。「両社は、このような経営環境変化に対して、新たな市場の創出や付加価値の高い技術開発、海外での事業展開といった、持続的な成長に向けた取り組みが必要と考え、既存事業の領域を超えた独自性のある新しいポジションの構築を目指し協業体制の検討を進めてまいりましたところ、両社の戦略の方向が一致したため、2017年11月に業務・資本提携を締結しました」(栂野氏)

業務・資本提携後、8つの分野で分科会が発足。そのひとつである中大規模木造建築分科会が立ち上げたのが「with TREE」ブランドです。そこには、地球温暖化防止への共通の思いがあったと言います。「熊谷組自体、古くから木造建築に取り組んでいました。各地域に木材の産地があったり、お客様からも木造建築のご要望があったりする時代がありました。例えば、法隆寺の五重塔のように、しなやかでありながら強いという木造建築は、日本古来の文化の中に根づいています。そうした木の特性を、いまもう一度見直すとともに、それが環境配慮にもつながるという点にも注目しました。排出されたCO2を成長段階で吸収して酸素に変えてくれる。こんな建築建材は他に存在しません。さらに、目にもやさしいし、触り心地も良く、香りもします。こんなに五感にやさしい建材は、私は木しかないと思っています」(栂野氏)


サステナブル建築技術部長 兼 中大規模木造建築推進室長
栂野 晃 氏

ブランド名「with TREE」に込めた思い

「with TREE」が提案するのは、資材の調達から建築、コンサルティングまで環境と健康を両立させる「建築」です。顧客と共に(with)、コミュニティと共に(with)、木と共に(with)、という3つの「with」がブランド名の由来となっています。

熊谷組が担うのは、中大規模木造建築受注施工のための木質部材の開発や技術開発です。栂野氏は「研究開発が進み、耐火性能なども上がってきています。ただ、例えば当然鉄と比べると強度の問題もありますし、振動や音への対応、腐食性という木特有のハードルはあります」と指摘します。それを踏まえたうえで、栂野氏は「木の持つ良さを鉄などの他素材と組み合わせることで、それぞれの良さを引き出し、生かすというのが『with TREE』のコンセプトです。単なる木造回帰ではなく、新しい技術と共存しながら、事業主がお求めになるスキーム、事業性に合わせてご提案しています」と話します。

▼林産資源循環利用が地球温暖化防止に貢献出典:熊谷組Webサイト

コストとニーズのバランス

川上氏も、事業主のコストとニーズのバランスを取りながら提案することが肝要と指摘します。「構造体への木の使用方法によっては、とてつもない補強が必要になる可能性もあります。さらに木をメインで使用するとコスト面の問題も出てきます。そうしたケースでは、例えば内装に木を使ってみる、木と鉄骨のハイブリッドを採用する、メインであるフレームは鉄骨で作って周囲を木で囲うなど色々な組み合わせでご提案しています」

さらに「地域によっては木の調達や運送が物理的にできなかったり、職人の確保ができなかったりするケースもありますし、脱炭素という観点からいくと、事業主のニーズに応じて木以外の選択肢も用意しています。木造の実績があるからといって強引にお薦めするのではなく、地域や事業主のニーズを把握し、木の活用ができるかできないかをしっかり確認しながら進めています」と話します。

中大規模木造建築推進室
川上 満彦 氏

同社が手がけた中規模木造建築の代表例が、今年2月に竣工した広島県庁舎敷地有効活用事業「MOTOMACHI CONECT(以下 モトマチコネクト)」です。広島市中心部の基町地区に位置し、2棟の木造建物からなる商業棟に3店舗が出店。周辺の緑と木造とが調和した憩いの新スポットとして注目されています。同社初となる純木造建築で、一部に広島県産の木材を使用。国内商業施設初の延焼防止建築物となっています。

【写真左】サステナブル建築技術部長 兼 中大規模木造建築推進室長 栂野 晃(とがの・あきら)氏

【写真右】中大規模木造建築推進室 川上 満彦(かわかみ・みつひろ)氏

前編では、中大規模木造建築ブランド「with TREE」立ち上げの背景、同ブランドのコンセプトなどについて、お話しいただきました。

後編では、「with TREE」の代表例である「モトマチコネクト」、脱炭素関連対策の社内体制、林産資源循環利用への思いなどについて、お話を伺います。

※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年2月)のものです。

後編はこちら:
熊谷組のサステナビリティ・脱炭素推進体制【後編】
注力事業「中大規模木造建築」で叶えるCO2削減

この記事の監修

リバスタ編集部

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